臨床整形外科20巻9号

1985年09月発行

臨床経験

硬膜内に脱出した腰部椎間板ヘルニアの1例

著者： 中野謙二¹ 渡部圭介¹ 細井哲¹

所属機関： ¹山田赤十字病院整形外科

ページ範囲：P.1095 - P.1098

　抄録：腰椎椎間板ヘルニアが硬膜内へ脱出した一症例を経験したので報告する．症例は25歳男性で，主訴は両下肢痛，歩行障害であった．来院時，疼痛著明でほぼ歩行不能であった．両側Laségue 40°（＋），両側L₅以下の知覚鈍麻両側足関節背屈および底屈筋力2，両側ASR消失，膀胱直腸障害著明であった．ミエログラフィーにてL_4/5での前方よりの圧排とほぼ完全ブロックが認められた．L₃よりL₅の椎弓切除術を施行した．硬膜と後縦靱帯の癒着が著明であった．硬膜切開にて約0.8gの脱出ヘルニアを確認摘出した．L_4/5前方で硬膜が椎体後縁の骨棘部分と癒着し，一部欠損していることを確認した．術後6カ月経過した現在，疼痛は消失，両側Laségue（－），両側足関節背屈筋力5，底屈筋力4に回復，膀胱直腸障害も完全ではないが改善を示している，L₅以下の知覚鈍麻も改善し，肛門周囲と両下腿外側足底に多少の知覚鈍麻を残すのみとなった．