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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科21巻3号

1986年03月発行

雑誌目次

視座

先天股脱の予防・検診,雑感

著者: 坂口亮

ページ範囲:P.215 - P.215

 先頃(昭和60.9.14),第2回先天股脱予防研究会が篠原寛休幹事のお世話で開催された.先天股脱の診断基準が主題となり,寄せられたアンケート回答の結果の報告や討論と,さらにまた「乳幼児のX線診断の際の放射線被曝について」と題する館野之男部長(放射線医学総合研究所,臨床研究部)の特別講演も,今日の問題に対する専門的見地からの解答として時宜を得て有益であった.
 乳児検診における診断基準はいつもながら統一見解には致らなかつた.X線計測は客観的な診断基準になりうるか?篠原報告によると,必ずしもそうは行かないらしい.パラメーターとする角度の計測が,慣れた人同士でも5°位も違うことがあるという.

論述

慢性関節リウマチにおける股関節罹患の背景因子について

著者: 石川斉 ,   山崎京子 ,   三枝康弘 ,   岩崎安伸 ,   鵜飼和浩 ,   広畑和志

ページ範囲:P.216 - P.222

 抄録:慢性関節リウマチ(RA)における股関節罹患はRAの病勢と病歴の長さに関連すると言われているが,我々が加療しているRA患者の中で,どのようなタイプの患者が股関節罹患に陥り易いかを経時的なRAの病勢や血液検査上からretrospectiveに検討した.その結果,①股関節手術を必要とするようなRA患者はRA発症年齢が有意に低く,②白血球数は経時的に増加していた.さらに③赤沈値は初診時よりすでに高値を示すものが多かった.また股関節罹患群や股関節手術群ではステロイド剤の内服や関節内注入を必要とするものが多かった.このような結果から慢性に経過するRA患者の診療にあたってはdisableな股関節にさせないためのcareを強調した.

慢性関節リウマチ患者に対する股関節全置換術

著者: 松野丈夫 ,   増田武志 ,   長谷川功 ,   菅野大己 ,   松野誠夫 ,   東輝彦 ,   平井和樹 ,   三浪三千男

ページ範囲:P.223 - P.231

 抄録:股関節に著しい骨破壊を有する慢性関節リウマチ患者(以下RAと略す)に対しては,股関節全置換術(以下THRと略す)が有効である.しかし,RA患者は骨萎縮の程度が強く,protrusio acetabuliを合併している例が多く,THRを行う際,種々の問題が生じ易い.また股関節破壊の著しいRA患者は,他関節(膝・手関節など)の破壊も強いことが多く,術後の理学療法に難渋することが多い.今回我々は,昭和49年以降当科および関連病院で行ったRA患者に対するTHRの内,術後1年以上経過した36人46関節につき,臨床的・X線学的に検討を加えた.Protrusio acetabuliの強い症例に対しては,摘出骨頭をトリミングして臼底に置きsocketを挿入する方法をとり良好な成績をあげている.Class IVで両下肢多関節罹患例では,術後著明な臨床的改善を認めず,これらの症例は術後理学療法が不充分であったと思われた.Looseningを示した症例は認められなかった.

先天股脱ペルテス様変化に対する大腿骨骨切り術の効果

著者: 鷲見正敏 ,   司馬良一 ,   広畑和志

ページ範囲:P.233 - P.240

 抄録:先天股脱症例に対する大腿骨骨切り術は,脱臼整復後の求心位保持を目的として行われている.が,本術式を行うことによる生物学的刺激作用を利用して,先天股脱大腿骨頭のペルテス様変化に対する修復をも期待して行われている.今回,本術式のペルテス様変化に対する効果を検討することを目的として,術前にペルテス様変化を認めた70例83関節の追跡調査(6-22年,平均13年)を行った.ペルテス様変化に対する大腿骨骨切り術の効果は不確実で,術前の変化が著明であったものに高度の骨頭変形を認めた.先天股脱の初期治療として観血的整復術を受けた症例では,骨切り術後も高度な骨頭変形を多数に認めた.外反骨切り術施行例においても,骨頭変形が多数例にみられたが,内反骨切り術施行例に比較して高度の骨頭変形遺残例は少なかった.骨頭変形の程度を決定する最大の因子は寛骨臼の深さで,寛骨臼が深いほど骨頭変形は軽度であった.

橈骨遠位端骨折後の長母指伸筋腱断裂について

著者: 黒沢秀樹 ,   荻野利彦 ,   三浪明男 ,   薄井正道 ,   三浪三千男 ,   岩崎公彦

ページ範囲:P.241 - P.248

 抄録:橈骨遠位端骨折に続発した長母指伸筋腱断裂19例の臨床像を分析し,腱断裂の発生機序について検討した.骨折から腱断裂までの期間は,転位のない骨折で平均4.5週,転位のある骨折で平均19週であり,転位のある骨折では腱断裂が遷延する傾向がみられた.橈骨遠位関節面から骨折線までの距離は,長母指伸筋腱断裂を合併しなかったColles骨折では平均12.1mmであった.腱断裂を合併した骨折では平均9.1mmであり,骨折線はLister結節により近い所を通っていた.以上の結果をもとに,橈骨遠位端骨折後の長母指伸筋腱断裂は,Lister結節の障害により発生するが,骨折後早期に断裂する場合は腱自体の主に圧挫などによる脆弱性が,骨折後長期間を経て断裂する場合は主に腱と骨折片や仮骨との機械的摩擦が関与している可能性を考察した.また,腱断裂に対して行った腱移行術の機能的予後も調査したが,全例に良好な結果が得られていた.

手足軟部組織の良性軟骨性腫瘍—腱滑膜軟骨化生と粘液性軟骨腫に区別することの提案

著者: 伊藤慈秀 ,   水島睦枝 ,   坂手行義 ,   堤啓 ,   中西純夫 ,   檜沢一夫

ページ範囲:P.249 - P.257

 抄録:手足の軟部組織にまれながら発生する良性軟骨性腫瘍は組織発生が確立していない.手指(3),手掌(4)および足底(1)病変の8例につき,類縁疾患との対比と文献的考察を含め,主に組織学的観点から検討を加え,その整理を試みた.第1群は完全分葉状の成熟硝子軟骨組織からなる5例からなり,うち手の4例で著明な石灰化を伴い,腱鞘との連続が明瞭であった.第2群は非または偽分葉状で孤立腫瘤状を呈し,主に粘液腫性軟骨組織からなる3例からなり,石灰化は軽度で,腱鞘との連続がなかった.両群は相互に明確に区別でき,前者は大関節内に発生する原発性滑膜軟骨化生と区別することができないことから,腱滑膜軟骨化生と考え,後者は肉眼像と軟部粘液性軟骨肉腫との類似点からも真性腫瘍と考え,"粘液性軟骨腫"と呼称することを提案した.文献報告例も,ほぼこの2型に分けることができ,前者に比し後者の再発率が高い可能性を指摘した.

症例検討会 骨・軟部腫瘍9例

〔症例1〕脊椎原発性悪性腫瘍

著者: 中嶋洋 ,   岡田孝三 ,   林春樹 ,   小島朗 ,   大野博史 ,   宇多弘次

ページ範囲:P.259 - P.262

 症例:25歳,女性
 主訴:歩行障害,両下肢のしびれ感

〔症例2〕胸椎骨腫瘍

著者: 野島孝之 ,   井上和秋 ,   金田清志 ,   佐々木鉄人 ,   松野丈夫 ,   八木知徳 ,   藤谷正紀 ,   井須和男

ページ範囲:P.262 - P.264

 症例:26歳,男性
 昭和59年1月頃腰痛が出現し,X線にて第11胸椎の異常を指摘された.カリエスが疑われ,治療されていたが,改善せず,悪性骨腫瘍も疑われ,精査の為に受診した.一般検血,肝機能検査等に異常はなく,また免疫グロブリンの上昇,尿中Bence-Jones蛋白もみられない.5月に針生検がなされたが検体不十分で診断にいたらず,6月19日に腫瘍摘出,bone graft,前方固定術がなされた.

〔症例3〕4回再発した,多重腫瘍を伴う左膝部腫瘍

著者: 守田哲郎 ,   斎藤英彦 ,   堀田哲夫 ,   田島達也 ,   江村巌 ,   根本啓一 ,   井上善也 ,   吉田奎介 ,   富山武美 ,   伊藤惣一郎

ページ範囲:P.264 - P.267

 症例:当科初診時58歳の主婦
 経過:昭和44年8月,左膝前面の腫瘍に気付き近医を受診した.近医入院時の血管造影では,腫瘍は血管に富み,大腿骨前面に近接していたが骨への浸潤はみられなかった(図3-1a).44年8月,同病院で切除を受け,横紋筋肉腫の診断にて,術後5FUによる化学療法と照射を施行された.しかし45,47,48年の3回,同部に再発し,いずれも同病院にて切除を受けた.その後,右乳癌根治手術,Kasabach-Merritt症候群を来たした巨大な肝血管腫切除,卵巣腫瘍切除(粘液性嚢腺腫)を受けたが約11年間左膝腫瘍の再発はなかった.

〔症例4〕左大腿部軟部腫瘍

著者: 滝沢隆史 ,   廣田映五 ,   板橋正幸 ,   福間久俊 ,   別府英男 ,   西川耕平

ページ範囲:P.267 - P.269

 症例は57歳男性
 臨床経過:昭和59年5月中旬,左大腿前面の腫瘤に気がついた.自発痛はなかったが,圧痛を認め,放散痛はなかった.受診時,腫瘍の大きさは約15×10cmまでになっていた.8月9日入院.一般検血,生化学検査等では異常を認めなかった.単純X線写真,血管造影(図4-1)にて,腫瘤陰影を認めるが骨には異常所見はなく,骨膜反応も認められなかった.生検にて非上皮性悪性腫瘍と診断したがその際一部に軟骨への分化像がうかがわれた.術前Adriamycin 60mgの動脈内注入と6回の温熱療法を施行したが,腫瘍の縮小傾向は全く認められなかった.11月8日腫瘍切除術施行.腫瘍の大きさは,16×13×9cmで周囲はpseudocapsuleで囲まれていた.割面は黄白色,半透明であり,壊死や血腫は認められなかった.固定後の割面にて腫瘍は,分葉状の軟骨様部分とやや透明度が低い充実性黄白色部分などよりなっていた(図4-2).病理組織学的には広汎な軟骨形成を伴う非上皮性悪性腫瘍であった(図4-3).軟骨内のlacunaには異型を伴う細胞が存在し,多核細胞や巨核細胞も認められた.

〔症例5〕26歳男性右上腕腫瘍

著者: 三浦克敏 ,   白沢春之 ,   室博之 ,   岡本一也 ,   紫藤徹郎

ページ範囲:P.269 - P.272

 症例:26歳男性,会社員
 主訴:右上腕腫瘍

〔症例6〕左上腕骨および腋窩腫瘍

著者: 柴田大法 ,   坪内康則 ,   古味潔 ,   佐々木雅敏 ,   呉聡栄 ,   大森高明 ,   田部井亮

ページ範囲:P.272 - P.275

 症例:38歳,主婦
 1977年7月(当科初診7年前)に左上腕骨病的骨折を招来し,某医にて1カ月の外固定ののち生検を受けた.病理診断は非骨化性線維腫であった.後に供与されたX線写真では,左上腕骨近位骨幹端より骨端に虫喰い様骨吸収があり病的骨折と仮骨形成を伴つている.骨頭には正常骨梁がみられ偏心性傾向があり骨巨細胞腫を思わせるが,蜂巣様,多房性陰影とはいい難い(図6-1A).手術への恐怖と疼痛軽減のため患者は爾後の治療を拒否し放置した.2年後に左腋窩部に腫瘤を生じ,左上腕近位部と共に増大,手拳大に達した.1984年7月転倒して,左上腕に激痛を来し,切断によらない治療を希望して当科初診した.

〔症例7〕骨腫瘍

著者: 高岩均 ,   前田昌穂 ,   木下厳太郎 ,   合志明彦 ,   植松邦夫 ,   桜井一成 ,   八十嶋仁

ページ範囲:P.275 - P.278

 症例:38歳,男性
 臨床経過:昭和55年4月,転倒し右上腕の疼痛が出現した.某医にて右上腕骨病的骨折の診断をうけ(図7-1),直ちに骨接合術を施行された.以後骨癒合は良好であったが,昭和56年4月再度同部位に骨折を来し,当科初診となった.同年5月病巣掻爬骨移植術を施行した.しかし同年末ごろより,X線上病巣の著明な拡大と骨皮質の破壊消失が認められるようになった.血管造影では血管新生像が認められた.骨シンチグラムでは右上腕骨骨幹部に強い集積を示したが,他部位には有意な集積は認めなかった.昭和57年2月右肩関節離断術を施行した.その後,昭和59年1月には右側胸部痛が出現,右第9肋骨に骨腫瘍が認められた.同年2月広範囲切除術を施行した.さらに,同年末には胸骨部痛も出現,胸骨体部の腫瘍が認められ,昭和60年3月広範囲切除術を施行した.

〔症例8〕右恥骨腫瘍

著者: 竹山信成 ,   檜垣昇三 ,   菊地文史 ,   毛利昇

ページ範囲:P.278 - P.280

 症例:15歳,男
 主訴:右恥骨部の痙痛と腫脹

〔症例9〕骨盤部腫瘍

著者: 内藤眞 ,   高橋潔 ,   水田博志 ,   久保田健治 ,   佐保修二 ,   北川敏夫

ページ範囲:P.280 - P.282

 症例:55歳,女
 昭和59年1月頃から右臀部から右下肢にかけての疼痛が出現し,その後馬尾症候群,歩行障害もみられたので9月13日熊本大学整形外科に入院した.入院時のX線,CTでは骨盤腔右仙骨前部から右臀部にかけて小児頭大腫瘤がみられ(図9-1),血管造影では腫瘍は内腸骨動脈に養われていた.生検で巨細胞腫の診断が下され,10月24日全摘術が行われた.手術時腫瘍は右大啓筋下にみられ,被膜を有し,大坐骨孔周囲の骨を破壊,骨盤腔内に侵入していた.腫瘍実質は暗赤色,出血性で脆く,多房性で,組織学的にaneurysmal bone cystの診断が下された.昭和60年1月超手拳大の腫瘍再発がみられ,そのため2月18日再手術が行われた.しかし,再度再発がみられ,6月には入院時を上回る巨大な腫瘍となり,腹部に容易に触知された.X線上肺転移は認められていない.

整形外科を育てた人達 第36回

James Syme(1799〜1870)

著者: 天児民和

ページ範囲:P.284 - P.287

 英国のEdinburghの有名な外科医としては先ずJames Symeを第一に推すべきであろう.外科ではないが産科医としてChloroform麻酔を開発したJames Simpson(1811-1870)は今日,Edinburghの古城の近くに銅像がたてられている.制腐手術の創始者LordJ oseph Lister(1827-1912)はSymeの娘婿であったが,Listerの制腐手術に反対したのはSimpsonであった事も歴史上興味ある事であろう.本誌21巻1号に掲載されたNicolai Ivanovich Pirogoff(1810-1881)について執筆しているときに,足部切断術で断端支持力を高める術式をPirogoffが考案し,同様の術式をSymeも行い好評であったことを知り,早速資料を集めてJames Symeについて書くことにした.

臨床経験

母指末節骨に発生した骨軟骨腫の1例

著者: 有山弘之 ,   梅藤千秋 ,   平山隆三

ページ範囲:P.289 - P.291

 抄録:骨軟骨腫は軟骨帽を持ち傍骨端成長板より突出する良性骨隆起であり,最も多く経験する骨腫瘍である.しかし末節骨に発生することは少なく,特に皮膚を破った報告例は我々が渉猟し得た範囲では1例のみである.今回我々は,母指末節骨背側に発生し皮膚を破った骨軟骨腫を経験したので,その診断・治療などについて文献的考察を加えて報告する.

Os odontoideumとRAが合併した上位頸椎高度脱臼例

著者: 山本慎吾 ,   上尾豊二 ,   池永稔 ,   奥村秀雄 ,   四方実彦 ,   山室隆夫

ページ範囲:P.293 - P.296

 抄録:慢性関節リウマチにおいて,上位頸椎の不安定性を来すことは,近年強調されている問題である.一方,Os odontoideumはその多くが無症候性であり,必ずしも稀なものではないと考えられる.たまたま両者が合併した場合は,本来,無症候性であったOs odontoideumであっても,その構築上の欠陥から高度の不安定症状を来たす可能性がある.我々は,RAの進展とともに歯突起と環椎が一体となって特異な転位をしめした症例を経験した.臨床症状は脊髄症状を欠き,脳神経症状を主体とする特異なものであった.

Retropharyngeal tendinitis without calcium depositと思われる4症例

著者: 吉峰史博 ,   井口傑 ,   高田知明

ページ範囲:P.297 - P.302

 抄録:特徴ある臨床症状,経過及びレ線所見を示す急性頸部痛の4例を経験したので報告する.34歳から69歳迄の女性3例,男性1例の4例で,ともに数日間のうちに項部痛が増悪し,激痛となり受診.頸部は中間位で,運動制限が著明で,微熱・嚥下痛を伴う.初診時レ線像にて,全例ともC1〜C4迄椎体前方軟部組織腫脹が認められるが,石灰沈着は不明である.血沈亢進,CRP陽性で,初診後1〜2週でレ線上椎体前方軟部組織腫脹は正常化し,それと共に臨床症状も消失した.
 非石灰化を除けば,頸長筋の腱部に起因する石灰沈着性腱炎と考えられているretropharyngeai tendinitisと考えられる.今回の4症例とも石灰沈着がないとは断言できないが,実際に石灰化のない単なる炎症によりretropharyngea spaceが拡大する可能性を今回の症例が示唆していると考えたい.急性頸部痛で,特に嚥下痛を伴う患者では,この疾患を念頭に入れ,診察をしなければならないと考える.

鎖骨遠位部に発生した骨軟骨腫の1例

著者: 洪定男 ,   福島稔 ,   田名部誠悦 ,   桑原紀之 ,   高橋清輝

ページ範囲:P.303 - P.306

 抄録:発生部位としては稀な鎖骨遠位部より発生した孤立性骨軟骨腫の1例を報告した.症例は右鎖骨部腫瘤を主訴とした21歳の女性である.鎖骨に発生した孤立性骨軟骨腫は全国骨腫瘍登録—覧表(1972年〜1982年)ではわずか18例であり,Schajowiczによれば骨軟骨腫783例中1例のみである.いずれの報告でも鎖骨のどの部位に発生したかの記載については不明確である.鎖骨の骨端線は近位のみに存在するが,膜性骨化を呈する鎖骨遠位部に発生したものは極めて稀と思われる.本症例の病因としてVirchowの仮説に加えて,微少刺激なども考慮する必要があるように思われた.

仙骨へ転移した卵巣未熟奇形腫の1例

著者: 小野浩史 ,   増原建二 ,   岩崎洋明 ,   三井宜夫 ,   浅野正文

ページ範囲:P.309 - P.312

 抄録:卵巣未熟奇形腫の仙骨転移例は稀である.我々はAFPとレニンが高値を示した卵巣未熟奇形腫の仙骨転移例を経験した.症例は24歳女性で卵巣dermoid cyst摘出後6ヵ月で腰痛にて発症,急速に進展し発症後6ヵ月でL5以下の完全麻痺を認めたため,手術にて仙骨を含めて腫瘍を全摘した.仙骨欠損部はHarrington法および骨セメントで固定した.病理組織学的検索にて卵巣dermoid cystと仙骨部摘出標本の両者に未熟三胚葉成分を認めたので,本症例を卵巣未熟奇形腫の仙骨転移と診断した.卵巣未熟奇形腫の転移巣では本症例の様に原発巣とほぼ同じ三胚葉成分と未熟組織の両者をもった組織像を示す場合もある.転移例の予後は転移巣の胎生組織の量により決まり,本症例の様に転移巣に未熟成分の多い例は予後不良である.AFPとレニンは本症例では明確な分泌組織は確認されなかったが,非典型的未熟組織より分泌されたと考えられる.

検査法

Transfemoral lumbar epidural venographyの手技について(第1報)

著者: 中川俊 ,   宇佐美文章 ,   松尾博由 ,   小野義比古 ,   黒田賢二 ,   南和文 ,   山崎典之 ,   大村文敏 ,   福田憲昭 ,   白井康正

ページ範囲:P.313 - P.319

 抄録:Transvenous venographyが臨床の場で一般的な検査法となり得ないのは,femoral vein,ascending lumbar vein及びpresacral veinの解剖学的知識の不足が原因となるためと思われる.Femoral veinはfemoral arteryの内側を同じ深さで並走しているので,femoral arteryの拍動を触知する部位をdependent pointとする.Ascending lumbar veinのselectは左側で,common iliac veinと同じ走行にて分岐しているので,seiectは容易である.右側ascending lumbar veinのselectはこの静脈にanomalyが多くselectが難しい症例がある.Presacral veinのselectには左右による難易は特になく,type 2を念頭において行っている.CatheterについてはMeijenhorstらの考案したcatheterは余りにもこれら静脈の形態にとらわれたものであり,一般的なcatheterで充分である.実際の手技に関しては考えるより馴れることが大切のように思っている.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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