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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科22巻4号

1987年04月発行

雑誌目次

特集 腰仙部根症状の発症機序—基礎と臨床—(第15回日本脊椎外科研究会より)

腰仙部根症状の発症機序—基礎と臨床

著者: 蓮江光男

ページ範囲:P.347 - P.347

 腰痛や坐骨神経痛を主訴とする患者は極めて多く,また腰椎部は脊椎外科手術の対象となることのもっとも多い部位でもある.しかし,腰痛患者の診断・治療上の落とし穴は少なくなく,多数回手術を受けながら依然として疼痛に悩まされている患者も,残念ながら決して少なくはない.
 どのような疾患や症状についても言えることだが,患者が訴えている苦痛の発生機序を,できるだけ明らかにすることが,正しい診療の基礎であり,また経過不良例の発生を防止することにもなる.

座長総括/「Ⅰ.基礎」の部

著者: 原田征行

ページ範囲:P.349 - P.350

Ⅰ-1 腰仙部根症状の多様性に関する解剖学的考察
   弘前大学医学部整形外科 工藤 修
 腰仙部の根症状が臨床的には解剖学的神経支配とは必ずしも一致せず多様性を示す.この原因として分岐神経,N. furcalisと椎骨分節異常について解剖死体で調査した.分岐神経はL4脊髄神経とされているが,腰神経叢と仙骨神経叢へそれぞれ太い枝を出す変異がある.分岐神経を8型に分類した.分岐神経(F)が高位のものが7,8,9と最も多かったが,他はL5の高位のもの,L3,4に亘るものなど多様である.
 椎骨の数から前置型ではL4神経は通常のL4神経支配となり,後置型ではL5神経と類似成分を有していた.

座長総括/「Ⅱ.電気生理」の部

著者: 井形高明

ページ範囲:P.350 - P.352

 腰仙部神経根障害の診断に電気生理学的検査法が採用されるようになり,形態所見のみでは識別困難な障害根の把握はもとより,予後の判定,神経病態の解明が可能になってきている.本セクションはこの領域の6題が発表された.5題は,腰椎椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症による馬尾神経障害及び神経根障害を対象とし,他は腰仙部脊柱管狭窄モデルについての実験的検索である(表参照).
 Ⅱ-6の馬場ら(金沢大)は体性感覚誘発電位(SSEP)及び馬尾神経活動電位(CEAP)により電気診断の病態生理学的意義を検討している.SSEPでは,一次成分(P28,N31)の異常が高率で神経根障害を反映し,二次成分(P37,N46)の異常が加われば障害が馬尾神経に及んでいる可能性を示す.CEAPは障害度の把握に有用であり,特に振幅減少の左右差が30〜40%であれば機能障害,80%以上では神経脱落が示唆される.質問に答えて,神経脱落は中でも知覚と深く関係すると述べられた.

座長総括/「Ⅲ.一般(1)」の部

著者: 河合伸也

ページ範囲:P.352 - P.353

 一般(1)のsessionは第1日目午後に開始され,まず4題の報告が行われた.
 長谷(京府大)は1025例の腰仙部ミエログラフィーにおいて17例(1.7%)に神経根形成異常を認めており,走行異常6例,分岐異常11例で,S1根に8例,S2根に6例である.症状に関与しているものは2例であり,神経根の形成異常は発症に直接結びつかないが,神経根周囲の余裕が少なく圧迫症状を惹起しやすく,骨奇形を合併するとその可能性がさらに高まると述べている.

座長総括/「Ⅳ.すべり症」の部

著者: 平林洌

ページ範囲:P.353 - P.354

 まず第1席の鈴木(済生会中央)は,変性辷り症における神経根症状の発症は主として辷り椎弓による圧迫,当該椎間孔の狭窄,椎間板の後方膨隆などによるとした上で,治療としては除圧後,椎間腔拡大位での固定が必要であるとした.したがって前方固定法が第1選択となるが,高齢者には同じように目的を達しうるpedicle screwing+Luque法の併用を推奨した.
 今井(岡山)がLuque法について質問したのに対し,演者は整復操作は加えず,術後は3日〜3週で歩行させていると答えた.

座長総括/「Ⅴ.椎間板ヘルニア(1)」の部

著者: 小野啓郎

ページ範囲:P.355 - P.356

 椎間板ヘルニアに伴う神経症状や特徴的な身体所見がどのようなメカニズムで発現するのか,圧迫された神経根からみてどのような病態であると理解するのがよいのかというのがこのセッションにおける口演の基調となった.
 まず辻(富山医薬大)は腰神経根の圧迫モデルを想定して,応力とその分布がヘルニアの大小・形状・加齢に伴う神経根の物理的性状によってどう影響されるかを理論的に解析した.神経根の伸び歪やYoung率からすれば,応力は鋭く突出したヘルニアで根が硬いほど大きいと考えられる.したがって若い患者のヘルニアほど別除の対象になるものが多く,他方神経根が弛緩し,かつ,台形に膨隆した高齢者のヘルニアでは後方除圧によって十分に神経症状を緩解させ得る可能性があるのではないかと主張した.これに対して若年者と高齢者における神経根の性状の違いがYoung率の上で明確な差を示すという事実があるのか? 老人の場合には根とヘルニア間に癒着が生じているために椎間板内圧が作用する例もあって,やはり摘出の対象となりうるのではないか? などの質問があいついだ.

座長総括/「Ⅵ・椎間板ヘルニア(2)」の部

著者: 小野村敏信

ページ範囲:P.356 - P.358

 この椎間板ヘルニア(2)の部では,画像診断,手術所見,治療成績などからみた根症状の分析についての発表と討論が行われた.
 山田(慶大)は椎間板造影によって誘発される腰下肢痛を術前の症状,術中の局所所見などと対比した結果から,造影剤注入時の下肢痛の発現は神経根の被刺激性や変性度を反映するものであるとの考えを述べ,根症状の発現機序を理解する上で椎間板造影が有用な補助診断法であるとした(本号掲載論文参照).

座長総括/「Ⅶ.椎間板ヘルニア(3)」の部

著者: 酒匂崇

ページ範囲:P.358 - P.359

 初めの二つの演題は,高齢者の椎間板ヘルニアによる腰仙部根症状についての発表である.持田(東海大大磯病院)は高齢者のヘルニアは腰部脊柱管狭窄症と症状が類似しており,混同されやすいことより,Love手術症例54例に再検討を加え,症状の特徴,発症機序を論じた.高齢者では,若年者に比し椎間板変性の程度は軽度のものがあり,L5-S1間が多く,腰部脊柱管狭窄に類似した症状を呈するものがある.手術所見は,ヘルニアによる神経根の圧迫,緊張が見られず,神経根の著明な緩みのみられる症例がかなりあり,手術後症状の改善をみたことより,神経根自体の加齢による変化すなわち神経根自体の易損性が存在するものと推測している.
 田村(城西病院)は,80歳以上の高齢者における腰仙部根症状の発症機序について,8例の検索を行い発表した.手術内容は,椎弓切除術が主で,8例中4例に椎間板ヘルニアによる圧迫を認め,椎間板が症状発現に大きな比重を占めると強調した・佐藤(新庄病院)より高齢者の手術に当ってはリスクが高く,手術適応の決定について質問があり,高齢者であっても神経根の除圧やヘルニア摘出を行えばよい結果が得られるので,積極的に演者は手術をすすめる考えのようである.

座長総括/「Ⅷ.一般(2)」の部

著者: 大井淑雄 ,   井上駿一

ページ範囲:P.359 - P.361

 蓮江光男会長の手腕もさることながら脊椎外科研究会の演題数,内容共に年々非常な勢いで盛んになって来ていることを感じる.欧米での国際学会のそれに比較して内容は十分対抗できるだけの高度のものが少なくないことは喜ばしい限りである.小生が司会させていただいた8題の演題のうち4題が掲載論文となったがその他の4題も決して特別劣っているわけではなく,紙数に余裕があればすべて掲載していただいても可とも言うべき内容である.
 まず大澤(東京厚生年金病院)は頸髄症患者がしばしば多彩な腰部症状を合併しているのに着目し,その症状の責任病巣決定や症状分析の一助を目的として腰部ミエログラムを検討した.たしかに頸椎であろうと腰椎であろうとやはり一本の連結せる脊柱であり,その中に含まれる脊髄や馬尾が相互の病変に作用を及ぼし合うことは納得できる.欧米では部位別の学会を形成しているのであるが本邦では脊椎外科として一本にまとまっており,かかる研究の出ることを見通していたとも考えられる.症状により圧迫に対する閾値は異なっており,下肢痛,知覚異常などは閾値が低く軽度の圧迫でも発症するが,間厥性跛行,筋力低下などは閾値が高くかなり高度の圧迫で発症するというものであった.中原(岡山大)の頸髄症にmaskされた腰下肢痛の鑑別や発生機序についての質問に対し,シビレや痛みの性質の差をあげて答えた.

座長総括/「Ⅸ.脊柱管狭窄(1)」の部

著者: 竹光義治

ページ範囲:P.362 - P.363

 本Sessionでは主として腰部脊柱管狭窄症の病態と診断面での最近の進歩について興味ある発表と討議が行われた.
 広藤(近畿大)はMCTを用い各高位における骨性脊柱管,外側陥凹の断面積に対する硬膜管と神経根の占拠率を計測,ヘルニアを対照として症状との関係を検討した.LSCSではその占拠率が大きく発症には発育性狭小化より椎間部での変性因子の影響が大きいと述べた.これに対し,佐野(三楽病院)は外側陥凹の範囲とCT上での軟部読影の問題点を指摘,城戸(山口大)は,同一面積でも脊柱盆管の形態で圧迫態度は異なると思うが占拠率と圧迫程度は相関したか,との質問があった.佐野に対する回答は省略.城戸に対して,厳密に言えば形態も問題であるが椎弓根下高位で見れば余り差はなく発症機序に関しては占拠率の意味する所が大きいと述べた.今後dynamic factorを入れた上での検討も望まれた.

座長総括/「Ⅹ.脊柱管狭窄(2)」の部

著者: 片岡治

ページ範囲:P.363 - P.365

 本セッションには主として腰部脊柱管狭窄症(以下LSS)の特殊型の発症機序を論ずる演題が集められている.すなわち,X-53とX-54は側彎を合併したタイプ,X-55とX-56の2題は外側型LSSであり,さらにX-57は椎間孔外の神経根障害という特殊型である.
 この5題を上記の3型別に3項にわけて,まず発表要旨を記し,著者の意見を含みながら討論内容を紹介する.

座長総括/「Ⅺ.間欠跛行」の部

著者: 金田清志 ,   辻陽雄

ページ範囲:P.365 - P.367

 本セクションでは腰部脊柱管狭窄症の主要症状である間欠性跛行について発表が10題あった.解剖学的研究が山岸(防衛医大)と渡辺(平塚市民病院)の2題あり,前者は正常人の脊髄—馬尾神経の動静脈分布を観察し,その解剖学的特徴から,腰部脊柱管狭窄症の病態を検討し,馬尾は分節的に一定の太さの動脈分布がみられるのに対し,静脈系は硬膜外静脈叢の障害により馬尾あるいは神経根のうっ血が惹起され,神経の機能障害を招来する可能性の大きいことを述べ,静脈系のうっ血と間欠性跛行の関係を示唆した.山岸,渡辺の両者の発表は採用論文となっているので参照されたい.山岸の発表に駒形(東京医大)から硬膜外静脈造影で硬膜内の根静脈は逆行性には造影されないが,root sleeveに弁様の機構が存在するのかとの質問に,明らかな弁はないが硬膜が弁様作用をしていると述べた.渡辺に対して河合(城北病院)から障害部位とその中枢部での神経根内神経線維の数と大きさのヒストグラムを比較しているのかとの質問には,ヒストグラムは作ってない.生前に電気生理学的検索はしていないとのことであった.増田(鹿児島大)は犬で末梢神経刺激により神経根の血流量の変化を水素クリアランス法で測定した結果を報告した.まだその結果の意義づけがなお今後の検討を要するが,手技に関する質問が出沢(千葉大)からあった.採用論文であるので参照されたい.

腰仙部根症状の多様性に関する解剖学的考察

著者: 工藤修 ,   原田征行 ,   近江洋一 ,   末綱太

ページ範囲:P.369 - P.378

 抄録:腰仙部根症状の多様性の原因として,いくつかの形態学的異常が考えられるが,そのうちもっとも基本的変化と考えられる分岐神経N. furcalisと椎骨の分節異常との関連を成人89体178側について解剖学的,組織学的に調査し,あわせて臨床症例についても報告した.
 分岐神経が通常のL4に存在する例は139側,78%に認められたが,L4より腰仙骨神経幹を経て仙骨神経叢へ加わる神経線維数すなわち腰仙骨神経幹の太さには極めて太い前置型13%と極めて細い後置型14%が存在し,両者の間にはおよそ1分節に近い脊髄髄節のずれがあると考えられた.

腰部疾患に起因する疼痛の発現機序—神経伝達物質の立場より

著者: 正木国弘 ,   井形高明 ,   加藤真介 ,   松村光博

ページ範囲:P.379 - P.385

 抄録:腰仙椎に起因した神経根症状を有する腰椎椎間板ヘルニア(LDH)13例および腰部脊柱管狭窄症(LSS)12例について,疼痛の発現機序と神経伝達物質との関連性を検討した.神経伝達物質測定の検体は,myelography施行時に採取した脳脊髄液であり,1mlあたりトラジロール500KIUおよびEDTA 1.2mg入れた試験管に採取した.脳脊髄液中のβ-エンドルフィン様免疫活性(β-END-LI)およびサブスタンスP様免疫活性(SP-LI)は,radioimmunoassayにより測定した.β-END-LIの平均基礎値は,LDH 17.2pg/ml,LSS 16.0pg/mlであり,健常例2.16pg/mlに比較して高値であった.一方,SP-LIの平均基礎値は,各々6.96pg/ml,6.31pg/mlと健常例2.85pg/mlに比較し,約2.5倍の増量がみられた.以上の神経伝達物質の高値は,腰部疾患(特にLDH,LSS)の疼痛発現機序に関与していることが示唆された.

腰仙部根症状の発症に関する電気生理学的考察

著者: 藤田泰宏 ,   山本博司 ,   谷俊一 ,   山下弘 ,   西山徹 ,   野口政隆

ページ範囲:P.387 - P.391

 抄録:腰仙部根症状の発症機序を明らかにするため,腰部脊柱管狭窄症30例,腰椎椎間板ヘルニア19例,腰椎分離症7例に馬尾神経電位,神経根電位による神経根機能診断を術中に行った.大腿神経,腓骨神経,脛骨神経をそれぞれ刺激し,術野展開後,各レベル黄色靱帯より馬尾神経電位を,除圧後神経根上より神経根電位を記録した.神経根電位では,導出電極の位置を神経根圧迫部の近位より遠位に移動させ,伝導障害の局在性を調べた.障害根診断率は馬尾神経電位にて84.6%,除圧後の神経根電位にて85.3%であった.伝導障害局在群の知覚および筋力改善率は,術後4.3カ月の時点でそれぞれ88.3%,77.4%であったのに対し,伝導障害非局在群では,64.8%および34.8%であった.本法による神経根機能診断は,障害根の診断のみならず神経根の障害程度を知る上で有用と思われる.

Hip-Spine Syndrome

著者: 江原宗平 ,   斎藤正伸 ,   米延策雄 ,   西塔進 ,   藤原桂樹 ,   山下和夫 ,   仁科哲彦 ,   小野啓郎 ,   山本利美雄 ,   門脇徹 ,   浜田秀樹 ,   久保雅敬

ページ範囲:P.392 - P.399

 抄録:腰痛・下肢痛を主訴とし,股関節と腰椎の双方に疾患を合併する場合に股関節あるいは腰椎のいずれを治療するべきか判断に苦慮する.その点を明らかにするために変股症を中心とする股関節疾患に腰痛を伴う28例と腰仙部根症状を伴う25例並びに対照群として腰痛・腰仙部根症状のない変股症16例を検討し以下の結果を得た.腰痛・腰仙部根症状例の股関節は対照群と比べて屈曲・内転拘縮の強い進行期〜末期変股症が多く,また画像上,腰椎に多くの疾患因子を認めた.中でも腰仙部根症状例では12例に腰椎辷り症を12例に脊柱管狭窄症を認めた.人工関節置換術後これらの腰痛・腰仙部根症状は著明に消失した.以上のことから股関節疾患が腰椎に影響を与えて腰痛・腰仙部根症状を発生したと考えられ,Hip-Spine Syndromeの治療は股関節から開始するべきであるといえた.逆に股関節からの影響を除くことにより腰仙部根症状が消失したことから腰仙部根症状の治療において椎間関節切除などの神経根の除圧術以外の治療方法の可能性も考えられた.

腰椎辷り症における神経根障害の病態—術前検査,術中所見と術後成績からの検討

著者: 斉田通則 ,   金田清志 ,   鐙邦芳 ,   倉上親治 ,   風間昶 ,   白土修 ,   高橋洋行 ,   浅野聡 ,   成田豊 ,   藤谷正紀 ,   樋口政法

ページ範囲:P.401 - P.409

 抄録:神経根障害を伴う腰椎分離辷り症と変性辷り症で,手術治療を行った112例を対象に,神経根障害の病態を検討した.分離辷り症では,分離部中枢端のbony ragged edgeによる椎間孔の骨性狭窄と,分離辷り椎間の不安定性が原因であった.また,分離部のfibrocartilaginous massも神経根圧迫の増悪因子と考えられた.変性辷り症では,椎間不安定性と,変性肥大した椎間関節によるlateral recess stenosisが神経根障害の原因であったが,時にcentral stenosisも伴っていた.これら神経根障害に対する除圧術は,分離辷り症では分離部中枢端のbony ragged edgeとfibrocartilaginous massの切除を,変性辷り症では変性肥大した椎間関節内側1/3を切除するmedial facetectomyが最も優れた方法である.

圧迫変形をうけた腰神経根の理論的応力分布の特性と神経根除圧の考え方について

著者: 辻陽雄 ,   豊富誠三

ページ範囲:P.411 - P.416

 抄録:腰椎椎間板ヘルニアによって圧迫された神経根の根内応力分布がどのようになりうるかを推測するため,単純な理論モデルをもとに計算式を立て,それに基づいて神経根除圧の基本的理念に考察を加えた.また,高齢者腰椎椎間板ヘルニアにたいするヘルニア腫瘤非摘出後方除圧術の成績を検討し,それら応力分布理論とその手術理念の妥当性につき考察した,ヘルニア腫瘤には根の圧迫変形を弾性限界内での均一円柱棒と仮定した理論解析から,内部応力分布は基本的に歪みの曲率半径に反比例し,Young率に比例すると考えられ,かつ,中立面を中心として,変形の凸側では伸張力,凹側では圧縮力が発生し,これが外的圧迫力との合成により複雑な方向への内部応力分布を示すのではないかと類推された.これから,若壮年層と根弛緩を有する高齢者ヘルニアとでは,根除圧の考え方が異なることにつき論じた.

腰椎椎間板ヘルニアのKemp徴候発現機序のCT像による検討

著者: 久野木順一 ,   佐野茂夫 ,   増田彰男 ,   宮下裕芳 ,   友山真 ,   堀中晋 ,   吉川宏起

ページ範囲:P.417 - P.422

 抄録:腰椎椎間板ヘルニアにおけるKemp徴候の発現機序を知るため,本症125例につきKemp徴候の有無と単純CT所見とを比較検討した.終板直下のCT画像のうち脊柱管と外側陥凹の形態,神経根絞扼の有無に注目した.
 125例中53例(42%)でKemp徴候は陽性であった.本徴候の発現頻度は終板直下高位におけるCT像と有意の相関があり,ヘルニアと後方骨性要素とによる神経根絞扼例では高率であり特にクローバ型脊柱管では高率であった.

腰部椎間板ヘルニア神経根症状の椎間板造影による検討

著者: 山田久孝 ,   若野紘一 ,   里見和彦 ,   平林洌

ページ範囲:P.423 - P.428

 抄録:腰部椎間板造影法は,造影像により椎間板側の状態を,造影剤注入時の下肢放散痛により神経根側の状態を把握する事が可能である.今回我々は,手術によって確認した腰部椎間板ヘルニア50例,53椎間について,椎間板造影による注入時下肢痛の発現率と神経根症状との関連を調査し,造影所見および手術所見を参考として,疼痛の発現機序を検討した.SLRの程度と運動,知覚障害の有無によって,注入時下肢放散痛の発現率に有意な相関がみられた事から,注入時下肢痛は神経根のirritabilityと軽度のdegenerationを反映すると考えられた.ヘルニア形態では,protrusion型に対して,prolapse型での発現率が有意に高く,ヘルニアの突出状態も注入時下肢痛の発現に大きく関与すると考えられた.しかし椎間板の変性度および椎間高位による発現率には有意差は認められなかった.椎間板のみならず,神経根の病態をも同時に把握できる椎間板造影法は,神経根症状の発現機序を理解する上でも有用な補助診断法と言える.

経皮的髄核摘出法の効果からみた腰仙部根症状の発症機序

著者: 土方貞久

ページ範囲:P.429 - P.436

 抄録:ヘルニア腫瘤自体には手をつけず,椎間板内圧の低下により症状の軽減を果たすとする経皮的髄核摘出法の経験から,ヘルニアにおける腰仙部根症状の発症には椎間板側と神経根側の両者の因子があり,前者では内圧と根直下の腫瘤が,後者ではその感受性が問題となり,その相対関係により,発症,軽快の消長をみると思われる.すなわち椎間板内圧の高低,腫瘤の大小,位置と神経根の易刺激性(炎症,変性,老化)などが発症に関与しよう.
 このように考えるとき,ヘルニア治療にさいしては,腫瘤のみでなく,椎間板内圧,神経根や疼痛受容体,さらには後方組織の状態などを勘案して,その発症機序を考察し,治療法の選択順位を決めるべきであろう.

高齢者腰部椎間板ヘルニアにおける神経根の状態について

著者: 持田譲治 ,   有馬亨

ページ範囲:P.437 - P.443

 抄録:55歳以上の腰部椎間板ヘルニアLove法施行症例の検討から,高齢者の本症の診断pointとその病態,治療法についてまとめた.
 結果:①腰痛,下肢痛,tension signが軽度で片側下肢に不定な愁訴を有するmasked clinical signの型が2/3を占め,高齢者例の特徴と言える.②知覚,筋力の他覚所見の改善は悪いが,自覚的な不定の下肢症状の改善が良好である.③ヘルニア形状はextrusionとsequestrationが35%と多く,高齢者椎間板症におけるbulgingとは明らかに異なっていた.また,24%の症例で神経根の著明なゆるみを認めた.

腰部椎間板ヘルニアによる下垂足

著者: 山本利美雄 ,   原田憲正 ,   太田信彦 ,   小野啓郎 ,   米延策雄 ,   江原宗平

ページ範囲:P.445 - P.452

 抄録:腰部椎間板ヘルニアによって発症した下垂足例19例について,症状.手術時所見・手術成績について検討した.L5神経根は全例で関与していた.L4/5椎間板のヘルニアによる例が15例でこのうち10例が単一レベルのヘルニアであり,残り5例がL3/4(3例),L5/6,L5/Sとの二椎間ヘルニア例であった.L3/4またはL4/5における馬尾圧迫型のヘルニアが3例含まれるがこのうち2例は完治していた.第6腰椎を有する3例ではいずれもL6神経根が関与していた.
 手術成績はexcellent:6例,good:7例,fair:2例,poor:4例と不良例が多い.予後に影響する要素は明らかにできなかったが,中年・女性・下肢激痛・強度の筋力低下・複数根の障害などの要素が不良例に重複して認められた.

脊柱管内へ遊離脱出した腰椎椎間板ヘルニア—その局在と神経根症状に関する考察

著者: 藤谷正紀 ,   樋口政法 ,   金田清志

ページ範囲:P.453 - P.460

 抄録:1978年3月より1986年1月までに当院で手術を必要とした腰椎椎間板ヘルニアは339例である.このうち術中に確認し得た脊柱管内遊離脱出ヘルニアは58例(17.1%)である.Migrated herniaの局在,Migrationの方向および障害神経根の関係について検討した.
 ヘルニア高位はL3/4・3例,L4/5・29例,L5/S1・26例である.Migrationの方向は頭側・15例(26%),尾側・36例(62%),頭尾側・1例(2%),外側(椎間孔)・6例(10%)であるが,L5/S1ではむしろ頭側へのmigrationが多い.障害神経根はL4・5例,L5・26例,L5/S1・16例,S1・10例,その他・1例である.Migrationの方向が頭側か尾側かの区別すなわち罹患椎間板の決定は,myelographyのみでは診断できないことが多い.椎間板高位のCT所見が一般に有用である.しかしCTでnormal disc marginを示す例が3例,false negativeが1例あり,このような場合にはdiscographyやradiculographyが必要である.

上位腰椎椎間板ヘルニアの神経症状

著者: 藤村祥一 ,   小柳貴裕 ,   下村哲史 ,   星野達 ,   川久保誠 ,   高山真一郎 ,   赤坂勁二郎

ページ範囲:P.461 - P.469

 抄録:上位腰椎椎間板ヘルニアの神経症状の特徴とその発症機序を検討するために,本症の38手術例の神経症状とX線所見について,下位腰椎椎間板ヘルニアの390手術例と対比した.
 上位腰椎椎間板ヘルニアの神経症状はL1-2,L2-3では膀胱障害,歩行障害,SLRT弱陽性,FNST陽性,PTR低下・消失,大腿前面以下の知覚障害,腸腰筋・大腿四頭筋以下の筋力低下など,L3-4ではSLRT強陽性,FNST陽性,PTR低下・消失,下腿内側から第1趾内側の知覚障害,大腿四頭筋・前脛骨筋の筋力低下などが特徴的である.しかも上位2椎間では馬尾症状が高率にみられるが,L3-4では下位2椎間と類似し,神経根症状が多く,上位腰椎椎間板ヘルニアの発症機序は上位2椎間とL3-4において差異が認められた.

CT-myelographyを用いた腰椎椎間板ヘルニアにおける馬尾像の検討

著者: 高田啓一 ,   井上駿一 ,   高橋和久 ,   大塚嘉則

ページ範囲:P.471 - P.477

 抄録:CTの分解能の向上に伴い,CT-myelographyによる馬尾の観察が可能となった.今回我々は,CT-myelographyを用いて29例の腰椎椎間板ヘルニア症例の馬尾像を観察した結果,17例に馬尾レベルでの当該神経根の腫大を認めた.
 これらの17例は,すべて強い坐骨神経痛を訴えていた.一方,坐骨神経痛が軽い症例では,腫大神経根は認めなかった.馬尾の腫大は,除圧手術により症状の消退とともに経時的に正常化した.

腰部神経根症状を示す神経根圧迫の形態的分析

著者: 田島健 ,   山川浩司 ,   坂本隆彦 ,   岩瀬育男 ,   菊地義文 ,   岡亨 ,   鈴木信 ,   中山博晶 ,   山下滋 ,   村上和也 ,   斉藤昭

ページ範囲:P.479 - P.488

 抄録:腰部神経根症状を示す,椎間板ヘルニア287例,脊柱管狭窄71例の手術所見と神経根造影所見(陽性像のみ)より,その造影所見の形態的分析を行った.造影所見の分類として,圧迫されている部位,形,強さより,1.正常像,2.停止または中断像,3.圧排像,4.部分陰影欠損像,5.走行異常像,6.不整像の6つに分類した.また位置関係として,神経根分岐高位より椎間孔を出たところまでを中枢部,中間部,出口部の三部分に,それ以下を末梢部とし四部分に分けた.
 椎間板ヘルニアでは神経根造影と手術所見の一致率は88%であった.脊柱管狭窄では,その一致率は92%でありいずれも神経根圧迫の形態をよく反映していた.

腰仙部根障害と椎骨静脈造影所見—とくに馬尾性間歇性跛行の病態に関して

著者: 駒形正志 ,   三浦幸雄

ページ範囲:P.489 - P.500

 抄録:腰仙部根障害の病態のなかで,血管性因子の関与について,腰椎椎骨静脈叢の造影所見の面から検討した.症例は腰椎疾患110例で,腰部脊柱管狭窄症63例,腰椎椎間板ヘルニア32例,変形性腰椎症10例,他5例である.
 結果:①腰部脊柱管狭窄症においては,他の腰椎疾患と比べ,内椎骨静脈叢により広範囲な欠損像が認められる.②臨床症状と造影所見との比較では,根症状としては理解しにくい広い範囲に症状を訴えるものに広範囲な内椎骨静脈叢の欠損がみられる.③欠損の程度と跛行時間との間に相関が認められる.④狭窄症例では,腰椎の前後屈,荷重など,姿勢の変化により椎骨静脈叢の造影所見は著明に変化し,この傾向は他の腰椎疾患では,はるかに少ない.⑤Cine-phlebographyを行い,内椎骨静脈叢は姿勢の変化により,秒単位の極めて短時間に静脈循環に変化が生ずることが確認された.⑥狭窄症例のなかには,椎骨静脈造影後数日間症状の軽快をみたものがある.⑦術前術後の比較では,laminectomyなどにより術後症状の軽快とともに,内椎骨静脈叢の造影所見に全例,改善がみられた.

腰神経根部クモ膜炎(Lumbar Radicular Arachnoiditis)の臨床的検討

著者: 田口敏彦 ,   ,  

ページ範囲:P.501 - P.505

 抄録:腰神経根部に限局する特異なクモ膜炎をlumbar radicular arachnoiditisと称し,その臨床的特徴および病態について報告する,症例は,1975年から1985年の問にWellesley Hospital整形外科で経験した69例である.本症の典型的な症状は,非常に強いmuscle crampsと下肢痛である.症状が強いわりには,神経学的所見が乏しいために,しばしば心因性障害として治療を受けている.診断は,1)特徴的な臨床症状,2)サイオペントン疼痛試験,3)神経根ブロック,4)脊髄鏡検査によって行い,その病態を手術時所見で確認する.本病態は,神経根部でのクモ膜下腔の閉塞により,脳脊髄液からの神経根への栄養が障害されているためと考えている.このため,脳脊髄液の循環をよくする目的で,神経根部の硬膜切開を行い,同部に遊離脂肪移植を行った.本病態は決してまれなものではなく,multiply operative backと言われるものの中にも,本病態を考慮すべきものがあると思われる.

脊髄鏡による癒着性クモ膜炎の診断—腰部脊柱管狭窄症における手術成績不良例の検討

著者: 三田冨士雄 ,   佐藤悠吉 ,   須永明 ,   大井淑雄

ページ範囲:P.507 - P.513

 抄録:腰部脊柱管狭窄症の治療は椎弓切除術に代表される除圧手術が広く行われ,良い成績を得ている.しかしながら,手術成績不良例の存在も見逃すことはできない.その原因としてlateral spinal canal stenosisやpostoperative instabilityが注目され,これに対応した手術が行われるようになってきた.癒着性クモ膜炎の占める割合も高く,Burtonは16%であったと報告している.従来より癒着性クモ膜炎の診断には脊髄腔造影術が有用であるといわれていたが,診断には困難なことは少なくない.われわれは癒着性クモ膜炎の診断に脊髄鏡を応用しているが,本法は直視下に病変を観察することにより微細な変化をもとらえる利点を有しており,本疾患の診断には優れた検査法であると考えている.
 multiply operated backを避ける上からも癒着性クモ膜炎の存在を確認することは重要なことであり,脊髄鏡検査法の有用性は高いと考えている.

誘発馬尾神経電位による腰部脊柱管狭窄症の電気生理学的診断

著者: 四宮謙一 ,   古屋光太郎 ,   佐藤良治 ,   佐藤雅史 ,   岡本昭彦 ,   佐藤浩一 ,   小森博達

ページ範囲:P.515 - P.521

 抄録:腰部脊柱管狭窄症は臨床症状ならびに脊髄造影を含めたX線学的所見により診断をつけられている.しかし神経の生理的機能障害の表現である神経症状を示すこの疾患を診断するためには,神経生理学的所見を捕えることが重要である.そこで腰部脊柱管狭窄症15例を含む腰椎疾患24例について誘発馬尾神経電位(Evoked Cauda Equina Potential,ECEP)を導出し臨床的な術前検査として応用した.方法は仙骨裂孔から刺激,ならびに記録のカテーテル電極2本を挿入し,刺激を仙椎硬膜外に設置し,上行する誘発馬尾神経電位を腰椎硬膜外の各高位に設置した記録電極から導出するものである.誘発馬尾神経電位は50〜60mの速度で伝導する陰性波として記録できたが,対象症例24例中17例に馬尾神経伝導障害を認めた.高度腰部脊柱管狭窄例では全例に馬尾神経伝導障害があり,その症状発生に大きく関与していると考えられた.

血管系よりみた腰部脊柱管狭窄症の発症機序

著者: 山岸正明 ,   ,  

ページ範囲:P.523 - P.528

 抄録:新鮮屍体の脊髄円錐,馬尾および神経根の動静脈分布と形態を観察し,腰部脊柱管狭窄症の症状発現の機序を検討した.動脈系は馬尾および脊髄円錐部で豊富で,その分布は分節的であり,また,馬尾の全長にわたって根動脈が伴走し,water-shedといえる様な部分は認められなかった.静脈系では硬膜内静脈は遠心性に脊柱管内静脈叢へ灌流する.硬膜部に弁様作用が存在し逆流はし難い.また,脊柱管内の神経根も静脈叢への豊富な灌流静脈を有する.以上より,物理的圧迫に弱い脊柱管内静脈叢の灌流障害により,硬膜内のうっ血が惹起され,神経組織のanoxiaが招来され,馬尾性間欠跛行の症状発現に至ると考えた.

腰仙部神経根の血管及び神経について—その解剖と変性辷り症の病理

著者: 渡辺良 ,  

ページ範囲:P.529 - P.539

 抄録:神経根に対しての機械的圧迫,圧迫による神経炎,神経の血行が腰仙部変性疾患の症状発現に関与している事実は長い間論じられてきた.しかしその解剖及び病理に関する記載は少ない.我々は,ヒト屍体を用いてその神経及び血管について解剖学的観察を行った.また,観察中遭遇した変性辷り症の例について病理学的観察をした.神経根の神経はニューロンの概念でいえば末梢神経であるが,解剖学的には神経索である.神経根内の血管は中枢神経における形態に近い.腰仙部では神経根の長さは10数cmに及ぶので,動静脈吻合などの合目的な保護機構がみられる.辷り症例では,神経の絞扼,神経線維の減少,脱髄,軟膜クモ膜の癒着などのほか,動脈コイルの狭窄部での消失,静脈うっ血,動静脈吻合の発達など血管病変がみられた.圧迫による神経の機械的,化学的被刺激性の高まりに加えて動静脈吻合による急激な血流の変化が間歇跛行の発現に関与する様に推察された.

腰部神経根の血流量測定に関する実験的研究

著者: 増田明敏 ,   米和徳 ,   上原裕史 ,   前原尉 ,   川越勝秀 ,   砂原伸彦 ,   中川雅裕 ,   酒匂崇 ,   前田實行 ,   岸本浩

ページ範囲:P.541 - P.545

 抄録:脊髄あるいは末梢神経の血流量に関してはこれまで種々の報告がみられるが,神経根の血流量に関する報告は未だみられない.著者らはイヌを用い,水素クリアランス法にて腰部神経根の血流量を測定し,また末梢神経電気刺激,ステロイドの硬膜外投与による神経根の血流量の変化も併せ測定したので報告する.
 イヌの第6腰神経根血流量は平均22.3±10.2ml/100g/minであった.また,坐骨神経電気刺激による腰部神経根血流量の変化では,刺激条件により種々の変化が認められたが,周波数50Hz,電圧0.5V,パルス幅1msecの条件で刺激開始15分後に34.6%の血流量の増加がみられた.その機序に関しては今回解明するにはいたらなかったが,自律神経系や心臓血管中枢などに関与していると考えられる.

立位負荷腰静脈造影所見よりみた馬尾性間欠跛行の発症機序について

著者: 大村文敏 ,   中川俊 ,   松尾博由 ,   山口淳一 ,   藤原淳 ,   白井康正

ページ範囲:P.547 - P.554

 抄録:腰部脊柱管狭窄症に特徴的な症状とされる馬尾性間欠破行は馬尾の圧迫により起こるとされているが,その発現機序は未だ明らかではない1,5,6,9,11,13,16)〜18).本症状は歩行や長時間の起立に際して発症するもので,従来臥位のみで行っていたepiduralvenographyを立位で行うことは硬膜外腔における静脈循環動態をより反映すると考えられる.
 臥位venogramよりも立位venogramでは硬膜外静脈叢のvenous fillingは低下し,これはvenous returnの悪化を意味する.さらに立位でも腰椎前屈位よりも後屈位の方がvenous returnは悪化しており,この所見は間欠跛行の高度なものほど顕著であった.またこれらの変化はreversibleであり,間欠跛行が休息或いは姿勢変化により消失することで理解される.腰部脊柱管狭窄症では硬膜内外のvenous stasisが起こっており,馬尾のvenous ischemiaが症状発現に関与しているものと推測される.

馬尾性間欠跛行の発症機序—選択的脊髄動脈造影・注入所見を中心に

著者: 菊地臣一 ,   蓮江光男

ページ範囲:P.555 - P.559

 抄録:馬尾性間欠跛行を呈した5例(変性すべり症3例,脊椎症2例)と混合性間欠跛行を呈した4例(変性すべり症3例,脊椎症1例)を対象として,選択的脊髄動脈造影を行い馬尾性間欠跛行の発症機序を検討した.結果は以下のとおりである.1)脊髄造影で異常所見を呈している高位が必ずしも神経学的異常を惹起しているとは限らない.すなわち,機械的圧迫因子の存在が間欠跛行の発症には直結していない.2)馬尾性間欠跛行は選択的脊髄動脈造影・注入手技で一時的に消失.軽快する.このことは馬尾性間欠跛行の発症に馬尾の血管系が関与していることを示唆している.3)神経根性間欠跛行に対しては選択的脊髄動脈造影・注入手技は治療効果はない.しかし,選択的神経根ブロックで跛行は一時的に消失する.この二つの事実は神経根性間欠跛行の発症因子は神経根周辺に存在することを疑わせる.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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