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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科20巻8号

1985年08月発行

雑誌目次

視座

Cementless人工股関節

著者: 丹羽滋郎

ページ範囲:P.905 - P.905

 1960年代初めよりSir John Charnley教授により開発された骨セメントを用いた人工股関節は,その優れた臨床成績を示したことから,整形外科における関節外科の概念を変え,更にその基礎的学問である生体工学,生体材料学の素晴らしい発展をもたらしている.しかしながら20数年を経て,この人工関節置換術の骨セメントを用いるための合併症「ゆるみ」が大きな問題となって来ており,これを解決するための試みが数多く行われている.
 骨セメントを用いない人工股関節の開発もこの点から出発するものであり,既に十数種のcementless人工股関節が開発され臨床応用が行われつつある.

論述

軟部肉腫の化学療法(CYVADIC療法)

著者: 松本誠一 ,   川口智義 ,   網野勝久 ,   真鍋淳 ,   古屋光太郎 ,   和田成仁 ,   磯辺靖

ページ範囲:P.906 - P.913

 抄録:〔目的〕成人軟部肉腫の化学療法として,現在最も有効とされているCYVADIC療法を行い,その成績を報告した.〔対象〕成人軟部肉腫43例であり,その中で13例は転移例であった.〔方法〕Adriamycin,Cyclophosphamide,Vincristine,DTICの4剤併用療法によるCYVADIC療法を行った.〔結果〕転移例で有効例はみられなかったが,術後adjuvantとして投与した例から,その有効性がうかがわれた.また術後adjuvant療法を施行すべき組織型についても考察を加えた.

Aneurysmal bone cystの成因について(その2)—脈管学的検査結果から

著者: 石田俊武 ,   大向孝良 ,   宋景泰 ,   奥野宏直 ,   石川博通 ,   高見勝次

ページ範囲:P.915 - P.923

 抄録:Aneurysmal bone cystの成因に関して,Lichtensteinが発表した局所の血管の形成異常のために血流の停滞を生じ血管が拡張して内圧が高まりその器械的な圧迫のために骨組織を破壊して病巣が発生拡大するとの器械的圧迫説につき,症例が長管骨のメタフィーゼに多発し,しかも偏心性に拡大する傾向をもつことから疑問を感じた.偏心性に拡大するのであればむしろremodellingに関係するosteoclastの活動を主と考える方が理屈に合う.器械的な圧迫説が症例でも適応しうるか否か,血管造影および嚢腫造影を施行して検討した.血管造影では,造影剤が嚢腫状に貯溜して圧迫しつつ拡大しているような所見は全くみられない.嚢腫造影でも,造影剤の入った嚢腫を取り囲んで病巣組織が存在し,嚢腫内圧は17.6mmHgで周囲を圧迫して著明に拡大する圧ではない.以上の所見から,嚢腫内の血液の圧迫は極めて弱く二次的なもので,主役は病巣組織内に存在するosteoclastまたはosteoclast様細胞の活動と考える.

二次性変股症,臼底突出症に対するBateman型人工骨頭置換術

著者: 鳥巣岳彦 ,   多治見新造 ,   森田秀穂 ,   津村弘

ページ範囲:P.925 - P.932

 抄録:二次性変形性股関節症と臼底突出症に対しBateman型人工骨頭置換術が行われた93関節の内,1年から3年の経過を観察できた34関節について,臨床的ならびにX線学的検討を行った.31関節(91.2%)が無痛であり,評価点数は術前平均47.2点が術後平均83点に改善された.二次性変形性股関節症の場合,浅くて急峻な寛骨臼を掘削して形成した新しい寛骨臼へのouter headのめり込みは0〜3.5mmで平均0.8mmであった.骨移植を行った臼底突出症の場合,outer headの寛骨臼へのめり込みは0.5〜3.0mmで平均1.7mmであった.X線上では4〜6カ月で新しい寛骨臼の関節面に硬化像が出現し,それに伴ってouter headの中心性移動は停止する傾向にあった.しかもouter headに接する関節面に線維性軟骨の形成を思わせる所見を得た.そこで剛体バネモデルによるコンピューターシミュレーション実験で,この新しく形成された硬化像の意義を検討した.

脛骨下端のいわゆる荷重面の骨折について

著者: 高山真一郎 ,   岩田清二 ,   水島斌雄 ,   佐々木孝 ,   中邨裕一 ,   木城利光

ページ範囲:P.934 - P.942

 抄録:脛骨下端の粉砕骨折と,前および後踝骨折で側面X線上関節面の1/4以上を占めるものをtibial plafond fractureと一括し,その治療経験を報告した.過去10年間当科で治療した足関節踝部骨折は総数649関節で,うちtibial plafond fractureは37名39関節6.0%であった.23名24関節に追跡調査を行ない,Burwellの方法を用い治療成績を評価した.分類はWeberとRüediの分類を併用した.Weber分類のA型はB,C型に比較し成績不良例が多かった.距骨骨折を合併するb型は2例と少ないものの予後は最も不良であった.一方,腓骨骨折を合併しないc型は成績良好であった.Rüedi分類では関節面の粉砕高度なIII型は予後不良であった.X線評価と臨床成績には密接な相関関係が認められ.従って解剖学的整復を得る事が治療の第一目標と考える.われわれは観血的整復および強固な内固定を治療の第一選択としているが,手術に際しては脛骨関節面の正しい整復のみならず,腓骨の正確で確実な整復固定が重要である.

陳旧性前十字靱帯損傷膝におけるレ線的変化

著者: 広瀬一史 ,   川崎崇雄 ,   尾原善和 ,   土井照夫 ,   史野根生 ,   木村友厚 ,   井上雅裕 ,   後藤一平 ,   太田信彦 ,   堀部秀二 ,   永野重郎

ページ範囲:P.943 - P.947

 抄録:〔目的〕陳旧性前十字靱帯損傷膝に対しその経時的レ線変化につき検討を試みた.
 〔方法〕受傷日時から手術までの期間が3年以上経過していた陳旧性前十字靱帯損傷膝26例を対象としレ線変化と受傷日時から手術までの期間との関係を調べた.変形性変化のレ線分類についてはNoyesらの方法に準じた.

頸椎前方固定後の偽関節,骨癒合遷延に対する棘突起ワイヤリング

著者: 冨士武史 ,   米延策雄 ,   藤原桂樹 ,   山下和夫 ,   小野啓郎

ページ範囲:P.949 - P.955

 抄録:頸椎の前方椎間固定術,椎体亜全摘手術は広くなされているが,偽関節や骨癒合遷延も5〜20%にみられる.この偽関節・骨癒合遷延に対して骨移植しないで棘突起ワイヤリングによる固定を9例に行った.平均2年2カ月の追跡調査で7例は術前に移植骨と椎体間にみられたレ線透亮像が消失し骨梁も連続して骨癒合が完成した.骨癒合が得られなかった2例については,前方固定後長期間経過していたこと,1例はワイヤリングの方法が悪く技術的な問題があったこと,もう1例は移植骨が圧潰・消失しており母床にも骨形成(硬化像)のみられなかったことなどが原因と考えられた.
 以上の経験より頸椎前方固定術後の偽関節,骨癒合遷延に対する骨移植を行わない棘突起ワイヤリングは,適応を選べば小さな侵襲で良好な結果が得られることがわかった.

鼎談

日本の整形外科の歴史を語る—京大整形外科の流れを中心として

著者: 近藤鋭矢 ,   天児民和 ,   山室隆夫

ページ範囲:P.956 - P.964

 山室 昨日,第58回の日本整形外科学会が終わったばかりでお疲れのことと存じますけれども,せっかくの機会ですので,わが国における整形外科学会の最長老であらせられる京都大学名誉教授の近藤鋭矢先生と,九州大学名誉教授の天児民和先生にお出でを願いまして,鼎談という形で日本の整形外科の歴史についていろいろとお話をおうかがいして,私どもの明日からの勉強の糧にもさせていただきたいと思っておりますので,よろしくお願いします.
 天児先生は内外の医学史にお詳しく,整形外科の歴史についてもずいぶん広く文献をお集めになったり,あるいは原稿も書いていただいたりして,現に『臨床整形外科』の雑誌にも外国の整形外科の先達についてシリーズで原稿をいただいておるわけですけれども,どのようなきっかけから医学史に興味を持たれるようになったのでしょうか?

手術手技シリーズ 脊椎の手術・28

胸椎および胸腰椎の手術 側彎症(scoliosis)に対する手術—Luque手術

著者: 山本博司 ,   谷俊一

ページ範囲:P.965 - P.976

はじめに
 Instrumentationの導入により,脊柱側彎症の手術成績は目ざましく向上して来た.Instrumentation surgeryにはさまざまあるが,これまで最も広く用いられて来たものはHarrington法である.しかし,近年,前方法としてZielke法が,後方法としてLuque法が,それぞれの適応症例において,その価値が認められて来ている.Luque法は1977年に,Edward Luqueが発表したもので,2本のL型のスムーズなrodと,分節毎に椎弓下に通したワイヤーで固定しようとする方法で,L-rods Segmental Spinal Instrumentation(以下L-rods S. S. I.と略す)と呼ばれるものである.本法は,椎骨を分節毎に把えているため,Harrington法に比べて,固定効果に優れ,術後の外固定が省略できるところに利点がある.以下,本法の術式を紹介することとする.

手術手技 私のくふう

Leeds-Keio人工靱帯による膝蓋靱帯再建術

著者: 松本秀男 ,   冨士川恭輔 ,   伊勢亀冨士朗 ,   竹田毅 ,   松林経世 ,   横井正博

ページ範囲:P.977 - P.983

 抄録:われわれはLeeds-Keio人工靱帯を用いて6例の膝蓋靱帯再建術および補強術を行い良好な結果を得ている.手術方法は瘢痕組織を除去した後,膝蓋骨および脛骨粗面後方に骨トンネルを作り人工靱帯を通して縫合固定する.術後は5週間のギプス固定後伸展方向の自動運動から後療法を開始する.結果は良好で臨床的には全例膝蓋靱帯の機能を回復し,術後抜釘時に生検を行った1例では肉眼的にも組織学的にも良好な靱帯組織が形成されていた.膝蓋靱帯再建術には未だ多くの問題が残されており,substituteは十分な強度と長さ,組織誘導性,生体との親和性などを満足せねばならず,さらにsubstituteを固定する際に大腿膝蓋関節の適合性をどのようにとったらよいか,どのように骨に固定したらよいかなどの問題点がある.Leeds-Keio人工靱帯を用いた膝蓋靱帯再建術の手術法,術後成績に加え,これらの問題点を考察し報告する.

整形外科を育てた人達 第29回

Hans von Gerssdorff(推定1455-1517)

著者: 天児民和

ページ範囲:P.984 - P.987

 整形外科を育てた人達もすでに数多く書いた.最初四肢の外科の基本となった血管結紮の技術を開発したAmbroise Paréを紹介したが,それより半世紀先輩であるHans von Gerssdorffについても書きたかったが,彼の著書で有名な「Feldtbuch der Wundtartzney」を入手して読み始めたところ,古代ドイツ語で楽に読めないため今日まで発表できなかった.しかし繰返し読んでいる間に少しずつ理解できるようになった.さらにE. Gurlt著の「Geschichte der Chirurgie und ihrer Ausübung」(1898)も入手でき,この書物には「Feldtbuch der Wundtartzney」の原文を記載し少しく説明を加えているので私の理解に大いに役立った.そこで今回思い切って400年以上も昔の書物を中心としてGerssdorffを紹介することにした.
 Hans von Gerssdorffは一般にはSchielhausと言われていた.彼の誕生は明らかでないが,医学史研究者で「Geschichte der Orthopädie」(1961)の著名であるProf. Bruno Valentinの推定によると,出生は1455年で死亡は1517年位と考えている,誕生地も明らかでないが,今は東ドイツ領となっているSchlesien地方であろうと推定されている,当時は外科医は内科医よりも社会的地位が低く,ー般に理髪師が外科医を兼ねていた.そのため修業も徒弟として行われていた,その間度々の戦争があり,その度に軍医として参加したと考えられる.その40年以上の経験により「Feldtbuch der Wundtartzney」ができたと思われる.ただ当時の医師はラテン語で書物を書くことが習慣的になっていたが,この書物はドイツ語である.

臨床経験

手根骨に発生した外骨腫の1例

著者: 柳田雅明 ,   松林経世 ,   坂巻豊教 ,   持田譲治 ,   中村洸 ,   矢部裕

ページ範囲:P.989 - P.992

 抄録:軟骨性外骨腫は長管骨のmetaphysis近くに発生するものが最も多く,手根骨に発生することは極めて稀である.われわれは,15歳男性で左手根骨に発生した外骨腫の症例を経験し,腫瘍摘出術を行った.摘出された標本は,主に月状骨からのものと三角骨からのものの2個で,組織学的にもosteochondromaと確認した.一般にmetaphyseal exostosisの場合,巨大なものあるいは障害の著しいものを除いて,成長終了まで手術を待期することが多いが,本症例のような短骨に発生したexostosisや,epiphyseal exostosisでは,変形や機能障害の原因となることが多いので,成長終了前においても手術適応があると考えられる.本症例も,術後機能改善を得ることができた.

小児にみられた全指ばね指の1例

著者: 釼持和彦 ,   伊藤恵康 ,   堀内行雄 ,   内西兼一郎 ,   小池昭

ページ範囲:P.993 - P.997

 抄録:小児にみられるばね指は主として一側または両側拇指罹患例が多く,弾撥現象を呈することよりも拇指屈曲位拘縮を主訴として来院することが多い.最近我々は全指に高度な運動制限を来たして来院した13歳,女子が過去に弾撥現象を呈していたことを知り,ばね指による運動制限と診断し手術を行った.本症例は,浅,深両屈筋腱が共通の硬化した滑膜に包まれ滑動性が著しく制限され,DIP関節まで運動制限が存在しており,小児のばね指のような屈筋腱の腫大もなく,また成人のばね指のような靱帯性腱鞘の肥厚も著しくはなかった.鑑別診断としてはarthrogryposis multiplex congenita,Still's disease,rheumatic fever,camptodactyly,familial arthropathy and camptodactyly,etcが考えられる.しかし臨床症状,病理組織学所見,全身症状において明らかな関連性はなく,小児にみられた全指ばね指と診断し手術を行い良好な結果を得た.

Foramen magnum tumorの1例

著者: 五十嵐一郎 ,   樋口雅章 ,   川岸利光 ,   中條正博

ページ範囲:P.999 - P.1003

 抄録:大後頭孔近傍に発生した脊髄腫瘍は,神経学的に多彩な症状を呈し,早期に正確な診断を下すことが困難であり,発症から確定診断に到るまで長期間を要する場合が多い.今回我々は,発症より4年以上を経過したforamen magnum meningiomaの1例を経験したので報告する.症例は44歳女.大後頭神経の圧痛,頸椎運動制限,四肢の反射亢進と筋力低下,後索障害による失調性歩行と振動覚の低下,排尿障害を認め,myelogram,MCTでC1下縁レベルでの完全ブロック像を呈した.C1C2椎弓切除,後頭窩開頭により,脊髄を右後外側より強く圧迫する腫瘍をpiecemealにほぼ全摘.術後1.5カ月で一部反射異常と軽度の筋力低下は残るものの,ほぼfull recoveryとなり,Philadelphia braceからsoft collarに変えて退院となった.Foramen magnum tumorの診断には,正確な神経学的所見の把握と確実なmyelogramおよびMCTが必要であり,またその治療には易損性となっている脊髄に新たな損傷を加えないよう充分の注意が大切である.

腸骨より発生した悪性血管内皮腫の1例

著者: 須田暁 ,   白井康正 ,   菊地達之 ,   伊志嶺隆 ,   川並汪一 ,   金子仁

ページ範囲:P.1004 - P.1009

 抄録:稀な骨原発の悪性血管内皮腫の1例報告.14歳男性の腸骨原発例で,X線像で骨膜反応を伴い骨外にまでおよんでいた.充分なEmbolizationを施行した上で,腸腰筋・臼蓋・腸骨を一塊として切除するpartial hemipelvectomyを行い術後1年半の現在良好な経過である.悪性血管内皮腫の特徴を述べ,血管増生の強い悪性腫瘍に対して術中出血量を減少させ得るEmbolizationの有効性を強調した.又骨盤腫瘍切除後,力学的な問題より良好な代用骨が得られていない現在,partial hemipelvectomyが最良の術式と考える.

半月板辺縁部損傷に対する鏡視下半月板縫合術の経験

著者: 宗広忠平 ,   林正岳 ,   国下正英 ,   菅原洋一郎 ,   相良光貞 ,   野村進

ページ範囲:P.1011 - P.1014

 抄録:昭和54年5月より59年8月までに,104例の半月板損傷に対して鏡視下手術を施行してきた.このうち96例が半月板切除術で,残り8例(7.7%)が辺縁部損傷に対する鏡視下半月板縫合術である.8例のうちわけは,男3例,女5例,年齢は14〜38歳,平均21歳で,原因はスポーツ外傷が5例と最も多かった.内側半月板6例,外側半月板2例で,術後経過観察期間は6カ月より4年10カ月,平均2年6カ月である.手術方法は,いわゆる皮下半月板縫合法で,当初の3例は,縫合針を用いていたが,最近の5例は,注射針を用い鋼線にて皮下縫合を行った.術後成績は,1例が寒冷時痛を認めるが,他の7例は無症状と良好である.現在のところ再断裂をきたしたと思われる症例はなかった.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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