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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科24巻10号

1989年10月発行

雑誌目次

視座

経皮吸収局所作用型非ステロイド抗炎症剤の現在・過去・未来

著者: 菅原幸子

ページ範囲:P.1125 - P.1125

 現在,整形外科領域において経皮吸収局所作用型非ステロイド抗炎症剤(以下経皮吸収非ス剤と略す)は,かなり広範に使用されている.しかしこの経皮吸収非ス剤の使用は適応疾患の主たる治療法となるか,どうか疑問な所がある、すなわち非ステロイド経口剤投与との併用,あるいは湿布剤として使用されている感がある.少なくとも患者においては"湿布薬を下さい"と表現する人が多い.
 経皮吸収外用剤の過去をふりかえってみると,古代では手足の打撲傷や痛みの緩解に手当りしだいに草根木皮を使用し,その長い使用経験から自然界にある有用な物質と,その使い方が伝承され,選択・改良され軟膏剤と貼付剤に分別されて来た.軟膏療法は軟膏基剤の中に含まれている薬物を直接皮膚病巣に働かせて治療効果を期待するものではなく,むしろ外因が,その発生に大きな役割を占めているので,この外因からの保護が大きな目的であった.一方貼付剤は,パップ剤,硬膏剤,湿布に使用する罨法用薬剤の区別は極めて漫然としたもので,18世紀後半にパップ剤という言葉が日本に伝えられ,使用前に加温して布の上に展延し皮膚に貼付し,水分と熱との存在下に薬物を作用させ,抗炎症と誘導刺激作用による疼痛緩解を目的としており,1965年以来"成形パップ剤"として発展して来た.日本においても,ほんの少し前まで草の葉・根を叩いたり,揉んだりして貼ったり,辛子や酢を入れた"ウドン粉"を練って塗布していた.これらの長い歴史の基盤の上に,現在の経皮吸収非ス剤が存在している.

論述

リウマチ手関節破壊の自然経過における尺骨頭の意義

著者: 政田和洋 ,   越智隆弘 ,   岩瀬六郎 ,   脇谷滋之 ,   大脇肇 ,   小野啓郎

ページ範囲:P.1126 - P.1133

 抄録:発症後10年以上経過したRA 71人,134手関節の最終形を5型に分類し,越智の発表したRAの病型分類との相関を検討した結果,1)RA手関節破壊の自然経過は病型分類とよく相関し,2)重症病型においては尺骨頭が自然経過に大きな影響を与えていることが判明した.RA手関節の著明な骨破壊,脱臼を防止するものは,遠位橈尺関節における骨性支持と,triangular fibrocartilage complex(TFCC)を中心とした軟部支持組織である.橈骨遠位端に進行性の骨破壊を呈するものは,著明な骨破壊,手関節の脱臼に至る前段階と考えられ,尺骨頭にかかる長軸方向の力が増大する.この様な症例においてはTFCCを含めた尺骨頭が手関節の破壊,脱臼を防ぐ重要な要素になる,この様な症例は重症病型に属するが,尺骨頭の背側脱臼を示した3例と尺骨頭の著明な骨吸収を示した37例はいずれも手関節の著明な破壊,脱臼を示した.

腰椎椎間板ヘルニアに対するChymopapain注入療法の成績

著者: 宮本和寿 ,   守屋秀繁 ,   北原宏 ,   高橋和久 ,   高田啓一 ,   村上正純 ,   三村雅也 ,   高田俊一

ページ範囲:P.1135 - P.1142

 抄録:我々は昭和58年4月以来,腰椎椎間板ヘルニアに対しChymopapain注入療法(CNL)を臨床応用してきた.現在症例数は21例であるが,CNL後手術に至った6例を除く15例につき,成績を短期及び長期経過に分けて検討した.6ヵ月以内の短期経過では,CNL後下肢痛は1ヵ月以内に回復したが,腰痛の回復には3ヵ月を要した.またこの時期は椎間腔の狭小化とその回復期にそれぞれ一致した.CNL前他覚所見の悪いものは回復の期間が遅れる傾向にあった.4年6ヵ月までの長期経過では,CNL後3ヵ月経過群のMRIにて著明な輝度信号低下を認め,以後経時的に回復することが示唆された.CNL後4年までの観察で臨床成績は安定していた.

変性性腰椎側彎—X線学的にみた病態の吟味

著者: 宮坂芳郎 ,   大谷清 ,   柴崎啓一 ,   相原忠彦 ,   山下和夫 ,   佐藤圭子

ページ範囲:P.1143 - P.1149

 抄録:老人における変性腰椎側彎は,比較的よくみられるにもかかわらず,詳細な側彎形態や進行に関する報告は少ない.今回我々は,軽症例を含めた症例のX線上の形態および臨床症状に関して検討を行った.腰部になんらかの愁訴をもつ,立位X線上で椎間の退行性変化による10゜以上の側彎を示す112例を対象とした.その結果,左凸側彎が多く(67.9%),その他short curve(4椎体以下:77.7%),20゜以下のmild curve(74.8%),軽度回旋(grade O〜II:98.3%)などの特徴があげられた.上位腰椎から仙椎にかけては,直線化の傾向があり,その主因は第5腰椎よりも上位にあることが推測された.間欠跛行は,16.1%に認められ,自験例のなかでもshort curve例に多かった.X線像の経過観察から,約85%に側彎の進行が認められ,臥位と立位の比較において約83%に差がみられた.治療の際に,臥位と立位の比較は,甚だ重要と考えられた.

変形性股関節症に対するbipolar型人工骨頭置換術

著者: 浅田莞爾 ,   吉田研二郎 ,   宮内晃 ,   吉田玄 ,   油谷安孝 ,   喜多義将 ,   調子和則 ,   島津晃

ページ範囲:P.1151 - P.1157

 抄録:当教室では1981年から,いわゆるbipolar型人工骨頭を用いているが,最近本モデルの変形性股関節症に対する応用が一般化しつつある.われわれも本症に対して使用する一方,独自のalumina ceramic bipolar hip prosthesisを開発し,積極的に臨床応用を行っている.今回当科で変形性股関節症に対して施行したbipolar型人工骨頭置換術の実際と臨床成績,術後のX線学的検討について報告する.調査結果は対象症例の52関節全てに臼蓋部のリーミングもしくは骨移植が行われていた.臨床成績は金属骨頭例とalumina ceramic骨頭例の間に明らかな差はなかったがouter headに接して出現するclear zoneは後者の方が早期に出現する傾向にあった.また術後のcentral migrationは臼蓋部骨移植を行って金属骨頭を用いた例に多く,stemのdistal migrationはMoore型stem例にのみ認められ,press fit型stem例にはみられなかった.

筋皮弁による難治性褥瘡の再建

著者: 原田富夫 ,   恩地圭典 ,   山辺登 ,   林美代子 ,   鈴木裕二

ページ範囲:P.1159 - P.1167

 抄録:昭和57年より61年までの5年間の筋皮弁移植による難治性褥瘡治療例をとりあげてその内容と成績を検討した.症例数は15,男性11名,女性4名,年齢21〜74歳(平均47歳),手術箇所は18,フラップ数は20.原疾患は脊髄損傷,多発性硬化症,脊髄動静脈奇形,脳血管障害,脊柱靱帯骨化症で,いずれの症例も四肢麻痺下肢麻痺あるいは植物状態や寝たきりの状態となっている.褥瘡の部位は坐骨部7,仙骨部6,踵骨部3,大転子部2であった.各々の難治性褥瘡を大腿筋膜張筋皮弁7(1例は外側広筋1/2を含む),大臀筋皮弁10(3例は180゜回転1フラップ使用),母趾外転筋皮弁3フラップで被った.2例にデザイン不良と思われる筋皮弁末端壊死と再発をみた.その他の症例は全て経過良好である.上記疾患のような症例には,全身状態が許せば時機を失せず可及的早期に正確な手術手技で積極的にfirst choiceとして筋皮弁を移植するのが最適と思われた.

手術手技シリーズ 関節の手術<下肢>

脛骨近位部骨折の手術

著者: 榊田喜三郎

ページ範囲:P.1169 - P.1177

 脛骨近位部骨折には脛骨平原骨折を初め顆間隆起骨折や小児の脛骨近位骨端離解などがあり,これらは何れも関節内骨折であり,関節軟骨損傷を伴うことが多い点からも正確な関節面骨片の整復を要し,また関節拘縮を防止する上からも強固な内固定と早期関節運動の開始が必須となる.この意味からこれらの大部分が手術的治療の対象となる.脛骨近位部骨折で関節面の損傷を伴わないものには脛骨骨幹端骨折があり,高齢者ではしばしば粉砕性となるが,これらは関節骨折に属する.脛骨平原骨折には種々の分類が見られるが(図1),分離骨折と陥没骨折(圧迫骨折)に大別できる.しかし実際にはこの両者を合併した分離-陥没型が多く,しかも殆どの例は脛骨外顆に見られる.脛骨内顆骨折は稀であるが,膝内反変形を後遺し易く手術的整復の適応となる,骨端離解ではSalter-Harris III,IV型が関節軟骨損傷を伴う関節内骨折である.脛骨顆部骨折を伴う膝関節の脱臼骨折も同様に手術的に整復,固定する.以下分類に従って手術方法を述べる.

認定医講座

代謝性骨疾患

著者: 串田一博

ページ範囲:P.1179 - P.1184

はじめに
 代謝性骨疾患は内分泌疾患,カルシウム代謝異常症,リン代謝異常症,コラーゲン代謝異常症,その他osteopetrosis,Paget病などが含まれるが本稿においては原発性骨粗鬆症,原発性上皮小体機能亢進症,腎性骨異栄養症,くる病・骨軟化症などのカルシウム代謝異常症,リン代謝異常症を中心にして記述する.これらの疾患は血清カルシウムの調節機構すなわち骨組織,上皮小体,甲状腺,腸管,腎臓からなるカルシウムの遊離,吸収,排泄機構と上皮小体ホルモン,カルシトニン,Vitamin Dなどのホルモン作用の異常によって発生し,臨床的には四肢関節の疼痛,腰背痛,骨格変形,骨折を主訴とし,X線学的所見として共通して骨萎縮像を呈するため,正確な鑑別診断が必要とされる.X線検査は必要な時には全身骨surveyが行われ,疾患による特異的所見を得るよう努力する.生化学的診断としては血清カルシウム,リン,クロールなどの電解質,AL-P,Osteocalcinなどの骨代謝マーカー,PTH,25-(OH)D,1,α,25-(OH)2D,カルシトニンなどのホルモン,血液酸塩基平衡(重炭酸),尿中のカルシウム,リン,cyclic AMP,水酸化プロリン濃度などが診断に供される(表1,4).

特殊関節症

著者: 石川斉

ページ範囲:P.1185 - P.1191

1.神経障害性(神経病性)関節症
 脊髄そのもの,あるいは末梢神経の障害により痛覚,深部感覚,血管運動神経などが侵され,骨,関節に無軌道な破壊と増殖がおこる疾患である.このような骨破壊と増殖の根底には繰り返される小外傷に対する防禦的疼痛感覚及び固有感覚の消失による二次的機械的外傷が存在している.本症の原因疾患には脊髄癆,糖尿病,脊髄空洞症,先天性無痛覚症などが挙げられる.

整形外科を育てた人達 第75回

Gustaf Jonas Wilhelm Zander(1835-1917)

著者: 天児民和

ページ範囲:P.1192 - P.1194

 今日では理学療法室に入ってもZanderの訓練装置はあまり見ないが,私が整形外科に入局した1930年頃には整形外科の訓練室にはZanderの器械があったことを思い出して,今回はSwedenの生んだ偉大なる医学者について紹介することにした.

検査法

軟骨系腫瘍のMRI画像診断

著者: 佐藤啓二 ,   高橋満 ,   深谷直樹 ,   中西啓介 ,   三浦隆行 ,   浅野昌育

ページ範囲:P.1195 - P.1198

 抄録:〔目的〕8例の軟骨系腫瘍を対象としてその画像診断上の問題点を検討した.
 〔症例および方法〕軟骨肉腫6例(内脱分化型1例),脊索腫1例,滑膜軟骨腫症1例である.6例については0.15Tの東芝社製を使用し,3例については0.5Tのピッカー社製を用い,得られた画像よりその症例における腫瘍の軟部組織進展を正しく把握できるかどうか検討した.

整形外科基礎

抗生剤セフゾナムナトリウムを添加したPMMA骨セメントの強度試験

著者: 森田真史 ,   有富寛

ページ範囲:P.1199 - P.1205

 抄録:人工関節置換術の術後感染防止対策の一つとして骨セメントに抗生剤を混入させる方法が用いられている.しかし,多量の薬剤添加は骨セメントの機械的性質を損なう恐れがある.抗生剤添加が骨セメント強度に与える影響は薬剤の物理,化学的性質,粉体形状等によって異なるために,添加量との関係を個々の薬品について調べる必要がある.著者らはCefuzonam sodium(Cosmosin®)を混入したPMMA骨セメント(Simplex P®)の引張り,剪断,曲げ試験からその影響を検討した.同抗生剤3gをPMMAポリマー40gに対して添加した程度ではいずれの強度にも影響を与えないことが統計処理によって確認された.また,この理由としてCosmosin粉体粒子が比較的粒の揃った球形であるために骨セメントの応力集中を回避できるためであると推定された.

臨床経験

遠隔転移により死亡した類上皮肉腫の2例

著者: 柿崎寛 ,   松本健一

ページ範囲:P.1207 - P.1210

 抄録:診断・治療上問題のあった類上皮肉腫の2症例の報告.症例1:36歳男性.右前腕難治性潰瘍があり骨髄炎と誤診されてその治療を頻回に受けていた.類上皮肉腫との診断のもとに前腕切断術を行ったが,頭皮・肺・胸椎などに遠隔転移を生じ,当科での手術後4年2カ月で死亡した.症例2:54歳男性.左下腿および左大腿の腫瘤.はじめ左下腿皮下に小腫瘤を生じ線維腫との診断で3回他医で単純切除術を受けて再発.経過中左大腿に転移しこれも切除術後に再発して当科を受診した,それぞれ広範切除術にて治癒させたが,後に肺,小脳,頬部などに転移し,当科での手術後3年1ヵ月で死亡した.2症例とも病理学的所見は類似する.即ち多角形ないし紡錘形の腫瘍細胞が結節を形成しながら増殖し,結節の中心部は壊死に陥り易い.このために早期より潰瘍化するため他疾患と誤診されることが多い.本腫瘍の診断,治療上の問題点を述べた.

化膿性仙腸関節炎の2例

著者: 光長栄治 ,   釜池豊秋 ,   藤森洋一 ,   大岡啓二

ページ範囲:P.1211 - P.1213

 抄録:65歳男,70歳女の化膿性仙腸関節炎を経験した.CTでともに腹側に膿瘍形成がみられたため,腹膜外経路で病巣廓清術を施行した.術後2例ともに症状の鎮静化をみた,稀な化膿性仙腸関節炎の2例を文献的考察を加えて報告した.

SLEに合併した早期大腿骨頭壊死症の1例

著者: 原理恵子 ,   増田武志 ,   松野丈夫 ,   長谷川功

ページ範囲:P.1215 - P.1220

 抄録:ごく早期から経過観察が可能であったSLEに合併する大腿骨頭壊死症の1例を経験した.症例は14歳女性で,SLE発症の3ヵ月後,ステロイド投与開始1ヵ月後の骨シンチ及びMRIで骨頭内に異常を認めた.9ヵ月後のX線写真に帯状硬化像が出現し,1年7ヵ月後の骨頭の骨生検で明らかな骨壊死像が得られた.しかし当科初診より現在までの2年9ヵ月間,臨床的に殆ど無症状であり,臨床症状の有無とは無関係に,SLE発症またはステロイド投与開始の直後に骨壊死が発生している可能性が示唆された.本症例が臨床的にsilentであった原因として,組織学的脆弱性が少ないことが考えられた.本症例のように長期間発症しない症例は臨床的に見逃されている可能性が高いが,典型的症例と比較して,臨床症状の発現しない要因を検討することが本症の発症機序及び病態の解明に重要と思われた.

Bosworth型足関節脱臼骨折の1症例

著者: 渡辺健太郎 ,   荒木聰 ,   大溪紀男 ,   山路倫生

ページ範囲:P.1221 - P.1223

 抄録:脛骨後方に腓骨が転位固定され徒手整復が困難な足関節脱臼骨折(Bosworth型)の1例を経験し観血的治療により良好な結果を得た.足関節の外旋により生じるこの脱臼骨折は強靱な骨間膜のため腓骨の整復がしばしば困難で観血的方法を選択する場合が多い.正確な正面・側面X線撮影が診断に重要で早期に整復すれば予後は良好である.

骨内ガングリオンを形成した足舟状骨—第1楔状骨間癒合症の1例

著者: 熊井司 ,   奥田寿夫 ,   長岡正人 ,   青木孝 ,   高倉義典 ,   玉井進

ページ範囲:P.1225 - P.1228

 抄録:足根骨癒合症は比較的まれなものとされており,距踵間と踵舟間に見られるものが大部分である.今回我々は骨内ガングリオンを形成した非常にまれな舟状骨-第1楔状骨間癒合症の1例を経験した.症例は61歳男性,歩行時の右足内側部痛を主訴として来院.保存的治療により軽快しないため癒合部切除術を施行した.癒合部は軟骨性癒合であり,また癒合部の相対する部位には嚢腫がみられ骨内ガングリオンであった.これは不完全な癒合症による長期間の反復したメカニカルストレスによるものと思われた.治療は保存的には足底板が,抵抗例には関節固定術が有用と思われる.本症例では癒合部が小範囲であったため癒合部切除術を施行し経過良好であるが,今後さらに経過観察が必要であると思われる.

仮骨延長法により内反膝を矯正したPseudoachondroplasia症の1例

著者: 新行内義博 ,   安井夏生 ,   柑本晴夫 ,   杉本憲一 ,   下村裕

ページ範囲:P.1229 - P.1234

 抄録:著明なO脚変形を呈したpseudoachondroplasia症に対し,変形矯正と同時に仮骨延長法による骨延長を行い,歩容の改善を得たので報告する.症例は15歳,男子で,身長は125cm,体重は44kgで,頭部顔貌は正常であった、著明なO脚と,内外反動揺性を認め歩行困難を訴えた.脛骨に対し,右35度左45度の矯正骨切りを実施しOrthofix創外固定器を装着した.術後17日目より1日朝夕0.5mmずつ骨切り部の延長を実施し,右40mm,左50mmの延長を行った.延長停止後2ヵ月目より,骨強度を増すため創外固定器をつけたまま軸方向の荷重を行った.術後6ヵ月で抜釘し,術後1年の現在,O脚は矯正され歩容は良好となっている.また手術の際,腸骨の成長軟骨の生検を行い,細胞内に封入体を証明した.本症は四肢短縮に伴い筋肉や皮膚等の軟部組織が余剰となっている.O脚変形の矯正と同時に骨延長を行うことは,筋肉に適度の緊張を与え理にかなった治療法と考える.

アキレス腱断裂術後後療法について

著者: 小島保二 ,   片岡善夫 ,   鈴木聡 ,   赤木将男

ページ範囲:P.1235 - P.1239

 抄録:中・高年層のスポーツ愛好者の増加と共に同年齢層におけるアキレス腱断裂患者が増加しており,社会的立場上,早期の社会復帰が望まれる.そこで当科では,アキレス腱断裂術後患者に対して,3週間のギプス固定の後に部分荷重歩行を開始し,術後4週で全荷重歩行を許可するという,従来に比べて短期間の後療法プログラムにて訓練を行い,良好な術後成績を得た.対象は同プログラムにて後療法を行った39例で,術後アンケート調査を行った.術後経過期間は平均3年3ヵ月である.再断裂は1例(2.6%)に見られたが,その他重篤な術後合併症はなく,筋力,足関節可動域,スポーツ活動への復帰などはおおむね満足すべき結果が得られた.本後療法プログラムは,早期の社会復帰が望まれる症例には推奨すべき方法と考えられる.

遠位橈尺関節変形性関節症に続発した手指屈筋腱皮下断裂の1例

著者: 遠山晴一 ,   荻野利彦 ,   三浪明男

ページ範囲:P.1241 - P.1244

 抄録:遠位橈尺関節変形関節症に続発した手指屈筋腱皮下断裂の1例を経験したので報告する.症例は83歳女性.昭和62年4月,数日間の庭仕事の後,右中,環,小指のDIP関節の屈曲が不能となった.同年10月には環,小指のPIP関節の屈曲も不能となり同年11月,当科を受診した.X線正面像では遠位橈尺関節部に関節面の硬化像と骨棘が認められ,尺骨はplus variantを示し,側面像では橈骨関節面は背側へ傾斜していた.CT像では回外時,尺骨頭は亜脱臼を認め,骨棘は掌側へ突出していた.術中,中指の深指屈筋腱,環・小指の浅・深指屈筋腱が手関節部で断裂しており,断裂腱の両断端はササラ状に陥っていた.遠位橈尺関節掌側の関節包に断裂が存在し,前腕を回外すると尺骨頭に形成された骨棘がこの関節包の断裂部より露出した.以上より本症例では遠位橈尺関節変形性関節症にて生じた尺骨頭の骨棘が回外時掌側へ突出し屈筋腱を摩耗させ,腱断裂が発生したものと思われた.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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