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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科23巻2号

1988年02月発行

雑誌目次

視座

ERASSの現況

著者: 木村千仭

ページ範囲:P.121 - P.121

 第3回(1985年),第4回(1987年)欧州リウマチ関節外科学会(European Rheumatoid Arthritis Surgical Society)に出席する機会があり,昨年私もoversea memberに加えて貰えたので,これらの学会ならびに会員総会でかいま見た感想を述べてみたい.
 本会創立のくわしい内容はわからないが,1979年第9回欧州リウマチ会議(EULAR)の折に創立カンファレンスが開かれ,第1回ERASS Congress(1981)がウィーンで開催されて以後,2年毎に行われている.多分EULARから派生し,なおどこかでつながっている学会組織で,完全に独立しているものではなさそうである.現在正会員は欧州人のみ141名で,欧州以外(日米など)はoversea member 18名(うち日本5名)である.systemとしては他の外国学会と同様であり,会員外の学会参加は自由である.

論述

新鮮前十字靱帯損傷に対する同種腱を用いた外科的治療

著者: 史野根生 ,   木村友厚 ,   井上雅裕 ,   中村博行 ,   浜田雅之 ,   中田研 ,   小野啓郎

ページ範囲:P.122 - P.128

 抄録:[目的]新鮮前十字靱帯(以下ACL)損傷に対しては,一次修復術が主に行われてきたが,その成績は満足すべきものではない.そこで我々は新鮮例にも同種腱を用いた一次再建術を行ってきた.
 [症例・方法]新鮮ACL損傷に対し,同種腱を用いて一次再建術を施行し30ヵ月以上経過した26症例の成績を,自覚的,他覚的に吟味した.なお,症例は殆んどがスポーツ選手または愛好家であった.

肘の重度変形症に対する形成術

著者: 津下健哉 ,   水関隆也 ,   堀田恵司 ,   長尾彰 ,   福原宏平 ,   長谷好記

ページ範囲:P.129 - P.138

 抄録:近年肘に広範な変形症所見を有し,運動制限と疼痛を主訴として来院する症例に遭遇する機会が多くなったが,我々はかかる症例15例に対し我々の関節形成術を実施し2,3の興味深い知見を得た.すなわち軟骨破壊は腕尺関節よりも常に腕橈関節に強いこと,しかも上腕骨小頭は屡々正常の曲率を失い扁平となること,また滑車と滑車切痕についても曲率に差を認め亜脱臼位を示すもののあることを指摘した.その他肘頭とか鉤状突起における棘形成,肘頭両縁における骨肥厚の切除,また肘頭窩とか鉤状突起窩を形成,或いは深掘りするなどの操作につき触れ,以上により平均27°の可動域の拡大と疼痛の除去を得ることが出来た.

脊髄疾患に対する術中超音波診断装置の使用経験—7.5MHz高周波数プローブによる検討

著者: 井須豊彦 ,   岩崎喜信 ,   今村博幸 ,   秋野実 ,   阿部弘

ページ範囲:P.139 - P.145

 抄録:各種の脊髄疾患に対し,7.5MHz高周波数プローブによる術中超音波診断を行い,画像上の分析結果を報告した.<対象及び方法>対象は,脊髄腫瘍14例(髄内腫瘍11例,硬膜内髄外2例,髄内外,髄外腫瘍1例)と脊髄空洞症7例の計21症例である.術中超音波診断装置は,横河メディカル社U-Sonic Model RT 2600であり,7.5MHzのリニアプローブを用いて,脊髄矢状断像を撮影した.<結果>①髄内腫瘍に合併したcyst 9例中7例と脊髄空洞症7例全例は,anechoicに描出された.small cystを認めたastrocytomaの1例とmicrocystの存在が疑われたependymomaの1例では,cystの同定は出来なかった.②腫瘍実質は14例中10例で,hyperechoicに描出された(astrocytoma 3例中1例,ependymona 3例全例,mixed glioma 3例中2例,hemangioblastoma 2例全例,neurinoma 2例全例,meningioma 1例).〈結語〉①術中超音波診断装置では,large cystic lesionは,容易に診断され,脊髄疾患とくに髄内腫瘍の局在診断には,非常に有用な検査法であった.②高周波数プローブによる術中超音波装置は,脊髄疾患の術中局在を容易とするため,今後,大いに,用いられるべき検査法と考えられる.

シンポジウム 日本におけるスポーツ整形外科の現状と将来

日本におけるスポーツ整形外科の現状・将来

著者: 高沢晴夫

ページ範囲:P.147 - P.147

 近年,我が国におけるスポーツ人口の増加,その多様化はスポーツが一部エリート選手のものではなく,一般市民に広く愛されてきていることを示すものである.
 その結果,スポーツ医学の需要が高まり,特にスポーツによる外傷や障害の治療,予防の重要性が増してきた.

上肢のスポーツ外傷と障害

著者: 石井清一 ,   薄井正道 ,   山下敏彦 ,   成田寛志 ,   石塚明温 ,   大西信樹

ページ範囲:P.148 - P.154

 抄録:整形外科スポーツ医学研究会が昭和50年に発足して以来,306演題が報告されている.上肢のスポーツ外傷・障害の演題は85である.野球による肘・肩の演題が多いのがわが国の特徴である.わが国のスポーツ整形外科は,①使い過ぎ症候群の概念を確立したこと,②スポーツによる小児の骨・軟骨の障害の実態を明確にしたこと,③関節外科,特に膝の外科の進歩をもたらしたこと,④ストレッチング・テーピングを整形外科治療体系に導入したことで,一般整形外科の発展に貢献してきた.以上の4点に関して,我々が上肢のスポーツ外傷・障害の分野で行った研究は,野球肩における関節前方要素の関与,小児の肘関節離断性骨軟骨炎の素因,ストレッチングの効果に関する電気生理的解析に関する研究である.今後のスポーツ整形外科の発展のためには,スポーツ医学全体の視野に立った学問の体系づくりが大切である.

腰部のスポーツ外傷と障害

著者: 市川宣恭

ページ範囲:P.155 - P.161

 抄録:スポーツ活動に原因する腰部障害は発生頻度が高く,難治性で再発を繰り返すことが多い.ことにスポーツ選手はスポーツ再開をあせり,腰部障害に対する即効的な治療手段に走り,病態を悪化させてしまうことが多い.
 そこで,スポーツによる腰部の外傷,障害の治療に際しては,スポーツ種目の特性,疼痛とスポーツ動作の関連性,罹患回数,期間などを配慮しつつ診断名の決定,病期の判定,腰仙部を中心とする基礎体力の測定,評価などを行い,総合的な治療計画を考えねばならない,そして,病態の改善を計りつつスポーツ活動の再開に相応した身体活動能力の回復,強化を漸進的に行う必要がある.

下肢のランニング障害

著者: 萬納寺毅智 ,   横江清司

ページ範囲:P.163 - P.168

 抄録:最近2年間の下肢のランニング障害は892名,総新患数の12%である.男性対女性は2.8:1,平均年齢は男性26歳,女性20歳であり,男性の方が3倍多く,年齢は6歳高かった.障害部位は膝44%,足部21%,下腿19%,股・大腿9%,足関節7%の順である.
 膝が半数近くを占め,ランニングでの障害の多さを物語っている.診断のつかない膝痛が第1位,次に膝蓋大腿関節痛と,いずれも使い過ぎ症候群に属するものである.

膝のスポーツ外傷と障害

著者: 守屋秀繁

ページ範囲:P.169 - P.172

 抄録:過去2年間のスポーツによる外傷・障害の自験例1759例中,膝に関するものは544例(30.9%)の多くを占め,次いで足関節301例(17.1%),脊椎267例(15.2%)などであった.膝のスポーツ外傷・障害のうち最も重篤なものは前十字靱帯損傷であり,この損傷は経時的に半月板損傷や変形性変化を伴う事がほとんどであり早期の靱帯再建術を行うべきと考えられる.著者らは腸脛靱帯を用いた独自の方法を用いており満足すべき結果を得ている.半月板損傷も頻度的に多く鏡視下半月板切除術は早期のスポーツ復帰を可能にしている.ジャンパー膝のほとんどはstretchingやicingで軽快しているが難治性のものには膝蓋靱帯の変性した部分の切除により除痛効果が得られている.その他習慣性膝蓋骨脱臼・亜脱臼や有痛性分裂膝蓋骨も必要に応じ観血的加療を行うべきであり,それによりスポーツ復帰が可能になる症例も多いとの結論を得た.

わが国におけるスポーツドクターの活動と問題点

著者: 古賀良生 ,   中村尚

ページ範囲:P.173 - P.177

 抄録:体協による認定制度発足を契機とし,スポーツドクターの認定問題が論議され,日整会はその認定医制度の上に,昭和61年認定スポーツ医制度を発足させた.この制度の意義と問題点を調査結果から述べる.体協のスポーツドクターの専門標榜科は約半数が整形外科で,これらの整形外科医のうち整形外科スポーツ医学研究会の会員は約40%,日整会の認定医は約70%で二つの制度間に認定基準の差を認める.スポーツ医学の中心テーマの一つであるスポーツ外傷の中で運動器の外傷が最も多く,整形外科がそれを専門対象としていることについて,学会は一般社会に対し啓蒙することが必要で,大学の整形外科でスポーツ医学の教育,診療を拡充すべきと考える.医学の進歩,超専門化の中で,日整会が積極的にスポーツドクターの研修,育成を開始した意義は大きく,受講者も多く,会員のスポーツ医学の知識や指導力の向上が計られ,この制度は的確な社会的対応であったと考える.

手術手技シリーズ 関節の手術<下肢>

カップ関節形成術の手術手技

著者: 田中清介

ページ範囲:P.179 - P.184

はじめに
 Smith-Petersen8)に始まったカップ関節形成術はAufranc1,2),Harris6)へと受け継がれてきた.著者ら9〜15)も昭和41年以降変形性股関節症のみならず,種々の股関節疾患による重度関節機能障害の機能再建のためにカップ関節形成術を行ってきた.しかしその後に開発された人工関節置換術の成績が優れているために,またカップ関節形成術の手術手技に習熟を要すること,一般には習熟しないことからくる成績の不安定なこともあってか,本邦はもとより本場の米国においても一般的な手術とはいえなくなった.とはいえ,カップ関節形成術の成績は人工関節置換術には及ばないものの一応良好といえる成績がえられるために,また骨頭を温存するという大きな魅力があるために,bipolar hipが開発された今日においても,特に若年者には適した手術と考えられる.さらに本法は人工関節置換術を含めた種々関節形成術のうち,活動性のある結核性股関節炎にさえ行える利点がある.また最近では人工関節置換術の合併症による再手術が次第に増えてきており,そこで再びカップ関節形成術が見直されるべき時期にきていると思われる.そのためにも,カップ関節形成術の成績向上には的確な手術手技が要求される.

整形外科を育てた人達 第57回

William Heberden(1710-1801)

著者: 天児民和

ページ範囲:P.186 - P.188

 Heberden's Nodesで我々整形外科医はWilliam Heberdenの名をよく聞くが,彼が亡くなったのは1801年で今日まで既に186年経過している.整形外科を育てた人達で世界で最初にOrthopedieという言葉を考え出したのはフランスのNicolas Andry(1658-1742)である.HeberdenはAndryより少し若いが殆ど同時代の人である.Heberdenは死後既に180年以上になるが,Heberdenの名は整形外科教科書にも必ず出て来る.その為にHeberdenとは如何なる人であったか調べてみたので,今回はこれを紹介することにした.

学会印象記

「International Meeting on Care of Babies' Hip」印象記

著者: 安藤御史

ページ範囲:P.190 - P.191

 International Meeting on Care of Babies' Hipが1987年10月1日から3日間ユーゴスラビア(ユーゴ)のベオグラードのSava CenterでP. Klisić会長のもとで開催された.この研究会はMultidisciplinary approach from birth to the walking ageを主題とし,新生児期から歩行開始までに関係する医療従事者が参加した.整形外科医,小児外科医,小児科医,産婦人科医,放射線科医,看護婦など広範な人達が集まった.参加国(演題発表)は14力国で日本からは7名(長崎大:鈴木教授,岩崎助教授,池田氏,国立京都病院:石田氏,社会保険中京病院:山田氏,旭川医大:松浦氏,筆者)であった.看護婦や女医の参加が多く会場には女性の姿が多くみられ男性の多い集会に慣れている我々にとっては医学集会らしからぬ印象であった.研究発表はユーゴスラビアが多くポスター発表を含めおおよそ90題中約6割を占めた.日本からの発表はボスター発表を含め8題(山田,石田,鈴木,松浦,池田,安藤,岩崎)であった.発表には同時通訳が行われユーゴスラビア語と英語が使用された.

臨床経験

Hurler-Scheie Compoundの1症例

著者: 阪田泰二 ,   村上恒二 ,   大瀬戸政司 ,   日下治 ,   渡捷一 ,   生田義和 ,   津下健哉 ,   佐倉伸夫

ページ範囲:P.193 - P.201

 抄録:我々は,両手運動障害を主訴とする成人のHurler-Scheie Compoundの1例を経験した.症例は22歳の男性で,既往歴に鼠径・臍・大腿ヘルニアの手術歴があり,2歳頃より両手指DIP関節が屈曲位となり,6歳頃拘縮が増強した.昭和59年7月10日当科を初診した.顔貌は特有のGargoylism様顔貌で,腹部膨満(肝脾腫)・角膜混濁・大動脈閉鎖不全症を認めた.整形外科的には,低身長・短頸・外反股・尖足歩行・上下肢関節の運動制限・鷲手変形・手骨間筋の萎縮・手根管症候群を認めた.血液・尿検査は異常ないが,尿中コンドロイチン硫酸2.4mg/l/dayと増加,分画はデルマタン硫酸100%であり,血中α-L-iduronidase活性は正常の1/4に低下していた.手術は,母指対立再建術・示中指DIP関節固定術・手根管開放術を施行した,病理組織学的にAlcian Blue染色で皮膚の真皮・軟骨・腱鞘内に多量のムコ多糖体の沈着を認めた.症例を供覧し文献的考察を加えて報告した.

重度脳性麻痺の股関節脱臼について—とくに側彎症との関連性について

著者: 奥野徹子 ,   井上明生 ,   浅倉敏明 ,   中尾祥史 ,   日野紀典

ページ範囲:P.203 - P.207

 抄録:2歳から24歳(平均14.5歳)の重度脳性麻痺61名について運動発達,股関節拘縮のパターンおよび側彎症と股関節脱臼との関連性を調査した.
 結果:①寝たきり群では脱臼21股,亜脱臼9股(37%)認められたのに対して,坐位や移動可能群では脱臼,亜脱臼合わせて5股(12%)であった.②左右別では右に脱臼が多かった.③異常股は多く内転・内旋優位を示した.④亜脱臼は6歳以後に,脱臼は10歳以後に発生するものが多かった.⑤構築性側彎症は脱臼・亜脱臼中の17例(63%)に認められ,14例は左凸腰椎型で脱臼度との関連性が認められた.

関節炎様症状を呈した踵骨のOsteoid osteomaの2例

著者: 面川庄平 ,   高倉義典 ,   三井宜夫 ,   宮内義純 ,   鶴薗雅史 ,   増原建二 ,   上野裕三 ,   立松昌隆

ページ範囲:P.209 - P.214

 抄録:発生部位としてまれである踵骨のosteoid osteomaの2例を経験した.その臨床症状は足関節周辺の腫脹,運動時痛などの関節炎症状を呈し,そのうえ捻挫を契機として発症したため診断に難渋した.また,発症早期に単純X線像でnidusは描出されなかった.足根骨のような短骨に発生した場合,早期に単純X線像のみで腫瘍を発見することは困難であり,頻回の撮影や多方向からの撮影,あるいは断層撮影が必要である.関節の近傍に発生したosteoid osteomaが関節内に波及していないにもかかわらず,関節に滑膜炎を惹起する機序についても考察した.

大腿骨遠位部関節内骨折に対する閉鎖式Zickel supracondylar systemの使用経験

著者: 平石誠 ,   永島実 ,   久保田耕造

ページ範囲:P.215 - P.220

 抄録:大腿骨遠位部骨折は,この部位の髄腔が広いこと,骨皮質が薄いこと,bone stockが少ないこと,骨粗鬆症のある高齢者に多いことなどの観血的治療に不利な要素が多い.これらを克服するため1977年にZickelは新しい内固定法を発表した.今回われわれは観血的整復を要する関節内骨折を伴う3例(両側例1例)の大腿骨遠位部骨折に対しZickel supracondylar systemを用いて治療を行い満足すべき結果を得た,Zickel釘は他の内固定法と比べ次のような特徴を有している.①適度な固定力と弾力性を合わせ持つため,早期離床を要する骨粗霧症のある高齢者にも十分な効果を発揮する.②閉鎖的に行えば手術侵襲が少なく,出血量も少ない.③手技が容易なので手術時間も短い.④釘の遠位端が螺子固定されるので,骨折部で短縮がおこりにくい.⑤釘の遠位端が抜け出てこない.⑥抜釘も容易である.以上のような優れた特徴により,今後とも普及してよい手術法と思われる.

大腿骨頸部病的骨折を伴った成人発症型低燐血症性骨軟化症の1例

著者: 長谷川良一 ,   濱淵正延 ,   村瀬徹哉

ページ範囲:P.221 - P.225

 抄録:成人発症型本態性低燐血症性骨軟化症は比較的稀でcontrolすることは困難である.今回我々は,本症に左大腿骨頸部病的骨折を合併し手術療法と1α-OH-D3 13μと燐酸塩(グリセロリン酸カルシウム6.6g)投与により血清Ca,P,Alpが正常化した1例を経験したので報告する.症例は48歳,男性,大工であり昭和59年11月14日左股関節痛を主訴として入院された.昭和59年12月11日上記診断にて手術施行(AO condylar plate固定)した.術後より1α-OH-D3と燐酸塩を投与し術後3ヵ月後に血清Ca,Pが正常化し,血清Alpの正常化には1年を要した.左大腿骨頸部病的骨折は骨癒合が得られ,現在はADL上支障なく元職に復帰している.

高度の膝蓋骨骨破壊を来した色素性絨毛結節性滑膜炎の1症例

著者: 中村巧 ,   畑田和男 ,   井口竹彦 ,   森本聡 ,   増田頼昭 ,   鳥巣岳彦

ページ範囲:P.227 - P.231

 抄録:症例は72歳女性.主訴は右膝の疼痛及び腫脹.昭和53年より,特に誘因なく軽度の右膝痛が出現した.昭和58年より右膝腫脹も現れるようになり,某医にて黄色関節液を吸引した.以来,関節穿刺の頻度は増加し,昭和60年より血性液となる.昭和61年には暗赤色血性液となり,同年4月に当科に入院となる.X線的には,膝蓋大腿関節面に著明な骨破壊を認めた.手術はPayrの皮切にて展開した.結節状腫瘤は,膝蓋骨外側及び内側縁,及び膝蓋下脂肪組織周囲に認められ,結節部は膝蓋骨破壊部分に一部接していたが,容易に剥離することができた.滑膜切除及び膝蓋骨摘出術を行った.臨床所見,手術所見,組織学的所見よりPVSと診断した.PVSによる骨破壊発生機序には諸説があるが,本症例では腫瘤の圧迫による二次性の変化とする圧迫説を示唆する所見であった.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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