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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科23巻8号

1988年08月発行

雑誌目次

視座

高齢者社会における整形外科医の役割

著者: 都築暢之

ページ範囲:P.923 - P.923

 われわれ整形外科医の人間社会における役割は,運動器としての人体の機能保持,改善にある.高齢化社会への傾向をとるわが国にあっては,その意義はとくに高い.最近,痛みの無い四肢体幹機能を求めて病院を訪れる高齢者の数が飛躍的に増加し,これら高齢者を対象にした整形外科学をさらに発展させる必要性があることは,本誌視座において,既に中野教授,山本教授らが指摘されたとおりである.
 高齢者整形外科では,機能再建よりも,疼痛除去が主眼となる.私の働く病院は,農村地帯からの患者が比較的多いところであり,変形した脊柱,股関節,膝関節の痛みの対応に明け暮れている.股関節に対しては,手術が可能な肉体的条件のうちに対応が可能である場合が多いが,変形した脊柱,膝関節による疼痛に関しては,かなり高齢になってから病院を訪れる患者が多く,手術を伴う積極的なapproachが困難な場合が少なくない.

論述

下腿軟部組織欠損に対する各種FLAPの検討

著者: 矢島弘嗣 ,   玉井進 ,   水本茂 ,   黄文欽 ,   増原建二

ページ範囲:P.924 - P.931

 抄録:過去8年間に経験した下腿軟部組織欠損の45例に対して移植または移行した各種flapを分析し,手術適応につき検討した.
 調査対象としたflapは,muscle flap 21例,skin flap 8例,myocutaneous flap 6例,osteocutaneous flap 10例の45例で,cross leg flapは除外した.muscle flap以外は全てmicrosurgeryを用いて手術を行った.

神経芽腫骨転移症例の臨床的検討

著者: 田辺政裕 ,   高橋英世 ,   大沼直躬 ,   江東孝夫 ,   真家雅彦 ,   高田典彦

ページ範囲:P.933 - P.937

 抄録:生後1ヵ月から12歳までの神経芽腫症例33例を対象にして,全身骨X線検査及び99mTc-MDPによる骨シンチグラムにより骨転移の検索を行った.33例中20例(61%)に骨転移を認め,同時期に経験した他の小児悪性固型腫瘍の骨転移頻度と比較して明らかに高かった.骨転移例の初発症状は,発熱・下肢痛が最も多く,45%の症例に見られた.これらの症状は,原発巣の腫瘍に由来しないため,診断の遅れる原因となっていた.これは,下肢痛の症状発現から治療が開始されるまでの期間が102日であるのに対して,原発巣の腹部腫瘤では22日であることからも裏付けられた.転移部位は,大腿骨,頭蓋骨,肋骨,骨盤の順で多かったが,骨X線検査での検出率はわずか15%であった.神経芽腫骨転移を骨X線検査だけで診断することは困難で,原因不明の下肢痛を訴える患児に対しては,種々の検査による本症の鑑別が必要である.

椎間関節ブロックによる腰痛の分析

著者: 細川昌俊 ,   加藤哲也 ,   横井秋夫 ,   安藤千博 ,   木原正義 ,   橋本健史 ,   斉藤正史

ページ範囲:P.939 - P.946

 抄録:腰痛は病理学的変化を基盤として発症することは勿論であるが,神経分布を考えるとき椎間板周辺または椎間関節周辺から発症する腰痛があると思われる.両者を鑑別する目的で,腰痛患者57例89関節に椎間関節ブロックを行った。後屈・寝返り・起立時および正座位のように椎間関節に負荷が増大する動作や姿勢で増強する腰痛に対してはブロック有効例が多く,立位・胡座位・前屈および歩行時の腰痛には無効例が多かった.疾患別での有効性は,急性腰痛症・いわゆる腰痛症・変形性脊椎症・脊椎分離症・脊椎辷り症の順で,椎間板ヘルニアや椎間板症の腰痛には無効例が多かった.しかしながら,同一病名でも動作の種類によって効果が異なり,また,同一動作でも疾患によって効果は必ずしも同一ではなかった.以上の結果は腰痛の治療に際して,病名にとらわれることなく腰痛を増強させる動作や姿勢も考慮に入れて,きめこまかく処方すべきであることを示唆する.

踵骨前方突起骨折の7例

著者: 伊藤博一 ,   大薮直子 ,   杉浦譲 ,   鈴木博

ページ範囲:P.947 - P.953

 抄録:昭和61年1月1日より昭和62年2月28日までの1年2ヵ月間に,いわゆる足首の捻挫を起こして名鉄病院整形外科を受診した症例は78例で,そのうち踵骨前方突起骨折は4例5.1%の頻度であった.この4例に湖西総合病院の3例を加えて検討した1性別は女4例,男3例で,年齢は12歳から60歳まで平均43.9歳であった.受傷機転としては足部の底屈2例,内反3例,転落1例,不明1例で,X線所見としては,我々の考案した20〜30°の足部内がえし撮影法にて骨折を確認したものが多かった.治療としては,新鮮例では2〜5週間のギプス固定を行ったものが多く,陳旧例では経皮消炎鎮痛剤の投与やステロイド剤の局注にて全例経過良好であった.本骨折のX線診断には足部内がえし撮影法が有用であり,また本骨折はその発生機転およびX線所見により皮質剥離型,舌状剥離型,圧挫型の3型に分類できることを強調した.

小児スポーク損傷

著者: 吉村一穂 ,   赤堀治 ,   近藤陽一郎 ,   橋詰博行 ,   楠戸康通 ,   三宅俊行 ,   井川晴友 ,   妹尾則孝 ,   越宗義三郎 ,   久葉春彦

ページ範囲:P.955 - P.961

 抄録:自転車の車輪に足部をはさまれて生じるスポーク損傷について検討した.症例は8年間に142例,年齢は1-9歳,男63,女79例,右48,左94例,骨折の合併7例である.われわれは,本外傷を受傷部位と創の状態から,後足部がスポークにはさまれて同部外側面から後面に擦過創,裂創,弁状創を生じる後足型と尖足位で前足部からスポークに巻き込まれ,足背に擦過創を生じる前足型に分類している.症例は後足型130,前足型12例であった.治療としては創縫合36例,植皮4例,その他は創傷の処置を行い,7例の骨折例はギプス固定により骨癒合が得られた,機能的予後は良好であるが肥厚性瘢痕となりやすく,これが靴の当る部位に生じ疼痛の原因となることも少なくない.本外傷の完全防止のためには現行のカバーを後輪を支えている水平のフレームのところまで拡大する必要があろう.

手術手技シリーズ 関節の手術<下肢>

二重カップ関節形成術

著者: 奥村秀雄 ,   山室隆夫

ページ範囲:P.963 - P.968

はじめに
 二重カップ関節形成術(Bipolar hip arthroplasty)は,まだ10年程度の臨床成績が得られつつあるところであるが,その構造上の特徴により,従来のMoore型人工骨頭置換術より優れていることが認められてきている2),Bipolar型人工骨頭は,生体内で臼蓋と金属のouter headとの間とHDPのbearing insertと金属のfemoral headとの間の2個所に可動性を有している.その構造上の特徴から,頸部骨折の他に変形性股関節症にも適応されている3,8,10).京都大学整形外科においては,Bateman UPF II型(図1)のBipolar hip arthroplasty1,5,11,12)を施行しているので,その手術術式について述べる.
 手術術式は,大転子を切離しない後側方の進入法と大転子を切離する側方の進入法とに大別される.臼蓋の形態が正常で関節軟骨が温存されている大腿骨頸部骨折や大腿骨頭壊死症(avascular necrosis of femoral head:ANF)には,大転子を切離しない後側方進入法を用いている.一方,臼蓋のリーミングの処置と臼蓋縁の骨移植術の併用が必要な変形性股関節症には,大転子を切離する側方進入法を用いている.

認定医講座

脊椎のバイオメカニクス

著者: 若野紘一

ページ範囲:P.969 - P.975

 バイオメカニクス(生体力学)は,生体および生体材料の力学的挙動を種々の工学的手法で解析する分野である.この手法を用いて力学的機能を多分に持っている脊椎の機能を解析することは,臨床面からも非常に有用なことである(表1).

足部変形

著者: 山本晴康

ページ範囲:P.977 - P.982

 足部変形は先天性,麻痺性,後天性に分けられ,荷重に支障を来し,立位,歩行,走行の障害となり,足部痛,膝関節痛,腰痛の原因となる.

整形外科を育てた人達 第62回

Martin Kirschner(1879-1942)

著者: 天児民和

ページ範囲:P.984 - P.987

 Martin Kirschnerは整形外科医ではない.世界的にも有名な外科医である.しかし四肢の外科には大きな貢献をしている.特にKirschnerの考案したDrahtextensionの装置は今日も盛んに用いられ,これに使用する細い鋼線は耐錆性も強く色々な骨折手術に使用されK-wireと言われている.又,1936年私の留学中各地の大学を訪れたがHeidelbergではKirschner教授にも会って手術の見学もした.その後Munchenに行きMax Lange教授に会って色々と話をしていた時に私がHeidelbergでKirschnerの手術も見学して来たと言ったところ,Max Langeは突然KirschnerはOrthopaeden Fresserだと言う.その理由は整形外科の領域を食い荒すからだと説明するのを聞いたが,半世紀を過ぎた今日でもその時のことを時々思い出している.KirschnerはKocherと同様に四肢の外科に多くの業績を残しているので整形外科の進歩に無視できない外科医である.

臨床経験

妊娠・出産を契機として発症したKasabach-Merritt症候群の1例

著者: 宮田義之 ,   花岡英彌 ,   矢部哲夫

ページ範囲:P.989 - P.992

 抄録:Kasabach-Merritt症候群は,大半が乳幼児に発症する.しかし非常に稀ではあるが,妊娠・出産を契機として発症する例の報告がなされている.今回我々は,妊娠・出産を契機として発症したと思われるKasabach-Merritt症候群を経験したので,若干の文献的考察を加え報告する.
 症例は26歳女性で,妊娠8ヵ月で右大腿外側の腫瘤を主訴として発症し,出産後紫斑が出現した.精査の結果,血小板減少が見いだされ,更に右大腿内側の腫瘤の生検で,capillary hemangiomaの所見が得られ,Kasabach-Merritt症候群と診断した.

右前腕に発生した好酸球性筋膜炎の1例

著者: 桃原茂樹 ,   伊藤恵康 ,   堀内行雄 ,   湯沢喜志雄 ,   矢部啓夫

ページ範囲:P.993 - P.996

 抄録:40歳女性の右前腕に発生した好酸球性筋膜炎の症例である.2年8ヵ月前から徐々に増大する右前腕の腫脹,熱感,硬結を主訴として来院した.来院時右前腕の伸・屈側ともに硬結腫脹があり,手指・手関節・肘関節の軽度の運動制限がみられた.臨床検査上,末梢血で好酸球増多,免疫グロブリンIgGの増加があり,生検では筋膜と筋膜下に灰白色の肉芽様組織がみられた.病理学的には,主として筋膜にリンパ球を主体とする細胞浸潤を認めた.治療は,predonisoloneを1日30mgより投与し,漸次減量したが,投与開始直後より腫脹,熱感,硬結の改善がみられ,各関節の可動域も改善した.治療開始後1年経過した現在,経過は良好であり,症状の再燃もない.

部分欠損を示した小児の膝関節外側円板状半月板の1例

著者: 森繁 ,   熊谷純 ,   鳥越紘二

ページ範囲:P.997 - P.1000

 抄録:症例は12歳女.主訴は左膝関節の伸展制限と雑音.関節鏡検査で外側完全円板状半月板がみられ,これを関節切開により全切除した.この半月板には中—後節の外周縁部に長楕円形の欠損と前節部に褐色の色素沈着および中節部に小水平断裂がみられた.欠損部に面する半月板辺縁は極めて平滑であった.この欠損がperipheral detachmentの結果生じたものか先天性に存在したものかが問題であるが,肉眼所見および組織学的所見から,この半月板の欠損は先天性に存在し,その一部,すなわち前—中節部に最近小外傷が加わり,そこに実質の修復反応と欠損部に面した部分に小水平断裂が生じたと考えるのが最も考えやすいと思われた.

関節リウマチ患者にみられた重症筋無力症の4例

著者: 藤森十郎 ,   吉野槇一 ,   梶野明英 ,   小岩政仁 ,   中村洋 ,   岸本真

ページ範囲:P.1001 - P.1006

 抄録:重症筋無力症(MG)が関節リウマチ(RA)と合併することは良く知られており,MG農者中のRA合併頻度についての報告も数多くある.一方,RA患者中のMG合併頻度については,殆ど報告されていない.現在までに我々は,当科にて追跡し得ているRA患者約600例中の4例(2例は既報告)にMGを経験したので報告する.症例1:32歳,女性.1970年にMGと診断.71年頃より手関節炎を生じるも放置.75年に胸腺腫に対しコバルト照射がなされ,その5年後にRA増悪.症例2:52歳,女性.1976年にRA発症.81年よりD-ペニシラミン(D-Pc)投与が開始され,その3年後にMG発症.ただちにD-Pc中止し,MGの治療を開始するも,RA,MGとも現在まで持続している.症例3,4:いずれもD-PcによるMGと考えられる症例.年齢は39歳と66歳で女性.D-Pc投与後にMG発症(39歳例は200mg/日投与5カ月後,66歳例は100mg/日投与3年後).ただちにD-Pcを中止し,MGの治療を開始したところ,MGは速やかに軽快した.

骨頭骨折を伴う外傷性股関節脱臼の治療経験

著者: 大野憲一 ,   石田文夫 ,   金谷整亮 ,   辻充男 ,   中林幹治 ,   松井英互

ページ範囲:P.1007 - P.1012

 抄録:〈目的〉骨頭骨折を伴う外傷性股関節脱臼7例について.主に骨頭の経時的変化と股関節機能の分析を行い,本外傷の治療方法を検討した.〈症例〉昭和44年から昭和60年までに経験した外傷性股関節脱臼40例のうち,骨頭骨折を伴うものは7例であった.受傷時年齢は,平均30歳,追跡期間は,平均8年2カ月である.受傷原因は全例交通事故で,脱臼型式は全例後方脱臼であった.〈治療・結果〉治療は,骨頭骨片の骨接合を行ったもの3例,摘出したもの3例,放置したもの1例であった.その成績をEpsteinの基準で評価すると,Excellent 3例,Good 2例,Fair 1例,Poor 1例であった.〈まとめ〉骨接合を行った3例は,いずれも骨頭変化は軽微で良好な結果を得ている.今回の結果から,可能な限り骨頭骨片の骨接合を行い,非荷重部で骨片が小さい場合は摘出するのが良いと考えた.

脊髄空洞症を合併した頸髄髄内ependymomaの1例

著者: 中山威知郎 ,   四方實彦 ,   䄅公平 ,   飯田寛和 ,   山室隆夫 ,   米川泰弘 ,   金榮治

ページ範囲:P.1013 - P.1016

 抄録:脊髄空洞症を合併した頸髄髄内ependymomaの1例を経験したので報告する.
 症例は,25歳男性で四肢運動障害を主訴として来院した.ミエログラフィー及びMRIにて第2,第3頸髄レベルに髄内腫瘍とこれに伴う第3頸髄レベルから第7頸髄レベルに及ぶ脊髄空洞症と診断された.

Free vascularized fibular graftingによる頸椎前方固定術とその問題点

著者: 住浦誠治 ,   土井一輝 ,   桑田憲幸 ,   酒井和裕 ,   伊原公一郎 ,   河合伸也

ページ範囲:P.1017 - P.1021

 抄録:頸椎椎体削開術後の前方固定に対して,確実な骨癒合,強固な支持性を得る為に血管柄付腓骨移植術を6例に施行した.
 原因疾患の内訳は,頸椎症性脊髄症2例,頸椎後縦靱帯骨化症4例であり,固定椎間数別では,3椎間固定が5例,2椎間固定が1例であった.術後経過観察期間は2カ月〜2年6カ月であり,術後早期の1例を除き,術後2.5カ月〜5カ月,平均3.4ヵ月で骨癒合を得,また臨床的にも満足する成績を得ている.移植骨中央部と椎体との癒合については,muscle sleeveが介在していたにも拘らず術後1年8カ月のCTにて骨性の癒合を確認できた.問題点として術野が狭く深い為に血管吻合が幾分困難であること,術後頸部の血腫形成,また1例に母床側の圧潰による固定椎間高の軽度減少を認めた.しかし確実かつ早期の骨癒合と支持性という点で,多椎間レベルの頸椎前方固定に対し,血管柄付腓骨移植は有効な方法であると考えている.

黄靱帯骨化を伴った胸椎椎間板ヘルニアの2例

著者: 松井稔 ,   林春樹 ,   岡田孝三 ,   細谷徹 ,   大西啓一

ページ範囲:P.1023 - P.1027

 抄録:胸椎椎間板ヘルニアに黄靱帯骨化(以下OLFと略す)を合併した2症例を経験したので報告する.症例1は35歳男性,歩行困難と下肢知覚障害を主訴として来院した.CT myelography(以下CTMと略す)とCT disco graphyにてTh12/L1の椎間板ヘルニアと診断した.症例2は63歳男性.歩行困難と排尿障害を主訴としていたが,癩病に罹患していたため診断に難渋した.CTMでTh11/Th12とTh12/L1の2椎間において椎間板による前方圧迫を認めた.興味あることは,共にCTにてOLFによる脊柱管狭窄を認めたことであった.前方除圧と固定.簡便な装具による早期離床で軽快退院した.本病態の正確な診断には,CTMが有用であり,脊髄は前方から椎間板ヘルニアにより,後側方からOLFにより圧排され,V字型を呈していた.本2症例は,OLFによる脊柱管狭窄症を基盤とし,椎間板ヘルニアが契機となってmyelopathy発症に至ったものと考えられた.

脊柱に変形を有する成人二分脊椎にみられた問題点について

著者: 飛松好子 ,   初山泰弘 ,   二瓶隆一 ,   木村哲彦 ,   鷹野昭士 ,   陶山哲夫

ページ範囲:P.1029 - P.1032

 抄録:脊柱に変形のある成長の終了した二分脊椎者の随伴変形と問題点について調べた.対象は国立身体障害者リハビリテーションセンター更生訓練所に入所した二分脊椎11例で,男子3例,女子8例であった.年齢は18歳から53歳で,平均24.3歳であった.二分脊椎高位はT11からS1にわたった.
 まとめ:1.側彎変形が10例に,腰椎前彎のみの変形が1例にみられた.2.側彎変形のある者,全例に骨盤傾斜が見られ,側彎凸側への骨盤傾斜,反対側の股関節脱臼,又は亜脱臼を有する者が多かった.3.骨盤傾斜側の坐骨部は褥創の好発部位である.4.坐位バランス不良例がみられ,褥創とともに作業訓練上,妨げとなった.

腰部脊柱管狭窄症を伴った偽性偽性副甲状腺機能低下症の1例

著者: 竹田谷寛 ,   橋本淳 ,   広瀬哲司 ,   岡田幸也

ページ範囲:P.1033 - P.1037

 抄録:偽性偽性副甲状腺機能低下症はAlbright骨異形成症とよばれる身体所見を有しながらカルシウム・リン代謝の異常を示さない.我々は,脊柱管狭窄症を伴った稀な本症例を経験した.症例は54歳女性で,腰下肢痛と歩行障害を主訴として来院した.身長140cm体重55kgで円形顔貌を認めた.X線上中手骨・中足骨等の短縮と皮下組織の石灰沈着が存在した.血清CaとPは正常で,PTHは高値を示さず,Turner症候群に一致する性染色体異常も認めなかった.Ellsworth-Howard試験ではリン酸反応は26.7mg/2時間で尿中cyclic AMP増加反応は陽性であった.EDTA負荷試験で血清Caの回復をみたが,血中PTHは0.3ng/ml以下であった.
 腰下肢症状に対して保存的治療を行ったが症状は軽快せず,腰椎椎弓切除術を施行した.術後,症状は軽快し,腸骨生検では組織学的に異常を認めなかった.

学会印象記

第14回全米脊髄損傷学会に出席して

著者: 里見和彦

ページ範囲:P.983 - P.983

 第14回ASIA(American Spinal Injury Association)学会が1988年5月2日から4日まで,アメリカ西海岸の風光明媚な地,サンディエゴのホテルでDonovan会長のもとで開催された.本学会は日本ではほとんど知られていないため,今回の我が国からの出席者は釼持,上田両氏(国立療養所村山病院),福井氏(国立東京第二病院)と小生のグループ4名のみであった.日本のパラプレジア学会にあたるような学会であるが,医師(整形外科医,脳外科医,泌尿器科医)のほかにPT(理学療法士),OT(作業療法士),看護婦,心理学者も出席して,医師と併列して発表していた.なおアメリカにも他に全米パラプレジア学会,全米リハビリテーション学会があり同じような演題が発表されているとのことであった.
 今回の学会には,180題の応募があり,うち85題が口演に,54題がポスター発表として採用されていた.口演会場は2会場で,発表が10分,質疑が5分と余裕のある学会運営で,出席者は約400名であった,一般演題は大きく16のsessionにわかれ,各sessionとも5〜6名の発表がすんでから台上で一括討論が行われた.各sessionの内容は,1.general medical topics,2.cervicai spine surgery,3.psychosocial issues,4.diagnostic imaging,5.functional restoration,6.sexuality/fertility,7.outcomes,8.thoracolumbar spine surgery,9.trauma and reconstruction surgery,10.urologic care,11.central cord syndrome,12.respiratory care in SCI,13.prevention,14.american paraplegia society papers-1987,15.research forum,16.therapeutic recreation symposium,であったが,出席層の関係から脊髄損傷の予防,診断,外科的治療,リハビリテーションと多岐にわたっていた.バイオメカなどの準基礎的な発表が少ないことも特色であった.特に印象に残ったものは,session 5の両下肢完全麻痺患者に対し,膝伸展,屈曲筋および股外転筋を電気刺激し約1時間の歩行を可能とするシステムや,従来の大腿からのgait orthosisに改良を加え,より実際に則した歩行を可能にする発表があった.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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