icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科24巻11号

1989年11月発行

雑誌目次

視座

患者の知る権利

著者: 藤巻悦夫

ページ範囲:P.1247 - P.1247

 医療技術の高度化,多様化に伴い,治療方法等についての選択の幅が広がり,医療を受ける患者側の意思や意向が選択にあたって重要になってきている.またinformed consent(十分に知らされた上での同意)等の考え方に示される患者意識の変化もあり,検査,治療等にあたって適切な情報提供を行う必要性が高まっている.この事は先に発表された「患者サービスの在り方に関する懇談会報告書」の基本的な背景の一つともなっており,国民の健康や病気に対する関心の高まり,治療法や薬等に関する情報量の増大等がみられる一方,誤った情報により混乱を招く恐れも生じており,医療機関や医療従事者は病状や治療方法等の説明をはじめとして広範な情報を正確に提供することが強く求められる.
 医師が治療行為にあたって,患者に知らせ伝えるべき義務と責任を持つ内容は,1)診断の正確な内容,2)予定される治療法の性質と目的,3)その治療法の成功の可能性と,それによる患者の利益・不利益,4)ほかのふさわしい治療法の代案,5)それらの治療法が行われない場合の予後等であり,informed consentには医師と患者が対等の意識を持ち,患者が独立した個人として十分な判断力を有することが必要な条件である.実際に日本での現状は患者側も"お任せします"とふみこんだ質問を遠慮する傾向がまだ強く,また悪性腫瘍の診断内容の告知には難しい問題をかかえている.

論述

骨肉腫局所再発の臨床的検討

著者: 梅田透 ,   木元正史 ,   小沢俊行 ,   高田典彦 ,   舘崎慎一朗 ,   柿崎潤一 ,   石井猛 ,   鬼頭正士

ページ範囲:P.1249 - P.1256

 抄録:骨肉腫患肢温存手術のリスクは局所再発であり,局所再発は予後不良の最大要因と考えられる.1972年より1988年までに経験した骨肉腫128例のうち局所再発を生じた7例を検討した.7例の内訳は男3例,女4例,年齢は9歳から26歳(平均16歳).病変部位は腓骨5例,大腿骨1例,脛骨1例で,初回治療は5例が他医にて2例が自験例である.手術法は搔爬などintralesionalな切除が5例,自験例における術前照射後の切除が2例である.結果:初回手術より再発までの期間は最短5ヵ月より最長52ヵ月であり,再発までの期間の長い2例に肺転移が認められていない.肺転移の出現は初回手術より1ヵ月から45ヵ月である.予後は死亡4例,生存3例で腓骨例は5例中4例が死亡している.以上骨肉腫の局所再発は①初回,良性病変としてintralesionalな切除が行われた場合,②腓骨のような小病変に対してはmarginal,intralesionalな切除になりがちとなることが明らかとなった.

アテトーゼ型脳性麻痺における環軸椎亜脱臼と脊髄麻痺の成因—特に下位頸椎前彎角と環椎前傾角について

著者: 大成克弘 ,   山田勝久 ,   蜂谷将史 ,   藤井英世 ,   斉藤裕一 ,   近藤総一 ,   今泉純 ,   三橋孝之 ,   金泰久 ,   金児英敏 ,   秋山典彦

ページ範囲:P.1257 - P.1263

 抄録:アテトーゼ型脳性麻痺10例を環軸椎亜脱臼による脊髄麻痺群(3例)と非麻痺群(2例),亜脱臼を認めない対照群(5例)の3群に分けてX線学的に比較検討した.環椎歯突起間距離は麻痺群と非麻痺群でそれぞれ平均6.3mm,4.8mmであった.環椎高位の脊椎管最小矢状径は麻痺群,非麻痺群,対照群でそれぞれ平均11.7mm,18.5mm,18.8mmであり麻痺群で著明に小さかった.後屈位(脱臼整復位)の環椎部脊椎管矢状径は麻痺群で平均15.7mmであり他の群より4〜6mm小さかった.後屈位の脊椎管矢状径は生来の矢状径であり,この狭小化が脊髄麻痺発症に関与していると思われた.また前屈位の環椎前傾角は麻痺群,非麻痺群,対照群でそれぞれ平均50.0°,39.0°,28.7°であり,前屈位の下位頸椎前彎角はそれぞれ平均-38°,-38.5°,-24.0°であり両者は負の相関傾向を認めた.環椎前傾角の増大は頭部の前方sliding momentを増し,亜脱臼の成因に関与していると考えられた.

上位頸椎疾患に対するLuque法—特に,頭蓋・頸椎間固定への応用

著者: 戸山芳昭 ,   鈴木信正 ,   平林洌 ,   藤村祥一 ,   里見和彦 ,   石下峻一郎 ,   小林慶二

ページ範囲:P.1264 - P.1272

 抄録:Luque法による上位頸椎疾患に対する後方固定の中で,fan-shaped rodを用いた我々の頭蓋・頸椎間固定術を紹介し,その結果を含め,本法の適応ならびに有用性や問題点につき検討した.症例は,悪性疾患のA群として転移性腫瘍5例,骨髄腫1例,その他の疾患をB群として上位頸椎奇形3例,RA性環軸椎脱臼と環椎骨折各1例の計11例である,A群には骨セメントを併用したlong fusionを,B群には骨移植を行い,できるだけshort fusionとした.術後は簡単な頸椎装具のみで早期離床が可能となり,全例術前の頑固な頸部痛や麻痺症状は著明に改善した.深部感染と頭蓋内出血の合併症を各1例に生じたが,本法のもつ強固な固定力により,外固定の簡素化や整復位の保持,早期離床や良好な骨癒合が得られ,有用な手術法といえる.しかし,本法の最も良い適応は転移性上位頸椎腫瘍にあり,他の疾患に対しては特殊例を除き,その適応は慎重であらねばならない.

慢性関節リウマチに対する膝関節滑膜切除術の検討—鏡視下及び外科的滑膜切除術の比較

著者: 龍順之助 ,   小林茂夫 ,   中村和久 ,   山口祐史 ,   鳥山貞宜

ページ範囲:P.1273 - P.1279

 抄録:慢性関節リウマチ患者の膝関節に対する鏡視下滑膜切除術の効果について,外科的滑膜切除術と比較検討した.対象は29例42関節で,鏡視下手術例は9例15関節で経過観察期間は平均3年2ヵ月であり,外科的手術例は20例27関節で経過観察期間は平均6年であった.入院日数,手術時間,術後の関節可動域,効果持続時間,再燃の有無,X線上の骨変化の進行について比較した.鏡視下滑膜切除術は入院日数は短く,手術による侵襲が少ないため,疼痛が少なく,可動域制限がなく,早期社会復帰が可能であり,また,術後X線上の関節症変化が少ないなどの利点があった.しかし,有効期間は平均1年4ヵ月と短く,再燃する例が73%見られた.以上より,慢性関節リウマチにおける膝関節鏡視下滑膜切除術は適応を慎重にして,手術に際しては丹念に十分に滑膜を切除すべきである.

陳旧性前十字靱帯損傷を伴った膝関節の単純X線写真における変形性変化について

著者: 川久保誠 ,   冨士川恭輔 ,   竹田毅 ,   伊勢亀冨士朗 ,   阿部均 ,   松林経世 ,   小林龍生 ,   山口栄

ページ範囲:P.1281 - P.1289

 抄録:(目的)陳旧性前十字靱帯損傷を伴った膝関節の経時的OA変化をX線学的に検討したので報告する.
 (方法)過去6年間に経験した陳旧性前十字靱帯損傷膝は141例である.これらの症例をACL損傷群,ACL+内側支持機構損傷群,ACL+半月板損傷群,ACL+半月板切除群に分類し,その経時的なOA変化を慶大式評価基準を用いて比較検討した.

手術手技シリーズ 関節の手術<下肢>

人工膝関節手術—Surface type, Semiconstrained

著者: 丹羽滋郎

ページ範囲:P.1291 - P.1296

はじめに
 人工膝関節置換術の臨床成績は,この10数年来非常に安定したものになってきている.その理由は,1)Total condylar typeの出現からほぼそのデザインが一定してきている,2)脛骨コンポーネントにmetal trayの使用,3)脛骨コンポーネントにcentral pegの作成,4)膝の下肢アラインメントの正確な調整,5)骨セメント挿入技術の改良などといわれている.
 優れた膝とは,良好な可動性,安定した支持性を持っていることである.

認定医講座

骨端症,無腐性壊死

著者: 西塔進

ページ範囲:P.1298 - P.1304

 骨の阻血性疾患は骨端症,無腐性壊死と呼ばれ以下の3群に分けられる.小児期の長骨の骨端核,短骨に発生する阻血性壊死を主病変とする骨端症,関節面の一部が軟骨下骨層とともに壊死に陥り,母床から分離して関節遊離体となる離断性骨軟骨炎,そして大腿骨頭あるいは大腿骨内顆に生じる成人の特発性骨壊死に分けられる.

痛風・偽痛風

著者: 西岡淳一

ページ範囲:P.1305 - P.1311

 痛風および偽痛風は結晶誘導性関節炎として知られる疾患で突然の関節の腫れと激しい疼痛を特徴とする疾患である.痛風は尿酸結晶が,偽痛風はピロリン酸カルシウムの結晶が関節軟骨や関節周辺の軟部組織に沈着する際に誘発される急性炎症で,いずれも基礎にそれぞれの結晶の代謝障害を有している.痛風,偽痛風のいずれも結晶が免疫グロブリン(IgG)と結合し,この結合体が好中球のFcリセプターと結合して貪食され,プロスタグランヂンやリゾゾーム酵素,インターリューキン1などの放出を促して初期の炎症が始まる8).また関節滑膜細胞にも同様に働いて結晶誘導性の滑膜炎を引き起こす.臨床症状や診断,治療に関して痛風と偽痛風との間で多少違いがあるので個々に解説する.

整形外科を育てた人達 第76回

神中正一教授(1890-1953)

著者: 天児民和

ページ範囲:P.1312 - P.1315

 神中正一教授は私の恩師であるが,日本の整形外科の発展のために努力された功績は偉大であると思う.今年,生誕100年の式典をすることになっているので先生の伝記を書くことにした.

海外見聞記

東独の整形外科をたずねて

著者: 武智秀夫

ページ範囲:P.1316 - P.1318

まえがき
 今年6月中旬より12日間東独を訪れた.東独は正式にはドイツ民主共和国(Deutsche Demokratische Republik,DDRと略す)という.国民はEast Germanyといわれるのを余り好まないが,ここではわが国でよく使われている東独という表現を使うことにしよう.
 東独には嘗て明治以来第2次世界大戦が始まるまで,わが国から沢山の医学の徒が留学した.整形外科でも神中先生がライプチッヒのPayrの所に,天児先生がSchedeの所に留学されたと聞いている.しかし1930年代末頃から余り交流はないようである.

整形外科基礎

椎間関節切除後の腰椎安定性に関する生体力学的研究

著者: 鐙邦芳 ,   金田清志 ,   ,  

ページ範囲:P.1319 - P.1326

 抄録:棘上・棘間靱帯切断そして片側・両側の内側および全椎間関節切除が腰椎安定性に与える影響を知るため,実験を行った.人死体腰椎FSU(functional spinal unit)を用い,6種類のモーメントを負荷し,生じた変位をstereophotogrammetry法により解析した.棘上・棘間靱帯切断のみでは,いずれの脊椎運動においても,有意のRoM増大は生じなかった.棘上・棘間靱帯切断に内側椎間関節切除を加えると,前屈におけるROMは増したが,他の脊椎運動ではROMの増大はなかった.片側全椎間関節切除により,前屈と切除関節の反対側への回旋におけるROMが増した.両側全椎間関節切除では,前屈と左右回旋におけるROMが増した.内側椎間関節切除は腰椎の安定性をそれほど損なわず,椎間固定術の併用は,術前の安定性などを考慮して,決定されるべきである.片側であっても,腰椎の安定性を著しく損なう全椎間関節切除には,原則として椎間固定術を併用すべきである.

臨床経験

比較的高年齢(18歳)で発症したHand-Schüller-Christianの1症例

著者: 千賀啓功 ,   梅田透 ,   小沢俊行 ,   田代淳 ,   桑原竹一郎

ページ範囲:P.1327 - P.1333

 抄録:Hand-Schüller-Christian病は,多発骨病変,眼球突出,尿崩症の3主徴を伴いHistiocytosis Xに分類される比較的稀な疾患である.我々はこの3主徴を伴い,18歳と比較的高年齢の症例を経験したので報告する.
 症例は18歳,男性で頭部打撲のため偶然撮られた頭蓋骨X線写真の多発性骨透亮像により発見された.当院にて精査を行い,生検にて組織球,好酸球,泡沫細胞の増生を特徴とするHand-Schüller-Christian病と確診された.現在,尿崩症に対しバゾプレッシン療法及び腫瘍類似疾患として化学療法を行い経過観察中である.

アキレス腱骨化症の経験

著者: 阪田泰二 ,   安達長夫 ,   村上恒二 ,   原田昭 ,   瀬分厚 ,   砂川融

ページ範囲:P.1335 - P.1339

 抄録:アキレス腱骨化症は比較的稀な疾患である.今回,我々は当科で経験した5例9足の症例を中心に,若干の文献的考察を加えて報告する.
 症例は全例男性で,初診時年齢は28歳から55歳,平均44.8歳である.主訴は,アキレス腱部の疼痛・骨様腫瘤がそれぞれ2例,機能障害が1例で,この症例はアキレス腱断裂を伴っていた.2例は剣道練習中の疼痛により,1例はアキレス腱断裂により,発症した.他の2例は特に誘因はなかった.局所症状として,アキレス腱部の自発痛と圧痛が全例に認められた.骨片の数は2個が4足と最多で,1個が3足と3個が2足であった.X線写真上の大きさは,長径0.1〜1.6cm,平均0.97cmで腱付着部付近に多く認めた.治療は1例に腱縫合術と骨片摘出術,1例に骨片摘出術を施行し,3例は保存的に行い,経過観察中である.

膝蓋下脂肪体ヘルニアの1例

著者: 岡田幸也 ,   北潔 ,   野田光昭 ,   水野保幸 ,   西林保朗

ページ範囲:P.1341 - P.1345

 抄録:膝蓋下脂肪体が外側膝蓋支帯の孔から一部脱出し,腫瘤として触れていた膝蓋下脂肪体ヘルニアの1例を経験した.症例は4歳女児で,右膝部の無痛性腫瘤を主訴として来院した,腫瘤は大豆大・弾性軟で,膝蓋靱帯の外側,関節裂隙の高位にあった.皮膚との癒着はなく,境界も明瞭であり,膝関節の屈曲時に出現し,伸展時に消失した.右膝の単純X線像,関節造影では異常所見はみられなかった.手術時,膝蓋靱帯と腸脛靱帯の間の外側膝蓋支帯に直径約7mmの孔を認め,膝関節を屈曲すると,この孔を通じて膝蓋下脂肪体が脱出膨隆し,伸展すると引き込まれて消失する現象を確認できた.
 類似の臨床像を呈する半月板嚢腫との鑑別点について,基盤となる組織の膝屈伸時の動態から考察した.また,膝関節の関節鏡手技でも同様の病態が起こりうる点についても述べた.

足底の軟部組織に発生した軟骨腫の1例

著者: 前田泉 ,   荻野幹夫 ,   浅井春雄 ,   蜂須賀彬夫 ,   瀬川満 ,   城聞浩

ページ範囲:P.1347 - P.1349

 抄録:足底の軟部に発生した軟骨腫(extraskeltal chondroma)の1例を経験した.軟部組織に発生する良性軟骨性腫瘍は,滑膜性軟骨腫症を除けば極めてまれで,欧米の文献報告では200例以下とされており,本邦では検索した範囲では,2例の報告があるのみである.
 症例は57歳の男性で,1年来の左足底部腫瘤を主訴に受診した.歩行時,軽度の痛みがあった.X線像では,石灰化を示す境界鮮明な軟部腫瘤影が見られた.線維性被膜を有する結節状の腫瘤(母指大,示指頭大,小指頭大の3個の小腫瘤から成る)を切除した.病理組織学的には,良性軟骨腫と診断された.

下腿骨折を主訴としたPycnodysostosisの1症例

著者: 田嶌考治 ,   安並敏哉 ,   森井孝和 ,   北村嘉雄 ,   茶之木頼彦 ,   星千冨 ,   久志本弘 ,   石田俊武 ,   島津晃

ページ範囲:P.1351 - P.1354

 抄録:骨硬化性病変と骨形成の異常の合併を特徴とするpycnodysostosisはかつては大理石骨病やdysostosis cleidocranialisと混同されていたが,今日ではその診断基準も一定し,鑑別が必ずしも困難な疾患とは思われない.今回,下腿骨折を主訴とする本症の1例を経験した.比較的まれな疾患であり,骨折して初めて診断されることが多く,また手術に際しては,皮質骨,海綿骨の異常な硬さ,骨癒合の遷延を予め念頭において治療に当たるべきである.文献的に検索し得た限りでは,本邦での報告例は61家系77症例であった,しかし病因,本態についての詳細な検索は未だなされていない.

先天性脛骨完全欠損症の治療経験

著者: 野沢隆人 ,   井澤淑郎 ,   亀下喜久男 ,   内田俊彦 ,   村山博人 ,   大沢俊和 ,   陣内一保

ページ範囲:P.1355 - P.1358

 抄録:当センターで経験した先天性脛骨完全欠損症3例を検討した.(症例1)初診時2歳,女子.両側完全欠損,4歳7ヵ月で大腿骨下端で支持する膝義足に準じた装具で歩行し,下腿と足部が後方に突出して外見上問題を残すが,膝立ち位の安定に有用なこと,幸い女子でスカートにかくれることから手術をせず,11歳を迎える.(症例2)初診時生後19日,男子.両側完全欠損.2歳3ヵ月で症例1と同様の装具で介助歩行を開始したが,荷重部分の疼痛,外見上の問題から,3歳10ヵ月で両側Brown手術,サイム切断を行い,8歳の現在下腿義足で独歩している.2例ともに今後の成長や思春期を迎える際に,何らかの処置の検討を要すると思われる.(症例3)初診時生後27日,男子.右完全欠損.1歳2ヵ月で症例1と同様の装具でつかまり立ちを開始,3歳9ヵ月でBrown手術,サイム切断を行ったが,大腿骨の横径が広く,膝の屈曲拘縮が残るため,未だ,義足装着に至っていない.

膀胱外反症に対する腸骨骨切り術

著者: 沖高司 ,   伊代田一人 ,   石田義人 ,   野上宏 ,   村地俊二

ページ範囲:P.1359 - P.1364

 抄録:本邦では稀とされる膀胱外反症7例(男5例,女2例)を経験した.病型分類はIII型2例,IV型即ち汚溝外反症5例であった.合併障害は二分脊椎4例,膀帯ヘルニア4例,鎖肛3例,骨盤内腎2例等で,IV型の方が重度で多くの先天奇形を合併していた.臨床経過については,2例が生後1ヵ月以内に敗血症で死亡,3例が尿路変更術をうけ,膀胱機能が維持されているのは2例のみである.
 膀胱または陰茎の形成を目的に2例に対して,腸骨骨切りが2歳3ヵ月および6歳3ヵ月時,二期に別けて行われた.術後外固定としてはカンバス牽引が使用されたが,簡便で有用であった.2例とも術後2年6カ月以上になるが,恥骨結合の修復はほぼ維持され,経過良好である.

副神経麻痺に伴う肩甲上神経障害について

著者: 村津裕嗣 ,   水野耕作 ,   黒坂昌弘 ,   山田昌弘 ,   原田義昭 ,   廣畑和志

ページ範囲:P.1365 - P.1368

 抄録:後頸部三角の外科的操作により発生した3例の副神経麻痺を経験し,2例に同側の肩甲上神経障害を認めたので,その臨床症状と発生機序につき考察を加えて報告する.
 症例はいずれも術後より肩の挙上障害を自覚し,数ヵ月後に僧帽筋上部線維の筋萎縮と肩甲下垂を認めた.さらに2例においては,夜間痛を伴う肩甲部の強い疼痛を訴えた.筋電図検査上,この2例に同側の肩甲上神経障害の合併が認められ,1例に対しては,副神経縫合術に加え,上肩甲横靱帯の切離術を施行したところ早期に疼痛の軽快が得られた.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら