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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科21巻8号

1986年08月発行

雑誌目次

視座

関節鏡視下手術の危惧と進歩

著者: 池内宏

ページ範囲:P.859 - P.859

 渡辺正毅,武田栄両先生による21号関節鏡の開発,つづいてselfo-scopeの開発は,関節診断学の向上に大きく貢献している.関節切開して行う手術(open surgery)に比較して,鏡視下手術後の元気な患者の顔をみると,もう少しどうにかならないか,など試行錯誤を繰返しながら行ってきた鏡視下手術が,今日のように普及することは予想もしていなかった.手術に時間を要することから種々のトラブルもあったが,周囲の諸先生方の温い応援の中で,比較的短時間に終了することができるまでになり,次の進歩を考えるときにきていると思う.またopen surgeryの経験のない医師が増加している事実もある.鏡視下手術の話が出るたびに,次のことを強調している.関節鏡でみた関節内の出来事を,鏡視下に手術することは,関節鏡の光学的特性を初め,関節鏡という器具の種々の制約下に行われる手術であり,それだけに診断についても慎重を要するものであることは,程度の差はあっても,基本的には20〜30年前と少しも変りはない筈である.また関節は非常に破格が多い上に,加齢,生活様式などによっても変化する器官である.したがって正常と病的との区別,手術適応の決定などに苦しむ場合も多々ある.患者の訴えをよく聞き,十分に診察し,X線像を読み,その上に鏡視所見を重ねてみて,正しく判断するように努力している.

論述

脊髄・馬尾神経症状で発症した脊柱管内悪性リンパ腫

著者: 増田達之 ,   冨士武史 ,   米延策雄 ,   藤原桂樹 ,   山下和夫 ,   小野啓郎

ページ範囲:P.860 - P.869

 抄録:悪性リンパ腫の硬膜外転移は数多く報告されているが,脊髄・馬尾神経症状を初発症状とする悪性リンパ腫の報告は少ない.今回我々は脊髄馬尾神経症状を初発とした5例の悪性リンパ腫を経験し,その臨床症状,検査所見,治療について検討した結果,以下の知見をえた.
 ①中高年者で急速に進行する脊髄・馬尾神経症状を呈する場合は脊柱管内悪性リンパ腫も考慮に入れる必要がある.②本症による神経症状は一時的な改善を示すことがある.③診断には脊髄造影・CTのみならず67Ga腫瘍シンチグラムが特に有用であった.④治療は,確定診断がつかずに脊髄症状が悪化しつつある状態では,確定診断を得る目的も含めて手術的除圧が必要となるが,本症の治療の基本は化学療法と放射線療法であることを忘れてはいけない.

腰椎椎間板ヘルニアに対する腰椎前方固定術の治療成績

著者: 西山徹 ,   富田裕 ,   前田勝久 ,   高山篤也 ,   高田俊一 ,   村上正純 ,   斉藤康文

ページ範囲:P.871 - P.882

 抄録:腰椎椎間板ヘルニアに対する経腹膜的椎間板切除・前方椎体固定術の術後成績を調査し,またX線学的検討を行った.われわれは1968年11月より1983年6月までの期間に,本法を581例に施行しているが,そのうち術後1年6ヵ月以上経過し,直接検診を行い得た206例を対象とした.手術部位はL3-41例,L4-576例,L5-S143例,L2-3・L3-41例,L3-4・L4-517例,L4-5・L5-S168例であり,全体で292椎間であった.術後臨床成績はexcellent 36.4%,good 52.9%,fair 6.3%,poor 4.4%でexcellentとgoodをあわせると89.3%と良好であり,長期的にも安定していた.骨癒合率は1椎間手術群で93.3%,2椎間手術群で88.4%,全体で91.8%であった.術後myelogramにおいて著明な改善傾向が得られ,完全遊離ヘルニアを除いて,前方よりの除圧が十分可能であることが明示され,本法は適応を選び,手術操作が正確に行われるならば,優れた手術法の1つといえる.

腰部椎間板造影における俯瞰ディスコグラムの意義と価値について

著者: 松井寿夫 ,   辻陽雄

ページ範囲:P.883 - P.890

 抄録:腰椎椎間板造影における従来の2方向撮影に頭側または尾側からの俯瞰撮影を追加することにより,線維輪亀裂変性および椎間板ヘルニアの詳細な実態を地理学的に把えうることを証明した.各年齢層の82例92椎間板の腰椎椎間板ヘルニアに対して椎間板造影を行い,2方向撮影の後,管球を頭側または尾側へ約30°傾斜させて俯瞰像を撮影し,従来の2方向像と情報量および精度につき比較検討し,あわせて腰椎部CTと俯瞰撮影の被曝線量についても比較した.線維輪亀裂変性に関する情報量は従来の2方向撮影像に比較して明らかに俯瞰像の方が優位であり,ヘルニア孔の正確な位置,形態,線維輪変性亀裂の全貌を明示した.ヘルニア腫瘤形態についてはヘルニア移動の方向により俯瞰方向を決定する必要があるが極めて有用な撮影法と判断された.X線被曝線量は腰椎部CTと比べ本撮影法では少なく,どの施設でも行えることは大きな利点である.

画像診断による悪性骨腫瘍の術前治療効果判定

著者: 松本誠一 ,   川口智義 ,   網野勝久 ,   真鍋淳 ,   多湖光宗 ,   古屋光太郎 ,   和田成仁 ,   磯辺靖

ページ範囲:P.891 - P.901

 抄録:[目的]悪性骨腫瘍に対する術前化学療法の治療効果を早期に判定するために,種々の画像診断を行い,その有用性を検討した,[対象]長管骨に発生し,術前化学療法を施行した骨肉腫20例,ユーイング肉腫5例である.[方法]術前治療の前後に単純X線,Xerography,骨シンチ,動脈造影を施行し,画像上の変化と切除材料における治療効果とを比較した.[結果]画像上治療効果ありと判定してよい所見は,単純X線Xerography,CTscanでは軟部腫瘤陰影の縮小や骨膜下硬化像の出現であり,動脈造影では,腫瘤陰影の縮小,vascularityの減少,血管偏位の減少であり,骨シンチでは異常集積の低下と範囲の縮小であった.早期治療効果判定に最も有用な検査はXerographyであり,治療開始後最短5日で有効と判定し得た.その他の検査は,Xerographyほど鋭敏ではなかったが,Xerographyでは評価が難しい症例で効果判定できる場合もあった.

正中神経掌側枝単独損傷の治療経験

著者: 高橋徹也 ,   荻野利彦 ,   三浪明男 ,   福田公孝 ,   中里哲夫 ,   加藤博之 ,   佐久間隆 ,   大西信樹 ,   薄井正道 ,   菅原誠 ,   小林三昌

ページ範囲:P.903 - P.908

 抄録:[目的]正中神経掌側枝単独損傷で有痛性神経腫を形成したものについて,その臨床像と手術的治療の成績を検討した.[対象と方法]最近の7年間に経験した7例7手に対し,受傷原因,創瘢痕,合併損傷,初診時の臨床症状を調べた.手術は神経切除3例(断端の骨内包埋を包む),神経縫合1例,神経剥離1例の5例に施行し,術前後の症状の推移を検討した.[結果]受傷原因は外傷と手術操作によるものに大別され,創瘢痕は手関節掌側で長掌筋腱(PL)の橈側に及ぶのが特徴であった.合併損傷はPL断裂を2例,正中神経部分損傷を1例に認めた.臨床症状では全例がparesthesiaと疼痛による患手の機能障害を有していた.手術後は全例症状の軽快が得られ,神経縫合術が最も良好な結果であった.神経切除による知覚脱出は手の機能的予後に影響を与えなかった.[結語]有痛性神経腫の治療法に関しては未だ議論は多いが,本症においては可能ならば顕微鏡下に神経縫合を試みる価値は高い.

膝蓋内側滑膜ヒダの関節造影による検討

著者: 仲克巳 ,   宗広忠平 ,   菅原洋一郎

ページ範囲:P.909 - P.912

 抄録:60度屈曲位膝蓋骨軸射造影と関節鏡検査からタナの存在した62症例を対象に,軸射造影にみられるタナ陰影について形態的に3型に分類し検討した.I型は内側壁の隆起の形が崩れ下縁が痕跡程度に突出しているもの,II型は内側壁の隆起より下方に付着し大腿骨内顆をおおう程大きくないもの,III型は内側壁の隆起より下方に付着し大腿骨内顆をおおうもの,とした.軸射造影と関節鏡所見(榊原分類)を比較したところ,タナ陰影の大きさと関節鏡所見には相関関係が見いだされた.又,タナ障害と臨床診断した13症例について検討したところ,I型にはタナ切除例はなく,II型,III型にタナ切除例が多かった.関節造影所見によりある程度タナ切除の適応決定が可能である.

横紋筋肉腫の治療成績

著者: 横山庫一郎 ,   中馬広一 ,   篠原典夫 ,   増田祥男 ,   杉岡洋一

ページ範囲:P.913 - P.916

 抄録:当科で扱った横紋筋肉腫8例の治療成績は古い症例が含まれており,決して満足すべきものではなく,現在経過観察中の2例を除き6例は最短4ヵ月,最長3年7ヵ月で死亡している.初診時すでに遠隔転移のあった3例は別としても,腫瘍が小さく,手術的には十分根治的であったと考えられる例でも,術後化学療法が実施されなかった為に4ヵ月で骨転移を来し,8ヵ月で死亡した例があることからも長期に亘る十分な化学療法が不可欠と考えられる.化学療法が有効に行われなかった場合には,組織学的な分類である胎児型が胞巣型に比べやや予後が良い印象を受けるが,VAC療法が導入されて以来二者の間に差はないとされ,1年間に亘りこの方法に準じた治療を行ってきた2例は,胎児型,胞巣型各1例であるが,1年8ヵ月,1年10ヵ月の現在disease freeであり,今後の経過が注目される.

足多趾症—4代9名に発症した1家系報告とその遺伝的考察

著者: 村上恒二 ,   村岡博 ,   室積正人 ,   渡捷一 ,   生田義和

ページ範囲:P.917 - P.921

 抄録:4世代にわたり同様の足趾奇形が多発し,家系内発生と考えられた稀な1例を経験したので報告するとともに,広島大学整形外科における足多趾手術例について家系内発生頻度や他奇形との関連性などを検討した.症例は1歳4ヵ月の男児であり,右足第1趾および第5趾に多趾がみられ,左足では第2,3趾の合趾症がみられた.本家系においては,4世代9人にわたり第1趾多趾の多発がみられ,遺伝形式は常染色体優性遺伝によるものと考えられた.本例から足多趾における遺伝性が示唆されるため,当科における足多趾手術例98例129足について軸性別に検討を加えた.足多趾の発生頻度は後軸性多趾が圧倒的多数を占めていたが,家系内発生率や手の奇形の合併率については前軸性多趾に最も高い頻度であり,後軸性多趾に最も低率であった.自験例の検討から,前軸性多趾においては濃厚なる遺伝要因の存在が考慮されるものと考えられた.

手術手技シリーズ 関節の手術<上肢>

肩鎖関節脱臼にたいする手術

著者: 福田宏明

ページ範囲:P.923 - P.928

はじめに
 肩鎖関節脱臼は日常診断でよくみられ,とくに青壮年期のスポーツ外傷として発生することが多い.しかし,その治療法については整形外科で扱う諸疾患の中でこれほど諸説がある疾患も珍しい.すなわち保存療法(放置も含めて)にすべきか,手術療法か?もしその大筋が決まっても,多くの方法の中から具体的にどれを選ぶかなどについて統一的見解を出しにくい現状である.しかし上肢肩甲帯総合運動の中で重要な役割を持つ肩鎖関節の機能からみると,この関節の脱臼は決して無視できない種々の問題を提供している.本稿では筆者の常用している手術法について述べる.

整形外科を育てた人達 第40回

Sir William Macewen(1848-1924)

著者: 天児民和

ページ範囲:P.930 - P.933

 英国の医学界では偉大な存在であった外科のLord Joseph Listerについては既に記述したが,彼の門下には如何なる人材がいたか知りたいので調べたところSir William Macewenの存在を知った.Listerの制腐手術を利用して骨の手術,特にOsteotomy,骨移植に成功した事を知り,Macewenを今回紹介することにした.

臨床経験

転移性腫瘍を疑わせた胸椎血管腫の1例

著者: 池田俊彦 ,   粟屋梧老 ,   鈴木茂夫 ,   前川正毅 ,   四方實彦 ,   三河義弘

ページ範囲:P.935 - P.938

 抄録:脊椎に発生した血管腫は,典型的にはX線上vertical striationと呼ばれる特徴的な像を呈するが,我々は最近,椎弓根破壊像を認め,転移性骨腫瘍との鑑別を要した胸椎血管腫を経験したので報告する.症例:36歳,女性,主訴:両下肢知覚障害,歩行障害.現病歴:入院4ヵ月前から誘因無く主訴が出現し,徐々に増悪した.単純X線でTh10の右椎弓根像の消失と椎体のcollapseを認めた.脊髄造影ではTh10でのextradural blockを認めた.血管造影では第10肋間動脈胸椎枝末梢の蛇行像,pooling像を認め,血管腫が疑われた.後方より骨生検を行った結果,海綿状血管腫の診断を得た.即ち単純X線像からは判明しなかった脊椎腫瘍像が,血管造影により血管腫を疑わせ,open biopsyにより確診された.そこで前方より進入し,椎体〜右椎弓にかけて切除し,自家腸骨片移植,Zielke deviceによる内固定を行った.出血量は3,140mlであった.術後10ヵ月の現在,良好に経過している.

胸椎部硬膜外血管腫の1例

著者: 四方實彦 ,   三河義弘 ,   赤木将男 ,   笠原勝幸 ,   松本学 ,   山室隆夫 ,   山辺博彦

ページ範囲:P.939 - P.942

 抄録:脊髄硬膜外血管腫は比較的稀な疾患で,その中でも脊髄硬膜外単独発生例の報告は少ない.本症はまた硬膜外血腫の原因となることも知られており興味深い疾患である.症例は41歳,男性,主訴は背部痛,歩行障害であった.突然激しい背部痛と側胸部から前胸部への放散痛で始まり第4胸髄節以下の知覚障害,両下肢筋力低下,痙性歩行,膀胱直腸障害も出現した.症状は寛解,増悪を繰り返しながら悪化し,入院手術となった,ミエログラフィー,CTMで脊髄は左後側方より前方に圧迫されていた.椎弓切除術を施行し,顕微鏡下に脊髄硬膜外の器質化した瘢痕中に埋もれて存在した血管腫を摘出,病理組織学的に海綿状血管腫と診断された.術前の症状は血管腫からの頻回の出血,血腫形成により増悪,血腫の吸収器質化により寛解を繰り返したものと思われる.術後順調な回復をみて1年7ヵ月の現在完治している.

長母指屈筋腱と示指深指屈筋腱間の破格腱3症例

著者: 今村貴和 ,   中村蓼吾 ,   蟹江純一 ,   西川卓也 ,   堀宗敏 ,   三浦隆行

ページ範囲:P.943 - P.945

 抄録:①長母指屈筋腱と示指深指屈筋腱間に破格腱が存在すると考えられる3症例(1例は両側例)を経験し,うち2例に対して手術的治療,すなわち破格腱の切離及び切除を行った.術後経過は良好であった.②3症例とも,母指自動屈曲に際して示指が同時屈曲する一方,示指屈曲には母指屈曲が同期しないという,特徴的な所見を呈した.③本破格は,長母指屈筋が深指屈筋群より分離独立してゆく過程での,胎生遺残であると考えられており,稀なものではない.④本破格腱が存在しても母示指のpinchにはあまり支障がないため,手術の適応となる場合は少ないと考えられる.

広範な仙骨破壊を呈したMyxopapillary ependymomaの1例

著者: 野島孝之 ,   井上和秋 ,   金田清志 ,   佐々木鉄人 ,   松野丈夫 ,   八木知徳 ,   佐藤栄修 ,   倉上親治

ページ範囲:P.947 - P.950

 抄録:仙骨に発生する腫瘍としては,脊索腫や軟骨肉腫が多い.今回我々は,25歳女性の仙骨に広範な骨破壊をきたし,生検時脊索腫を疑ったmyxopapillary ependymomaの1例を経験したので,脊索腫と軟骨肉腫とのX線学的,組織学的鑑別について考察を加えて報告した.Myxopapillary ependymomaは良性腫瘍で,本例の如く仙骨を広範に破壊した報告は,文献上みられなかった.初発症状出現より3〜4年の経過が,このような破壊を示したと思われる.仙骨を強く破壊するmyxopapillary ependymomaは,X線学的には溶骨性変化が主体で,蜂窩状構造や異常石灰沈着像を示さないのが特徴と思われた.また組織学的には,特殊染色PAP法にて,S-100蛋白陽性,ケラチン陰性,GFAP陽性を示し,S-100蛋白陽性,ケラチン陽性を示す脊索腫やS-100蛋白陽性,ケラチン,GFAPともに陰性を示す軟骨肉腫と染色態度により鑑別が可能と考えられた.

前立腺炎によると思われる股関節痛を主訴とした3症例の検討

著者: 水井伸子 ,   倉田和夫 ,   長部敬一 ,   一橋一郎 ,   武田正雄

ページ範囲:P.951 - P.954

 抄録:股関節痛を訴える症例のなかには股関節病変が確認できず,従って明確な治療方針をたて難い症例がある.私たちはこのような症例のなかで,同側の前立腺炎を証明しその治療を行うことによって,股関節痛が軽快した3症例を経験したので報告する.
 3症例とも誘因なく片側股関節痛が出現し,臨床所見はいずれも股関節自体の炎症性病態を疑わせた.しかし炎症性病変の局在や原因を積極的に裏付ける検査所見は認められなかった.しかし,いずれも股関節痛と同側の前立腺炎を併発していることが発見され,股関節痛は前立腺炎に対する治療により軽快した.この事実から,これらの症例における股関節痛は前立腺炎による関連痛であると推定された.このように男性が訴える股関節痛の原因や病変の局在を把握し難い場合には,前立腺炎の存在も考慮してみるべきである点を強調したい.

Membranous lipodystrophyの1例

著者: 佐藤啓三 ,   上畑元宏 ,   竹内一喜 ,   藤田久夫 ,   西村貞男

ページ範囲:P.955 - P.959

 抄録:Membranous lipodystrophyは,X線像で四肢長管骨に骨萎縮と多発性骨透亮像を示し,繰り返す病的骨折と,進行性の精神神経症状を呈することを特徴としている.今回われわれは,本症の1例を経験し,骨生検を行った.症例は33歳女性で,両股,両足関節痛を主訴に来院,多幸と知能低下,四肢に特徴的X線所見を認めた.骨生検にて,病巣骨髄は脂肪様組織で埋まり,その病理組織標本より膜様構造物を認めmembranous lipodystrophyと診断された.本症は,常染色体劣性遺伝による脂質代謝異常が病因とされるが,詳細は不明である.病的骨折に対し病巣掻爬・骨移植や外固定は効果的であるが,確立された治療法はない.精神荒廃に伴い,注意深い経過観察と全身管理が必要である.

シャルコー・マリー・トゥース病に変形性足関節症を合併した2例

著者: 門司順一 ,   佐々木鉄人 ,   八木知徳 ,   安田和則 ,   飯坂英雄 ,   田代邦雄 ,   柳原哲郎

ページ範囲:P.961 - P.965

 抄録:Charcot-Marie-Tooth病に変形性足関節症を合併した2症例を経験した.両例とも軽度ないし中等度の内反凹足変形があり,足部作動筋の筋力低下とあいまって頻回の捻挫をくり返し,変形性足関節症を発症したものと考えられた.変形性足関節症が当科分類にて末期である症例に対しては,足関節固定術にJapasのV型足根骨骨切り術を併用し,一方変形性足関節症が同じく進行期のものに対してはポリプロピレン製短下肢装具を処方し,両例とも疼痛のない安定した歩行が得られた.本病における足部変形の治療を考える場合,不整地における足部不安定性や易捻挫を有するものに対しては変形性足関節症発症の可能性があることから,積極的な治療が必要であると思われる.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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