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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科23巻7号

1988年07月発行

雑誌目次

巻頭言

第3回日本整形外科学会基礎学術集会を開催するにあたって

著者: 下村裕

ページ範囲:P.809 - P.810

 日本整形外科学会基礎学術集会は,本年ではや第3回目をむかえることになりました.第1回は野村進会長のもと金沢で,そして第2回は榊田喜三郎会長により京都で開催され,いずれも大成功裡に終了しております.それは応募演題数(第1回366題,第2回570題),参加人員数(各々1200余名)にもはっきり表れております.
 さて今回は昭和63年9月1,2日の両日,東京日本都市センター,全共連ビルおよび海運倶楽部で開催する予定であります.あいにく,本年は9月初旬に国際リハビリテーション学会,SEAPALなどが開催される関係上,1日(木),2日(金)と平日を利用するしかなく,そのため皆様に不便をおかけ致すことも多いかと存じますが,できるだけ多くの会員,非会員の皆様のご参加を願っております.

論述

腰部変性後彎の力学的考察,X線学的検討—骨盤傾斜と股関節への影響を中心に

著者: 岩原敏人 ,   竹光義治 ,   渡壁誠 ,   後藤英司 ,   柴田稔 ,   熱田裕司 ,   今井充 ,   原田吉雄

ページ範囲:P.811 - P.819

 抄録:支持組織の老化,変性により腰椎部の前彎が消失または後彎化した腰部変性後彎を全脊柱立位X線の計測,および,股関節周囲筋の筋電図学的研究等より骨盤や股関節に及ぼす影響を検討した.腰椎の後彎化とともに,直立時骨盤前傾の減少,股関節の過伸展,股関節の仙骨に対する前方移動が認められ,胸椎後彎角は多くは減少ないし前彎化するが,増大するものもあり偏差は大であった.筋電図およびX線像より力学的に算出した股関節に及ぼす合力は高度の腰部変性後彎では正常の約5倍となるものがあった.さらに臼蓋前方のかぶりの減少より骨頭頭頂部の応力集中が推定された.腰部変性後彎は重心の前方移動が生じ,このため隣接する胸椎や骨盤に代償性の変化が出現する.躯幹重心を後方に少しでも移そうとするため骨盤の後傾化が起き結果的に股関節の過伸展が生じる.このように高度腰曲がりの変化は,股関節に及ぼす負担を増大する結果となると推察した.

骨肉腫に対する化学療法

著者: 鈴木勝美 ,   稲田均 ,   横角健二 ,   須藤啓広 ,   館靖彦 ,   荻原義郎

ページ範囲:P.821 - P.827

 抄録:【目的】1951年以降当教室で治療された骨肉腫症例(46例)を調査し,骨肉腫の治療成績の向上における化学療法の役割を検討した.
 【対象症例】1951〜1975年までに治療され,治療は外科的治療が主体であった症例は20例(control群)であった.それに対し,1976年以降系統的な化学療法が行われた症例は26例(化療群)であった.この化療群のうち術前にADRの動注と術後にCompadri-IIIが行われた症例は9例(Compadri群)であり,術前・術後を通じてT-7あるいはT-10protocolに準じた化学療法が行われた症例は17例(T-protocol群)であった.

半月縫合の予後

著者: 西野仁樹 ,   河合従之 ,   福林徹 ,   宮川俊平

ページ範囲:P.829 - P.836

 抄録:半月損傷45例47膝に対し,半月縫合を実施し,その短期臨床成績(平均術後経過観察期間29ヵ月)を,調査した.成績は,良好で,重篤な合併症はなかった.早期に荷重および可動域訓練を開始するリハビリテーション・スケジュールを適用したが,訓練中に再断裂を来した例は無く,おおきな問題は無かった.半月縫合の適応,手技について若干の知見を述べた.

膝前十字靱帯再建術のリハビリテーション

著者: 安田和則 ,   青木喜満 ,   黒沢秀樹 ,   富山有一 ,   大野和則 ,   平岡正毅 ,   計良基治 ,   大越康充 ,   田邊芳恵

ページ範囲:P.837 - P.846

 抄録:独自の基礎的研究に基づいた膝前十字靱帯再建術のリハビリテーションプログラムを紹介した.これは術前期と,活動性の程度によって分けられた術後第1期から第6期の,計7つの時期に分けられ,最終的には競技スポーツレベルの活動性への復帰をめざしている.本プログラムは,大腿四頭筋に対して術後早期より70以上屈曲位での最大等尺性収縮訓練と膝伸展位近くでの大腿四頭筋・ハムストリングス同時最大等尺性収縮訓練を行わせるなど,種々の積極的な筋力訓練を取り入れている.本プログラムで治療した男11,女8,合計19人の,術後1年時における大腿四頭筋トルクの対健側比は男性83%,女性67%,ハムストリングストルクの対健側比は男性89%,女性67%であった.本リハビリテーションプログラムは術後の膝安定性の獲得を損なうことなく,筋力および可動域の獲得において従来のそれより優れた効果を認めた.

手術手技シリーズ 関節の手術<下肢>

Lord式セメントレス人工股関節手術

著者: 一青勝雄

ページ範囲:P.847 - P.856

はじめに
 1979年よりLord式セメントレス人工股関節を使用し,現在までに127症例,146関節に施行した.この人工股関節は,1975年にフランスのLord教授が開発したものであり,表面を小球状に加工したmadréporique typeのstemと,elipsoid(円錐型)で4条のネジ山を持つ金属ringにHDP cupを嵌め込むmetal back形式の臼蓋componentより成る.その後stress shieldingの問題などからstem先端を滑らかにしたMark II typeが作られ,次いでrevisionの際に抜去が困難なことから,madréporique typeをやめ,1985年より縦にslit状に加工したpolarisée typeに変わり現在に至っている(図1).本邦ではまだpolarisée typeが発売されておらず,現在はMark II typeを用いている.以上今までにデザインの改良が成されて来たが,臼蓋componentはネジ込み式ringのmetal back形式であり,stemも大腿骨頸部に直角に接し,calcar部で水平に荷重を支え,骨髄腔でtotal contactする設計であることは一貫して変更されていない.
 今回今までの8年間の経験に基づき,手術術式を中心に記載する.

手術手技 私のくふう

胸椎,腰椎損傷に対するPedicle Screw Fixation法

著者: 塚原茂 ,   大谷清 ,   柴崎啓一 ,   中井定明 ,   吉田宗人 ,   根元健二 ,   河野亨

ページ範囲:P.857 - P.864

 抄録:胸椎,腰椎脱臼骨折6例にpedicle screw fixation法を行い,術前,術後,調査時にX線像にてdisplacementとangulationを計測し,本法の利点と欠点および適応について検討した.
 調査時,displacementの増強はみられなかったが,angulationの矯正喪失は平均7.8度みられ,特にT4/5損傷例に21度と最も多くみられた.

整形外科を育てた人達 第61回

Friedrich Daniel von Recklinghausen(1833-1910)

著者: 天児民和

ページ範囲:P.866 - P.869

 v. Recklinghausenの名は我々整形外科医にとって彼の発表した疾患Neurofibromatosisと更にPolyostotic fibrous dysplasiaの二疾患により忘れることのできない人である.又,整形外科領域の病理学上重要な人材であった.ドイツ病理学会でも重視された証拠に彼の死後病理学会誌に詳しい彼の伝記が発表されている.

認定医講座

脊髄腫瘍

著者: 渡部恒夫 ,   平松健一

ページ範囲:P.871 - P.877

 脊髄腫瘍の定義には混乱があり原発性脊椎腫瘍および転移性脊椎腫瘍をも含む考え方もあるが,ここでは脊椎腫瘍を除いた脊髄,硬膜,神経根,硬膜外腔組織の一次性あるいは二次性の腫瘍として扱う.

脊椎分離・すべり症

著者: 若野紘一 ,   平林洌

ページ範囲:P.879 - P.884

 腰痛を主訴とした疾患の中で,脊椎分離症(spondylolysis)や脊椎すべり症(spondylolisthesis)は,われわれの調査でも合わせて全体の6%と,決して多いものではない.しかし,近年その成因については,学童期におけるスポーツ活動の影響が指摘されるなど徐々に明らかにされ,注目されている(表1).

臨床経験

母指MP関節lockingの2例—種子骨の操作による整復法

著者: 長嶋哲夫 ,   岩瀬方人 ,   高橋健志郎

ページ範囲:P.885 - P.888

 抄録:母指MP関節のlockingについては徒手整復不成功例には観血的整復術が行われている.我々は最近徒手整復困難であった母指lockingの2例を経験し,経皮的に種子骨に操作を加えることにより成功したので報告する.症例は43歳と21歳の男性で,ともに母指を強打した直後よりIP関節軽度屈曲位,MP関節軽度過伸展位に固定されたまま屈曲不能となり受診している.局麻あるいは伝達麻酔下で経皮的に注射針にて橈側種子骨を橈側におし出すようにした状態でMP関節を屈曲させるとSnappingとともに整復された.文献的及び解剖学的にその整復法について検討した.種子骨の末梢ではaccessory lig.が,中枢ではAdductor pollicis,Flexer pollicis brevisが大きく関与していることが推察された.volar plateはこれら動的因子があって始めて静的な障害因子となるものと考えられた.従って種子骨に操作を加えることで,この動的因子を取り除くことによりlockingは解除されるものと思われた.

小児外傷性股関節脱臼の2例

著者: 酒勾大 ,   石井良章 ,   小田由雅 ,   河路渡

ページ範囲:P.889 - P.893

 抄録:小児の外傷性股関節脱臼は,成人のそれに比較して稀で,報告も少ない.我々は,小児外傷性股関節脱臼の2例を経験し,うち1例は比較的長期間経過を観察し得たので報告する.
 症例1は,3歳男子で,転倒により受傷した.徒手整復を行い,3週間の体幹ギプス固定を施行し,後療法を開始した.受傷後8年経過した現在,アンケート調査を行い,臨床上良好な経過をたどっている.

「二分距骨」と考えられる1例

著者: 鴨井清貴 ,   門司順一 ,   飯坂英雄 ,   柘植洋

ページ範囲:P.895 - P.898

 抄録:距骨後方に存在する副核は三角骨として良く知られ,日常診療でしばしば見られる.一方この副核が非常に大きく,他にいくつかの解剖学的特徴を有するものについては,「二分距骨」との名称がつけられ現在までに数例の報告がみられる.従来「二分距骨」として報告されている症例と同様の特徴を有した1例を手術的に治療したので,摘出標本の組織像を含め報告する.

第1,2楔状骨の単独内側脱臼の1例

著者: 長谷川匡 ,   名越智 ,   北村公一 ,   佐々木敏之 ,   水口守

ページ範囲:P.899 - P.902

 抄録:最近,われわれは極めて稀な第1,2楔状骨の単独内側脱臼の1例を経験した.症例は63歳男で,作業中トラクターに左足を挾まれて受傷した.同日,当院救急部に搬入されたが,X線撮影で,左第1,2楔状骨の内側脱臼を認めた.ただちに腰椎麻酔下に徒手整復を試みたが再脱臼の傾向を認めたために,観血的整復術を施行した.直視下に足根骨間の靱帯の損傷が確認された.2本のキルシュナー鋼線で内固定を行い,可及的に損傷靱帯を修復した.術後4カ月の現在,左足関節の可動域はほぼ正常域に回復し,歩行時の疼痛もない.X線像でも脱臼の傾向を認めていない.

成長帯を貫通し骨幹端と骨端にまたがって存在したBrodie骨膿瘍の1例

著者: 森利光 ,   石井清一 ,   薄井正道 ,   横串算敏 ,   吉田強

ページ範囲:P.903 - P.906

 抄録:Brodie骨膿瘍は長管骨骨幹端部に発生することが多い.成長帯を破壊し骨幹端から骨端に病巣がまたがって存在するBrodie骨膿瘍は非常に稀であり,著者が調査し得た範囲ではこれまで19例の報告をみるにすぎない.われわれは,脛骨遠位部の成長帯を貫通し骨幹端と骨端に病巣が存在したBrodie骨膿瘍の症例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.症例は3歳の女児で,6カ月前から出現した左足関節部痛と破行を主訴に近医を受診した.X線上,左脛骨骨幹端から骨端にかけて境界鮮明な透亮像を認め,骨腫瘍の疑いで当科を紹介された.来院時左足関節部の腫脹と熱感があり圧痛を認めた.血沈は中等度に亢進し白血球数は増多していた.骨髄炎の疑いで抗生剤の投与を開始した.入院後病巣を可及的に掻爬し遊離脂肪移植を施行した.術後骨端線の早期閉鎖は生じておらず正常な骨成長がみられている.

再発を繰り返した隆起性皮膚線維肉腫の1例

著者: 安田義 ,   宮崎和躬 ,   松田文秀 ,   松田康孝 ,   奥野雅男 ,   河野弘昭 ,   小橋陽一郎

ページ範囲:P.907 - P.910

 抄録:隆起性皮膚線維肉腫は,単純切除では局所再発を繰り返すことの多い稀な腫瘍である.今回我々は2回の再発を起こした隆起性皮膚線維肉腫の1例を経験したので報告する.
 症例は28歳,女性.1980年10月腰部腫瘤に気付き,1982年5月他院にて摘出術施行.1983年12月腫瘤が再発し,1984年5月他院にて再度摘出術を施行.1986年4月腫瘤再発,12月に当科に入院し広範切除術を施行された.

大腿骨頭壊死に対する血管柄付腓骨移植術の経験

著者: 宮崎憲太郎 ,   山内茂樹 ,   島村浩二 ,   米沢幸平 ,   池田和夫

ページ範囲:P.911 - P.916

 抄録:大腿骨頭無腐性壊死に対して,骨頭の血行再建と陥没の防止を目的として,血管柄付腓骨移植術を行った.症例は特発性1例,ステロイド性2例で,3例ともMarcusの分類でStage 3であった.手術は前方から股関節に侵入し,関節軟骨を病的な部分で切開し,病巣掻爬を行った.大腿骨頸部前面に骨溝を作成し血管柄付腓骨を骨頭内に挿入し,周囲には海綿骨移植を追加した.移植腓骨は7〜8cmでbuoy flapを付け,大腿外側回旋動静脈と吻合した.全例術後2年以上経過している.1例は術後,アルコール依存と対側の骨壊死が出現し,十分な免荷得られず,陥没が進行した.2例は歩行時全く疼痛なく,レ線でも骨頭の軟骨下骨と移植腓骨の間に骨梁の形成を認め,陥没は防止されている.本法は壊死骨頭のrevascularizationと形態保持が期待できる有用な方法である.

境界領域

ブピバカインによる脊椎麻酔で心停止(洞停止)を生じた下肢の整形外科手術の2症例

著者: 重松俊之 ,   宮尾秀樹 ,   佐藤公泰 ,   川添太郎 ,   田崎憲一

ページ範囲:P.917 - P.919

 抄録:下肢の整形外科手術のためブピバカインによる脊椎麻酔を行ったところ心電図上,洞停止を生じた2症例を経験した.原因としてブピバカインによる遅発性の循環系の抑制が考えられ,この麻酔法を行った場合,麻酔直後はもちろん術中,全経過に渡る監視が必要と考える.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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