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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科22巻5号

1987年05月発行

雑誌目次

巻頭言

第2回日本整形外科学会基礎学術集会を開催するにあたって

著者: 榊田喜三郎

ページ範囲:P.563 - P.564

 日本整形外科学会では永年の懸案であった学術集会の春秋2回への分離が決定し,昨年8月末から9月初にかけて第1回基礎学術集会として金沢大学野村進教授の主催により発足をみました.津山東大名誉教授による基礎学術集会の分離についての基調講演に始まり,シンポジウム2題,パネル・ディスカッション11題,円卓討議10題,教育研修講演9題のほか一般演題215題で計348題の多数におよび,参加者も1200名余を数え,予想を凌ぐ充実した学会で盛会のうちに終了しました.ことに「関節破壊,その機序」と「特発性大腿骨頭壊死症の病因」のシンポジウムは現在整形外科領域で最も注目されているところで,限られた時間内では到底十分な討議をつくし得ないものでありました.基礎学術集会分離の経緯からできるだけ整形外科領域の非会員の方々にも参加していただくことと,基礎関連領域の研究会を集結する考えから同時開催が呼びかけられ,その結果,整形外科バイオメカニクスと整形外科インプラント研究会の2つが基礎学術集会の前後および会期内に組込まれて開催されました.

論述

ステロイド性大腿骨頭壊死

著者: 増田武志 ,   松野誠夫 ,   松野丈夫 ,   長谷川功 ,   菅野大己 ,   山口秀夫

ページ範囲:P.565 - P.572

 抄録:当科における214例の特発性大腿骨頭壊死のうち,ステロイド性は96例であった.発症頻度を性別でみると,男性が50人,女性が46人であり,発症年齢の分布は20代にピークがあり,30代以降漸次減少していた.両側罹患率は71%であった.基礎疾患としてはSLEが31人と最も多く,腎疾患,肝疾患,血液疾患と続いている.これらステロイド性骨頭壊死のX線学的特徴を検討すると,興味深い関係がみられた.すなわち,壊死範囲の小さいものは初期徴候として骨硬化像を示すものが多く,一方,範囲の大きいものは修復反応が明らかになる以前に,軟骨下骨質の骨折等が生じ,関節面不整像を呈する例の多い傾向が認められた.ステロイド性骨頭壊死は一般に壊死範囲も大きく,正常骨との境界部における修復反応が乏しい例が多く,これらの症例に対しては早期診断法として,骨シンチグラフィーが有効であると考えられる.

大腿骨転子間内反骨切り術における内方移動の効果

著者: 鷲見正敏 ,   司馬良一 ,   廣畑和志

ページ範囲:P.573 - P.579

 抄録:[目的]大腿骨転子間内反骨切り術(以下内反骨切り術)における遠位骨片内方移動の股関節症に対する効果について検索した.[対象]5年以上22年(平均10.5年)の追跡調査を行った内反骨切り術の中から内方移動を行わなかった12関節と1cm以上行った44関節を対象とした.[方法]日整会評価での改善点数(調査時と術前の差),X線像では骨頭の臼による被蓋の程度,みかけの頸体角,圧縮骨梁中心線と垂線のなす角について検討した.[結果]内方移動1cm以上の群での改善点数は内方移動0cmの群より低かった.骨切り術の結果を左右する他の因子(年齢,病期,術後年数,被蓋度)に差はなかったが,内方移動1cm以上の群では頸体角の増加・圧縮骨梁の垂直化がみられた.[結語]内反骨切り術において内方移動を大きく行う(1cm以上)と,長期的には頸体角の増加・圧縮骨梁の垂直化をきたし,内反効果が減少すると考えられる.

Methotrexateとcis-platinumの臨床薬物動態と骨肉腫のNeo-Adjuvant療法

著者: 佐々木邦明 ,   村上正 ,   松岡初文 ,   藤本孟男 ,   小野田卓夫 ,   丹羽滋郎 ,   原一夫

ページ範囲:P.581 - P.589

 抄録:Methotrexate(MTX)とcis-platinum(CDDP)の臨床薬物動態に基づく骨肉腫のNeo-Adjuvant療法の成績について報告した.MTX超大量療法(300mg/kg)では,血中MTX濃度は7×10-4Mに達した.血中濃度の消退パターンは2相性で,CF救助療法を9時間目より併用する事により,臨床毒性は軽微であった.CDDP120mg/m26時間持続静注時の血中総CDDP濃度は,8μg/mlで,30〜40%が活性型の遊離CDDPであった.遊離CDDPは半減期は50分で血中より速やかに消失するため,腫瘍細胞に薬剤を充分時間接触させるには持続静注が必要と考えられた.
 9例の骨肉腫患児を対象として,Neo-Adjuvant療法のパイロット研究を行った.術前のHD-MTXには2例が著効(Grade III,IV)し,3例に有効(Grade II)で,4例は無効(Grade I)であった.7例で患肢温存手術を行った.術後は術前HD-MTXの効果を指標として,有効例(Grade IV,III)にはMTXを,無効例(Grade II,I)にはCDDPを中軸にしたadjuvant療法を行った.HD-MTXにGrade II以上の反応を示した5例全例とGrade Iの1例は術後9,12,28,37,52,60カ月間disease freeで生存している.

シンポジウム 人工膝関節の長期成績

マーマー型片側置換術

著者: 立石博臣 ,   丸岡隆 ,   楊鴻生

ページ範囲:P.591 - P.596

 抄録:片側型人工関節はSt Georg型(1969),Marmor型(1972)が使用されて以来15年を経過している.欧米では当初人工関節のlooseningによるリビジョンが数多くなされたため,このタイプの人工関節そのものに対する否定的な意見が多かった.しかし人工関節の形状や材質の改善,高齢者の片側型OAや特発性骨壊死などに適応を限定したため,満足例が85%前後の良好な成績をあげている報告が多くなっている.我々は昭和52年以来,片側型OAに対してMarmor型片側置換術を行い,今回5年以上経過した12症例(13関節)を追跡調査することができた.13関節中ll関節では疼痛は殆んど消失し,屈曲角度も110度をこえ患者も満足している.手術手技でもっとも大切なことは脛骨面の骨切り,術後のFTAが十分矯正されていることであり,適応を体重の軽い,片側型OAで屈曲拘縮や内(外)反変形の強くないものに限定すれば良好な術後成績が得られるものと思われる.

トータルコンディラー型人工膝関節の経験

著者: 上尾豊二 ,   山室隆夫 ,   奥村秀雄

ページ範囲:P.597 - P.602

 抄録:昭和53年以来昭和61年4月までのtotal condylar型人工膝関節手術症例57例77関節について臨床成績を検討した.さらにレ線的に手術の正確度を判定し,臨床成績との関連性を検討した.術前の関節状態が術後の成績にどのような関連を持っているかについても検討した.膝関節評価表による術前の点数は平均40点であり,術後が平均76点である.平均29カ月の経過で評価点数は低下していない.可動域を除いて疼痛,歩行能力等全ての項目で著明な改善を得ている.可動域は屈曲が減少するが,伸展が改善するため有用な可動域となっている.コンポネントの挿入角度からみたレ線評価点数は術後成績と関連しなかった.この人工関節は手術上の誤差に対して許容度が大きいと言える.術前の障害程度に関係なく術後は一定の成績が得られており,手技が容易で安定度の高い手術であるといえる.

Anatomical Total Knee Arthroplasty

著者: 黒木良克 ,   森雄二郎 ,   大竹正義

ページ範囲:P.603 - P.609

 抄録:Anatomical prosthesisを使用して行うanatomical total knee arthroplastyの特徴およびその有用性と適応の限界について報告した.Anatomical prosthesis(GT-schlittenendoprothese Lübeck)を使用する場合は,残存する靱帯はすべて温存してTKRを行う必要があり,しばしば遭遇するACL欠損例では適応がないと考えられ,その理由をbiomechanicalに追求した.またTKR後の関節鏡所見として,再生半月が注目され,これが荷重の分散,ひいては脛骨板looseningの予防に有効であると推測した.またP-F関節においても膝蓋骨HDP componentの周辺は再生組織で被われ,P-F関節のstressを干渉しているものと推測した.また2枚板脛骨板のmerit, demeritに言及した.臨床例の経験から,anatomical total knee arthroplastyには限界があり,高度に破壊された末期例では,より安定性のある人工関節が適応で,我々は常に単一機種で対処することなく,grading systemをとる必要性を強調した.

児玉・山本式人工膝関節の15年間の成績

著者: 山本純己 ,   近藤泰紘

ページ範囲:P.611 - P.616

 抄録:1970年に児玉・山本式人工膝関節の第1例の手術がおこなわれた.以来,15年以上を経過したが,その基本となる表面置換型のデザイン,および,骨セメントを使用しない方針は現在のMark Ⅲまで一貫して継承されている.
 今回,児玉・山本式人工膝関節Mark IIの1975年〜1984年の10年間の成績を検討した.対象症例は,われわれの手術例300名,410関節,および,アンケート調査による全国70施設における手術例を加えて,合計950名,1168関節である.

アルミナ・セラミック人工膝関節

著者: 大西啓靖 ,   村田紀和 ,   津山研一郎 ,   櫛谷昭一 ,   右近良治 ,   高山優

ページ範囲:P.617 - P.627

 抄録:KOMセメントレス・アルミナ人工膝関節は骨との結合部をアルミナ,摺動部をアルミナ対UH-MWPEの組み合せから成り,脛骨板の中央にステムがあり,ステムより脛骨後面の皮質骨に荷動が伝達される.シミュレーター試験では摺動部において,対金属より対アルミナの方がUHMWPEの摩耗量は1/10以下である.骨との結合部においてアルミナ以外の材料と同様にセメントレス共通の問題点がある.術後4年6カ月〜2年6カ月の30例46膝についての成績は他の人工膝関節と同様可動域以外はすべて優れた結果が得られた.レ線像では約60%にステム周囲に骨透亮像が出現し,RA群の約半数に脛骨板の沈下がみられた.今後の改良点と展望は,骨との結合部にはコーティングされたTi合金又はアルミナのポーラス体表面にHApをコーティングした材料を用い,更に必要に応じて現在開発中のバイオアクティブ骨セメントを用いることである.

KINEMATIC型人工膝関節の手術成績—4年から6年経過観察例の検討

著者: 安田和則 ,   佐々木鉄人 ,   松野誠夫

ページ範囲:P.629 - P.637

 抄録:1980年から1982年までに行ったKinematic型人工膝関節置換症例70人100膝の追跡調査を行い,62人92膝を直接検診して術後成績を調べた.経過観察期間は4年から6年8カ月,平均5年1カ月である.原疾患はRAが36人54膝(男9人9膝,女27人45膝),OAが26人38膝(男4人4膝,女22人34膝)であった.使用した機種は,I型が3膝,II型が58膝,III型が17膝,IV型が14膝であった.I,IIおよびIII型置換症例の総合評価としてExcellentないしGoodは,RAで81.4%,OAで85.7%,両者の平均で83.3%であった.可動域は,II型で術前平均15〜119°が術後4〜103°に,III型で術前平均15〜97°が術後3〜105°となった.弛みはII型の大腿骨componentの1膝に発生した.感染例はなかった.他の合併症の手術を施行したのが5膝(5.4%)あった.厚さ1mm以上の人工関節下骨の透亮像は,脛骨側には5膝,大腿骨側には1膝みられた.

整形外科を育てた人達 第48回

John Hunter(1728-1793)

著者: 天児民和

ページ範囲:P.638 - P.641

 John Hunterは18世紀の英国に於ける傑出した外科医であると共に特に組織移植の実験を行っている.当時は未だ免疫学も未開拓であり,移植に於ても同種,異種の区別も判然としていなかった.その上手術の感染に対しても無対策であったが,多くの実験を行った努力は高く評価されるべきである.

手術手技シリーズ 関節の手術<上肢>

SWANSON人工指関節

著者: 中嶋洋 ,   多田浩一

ページ範囲:P.643 - P.652

はじめに
 人工指関節は1959年,Braun,Kleinらがhinge type,metal prosthesisを発表して以来,Flatt6),Steffee1),Swanson10),Nierbaur8),Doi5)らにより数種のモデルが報告されてきた.大関節と同じく骨セメントを用いるhinge型人工関節は骨吸収や骨折,prosthesisの折損などのために使用されなくなってきた.現在最も用いられるのはSwansonのデザインによるsilastic implantである.最近,諸施設から長期成績およびsilicone inducedsynovitisをも含めた晩期合併症が報告されており1,2,9,13),再評価の時期にあると考えられる.Swanson自身の手術成績では,6ヵ月から5年間の358MP関節における追跡調査で平均60°の術後の関節可動域を得ている.変形の矯正は尺屈変形が96.8%,掌側亜脱臼が98.9%に獲得されている10).また,implantの折損は1.9-26%と報告されている1,3,10).1975年以来,強化シリコンであるhigh-performance silicone elastomerが材質として使用され,これにより明らかにimplantの折損は減少している11)

臨床経験

手関節結核の1例

著者: 川原範夫 ,   三浦宏之 ,   富田勝郎

ページ範囲:P.653 - P.657

 抄録:骨破壊が著明な手関節結核に対し,手根骨等の病巣郭清術及び化学療法にて,満足のいく関節可動域を得た1例を経験した.患者は58歳女性,主訴は右手関節痛で昭和56年6月から主訴を認め,同年10月当科を受診した.非特異的炎症として,経過を観察していたところ,57年3月手関節屈側面に腫脹が出現し,手根管症候群の症状を呈した.レ線像にて手根骨の虫喰い様欠損像を認め,腫脹部の穿刺によって結核菌が証明されたので,右手関節結核の診断のもとに病巣掻爬のみ行い,関節固定は行わず充分な化学療法を行った.術後3年の現在,症状の再発は全く見られず,レ線像にて残存する手根骨と橈骨の間に新しい関節面を形成しており,良好な可動域を獲得していた.

手指PIP関節脱臼骨折の治療

著者: 藤原稔泰 ,   南條文昭

ページ範囲:P.659 - P.664

 抄録:手指PIP関節脱臼骨折の症例を分析し,volar plate advancement arthroplastyを行った患者を中心に調査し,治療方法,問題点について考察した.
 10年間に当科を受診した27例を対象とし,このうち19例70%はスポーツ外傷であった.

頸部砂時計腫の5例

著者: 隅本毅 ,   鈴木勝美 ,   佐藤誠 ,   松本寿夫 ,   塩川靖夫 ,   荻原義郎 ,   向井智志

ページ範囲:P.665 - P.669

 抄録:脊髄腫瘍の中で,手術手技困難なものとして砂時計腫がある.砂時計腫は,その特徴ある形態からAntoni(1920)により命名されたが,発育様態が多彩であり,外科的治療に工夫を要する.今回我々が過去5年間に経験した頸部砂時計腫5例について若干の考察を加えて報告する.
 5例中4例はschwannomaで良性であり,全摘にて特に問題をおこしていないが,1例はmalignantschwannomaで他院で5回の手術が行われたが,paravertebral massはいずれの手術時も放置されていた.脊髄砂時計腫の手術にあたり,腫瘍の組織学的特徴にもよるが,再手術例の予後は一般に非常に悪いため,一次的全摘出術を行うべきである.

頸椎に発生したAneurysmal Bone Cystの1治験例—その治癒過程への1考察

著者: 宮田隆一 ,   太田秀樹 ,   大木勲 ,   大井淑雄

ページ範囲:P.671 - P.676

 抄録:14歳,男子,第3頸椎に発生したAneurysmal Bone Cystを経験した.脊椎では,椎弓および棘突起など後部脊椎に好発する.本症例も,初診時病変は後部脊椎に認められただけであったが,経過と共に前方の椎体にまで病変が及んできた.その際のopen biopsy時,嚢腫からは血液が噴出し易出血性であった.しかし,3ヵ月後の手術時,そのような易出血性は認められず,後方のみの病巣掻爬を行ったにもかかわらず,術後,前方の椎体病巣までも著しい骨化をきたした.前者は,嚢腫の成熟度の違いではないかと考えている.後者は,不完全な切除でも,また,放射線治療のみでも治癒した症例が報告されているように,何らかの方法で正常のremodellingの状態に戻せば治癒方向に進むのではないかと考えている.

膝関節遊離体を生じた限局性結節性滑膜炎の1症例

著者: 浪花紳悟 ,   山上剛 ,   前山巌

ページ範囲:P.677 - P.680

 抄録:滑膜に由来する結節状ないし腫瘤状に増大する病変に対し,Spjutは色素性絨毛結節性滑膜炎,限局性結節性滑膜炎,限局性結節性腱鞘滑膜炎に分類している.
 今回,膝関節痛を主訴として来院し,種々の検査,手術により限局性結節性滑膜炎と診断した症例を経験した.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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