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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科22巻1号

1987年01月発行

雑誌目次

巻頭言

第60回日本整形外科学会開催に当って

著者: 田島達也

ページ範囲:P.1 - P.2

 今春は第22回日本医学会総会が東京で開催される.日整会はその分科会であるが年次学術集会の開催にふさわしい会場を東京で見出すことは困難なので,充分広くまとまった会場群が妥当な経費で使用でき交通の便も悪くない新潟で医学会総会終了後の4月17,18,19日開催することを承認していただいた.さて第60回という節目に当る学術集会を企画するに当って,最近のように整形外科地方会やその特殊専門領域の研究会が年間を通じて各地で多数開催されており,深く狭い専門分化がますます進みつつあり,さらに昨年から基礎学術集会が別に開催されることになった情勢の中でいかにすれば広範な領域を含む整形外科の年次学術集会の意義を発揮できるかをまず考えた.そして以下のような基本方針を立てた.

論述

女児のペルテス病について—57例の分析より

著者: 稲松登 ,   金原宏之 ,   矢野悟 ,   前澤範明

ページ範囲:P.3 - P.8

 抄録:57症例59関節の女児ペルテス病の臨床像はまず504例中女児の発生率は11.3%あった.発症年齢は6歳4カ月でありその年齢分布とともに男女間に大差なくEvansの高年齢説と一致しなかった.一方,41関節について骨頭壊死範囲をCatterall分類で分析するとpartial type 85%に対してtotal type 15%であり男児対照群とも差がなくCatterallの女児の広域骨頭壊死説にも一致しなかった.
 最後に,41関節についてSundtのX線判定基準による総合成績は「良」49%,「可」36%,「不可」15%となり男児対照群とも大差なく,EvansやCatterallのいう女児の予後不良説とは全く一致しなかった.

外傷性下腿骨欠損に対する血管柄付遊離腓骨移植術

著者: 露口雄一 ,   河井秀夫 ,   行岡正雄 ,   川端秀彦 ,   政田和洋

ページ範囲:P.9 - P.15

 抄録:大きな骨欠損を伴った下腿骨髄炎・偽関節は,従来からの方法では治療が困難であった.これに対して血管柄付腓骨移植術を7例に施行し,その有用性を検討した.全例男性で,年齢は13歳から66歳,平均36歳であった.手術時の脛骨の欠損は平均8.3cm,この欠損に対して健側の腓骨を10〜16cm,平均14.6cmの長さで血管柄付骨移植を行った,術後,骨髄炎の再発はなく,移植骨は平均4.7カ月で骨癒合した.また,4例に移植骨の骨折をみたが,1〜2カ月の保存的治療で骨癒合し,移植骨自体の肥厚も急速に進んだ.病巣掻爬,腐骨切除後の脛骨骨幹部における5cm以上の骨欠損に対しては,血管柄付腓骨移植術による治療を今後は第1選択とすべきである.

足関節外側側副靱帯損傷—靱帯損傷部位と距骨傾斜角の検討

著者: 山本和司 ,   赤堀治 ,   近藤陽一郎 ,   橋詰博行 ,   青池和彦 ,   宗友和生 ,   赤木健 ,   横田忠明 ,   佐藤和道 ,   荒木邦公

ページ範囲:P.17 - P.22

 抄録:昭和50年より10年間に当科において手術を行い,損傷部位の確認できた足関節外側側副靱帯損傷の160例につき,年齢と損傷部位,および距骨傾斜角と損傷程度に関し検討した.
 1)前距腓靱帯損傷部位は年齢とともに中枢より末梢へ移行する.13歳以下では中枢部すなわち腓骨近傍が2/3であり,付着部剥離骨折も多発している.14〜19歳では,中枢,中央,末梢がほぼ同数,20〜31歳では末梢部すなわち距骨部が約半数を占め,32歳以上ではさらにこれが大多数となっている.
 踵腓靱帯は全年齢で,末梢部損傷が多い.
 2)距骨傾斜角は個人差が大きいため,左右差をもって判断すべきである.
 距骨傾斜角左右差が5°以下であれば前距腓靱帯単独損傷,15°以上であれば踵腓靱帯合併損傷が予想され,その中間の6〜14°ではいずれの可能性もある.

特別寄稿

膝関節靱帯性不安定性の診断とその分類—10年間をふり返って

著者: ,   伊勢亀冨士朗

ページ範囲:P.23 - P.28

はじめに
 われわれは10年前に,それまでの15年間の靱帯性膝不安定性の症例を分析して,その分類法を提唱した.それからさらに10年経過した今日,症例数を重ね分類に対する誤解や論点になってきた諸問題について,より明確に検証することができたので報告し大方の参考に資したい.
 靱帯性膝不安定性の分類3,4,10)は臨床症状と手術野で病態を確認したもので,臨床診断の基準となるものである.分類の他の目的は知識交換に必要な共通用語となることである.

シンポジウム 陳旧性膝関節重度靱帯損傷の治療

膝靱帯損傷における筋力訓練とそのバイオメカニクス

著者: 岡本連三 ,   腰野富久 ,   森井孝通 ,   酒井直隆 ,   吉田修之 ,   小高利郎 ,   高沢晴夫

ページ範囲:P.29 - P.34

 抄録:膝関節靱帯損傷例において,保存的療法および手術的療法のいずれをとわず,膝の安定性と機能を良好に回復するために,膝伸筋と屈筋群の筋力増強が必要である.特にスポーツに復帰しうるためには,十分な大腿四頭筋力の増強訓練が早期から行われる必要がある.
 前十字靱帯の縫合術または再建術後では,大腿四頭筋力増強訓練は縫合や再建した靱帯に伸張する負荷をかけぬように行われねばならない.このため大腿四頭筋と膝屈筋群の同時収縮を行いえるmuscle settingを術後ギプス固定時に行い,ギプス除去後は両筋の同時収縮を行い膝をロックした状態での下肢伸展挙上訓練が重要である.術後6カ月以内は,縫合後の,あるいは再建後の前十字靱帯に緊張が加わる膝完全伸展位でなく,膝ブレースを用いて膝屈曲20°程度で,下肢伸展挙上訓練を行うことが良いと思われる.

膝靱帯損傷における非手術例の予後

著者: 小林晶

ページ範囲:P.35 - P.47

 抄録:膝関節靱帯損傷患者のなかで非手術例80関節の予後調査を行った.同時に45関節の手術例と対比した.総合成績はMCLが最も良く,以下LCL,PCL,ACL,複合の順であった.成績を左右する因子の中で最も大きいのはgiving wayの存在である.ACL損傷では91.3%,複合損傷で90.5%と大多数に存在し,これが受傷前激しいスポーツ活動をしていた場合に復帰障害となる.PCL損傷では30.8%しか存在せず非手術例でも完全復帰例がある.PCLの場合は激しいスポーツをしない人,女性,中年以降では最初から保存的治療でよい.逆にACLや複合損傷ではスポーツ活動の復帰や,OA発生の予防のためには手術的治療が優先する.ACLでは一次的補強や再建も考慮されるべきである.複合損傷では完全修復が事情により不可能なときにも1つでも修復を心掛けるべきである.半月損傷を合併するものは適切な処置さえ行えば予後に差はない.X線や他覚的異常動揺性が15mm以内であれば症状,愁訴との相関はない.最後に筆者の治療方針を示した.

陳旧性前・後十字靱帯損傷に対する外科的治療—前十字靱帯のみ再建を行った症例を中心に

著者: 史野根生 ,   右近良治 ,   堀部秀二 ,   小野啓郎 ,   川崎崇雄

ページ範囲:P.49 - P.55

 抄録:陳旧性膝関節前・後十字靱帯損傷に対して,前十字靱帯または後十字靱帯のいずれかを再建し,合併した内外側構成体損傷の再建を追加するという方針で加療した10例の成績を検討した.内訳は前十字靱帯のみ再建を行ったもの9例,後十字靱帯のみ再建を行ったものが1例であった.術後経過観察期間は16〜40カ月(平均24.3カ月)であった.
 7例(70%)に満足すべき結果を得,レクリエーションとしてのスポーツ活動が可能となった.不満足例は3例(30%)であったが,不安定性の改善は著しかったものの,2例が重労働時での不安定感を訴えており,筋力増強訓練により経過観察中である.いま1例は頑固な膝窩部痛を階段下降などで訴え続けた為,後十字靱帯再建術を追加した.

陳旧性膝関節重度靱帯損傷の治療—前・後十字靱帯手術例について

著者: 冨士川恭輔

ページ範囲:P.57 - P.63

 抄録:陳旧性ACL,PCL複合損傷は,内・外側支持機構や半月板の損傷を合併することが多く,病態の複雑さ,再建手術手技の困難さ及び再建に要するdonorの不足により,その手術的療法を難しくしている.今回は61例のACL,PCL損傷を伴った陳旧性重度複合靱帯損傷に対し,Leeds-Keio人工靱帯を用いて再建術を中心とした手術的療法を行い,術後18ヵ月以上経過した30例につき検討を加えて報告する.
 陳旧性重度複合靱帯損傷ではPCLの臨床診断は容易であるが,内・外側支持機構損傷の正確な診断と手術適応は難しい.また27.6%に術前ACL損傷を示す徒手検査は陰性であった.

陳旧性後方,後外方回旋性不安定膝の治療

著者: 須津富鵬 ,   山下文治 ,   榊田喜三郎 ,   山際哲夫 ,   常岡秀行

ページ範囲:P.65 - P.70

 抄録:後方への不安定性を呈する陳旧性重度靱帯損傷膝を,後十字靱帯損傷を伴う後方不安定性膝と,後十字靱帯損傷を伴わず後外側構成体損傷による後外方回旋不安定性膝に分けて検討した.
 後方不安定性膝の症状として,疼痛が90%に,不安定感が70%に認められた.病態として後十字靱帯損傷と共に前十字靱帯損傷が15%に,内側構成体損傷が37%に,後外側構成体損傷が33%に認められた.後外方回旋不安定性膝の症状として疼痛が80%に,不安定感が100%に,水腫が45%に認められた.後外側構成体損傷と共に前十字靱帯損傷が80%に,外側半月板損傷が40%に認められた.機能障害の強い例では,後外側構成体や前十字靱帯損傷の合併が多く,また四頭筋萎縮も不安定性に強く関与していた.

整形外科を育てた人達 第45回

Gathorne Robert Girdlestone(1881-1950)

著者: 天児民和

ページ範囲:P.72 - P.75

 英国の整形外科はWilliam John Little(1810-1894)とHugh Owen Thomas(1834-1891)によって開拓されたが,その後多くの優秀な整形外科医が現れている.私が1965年Oxford大学にJose Trueta(1897-1977)教授を訪ねた時,同大学の整形外科の開設者であるGirdlestoneについて少しお話を聞いたが,Truetaは非常に尊敬していることを知った.そこで今回は,多くの先輩の支持を受け,肢体不自由児の療育にも情熱をもって参画し,第一次世界大戦では傷兵の医療とリハビリテーションにも多くの功績を認められ,財界の支援を受けOxford大学の整形外科を拡大したGathorne Robert Girdlestoneについて書くことにした.

手術手技シリーズ 関節の手術<上肢>

手根不安定症(Carpal instability)に対する手術

著者: 上羽康夫

ページ範囲:P.77 - P.89

 手根不安定症とは,外傷を含む種々な原因によって手根骨を保持している靱帯の弛緩あるいは断裂によって手根骨の配列が乱れ症状を起こす一連の疾患を呼ぶ.
 この疾患は,1934年Mouchet and Belotが初めて手根間関節の亜脱臼に気づき,注意を喚起した.1940年Marcelyno Reyesが舟状骨の亜脱臼をもつ1症例を発表した.1949年になってVaughan Jacksonが舟状骨の反復性亜脱臼について報告した.それ以後いくつかの類似症例について発表されたが,DobynsとLinscheidがこれらのものを一括して外傷性手関節不安定症(traumatic instability of the wrist)という言葉を使って発表した7).最近ではTaleisnikらによってこれらの疾患の病因が更に詳しく研究されている9)

臨床経験

Neurofibromatosisに伴う腰部脊柱変形の1治験例

著者: 小島朗 ,   岡田孝三 ,   林春樹 ,   小野啓郎 ,   上野良三

ページ範囲:P.91 - P.96

 抄録:Neurofibromatosisに伴う脊柱変形には種々の問題点があり,またその治療は困難とされている.最近我々も1症例の治療を経験した.症例は38歳女性で,腰痛と排尿障害を主訴として来院した.典型的なneurofibromatosisであり腰部に右凸の後側彎を認めた.椎体の高度な回旋異常を有しmyelography,CT-myelographyでは彎曲の凹側部で椎弓,椎弓根および椎体後側方部にて圧迫が見られ,不全麻痺症状の主原因であった.Halo骨盤牽引の後,後側方除圧術と後方固定術を行い,次いで前方固定術を追加した.その結果腰痛,排尿障害は消失し良好な経過を得た.
 圧迫部を切除する後側方除圧は不安定性を来すことなく有効な除圧を得ることができる.その除圧範囲の決定にはCT-myelographyがとくに有用であった.

Achondroplasiaにおける腰部脊柱管狭窄症の1手術例

著者: 四方實彦 ,   河野弘昭 ,   三河義弘 ,   飯田寛和 ,   松本学 ,   山室隆夫

ページ範囲:P.97 - P.100

 抄録:Achondroplasiaに合併した脊柱管狭窄症により馬尾神経圧迫症状を呈した症例を経験した.症例は33歳男,昭和59年2月頃より間歇性跛行をきたし,両下肢反射及び筋力低下が認められ,X線像にて特異な脊柱管狭窄像,ミエログラム,CTMにて脊髄,馬尾神経の圧迫所見を得た.Th12よりL5まで椎弓切除術を施行,特に後方膨隆の著しいL3〜4間の椎間板を摘出した.Harrington rodをsacral bar,Th10間に挿入し,Th11棘突起にwiringを加え,両側椎間関節〜横突起上に骨移植を行った.過去に,広範囲の椎弓切除術を施行したのち脊椎の不安定性や後彎の増強により術後成績が低下した症例の報告は散見されるが,それに対する良い対策がなかった.今回我々は広範囲椎弓切除術に加え,Harrington instrumentationによる後側方固定術を施行し症状の改善が得られたので考察を加えて報告する.

髄内静脈瘤を伴った脊髄動静脈奇形の1例

著者: 大西啓一 ,   岡田孝三 ,   岡史朗 ,   林春樹 ,   大本尭史 ,   吉岡純二

ページ範囲:P.101 - P.105

 抄録:脊髄の動静脈奇形(以下AVMと略す)に髄内静脈瘤を合併した1症例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.症例は53歳,女性.昭和58年9月,両足にしびれ感が出現,徐々に増強し軽度の歩行障害も出現した.その後突然歩行困難となり当科に入院した.入院時自力歩行は不能で,Th4以下の知覚障害を認めた.選択的血管造影にてTh3-4のAVMと診断した.またTh2レベルで脊髄の陰影がenhanced CTで増強され,髄内の血管性病変の合併を疑い手術を施行した.手術用顕微鏡下でTh3-4のAVMを摘出したところ,さらにTh2の髄内に静脈瘤を認め,注意深くこれを摘出した.現在術後1年になるが,再発なく経過良好である.Venous aneurysmを合併したAVMの報告は少なく,その成因は不明である.この症例の急激な歩行障害はVenous aneurysmが原因と考えられた.また,髄内の血管性病変の診断にenhanced CTがきわめて有用であった.

偽性副甲状腺機能低下症I型の兄妹例

著者: 松本香 ,   奥村栄次郎 ,   佐藤雅人 ,   山口修一

ページ範囲:P.107 - P.111

 抄録:偽性副甲状腺機能低下症I型の兄妹例を報告する.症例1:10歳11ヵ月,女児.主訴は両手のテタニー発作.家族歴では兄に同症を認め,両親はいとこ結婚である.昭和59年4月発熱後,主訴が出現.当科初診時,低身長肥満があり,神経学的にTrousseau徴候とChvostek徴候が陽性であった.X線では,中手骨と中足骨の短縮と異所性石灰化を右大腿内側と大脳基底核に認めた.症例2:14歳,男性.主訴は低身長.症例1と同様な所見が認められた.検査所見:血清Caは症例1が低値,症例2は正常値を示した.血清P,C末端PTHは2症例とも高値を示した.Ellsworth-Howardテストでは尿中P排泄とcAMP排泄は無反応であった.診断および経過:偽性副甲状腺機能低下症1型と診断し,1α-OH-D3を投与した.2症例とも血清Ca,血清Pともほぼ正常に維持されている.

Plantar fibromatosisの1例

著者: 神納英治 ,   田中和具 ,   竹内一喜 ,   藤田久夫

ページ範囲:P.113 - P.116

 抄録:足底腱膜に生じるplantar fibromatosisは稀なもので,Dupuytren拘縮に合併することがある.今回我々は,手掌に病変を持たない両側性のplantar fibromatosisを経験したので報告する.
 症例は56歳の主婦で,両側足底部第1趾MP関節のやや近位に小指頭大の腫瘤が出現し,疼痛をきたしたため来院した.他の部位に病変はなく,糖尿病の合併,家族発生もない.両側共に腫瘤を摘出したが,いずれの病理組織像でも,膠様の線維束の間に長紡錘形の核を有する線維芽細胞が結節性に増殖しており,plantar fibromatosisと診断された.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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