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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科22巻2号

1987年02月発行

雑誌目次

視座

リウマチの外科

著者: 小川亮恵

ページ範囲:P.119 - P.119

 1960年代の初めより,関節リウマチの炎症期の外科的治療として,滑膜切除術が本邦でも盛んに行われるようになった.内外で,リウマチ治療剤としてのステロイド剤への批判が高まるとともに滑膜切除術の有用性が説かれ,関節の支持組織と屈伸機構を温存し,できるだけ広範に滑膜を切除できる術式を用いて可及的早期に手術すべきであるとの見解が一般的となった.しかし,それらの条件を満たし易い関節と満たし難い関節とがあり,膝関節や肘関節は前者に,手関節や股関節は後者に属する.
 我々の経験では,十分な滑膜切除を行い得ても,術後何%かに炎症の再発をみる.それは機械的な障害,残存した病的滑膜の増生あるいは再生滑膜の炎症による.また,晩期での手術例のみならず,早期の例でも術後長年経過すると,OA性変化や骨破壊性変化が進行する例が多く,手関節手術例の約1/3はほぼ強直に陥る.

論述

腰椎疾患に対する脊髄造影と選択的神経根造影同時併用の試み

著者: 菊地臣一 ,   梁進治 ,   松井達也 ,   星加一郎 ,   蓮江光男

ページ範囲:P.120 - P.127

 抄録:腰椎疾患41例に対して脊髄造影と選択的神経根造影・ブロックを同時に行い,その利害得失を検討した.結果は以下の通りである.①脊髄造影と選択的神経根造影の同時施行は,形態的責任高位のみならず病変の責任部位判定に有効である.脊椎症では本手技が特に有効であり,責任部位は神経根管中枢側である症例が多い.②本手技に神経根ブロックを加え,歩行負荷試験を行うことで機能的な責任高位診断も可能である.③本手技施行後に歩行負荷試験を行っても合併症や副作用は認められなかった.④本手技により入院期間の短縮が可能である.

脊髄鏡検査—特に癒着性蜘蛛膜炎との関連における

著者: 大井淑雄 ,   三田冨士雄 ,   佐藤悠吉

ページ範囲:P.130 - P.139

 抄録:癒着性蜘蛛膜炎の臨床像,X線像(ミエログラム)との関連において脊髄鏡検査myeloscopyの有用性を検討した.癒着性蜘蛛膜炎は元来医原性の性格が強い疾患と考えられ,多くはミエログラフィー後とか,椎弓切除術後の頑固な腰痛に対して消極的につけられて来た診断名と考えられる.ところが脊柱管狭窄症など新しいdiagnostic criteriaが出現するに及びこの姿勢はますます強まったかに見える.しかし,かつてEpstein5)がすでに1970年代に説いたように脊柱管狭窄症には癒着性蜘蛛膜炎の変化がよく見られるのであって,これは脊髄鏡検査ではっきり証明されたのである.かつてのBurtonの分類2)I,II,IIIも脊髄鏡検査をかなり広く行うことにより別の分類に進む可能性もある.ミエログラフィーは癒着性蜘蛛膜炎の診断についてはno single pictureを示すので適さない.直視下に観察する内視鏡検査の利点と欠点について一般論も最後に付記しておく.

Wagner式脚延長術

著者: 八木知徳 ,   佐々木鉄人 ,   門司順一 ,   安田和則

ページ範囲:P.141 - P.149

 抄録:Wagner創外固定器を用いた脚延長法は,早期離床が可能で,隣接関節運動を許し,大きな延長が得られるのみならず,重篤な合併症が少なく,優れた方法である.本法を用い1977年より8例の脚長不同症例に対し,9回の脚延長術を行った.大腿骨延長7回,脛骨延長2回である.平均延長距離は5.1cmで,延長に要した期間は49日である.膝関節可動域は34歳のポリオ例で10°減少した以外は,全例術前に回復し,正坐可能となった.1例は同一大腿骨を2回,計12.5cm延長した.
 合併症は重篤なものとして骨髄炎が1例,骨折が3例あった.軽微なものとして,遷延治癒2例,ピン刺入部感染3例,一過性神経麻痺4例があり,合併症が全くなかった延長術は3回のみであった.従来の方法に比べ,神経・血管系や周囲関節機能に対する重篤な合併症が少なく,かつ大きな延長が得られる良い方法と思われる.

シンポジウム 陳旧性肘関節周囲骨折の治療

肘関節周辺骨折,脱臼後に生じやすい変形と機能障害の把握とその治療

著者: 阿部宗昭 ,   木下光雄 ,   茂松茂人 ,   土肥恒夫 ,   井上隆

ページ範囲:P.151 - P.163

 抄録:肘関節外傷後に生じやすい変形は内反肘と外反肘である.内反肘の多くは顆上骨折と骨端線離解後に発生する.原因は末梢骨片の内反傾斜であり,一たん生じた変形は自家矯正されないので早期の楔状骨切り術による手術的矯正が必要である.外反肘変形は外顆骨折後の偽関節によるものが大部分であり,変形は成長が終了するまで経年的に増大する.偽関節は骨片転位が軽微なものに生じやすいが,1年以内のものは偽関節部の骨癒合を目指して積極的に手術すべきである.
 肘関節の機能障害は屈伸及び回旋の運動障害,不安定肘,遅発性神経麻痺による手指の機能障害が主なものである.顆上骨折後の屈曲障害は変形治癒が原因であり顆上骨切り術によって改善する.異所性骨化による拘縮は保存的に改善しにくく骨化部切除による関節解離手術が必要となる.しかし化骨性筋炎の場合は保存的に徐々に改善することが多い.

陳旧性モンテギア脱臼骨折の治療

著者: 吉津孝衛

ページ範囲:P.165 - P.174

 抄録:陳旧性Monteggia脱臼骨折の小児21例,成人2例に対し二次的な肘関節の変化の予防を目的として,小児18例に対し解剖学的整復およびその維持の確実さから尺骨角状骨切り術を中心に,必要あれば橈骨回旋骨切り術を追加することにより治療し,他の5例は橈骨頭切除を行い最長26年4カ月平均7.5年の長期観察を行った.Bado I型10例,II型2例,III型9例,IV型2例で放置期間は17日から11年平均1年5ヵ月である.尺骨角状骨切り術で整復が良好な場合は橈骨頭肥大が軽度認められるのみであるが,整復不十分例および橈骨回旋骨切り術,特に後者では橈骨頭変形,上腕小頭扁平化などが早期に認められる.解剖学的整復の重要性が明らかで,そのためには尺骨の変形治癒に対する角状骨切りが最も有効である.橈骨頭切除は肘変形症,外反肘,可動制限,不安定性,運動痛さらには手関節部尺骨のplus variantが認められる傾向にあるため,その適応はできる限り制限すべきであろう.

陳旧性上腕骨外顆骨折の治療

著者: 伊藤恵康 ,   内西兼一郎

ページ範囲:P.175 - P.183

 抄録:受傷後3週以上経過して来院した陳旧性上腕骨外顆骨折36例に対して手術を行った.受傷後2カ月未満の症例は9例(平均5.2歳),2カ月から1年未満の症例は19例(平均5.6歳)であった.外固定中に転位が増強するlate displacement例が多かった.いずれも偽関節部を新鮮化して骨接合を行い,全例に骨癒合が得られた.転位の大きな,かつ初期の手術例に外顆核の無腐性壊死が7例にみられたが,術前に比べ可動域は改善したものもあった.
 受傷後4年以上経過して来院したものは8例で,このうち5例には偽関節部に骨移植を行い,骨片の対向が不良な3例には上腕骨の内反骨切り術を行った.いずれも術後の可動域の低下は軽度であり,外反動揺性の軽快あるいは運動軸の改善が得られた.

小児上腕骨顆上骨折後の変形治癒—その病態と治療

著者: 薄井正道 ,   倉秀治 ,   石井清一 ,   荻野利彦 ,   山元功 ,   菅原誠

ページ範囲:P.185 - P.193

 抄録:上腕骨顆上伸展骨折の変形治癒には末梢骨片の内反,内旋,過伸展の3要素が関与している.本論文では,とくに内旋要素と内反肘発生の関係を明らかにするために,骨格標本を用いた骨折モデルを作製し,同時に内反肘児18例を対象に著者らが考案した内旋偏位角測定法により内旋偏位角を測定した.また,著者らが行っている内旋偏位の矯正を加味した矯正骨切り術の術式を紹介し,その成績を検討した.さらに,内旋変形が肘関節運動にあたえる影響を知るために16mm映画撮影と肘変形モデルによる検討を加えた.その結果,内旋偏位は内反肘発生の要因となることが,骨折線と骨片の転位方向により説明できた.臨床例では,18例中16例(87%)に20°以上(平均39°)の内旋偏位が存在していた.著者らの手術方法により変形の3要素はほぼ矯正されていた.内旋を伴った内反肘は,三次元的に非生理的な運動を示した.これらの事実は内旋変形矯正の妥当性を示していた.

肘関節拘縮に対する関節形成術の長期予後

著者: 村上恒二 ,   生田義和 ,   安永裕二 ,   津下健哉

ページ範囲:P.195 - P.202

 抄録:当科では,過去20年間,主として外傷により生じた肘関節拘縮に対し,津下による後側方切開を用いた関節形成術を行い,良好な成績を得ている.今回,手術後5年以上を経過した長期経過例51例に対して予後調査を行った.症例を原因別にみると,肘関節周辺骨折によるもの24症例,脱臼骨折によるもの15症例,意識障害あるいは原因不明で関節周辺に化骨を生じたもの8症例,変形性関節症2症例,化膿性骨髄炎2症例となり外傷によるものが39症例と多くを占めている.Knightらの評価基準を用いて評価すると,結果においては51例中優37例,良8例,可4例,不可2例であった.
 また,全症例の術前,術後の平均可動域についてみると,術前39度,術後99度であり,平均改善角度は60度である.原因疾患,発症より手術までの期間,手術時年齢,術前の可動域など諸因子と改善角度について比較検討を加えた.

整形外科を育てた人達 第46回

Marie François Xavier Bichat(1771-1802)

著者: 天児民和

ページ範囲:P.204 - P.207

 私は既にフランスの有力な外科医であったPierre Joseph Desault(1744-1795)について書いた.その時私はXavier BichatがDesaultの門下で,非常に可愛がられ,Desaultの死後は外科よりも解剖,病理,生理の研究に専念し多数の論文を発表しているので,医学史の中で省くことのできない基礎医学者ではあるが,整形外科との関係はあまり強くないと思っていた.しかも医学史の研究者として有名なHenry E. Sigeristの名著「Grosse Ärzte」にも,更にJohn Talbottの「A Biographical History of Medicine」にもBichatの伝記は詳しく記載されている.この伝記の内容でも,整形外科と関係の深い研究業績については詳しく記載されていない.

手術手技シリーズ 関節の手術<上肢>

指節間関節の手術—関節固定術

著者: 井原成男 ,   鈴木勝己

ページ範囲:P.209 - P.215

はじめに
 種々の原因により関節の不安定性,著明な変形,および疼痛により日常生活動作や職業上において著しい障害を伴う時,罹患関節の関節固定術は有用な一つの手段となる.
 しかしながら,この最終的な手段に至るまでには,現在の障害に対する的確な認識のもとに保存的治療や関節形成術等の観血的療法をもってしても僅かな機能しか期待が持てない場合,また,その残存する機能を維持する為,多くの制約をうけざるをえない時にはじめて関節固定術が考慮されるべきである.当然の如く,患者のneed,職業,年齢,性差等も影響される.関節固定によって疼痛,不安定性の消失,変形の矯正ならびに罹患関節の影響により,損われていた近接関節の機能回復も期待できる,以下,我々の常用している方法は簡便であり,結果も良好な為,紹介する.

臨床経験

動脈管開存症を合併した点状軟骨異形成症の1例

著者: 服部義 ,   山田順亮 ,   金井和弘 ,   松島正気

ページ範囲:P.217 - P.220

 抄録:点状軟骨異形成症(chondrodysplasia punctata)は,epiphysisの点状骨化を特徴とする疾患群である.筆者らは,出生直後より右膝関節の変形があり,X線検査の結果,腸骨翼,大腿骨,脛骨,足根骨,頸椎より仙椎までの椎体の各epiphysisに左右対称性の著明な点状骨化を認めた本疾患のrhizomeric型の1男児例を経験した.合併症として,右先天性膝蓋骨脱臼,胸椎部の先天性側彎症のほか動脈管開存症も認められた.本疾患のrhizomeric型の予後は悪いとされており,本症例に合併した動脈管開存症も,生後6ヵ月ごろより心不全状態に陥り,外科的処置にてのみ延命可能と診断されており,他の整形外科的合併症に対しても慎重な対応が必要と思われる.

先天性の頭蓋顔面奇形,筋骨格系奇形を伴ったIncontinentia pigmenti achromians(Ito)の症例

著者: 大井直往 ,   大木勲 ,   佐藤兼重 ,   岩谷力 ,   大井淑雄

ページ範囲:P.221 - P.224

 抄録:特徴的な皮膚症状を持つ疾患であるIncontinentia pigmenti achromians(Ito)は中枢神経系,眼,頭蓋顔面,筋骨格系の先天異常を伴うと報告されているが,今回特に頭蓋顔面と筋骨格系の多彩な合併症を伴った本症と思われる症例を経験したので報告する.本症例の側彎変形,内反膝,先天性眼瞼下垂,先天性鼻裂に対し加療を行ったが,前二者は骨成長期であるため治療に難渋している.本疾患はこの症例を含め,内外で81例2,4,7,8,10,12,13,14)(本邦では33例)が報告されたのみで,そのほとんどは皮膚科領域での発表であり整形外科領域の文献にはいままで記載されていない.

Malignant Melanoma of Soft Partsの1例

著者: 岩崎安伸 ,   鵜飼和浩 ,   水野耕作 ,   広畑和志 ,   岡田聡

ページ範囲:P.225 - P.230

 抄録:Malignant melanoma of soft partsの1例を経験し病理組織学的に検討した.
 症例は64歳,男性.昭和59年6月頃より右肘部内上方皮下に母指頭大の腫瘤が出現した.同年10月頃より急激に増大し11月当科を受診した.臨床経過,CT,血管造影等より悪性軟部腫瘍を疑い,59年12月広範囲切除術を行った.腫瘍は4×4×3cm大で上腕筋間中隔に発生し被膜におおわれ,割面は茶褐色を呈し部分的に壊死におちいっていた.

有頭骨無腐性壊死の1例

著者: 西村正智 ,   池田彬 ,   増田隆一郎 ,   浜田一寿 ,   千葉一裕

ページ範囲:P.231 - P.234

 抄録:最近,われわれは極めて稀な特発性と思われる有頭骨無腐性壊死を経験したので報告する.症例は54歳,主婦.明らかな誘因のない右手関節痛を訴えて当科を受診した.X線写真で有頭骨全体に骨硬化像を認め,濃淡不規則な陰影が混在していた.保存的に経過を観察したが,次第に症状増悪したため9ヵ月後手術を施行した.ドリルで穿孔,海綿骨移植を行った.病理組織学的にも無腐性壊死と診断された.術後,可動域の制限を残すものの疼痛なく,日常生活に支障はない.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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