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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科22巻8号

1987年08月発行

雑誌目次

視座

自国の業績にもっと関心を

著者: 小林晶

ページ範囲:P.909 - P.910

 日本人の欧米に対するinferiority complexは明治以来,抜き難いもののようである.彼らのすること,言うことは全部真理にしてしまう習性ができ上っている.裏をかえせば日本人の言うことは,なかなか信用してもらえず流布するに至らない.これが創造性の欠如とか物真似の上手な国民だと自嘲気味に言われ指摘もされる遠因になっている.
 整形外科領域の業績でもそうである.

論述

3次元表面再構成法の整形外科領域への臨床応用

著者: 佐藤雅人 ,   丸山公 ,   星野雅洋 ,   時田二朗 ,   藤岡睦久 ,   西村玄

ページ範囲:P.911 - P.919

 抄録:整形外科領域において,複雑な解剖学的部位における異常の診断にコンピューター断層撮影(CT)が用いられてきた.しかしながらこのような部位を3次元的に,正確に理解するには多くの経験と熟練が必要となる.最近開発された3次元表面再構成法は最初のCTスキャンから3次元画像を作る方法で,この再構成像は,一見,晒骨標本の白黒写真のようであり,しかも白黒の濃淡によって遠近を表示するので立体感がある.つまりこの画像はCTスキャンの有用な情報を最も使いやすい形で表現するものといえる.この手法を立体的に理解する必要性の高い股関節,骨盤,脊柱,肩関節,手根部,足根部において試みた.その結果,画像作成を工夫することによって今まで観察不可能だった部位や方向からの観察が可能となり,より立体的把握が容易になることがわかった.したがってこの手法は症例によっては診断上有用な補助的手法となり得ると思われる.

先天股脱X線像における骨硬化線(Growth-Disturbance Lines)の臨床的意義

著者: 白石光一 ,   岩崎勝郎 ,   池田定倫 ,   中嶋裕 ,   山根芳道 ,   鈴木良平

ページ範囲:P.920 - P.927

 抄録:Growth-Disturbance Linesが先天股脱の大腿骨近位部のその後の発育過程を予知するうえでいかなる意義があるかを検討した.長崎大学整形外科において治療した737例の先天股脱のうち385例(52%)にGDLが検出された.これらにおける出現時期,形態と大腿骨近位部の発育との関係,ペルテス様変化とGDLの関連を調べた.
 GDLは2歳までに約80%が出現していた.GDLが正常型を示す場合や異常型のうち途絶型や骨端線からの距離の差等を示す場合にはmetaphysisは正常な発育をする事が予想されるが,異常型のうち陥凹型や不整型を示す場合には,metaphysisの発育異常が生じうる.またペルテス様変化例ではepiphysisの変化の型とGDLの形態より大腿骨近位部の障害の診断がより正確になしうるものと考えられた.

特発性大腿骨頭壊死の治療におけるBipolar Endoprosthesis使用についての問題点

著者: 小林昌幸 ,   増田武志 ,   長谷川功 ,   菅野大己 ,   一岡義章 ,   山口秀夫

ページ範囲:P.928 - P.934

 抄録:特発性大腿骨頭壊死の治療においてBipolar Endoprosthesisによる骨頭置換術を施行した場合,術後なんらかの愁訴をもつ患者がいる.その原因を調べるため,当科で本術式を施行した22例,29股について検討した.29股中なんらかの愁訴を持つのは16股であった.うち3股ではX線上outer headのproximal migrationが認められた.それ以外の13股の愁訴の原因を,使用した機種,病因,骨セメント使用の有無,術後経過観察期間,X線所見(outer headと臼蓋の適合性,ステムのcalcar contactの有無,術後の脚短縮・延長,ステム周囲の変化(radiolucent zone,骨硬化像)について検討した.しかし,これらの要素はいずれも愁訴の原因とは考えられなかった.一方,prosthesisの再置換術時得られた臼蓋軟骨には病理組織学的に異常を認めた.そこで,Bipolar Endoprosthesis使用後に見られる愁訴の発現にあたっては金属対関節軟骨という組み合わせに問題があるのではないかと推察した.

リハビリテーションよりみた胸腰椎脊髄損傷治療としてのPosterior Instrumentation

著者: 吉村理 ,   林克二 ,   帖佐博文 ,   加茂洋志 ,   野村茂治

ページ範囲:P.935 - P.941

 抄録:脊髄損傷初期治療に保存療法と観血療法のどちらを選択するかは議論のあるところであるが,最近の脊椎外科の進歩にともない胸腰椎部脊髄損傷にHarrington法を中心とするspinal instrumentationが用いられている.
 今回過去5年間に取り扱った保存療法例46例,観血療法例21例計67例の胸腰椎部脊髄損傷につき検討した.Harrington例は保存療法例にくらべてADL自立がおくれ,入院期間も長い.受傷,手術よりリハビリテーション開始までが長いのと輸血後肝炎,褥瘡の合併症が原因と考えられる.

多発性骨軟骨腫による前腕変形に対する治療

著者: 政田和洋 ,   川端秀彦 ,   野口光一 ,   露口雄一 ,   小野啓郎

ページ範囲:P.943 - P.950

 抄録:多発性骨軟骨腫における前腕変形に対して10例13肢に対してのべ16回の手術を施行した.前腕変形を以下の3型に分類した.Type I:尺骨の短縮と橈骨の彎曲が認められるもので橈骨頭の脱臼のないもの.Type II a:近位橈尺関節に腫瘍が存在しそのために橈骨頭が脱臼しているもの.Type II b:橈骨頭脱臼を合併するも近位橈尺関節には腫瘍の存在しないもの.Type III:尺骨の相対的過成長の認められるもの.これらにつき,術前後の尺骨の短縮,radial articular angle,ulnar carpal shipを計測し手術法に検討を加えた.本変形の主因をなすものは尺骨の短縮と腫瘍の存在であり,Type Iにおいては腫瘍の切除術,尺骨の延長術,橈骨の矯正骨切り術が必須の手技になるが,Type II aでは橈骨頭切除術が必要となりII bにおいては尺骨の持続延長が勧められる.Type IIIでは腫瘍切除術のみで良好な結果が得られる.

シンポジウム 椎間板注入療法の基礎

chymopapain椎間板内注入療法に関する基礎的研究—椎間板髄核の長期変化,および硬膜外注入について

著者: 高田俊一 ,   勝呂徹 ,   土田豊実 ,   邱金澄

ページ範囲:P.952 - P.957

 抄録:chymopapain椎間板内注入療法に関する基礎的実験として,猿を使用して,1)椎間板内注入実験,2)硬膜外腔注入実験を行い,病理組織学的検討を加えた.1)経腹膜的に1椎間板当たりDiscase(Travenol社製)0.2mlを注入,2年後に屠殺した.その結果,注入後2年の椎間板はSafranin-0染色陽性を示し,proteoglycanの再生が行われていた.髄核の基質は線維化を示し,細胞成分はnotochordal cellに代わって,chondrocyteがcell clusterを形成していた.2)椎弓切除後,静脈内留置用のテフロンカテーテルを使用して,硬膜外腔に0.2,0.4,0.6mlのDiscaseを注入後,1,4,8週で屠殺し,脊柱を摘出,横断標本について,病理組織学的検討を加えた.その結果,脊髄に脱髄等の病的所見を認めず,また硬膜,硬膜外脂肪組織等にも出血,瘢痕形成などの異常所見を認めなかった.

コラゲナーゼ注入椎間板の生体力学的変化—キモパパインと比較して

著者: 小柳貴裕 ,   若野紘一 ,   平林洌

ページ範囲:P.958 - P.964

 抄録:Chymopapainによるchemonucleoysisは欧米では腰部椎間板ヘルニアに対する準保存的治療法として定着している.一方bacterial collagenaseがanaphylaxisのない点で注目され,新しいdiscolytic agentとして臨床応用が企てられている.今回,著者らはchymopapainとcollagenaseを雑種成犬44頭の椎間板に注入し,生体力学的に比較検討を行い,あわせてその効果発現機序につき考察を加えた.注入短期群では両酵素群ともX線上,椎間板高の狭小化を認め,圧縮負荷に対し,正常群に比し軟らかく反応した.また圧縮負荷に対する椎間板内圧上昇機能も正常群の約半分に低下した.Chymopapain注入群では長期間後に椎間板高,椎間板の圧縮負荷に対する反応は正常群に近く回復したのに対し,collagenase注入群では長期間後それらの回復が乏しかった.またcollagenase注入群には無効例が存在した.以上,今後検討すべき多少の問題はあるものの,chemonucleolysisに際し,collagenaseも用いてよい物質と考えた.

ChemonucleolysisとChemonucleolysis後椎間板の骨形成因子(BMP)に対する反応

著者: 加藤文彦 ,   岩田久 ,   村上英喜 ,   見松健太郎 ,   三浦隆行

ページ範囲:P.965 - P.974

 抄録:近年ChymopapainによるChemonucleolysisが注目されている.著者らはChymopapainよりも基質特異性のはっきりしたChondroitinase ABCによるChemonucleooysisを成熟家兎を用いて実験的に示した.その過程はChymopapainによるChemonucleoysisに比べて穏やかなもので,正常椎間板への回復さえ期待された.また著者らはChemonucleolysisによって変性した椎間板に骨形成因子(BMP)を注入することにより,椎間板再生細胞の中にBMP responding cellが含まれていて椎間板が骨化し,薬物による椎体問固定が出来るのではないかと考えた.そこで成熟家兎を用いてChemonucleolysis後2〜4週後にBMPをChemonucleoysis後椎間板と正常椎間板に注入し比較検討した.正常椎間板,Chondroitinase ABC注入椎間板では前縦靱帯の骨化像のみで,髄核部の骨化像は認めなかったが,Chymopapain注入椎間板ではより著明な前縦靱帯の骨化像と髄核部の軟骨性骨化像を認めた.

Chymopapain(Discase)の作用—家兎椎間板に及ぼす影響について

著者: 菊地寿幸 ,   新名正由 ,   根本理 ,   山岸正明 ,   下村裕

ページ範囲:P.975 - P.981

 抄録:Chemonucleoysisに広く用いられているChymopapain(Discase)の作用を,Chondroitinase ABC,Hyaluronidaseを比較対照とし検討した.
 家兎椎間腔にDiscase(2.5 nkat unit/ml)を注入すると2週で椎間腔は明らかに狭小化し,組織学的にも線維輪外層を除き広範囲にマトリックスは破壊され,細胞変性,壊死も顕著であった.注入後24週でも変性は高度で組織再生所見は軽度にみられるに過ぎない.

手術手技シリーズ 関節の手術<下肢>

Chiari骨盤骨切り術

著者: 斉藤進 ,   黒木良克

ページ範囲:P.983 - P.991

はじめに
 1953年ChiariがWiener Medizinische Wochenschriftに"Beckenosteotomie zur Pfannendachplastik"を報告1)して以来,この骨盤骨切り術は,幅広い年齢層かつ様々の股関節疾患に行われてきた.その手術法はChiari自身も改良を加えているが2,7),各々の術者4,5,8,9,11,13,17,20,21)によっても工夫がなされている.ここに1953年Chiariが発表したOrigina1の手技1)を紹介するとともに,筆者らの行っている手技17)を紹介したいと思う.

整形外科を育てた人達 第51回

Edward Hallaran Bennett(1837-1907)

著者: 天児民和

ページ範囲:P.992 - P.995

 整形外科でBennettの名は,第一指基底の骨折に今日も彼の名を冠した骨折があるので有名である.しかし英国にはBennettの姓を有する医学者は多く,医学史の人名を探すのに便利な著書Emerson Crosby Kelly著の「Encyclopedia of Medical Sources(1948)」ではBennettの姓を有する学者は全部で6名あり,皆英国人である.さて整形外科に関係深いのはEdward Hallaran Bennettである.誕生は1837年4月9日Irelandの南部の町Corkで生れた.父はRobert BennettでCorkの町長であったが,司法権もある有力な町長であった.母は又有力な医師William Hallaranの娘であったので,母の姓を取り入れてEdward Hallaran Bennettと命名された.兄弟は全部で5人であったが恵まれた環境で育てられた.初等教育はCorkで受け,その後Dublinに行きDr. Flylnn's Academyの病院を訪れた後Trinity Collegeに人学した.入学した頃は自然科学に興味を持ったが,その頃Trinity Collegeの外科の教授であったRobert William Smith(1807-1873)の講義を聴き医学に方向を転じた.

臨床経験

ひらめ筋に生じた軟骨腫の1例

著者: 伊達和友 ,   冨永積生 ,   大内啓司 ,   片山稔 ,   豊海隆 ,   土井章夫 ,   小川剛

ページ範囲:P.997 - P.999

 抄録:左ひらめ筋内に発生した軟骨腫の1例を経験した.我々の渉猟し得た範囲では,骨外の軟骨腫に関して,筋肉内に生じた報告はない.
 症例は42歳の女性で,左下腿の腫瘤形成を主訴として来院した.腫瘍自体による症状はなく,X線像で雲状の骨化様陰影を呈し,CT検査でも下腿三頭筋内に一致した像が認められた.手術的には,ひらめ筋内に境界明瞭な線維性被膜を持つ腫瘍(4×2.5×2cm)を摘出した.病理組織学的診断では,良性軟骨腫であった.術後1年経過し,再発の徴候はない.

馬尾部多発性神経鞘腫の1例

著者: 安田義 ,   四方實彦 ,   飯田寛和 ,   山室隆夫 ,   䄅公平 ,   中嶋安彬

ページ範囲:P.1001 - P.1004

 抄録:最近われわれは,比較的稀な馬尾部多発性神経鞘腫の1例を経験したので報告する.
 症例は49歳の男性で,1978年頃右殿部痛,右下肢痛出現.1985年4月某院にてL5,S部馬尾神経腫瘍と診断され摘出術を試みるも部分切除に終わった.術後右殿部痛,右下肢痛は軽快したが,6月両殿部痛,両下肢痛出現.同年9月当科を初診し,12月に入院した.Myelography,CT myelographyにて馬尾部多発性腫瘍と診断し,L1,L2部,左S1神経根部,左殿部の腫瘍摘出術を施行した.摘出された腫瘍はいずれも定型的なneurilemomaであった.

脊髄Hemangioblastomaの1例

著者: 松田康孝 ,   長嶋哲夫 ,   四方實彦 ,   中嶋安彬

ページ範囲:P.1005 - P.1009

 抄録:脊髄のhemangioblastomaの1例を経験したので報告する.症例は55歳,男性.主訴は腰痛て特に夜間に著しかった.神経学的には,両側PSR・ASRはやや低下し,第1腰髄節以下に知覚鈍麻が認められたが,病的反射,膀胱直腸障害はみられなかった.ミエログラフィーにてTh12,L1間で完全ブロックがみられcontrast-enhanced CT,selective spinal angiographyでは同部に血管系の脊髄腫瘍が認められた.手術は,Th11よりL1の椎弓切除を行い,硬膜切開の後,顕微鏡下で腫瘍の全摘出を施行した.組織学的にはhemangioblastomaであった.術後の経過は良好で1年8ヵ月後の現在,第1腰髄節以下に軽度の知覚鈍麻を残すも,独歩可能で,ADL障害はみられない.比較的稀な脊髄のhemangioblastomaを経験したので,その組織像,診断,治療について文献的考察を加えて報告する.

Os hypotriquetrumの1例

著者: 長山信幸 ,   佐々木孝 ,   岩田清二 ,   水島斌雄 ,   川島明 ,   野本聡 ,   河野亨

ページ範囲:P.1011 - P.1013

 抄録:外傷,奇形等の既往歴のない45歳の男性で,Colles骨折の際に撮影したX線写真上,両側性に,三角骨,月状骨,有頭骨,有鉤骨の間の空間("medial intercarpal space")に,過剰骨を認めた.CT撮影により掌側に存在することが確認され,os hypotriquetrumと同定できた.
 Accessory boneの概念は,sesamoid boneと異なり,確立されたものではないが,手関節における出現頻度は0.4〜1.6%で,それほど稀なものではない.本症例と同様の報告は,検索し得た範囲ではSaunders(1942)の1例のみである.命名法は様々ではあるが,解剖学的位置を表す名称が適当と考え,os hypotriquetrumとした.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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