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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科21巻10号

1986年10月発行

雑誌目次

視座

老人と運動療法

著者: 中野謙吾

ページ範囲:P.1077 - P.1077

 最近老人が増え,長寿世界一を誇っているのは誠に喜ぶべき事である.
 事実,隣組でゲートボールをし,又ゴルフ,テニス,ジョギングを楽しんでいる多くの老人を見るし,老人ホームでは読書,書画と併せてスポーツをやっている人が多い.

論述

アイソエラスティック(Isoelastic)人工股関節

著者: 小林郁雄 ,   篁進 ,   柏木大治 ,   松下積 ,   伊熊貢秀

ページ範囲:P.1078 - P.1090

 抄録:アイソエラスティック人工股関節置換24関節およびアイソセファリック人工骨頭置換12関節の計35例,36関節について,X線学的に短期成績を調査した,また,合成樹脂製ステムについて,振動の周波数解析法によりその動力学的性質を調べた.
 ステムのlooseningが人工関節の3関節に認められたが,その程度は僅かであった.ソケットのlooseningは1関節に術後早期に認められたが,これは技術的未熟によるものであった.ステムおよびソケットの周辺に骨の新生が認められ,時間の経過とともに人工関節が定着する所見が認められた.動力学的試験では,アイソエラスティック・ステムと大腿骨の上部は互いによく似た力学的性質を示した.これに反して,Muller型金属ステムにセメントを使用した場合には,骨に大きな負荷が加わることが分かった.アイソエラスティック人工股関節は,"ゆるみ"や破壊の起こりにくい人工関節である.

胸腰椎部脊椎・脊髄損傷に対するSpinal Instrumentation Surgeryの是非

著者: 大谷清 ,   塚原茂 ,   宮本達也 ,   根元建二 ,   吉田宗人 ,   中井定明 ,   柴崎啓一

ページ範囲:P.1091 - P.1100

 抄録:胸腰椎部脊椎・脊髄損傷に対してspinal instrumentation surgeryが行われた36例について,主としてADL面からのfollow-upを行った.いずれも術後6ヵ月以上を経過し,ADL自立可能例である.Harrington instrumentation 15例,Luque instrumentation 8例,anterior instrumentation 10例,transpedicular screw fixation 3例である.
 下位腰椎,両股関節の可撓性が良好であれば,車椅子による日常生活には支障がない,しかし,longfusion例はスポーツや労働時における支障がみられる.Posterior instrumentは抜去すべきでなく,そのためには確実な手術が必要である.Anterior decompressionを兼ねたanterior instrumentationは症例によっては推奨できる.Short fusionですむtranspedicular screw fixation法も症例によっては推奨できる.

神中—ランス法による臼蓋形成術の成績

著者: 菅野大己 ,   松野誠夫 ,   増田武志 ,   松野丈夫 ,   長谷川功 ,   山口秀夫

ページ範囲:P.1101 - P.1109

 抄録:軽い臼不全を有する股関節症に対する手術的治療としての臼蓋形成術の一つに神中—ランス法がある.同法による長期成績について臨床学的,X線学的に検討した.
 手術時年齢が10歳以上で,経過観察期間が2年以上の91人,107関節について分析した.臨床的には,疼痛度,患者の満足度について調べた.X線学的には術前後のCE角,Sharp角,等を比較し,さらに形成臼蓋のリモデリングの状態に注目し検討した.

MTX大量療法の副作用の検討—特にMTX血中濃度との関係について

著者: 鈴木勝美 ,   舘靖彦 ,   須藤啓広 ,   荻原義郎

ページ範囲:P.1111 - P.1117

 抄録:MTX大量療法(4.8〜12.3g/m2)による副作用と血中濃度との関係が検討された.
 [対象・方法]骨悪性腫瘍13例,軟部悪性腫瘍5例の18例(男性11例,女性7例)に対して合計167回のMTX大量療法が行われた.MTXの投与は6時間で行われ,血中濃度測定は投与開始より24時間後,48時間後,72時間後に酵素法を用いて行われた.

シンポジウム 骨軟骨移植の進歩

わが国における骨移植の発展の足跡

著者: 真角昭吾

ページ範囲:P.1119 - P.1127

 今日の我々の知識は先人の遺産の蓄積,それを土台にした発展から成り立っている.そこで陳腐ではあるが温故知新という言葉を大切にしたい.古い文献の中にも今日的な着想を見いだすことがあり,そのうち優れたものは死蔵することなく,新しい研究法や手技を用いて掘り起こす必要がある.
 今回骨軟骨移植の進歩という特集が組まれることになったが,これからの進歩のためにも本邦の骨移植について先人の業績をふり返り,認識を新たにすることは意義あることと思う.

同種骨移植の現況と展望

著者: 杉岡洋一 ,   増田祥男

ページ範囲:P.1129 - P.1135

I.同種骨移植の意義と適応
 A.同種骨移植の意義
 骨移植が他の臓器移植と異なる最大の特徴は,移植された骨細胞の超生を絶対条件としない点である.移植された骨,正確には細胞外骨基質には移植床の間葉系細胞から骨形成能を有する細胞の分化を促す能力(bone or osteo-induction),すなわち骨誘導能または骨形成因子が存在する.誘導された骨形成細胞は移植骨のフレームを足場として新生骨を形成してゆく(osteo-conduction).骨移植においてはこのboneinductionとconductionが極めて重要な過程であり,最終的には移植骨は誘導された新生骨により置換され,同一形態の骨を形成する.自家骨移植においても遊離移植では極く表層の細胞を除いて超生の可能性はなく,冷凍または凍結乾燥した同種骨移植においてはなおさらで,その目的とするところは骨誘導能と骨形成の足場を提供することにある.また同時に骨新生置換までの補填と強度の保持にある.そこで他の臓器移植と根本的な相違があり,allograftと呼ぶよりalloimplantと呼ぶのが適切であるとされる所以である.

成長帯を含む自家骨遊離移植における骨成長能力—年齢的因子について

著者: 村岡博 ,   生田義和

ページ範囲:P.1137 - P.1144

 抄録:成長帯を含む自家骨遊離移植術を行う場合,その個体の年齢的因子が成長能力にどの様な影響を与えるかを知る目的で以下の実験的研究を行った.日本白色種幼若家兎を用い,第2中足骨を移植骨とし,これを骨端軟骨および少量の軟部組織を付着させたまま摘出し前腕皮下へ埋入した.対象年齢を1,2および4週齢の3群に分け,各群について,1.経時的X線撮影,2.病理組織像,3.微小血管造影で比較検討した.骨長径に関しては,1週齢群では著明な成長能力を示したが,2週齢群では低下し,4週齢群では成長は観察されなかった.骨横径に関しては,各群とも横径の縮小がみられた.
 同様の移植手技を臨床に用いる場合の手術時期としては生後早期が望ましく,骨成長の面からはDonorの骨端核の出現以前が望ましいと考える.

同種保存骨処理法の臨床的意義

著者: 垣内雅明 ,   小野啓郎

ページ範囲:P.1145 - P.1153

 抄録:我々の教室で行ってきた塩酸脱灰骨ならびに脱脂骨の移植例の臨床成績をもとに,塩酸脱灰,クロロホルム・メタノールによる脱脂,エチレンオキサイドガス滅菌の臨床的有効性を検討した.また,本邦での制度,社会通念のもとでは銀行骨として最も適していると考えられる脱脂骨(仮称)の使用法を述べた.

血管柄付腓骨移植術—現況と将来の展望

著者: 玉井進 ,   水本茂 ,   矢島弘嗣 ,   吉井尚 ,   福居顕宏

ページ範囲:P.1155 - P.1161

 抄録:1976年10月から1986年4月までに44例の血管柄付腓骨移植を経験した.経過観察期間は1ヵ月から9年10ヵ月,平均4年3ヵ月である.このうち先天性長管骨偽関節症12例,外傷性骨欠損または偽関節21例について検討を加えた.
 先天性偽関節症は脛骨10例,尺骨2例で,1歳から28歳,Boyd II型11例,VI型1例である.平均5ヵ月で骨癒合が得られたが,7部位(31.8%)に追加骨移植を要した.

整形外科を育てた人達 第42回

Dame Agnes Gwendoline Hunt(1867-1942)

著者: 天児民和

ページ範囲:P.1162 - P.1165

 今まで多くの整形外科を育てた人達について紹介して来た.今回は医師でなく看護婦であるが,Sir Robert Jonesと提携して肢体不自由の療育に活躍したAgnes Gwendoline Huntについて書くことにした.一般にはAgnes Huntと言われている.1948年Agnesが亡くなった時にReginald Watson-Jonesが彼女の伝記を詳しく書いている.それによると1867年の誕生である.

臨床経験

下腿に発生したClear cell sarcomaの1例

著者: 浜田純一郎 ,   早乙女紘一 ,   松本安司 ,   稲田辰一 ,   青山賢治 ,   吉田浩之 ,   東村隆 ,   本間浩一 ,   牛込新一郎

ページ範囲:P.1167 - P.1170

 抄録:Clear cell sarcomaは1965年,Enzingerらにより発表された比較的稀な軟部腫瘍である.我々は下腿に発生したclear cell sarcomaの1例を経験したので報告する.症例は17歳男性で,腫瘍は左下腿外側の軟部組織より発生し,発見より7ヵ月後に,悪液質,重症感染症を併発し死亡した.病理学的所見については,同一腫瘍でありながら,生検の時期,部位が異なると,メラニンが観察される場合と,発見できない場合があり,メラニン産生能の有無の検討には注意を要することを示唆した.治療に関して,ブレオマイシン,ビンクリスチンによる化学療法で腫瘍の縮小傾向を認め,両者が有効であると考えられた.

大腿骨頭無腐性壊死症に続発した大腿骨頸部骨折の2例

著者: 長谷川功 ,   増田武志 ,   松野丈夫 ,   菅野大己 ,   山口秀夫

ページ範囲:P.1171 - P.1175

 抄録:大腿骨頭無腐性壊死に続発した大腿骨頸部骨折の2例を報告した.2例ともに軽微な外力で骨折していた.また,壊死範囲は骨頭全体に及んでおり,その殆んどの部が無反応性の骨壊死で,壊死骨梁がそのまま残存していた.境界部は骨頭頸部移行部に位置しており,この部に壊死骨梁の吸収像が認められた.以上の臨床的,組織学的特徴より本骨折の発生機序を以下の如く推論した.大腿骨頭無腐性壊死において,壊死範囲が広く境界部が骨頭頸部移行部に位置すると,この部に修復反応としての壊死骨梁の吸収がおこり抵抗減弱部が出現する.この部は応力の集中する部であり,日常動作での微小骨折の積み重ねから,やがて頸部骨折をおこすに至る.

野球投手の利き腕側に発生した肋骨疲労骨折の2症例

著者: 井上智雄 ,   森健躬 ,   武藤芳照

ページ範囲:P.1179 - P.1181

 抄録:スポーツにより発生した肋骨疲労骨折は,主にゴルフスウィングを繰返したことにより,非利き腕側に発生すると報告されている.今回著者らは,野球投手の利き腕側に発生した肋骨疲労骨折を経験したので報告する.本症発生の特徴は,無理な投球フォームを指摘されている投手が,集中的に投球練習を繰り返したことにより,解剖学的抵抗減弱部位である肋骨角と肋骨結節の間で骨折を起こすという点である.このことより,正しい投球フォームと練習計画の指導が重要と考えられる.

腰仙椎側方脱臼の1治験例

著者: 福井康之 ,   鈴木信正 ,   浜野恭之 ,   宮川準 ,   吹本武憲

ページ範囲:P.1183 - P.1188

 抄録:我々は比較的稀と思われる腰仙椎側方脱臼例に対し,spinal instrumentationを用いて脱臼を完全に整復固定し,良好な脊柱再建を得たので報告した.症例は24歳の男性で,バイク乗車中,交通事故により受傷したものである.初診時,右L5神経領域の知覚運動麻痺を認め,X線像にてL5椎体の左側方への一横指の転位を認めた.手術はL1椎弓と左腸骨翼間にHarrington outriggerを装着し,長軸方向の牽引を加えた後,L4,L5にsublaminar wiringを行い,これをL2-右腸骨間に仮止めしたLuque rodに引きつける事により脱臼を整復した.その後,6.4mm Luque rodを用いてL3以下の腰仙椎後方固定を行った.本例は著しく不安定な骨折の為,更にL5-S1前方固定を追加した.術後,運動麻痺の改善は見られず,右下垂足に対し腱移行術を施行したが,術後2年目の現在,骨癒合は強固である.又,装具なしに歩行可能であり,ADL上の問題はない.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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