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症例検討会 骨・軟部腫瘍8例
〔症例3〕左大腿部骨格外骨肉腫
著者: 伴聡1 土橋洋1 福田利夫1 町並陸生1 篠崎哲也2 千木良正機2 宇田川英一2
所属機関: 1群馬大学第二病理 2群馬大学整形外科
ページ範囲:P.720 - P.722
文献購入ページに移動1972年頃から左膝蓋下にクルミ大の硬い腫瘤があることに気付いた.1982年4月某病院を受診し,この腫瘤を切除した)その時のX線写真では,膝蓋骨直下に骨化陰影が見られた.病理組織学的診断は,膝蓋下脂肪体にみられた組織修復過程における骨化であった.H. E.標本では,細胞成分の少ない線維性組織の中に骨形成が見られ,別の部位では,弱好酸性の均質に染まる豊富な膠原線維と小型の細胞質に乏しい紡錘形細胞が見られた.1985年12月頃に,左大腿部に骨化を伴う腫瘤が出現した.左大腿部X線写真(図3-1)で,左大腿骨の下部骨幹部周囲に腫瘍陰影が見られた.左大腿部CT(図3-2)で,大腿骨の周囲軟部組織に腫瘍陰影を認め,一部では骨と同じ密度を示していた.また,テクネシウムシンチグラフィーでは,左大腿部に集積像が見られた.1986年3月頃,臨床的に化骨性筋炎が疑われ,5月に試験切除が行われた.その時の病理組織では,弱拡大で,中心部から辺縁の筋肉に腫瘍組織が見られた.その中心部では,骨形成が見られるが,辺縁部にいくにしたがって,骨形成が少なくなり,腫瘍細胞が密に増生していた.中心部を拡大して見ると,形成された比較的分化した骨の間に,残存した筋細胞が見られ,異型細胞は全く認められなかった.辺縁部を拡大して見ると,比較的軽度の異型を示す紡錘型の細胞が,粘液性の間質を伴って増生し,類骨を形成していた.また,別の部位には,異型・多形性の目立つ未分化な腫瘍細胞が密に増生しており,ここでは骨あるいは類骨形成は見られなかった.
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