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視座
脳の死と人間の生の問題について思うこと
著者: 立石昭夫1
所属機関: 1帝京大学
ページ範囲:P.1041 - P.1041
文献購入ページに移動従来人間の死は,心停止,呼吸停止,瞳孔散大,対光反射の消失をもって判定されてきた.そして全脳の死は数分あるいは長くても数時間のうちに確実に心臓死に至るので,これを区別することにそれほど大きな意味がなかった.しかし近年の人工呼吸器を始めとするすぐれた生命維持装置の発達はこれを数日から2週間の程度まで延長することを可能にした.更に将来はこれを数カ月あるいは数年のオーダーにまで延長することを可能にするかもしれない.ここでいわゆる植物状態は脳の死とは区別されなければならない.これは思考,情緒,感覚,運動といった大脳の機能は失われているが,生命維持にかかわる脳幹の機能は完全にあるいは不完全にしろ残存した状態であるからである.
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