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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科24巻12号

1989年12月発行

雑誌目次

視座

腰椎椎間板ヘルニアの経皮的髄核摘出術について

著者: 酒匂崇

ページ範囲:P.1371 - P.1372

 整形外科領域のなかでも特に治療方法についての近年の進歩はすばらしいものがある.この紙面では最近話題になっている脊椎外科領域の新しい治療法について触れてみたい.
 腰椎椎間板ヘルニアの新しい治療法としてキモパパインの椎間板注入療法が本邦にも導入され,試験的に行われている.この方法はカナダや米国で一時盛んに行われ,手術に変わる方法として非常に人気を集めたようである.しかし,重篤な合併症としてキモパパインに対するアナフィラキシーショックや注入後の脊髄炎による脊髄麻痺の発生が少なからずあることが明らかになり,この治療法を疑問視する意見も現れ始めた.このような副作用が少数でも発生すれば誰にでも行える良い治療法とは言えない.

論述

脊髄Ependymomaの病理学的,臨床的検討

著者: 平松健一 ,   渡部恒夫 ,   後藤澄雄 ,   望月真人 ,   板橋孝 ,   鬼頭正士 ,   守屋秀繁

ページ範囲:P.1373 - P.1381

 抄録:Ependymomaは,様々な形態をとり椎体変化や遠隔転移を来すなど興味深い腫瘍であるが,本邦においては海外に比べて報告例は少なく稀な腫瘍とされている.千葉大学整形外科では,昭和30年より現在迄の間に,Ependymomaの病理診断を受けた脊髄腫瘍17例を経験し手術を施行している.それらを腫瘍形態から馬尾腫瘍型,髄内腫瘍馬尾型,馬尾充満型,髄内腫瘍型,その他の5型に分類し,馬尾に発生する3型について,臨床症状,予後等につき比較検討を加えた.その結果,これらはそれぞれ特徴ある傾向を示した.
 病理組織所見に検討を加えた結果,これらの腫瘍形態の分類と病理組織のtype分類(cellular type,epithelial type,papillary type,myxopapillary type,malignant typeの5型)には,腫瘍の型によっては一定の傾向が認められた.

特発性側彎症に対するHarrington手術後の椎体の成長と矯正損失の関係

著者: 伊代田一人 ,   村地俊二 ,   野上宏 ,   石田義人 ,   沖高司

ページ範囲:P.1383 - P.1390

 抄録:特発性側彎症に対しHarrington法にて後方固定術を施行した42例の術後の椎体の成長と矯正損失の関係について調査した.方法は術後身長の実質上の成長が4cm以上のものを成長群,4cm未満を非成長群とし,矯正損失とrotationについて両群を比較検討した.成長群は10例で術直後の矯正率は48%と非成長群と差を認めないが,術後3年まで側彎は進行を続け最終時の矯正損失は20.1°で非成長群の8.3°に比べ有意に高かった(P<0.01).また術後の成長と矯正損失は相関していた(r=0.73).術後のrotationは成長群では改善例はなく6例は悪化していた.以上より10歳以後でも脊椎の成長能が大と考えられるRisser's sign 0度の症例では,後方固定術後も側彎は進行しrotationは悪化するためinstrumentation without fusion法を選択するのが望ましい.

手関節捻挫および橈骨遠位端骨折後の長母指伸筋腱皮下断裂の検討

著者: 高見博 ,   高橋定雄 ,   安藤正 ,   金吉男 ,   中村正則 ,   金澤洋介 ,   稲波弘彦

ページ範囲:P.1391 - P.1398

 抄録:橈骨遠位端骨折後に生じる長母指伸筋腱皮下断裂の発生機序に関してはさまざまな意見がある.われわれはいわゆる「手関節捻挫」に続発した長母指伸筋腱皮下断裂4例,総指伸筋腱皮下断裂1例,および橈骨遠位端骨折に続発した長母指伸筋腱皮下断裂7例を経験したので,腱断裂発生機序に関する考察を加えて報告する.長母指伸筋腱皮下断裂は橈骨遠位端骨折以外の外傷にも続発し,その受傷機転に共通するものは手関節過伸展の強制であることから,受傷時に伸筋支帯遠位辺縁によって長母指伸筋腱の橈背側部に圧挫が生じ,その後に腱損傷部は第3 compartment遠位部において摩擦を受けることによって磨耗,変性が進行して遂には腱断裂が生じるものと考えた.橈骨骨折部の不整による腱の磨耗,断裂は頻度としては小さいものと思われる.

骨盤・四肢の転移性骨腫瘍に対する手術的治療と放射線治療の比較検討

著者: 須田昭男 ,   三浦由太 ,   佐藤隆司 ,   石川朗 ,   高木理彰 ,   小山内俊久 ,   浜﨑允

ページ範囲:P.1399 - P.1406

 抄録:転移性骨腫瘍に対する手術的治療と放射線治療の治療成績を比較検討した.手術的治療は41例,48ヵ所で,術式は人工骨頭置換,人工骨置換,切除のみ,内固定のみ,掻爬と内固定,切断などが行われた.放射線治療は32例,32ヵ所で,照射量は2,700〜7,100rad,平均4,240radであった.手術的治療で疼痛が消失したもの87.5%,軽快したもの12.5%であり,放射線治療で,疼痛が消失したもの50%,軽快したもの37.5%,不変12.5%であった.手術的治療で日常生活動作が改善したもの52.1%,不変47.9%であり,放射線治療で日常生活動作が改善したもの26%,不変74%であった.癌患者のquality of lifeを考えると,適応があれば,支持性が得られる手術的治療を積極的に行うべきであると思われた.

アキレス腱滑液包造影術について

著者: 長谷川清

ページ範囲:P.1407 - P.1411

 抄録:アキレス腱踵骨付着部近辺の疼痛性疾患に対して,アキレス腱滑液包造影および滑液包内局所麻酔剤注入試験を行った.
 造影により滑液包の形状や位置が明らかにでき,踵骨骨棘など周囲の構造物との関係を把握するのに有用であった.

手術手技シリーズ 関節の手術<下肢>

膝関節拘縮に対する関節授動術

著者: 古賀良生

ページ範囲:P.1413 - P.1420

はじめに
 膝関節の拘縮は,肩や股関節でみられる肩甲骨や骨盤など隣接部位での代償運動が少ないため,日常生活での不自由は大きい.とくに日本人にとって畳の生活では不便が大きいため,本邦において膝関節の授動術に対して,過去に多くの研究と手術手技の検討がなされた1,2,3)
 膝関節拘縮で臨床上問題となるものの多くは屈曲の制限(伸展拘縮)で,その原因としては膝関節内骨折や大腿骨骨折後に発生する外傷性拘縮が最も多い.過去に多かった結核や化膿性の膝関節炎や注射による大腿四頭筋拘縮症によるものは現在稀で,最近は靱帯損傷に対する修復術や再建術,滑膜切除術などの一般化とともに,このような膝関節内手術後の拘縮例も多くみられるようになった.

認定医講座

骨の生理・構造・生化学

著者: 大野敦也

ページ範囲:P.1421 - P.1428

1.骨の構造
 骨は外側から骨膜,皮質,海綿骨からなる.このうち,骨膜は内層のcambium layerに骨形成能を有し小児期での骨の横径成長を行うが,成人では骨折等の修復機転に際して骨形成予備能を有していることで重要で,また,感染や骨腫瘍などの刺激に対して種々の形の骨形成をおこしX線変化を修飾する.
 皮質はオステオン(第二次骨単位)と介在層板からなる.オステオンは,ハバース管を中心に骨細胞をいれた骨小腔を同心円状に配列した層状構造をもち,各骨細胞は細胞突起で連絡している.オステオンの間の部分を介在層板という.そして,これらハバース管は走行中に他のオステオンと直接的に,またVolkmann管を介して間接的に連絡している.したがって,骨皮質は三次元的に配列されたオステオンの集合体であると考えられ,これらオステオンは機能的にも形態的にも皮質骨を構成する単位として存在する(osteonal or Haversian system).各オステオンはセメント線で境界される(図1).

胸郭出口症候群

著者: 曽我恭一

ページ範囲:P.1429 - P.1434

はじめに
 胸郭出口症候群は左右の第1肋骨で囲まれた胸郭出口あるいはその近傍で,腕神経叢や鎖骨下動静脈が圧迫又は伸展されて生ずる症候群であり,斜角筋症候群,頸肋症候群,肋鎖症候群,過外転症候群などを総称して命名された症候群である.この症候群についての報告は多数あるが,現状ではその発症のメカニズムや診断基準,治療法について確立されているとは言えない.本症候群は本来,患者の自覚症状に基づいて診断するため曖昧な点も少なくないが,注意深い問診や診察,経過観察などにより正しい診断は可能であり,正しい診断がなされると治療成績も向上するものである.

整形外科を育てた人達 第77回

Sir Reginald Watson-Jones(1902-1972)

著者: 天児民和

ページ範囲:P.1435 - P.1437

 新しい国のAmericaは外科学会との摩擦もなく1887年にAmerican Orthopaedic Associationが発足したが,英国ではドイツと同じく外科との了解を得るのに時間を要し,1918年からBritish Orthopaedic AssociationがE. Muirhead Littleを会長として立上がった.しかし学会誌は持たず米国のJournal of Bone and Joint Surgeryに頼っていた.30年後の1948年になって英国版(British Volume)と米国版(American Volume)に別れ,British Volume(B-V)の編集主任にReginald Watson-Jonesが任じられて編集に努力し英米両国の評判の良い学者であったので,今回はこの人の伝記を紹介することにした.

検査法

腰椎,胸椎椎間板穿刺のための斜位直接刺入法

著者: 佐藤哲朗 ,   平田晋 ,   金淵隆人

ページ範囲:P.1439 - P.1447

 抄録:体位と管球の調節により針の刺入方向と透視の方向を一致させることで,lateral approachによる腰椎,胸椎椎間板の穿刺手技を一次元的な針の深さだけを調節すればよい単純な手技とした.我々はこの方法を斜位直接刺入法と名づけた.実際の椎間板穿刺にあたっては,体位を斜位とし管球を頭尾側に傾けることによって透視の方向を針の刺入方向に一致させている.本法により皮膚刺入部の決定は容易となり,針の刺入にあたっての角度調節は不要となった.あわせてlateral approachにおける針の刺入経路の解剖学的検討を行った.針の刺入経路は解剖学的に限定されたものではあるが,胸椎,腰椎のいずれの椎間板穿刺も安全に行われることを確認した.

臨床経験

多数回手術を行ったpolyostotic fibrous dysplasiaの1例

著者: 多田健治 ,   宮崎和躬 ,   松田康孝 ,   安田厚 ,   村上仁志 ,   中山富貴

ページ範囲:P.1449 - P.1452

 抄録:polyostotic fibrous dysplasiaに1971年K. Baadsgaardが報告したtransplantation of callus-invaded Kiel boneを行い,良好な成績が得られたので報告する.
 症例:29歳女性,左大腿部痛で昭和48年本院入院.X線像では,骨盤・両下肢に骨透亮像・スリガラス状陰影を認めた.病的骨折・荷重時疼痛のため,5回の病巣郭清術・骨移植術を行った.移植骨には1回目は自家骨とKiel bone,2回目以降は予め腸骨骨膜下に移植していたcallus-invaded Kiel boneを用いた.移植後の骨新生は良好である.採取時のKiel boneの所見は,移植後9ヵ月では一部に骨新生が認められ,7年7ヵ月後では大部分が新生骨に置換され,骨梁も過形成であった.callus-invadedを十分に生じさせれば,この方法は多数回の骨移植を要する疾患に適切と思われる.

腫瘤型筋サルコイドーシスの1症例

著者: 貴島浩二 ,   田中清介 ,   富原光雄 ,   山崎晴彦 ,   神谷正人 ,   梁瀬義章 ,   立花暉夫

ページ範囲:P.1453 - P.1456

 抄録:サルコイドーシスは,全身臓器に乾酪性壊死のない類肉芽腫が形成される疾患で,好発部位は肺門リンパ節,眼,肝,皮膚とされている.また骨格筋に発症する筋サルコイドーシスは,筋肉生検により初めて病変が証明される無症候型が大部分で,臨床上明らかな筋肉内腫瘤を形成する例は少ないとされている.今回我々は右三角筋内に発生した腫瘤型筋サルコイドーシスを経験したので報告する.
 症例は右肩外側部の腫脹を主症状としたが,ガリウムシンチでは肺門リンパ節,肝内にも集積が見られた.診断にはMRI,血管造影以外に,補助診断としてACE,ツベルクリン反応が有用であったが,組織診断にて正常筋組織内に乾酪壊死を伴わない類上皮細胞,多核巨細胞から成る肉芽腫が形成されていたため確診を得た.現在特に症状の悪化を見ないため内科的に経過観察中である.

外科的治療を要した多発性痛風結節の1例

著者: 中山泰成 ,   扇内幹夫 ,   永田善之 ,   小川剛司 ,   小林直人 ,   小室保尚

ページ範囲:P.1457 - P.1460

 抄録:今回我々は長期間放置された多発性痛風結節の1例を経験し,外科的処置を施す機会を得たので報告する.症例は56歳男性,右環指の痛風結節の自潰創より骨髄炎を併発し中節骨にて切断術施行,その後環・小指の伸展障害を認めたので手掌腱膜切離,また手根管を開放し,腱剥離術,尿酸結晶の摘出を施行した.この症例の高尿酸血症の原因は尿酸の生産過剰が腎機能の低下を招いたため,尿酸の排泄が不良となり多発性の痛風結節を生じたものと考えられた.

後方からの除圧・固定術を行った第5腰椎不安定型破裂骨折の1例

著者: 伊林克也 ,   原田吉雄 ,   竹光義治

ページ範囲:P.1461 - P.1464

 抄録:稀な外傷である第5腰椎の不安定型粉砕骨折を経験した.症例は22歳男性で,L5神経根領域の知覚障害を呈していた.X線写真上,脊柱管は後方に突出した粉砕骨片で高度に狭窄し,椎体下方部分の縦骨折や椎弓骨折を伴うcrush-cleavage fractureであった.年齢や職業を考慮し,神経障害や腰痛等の後期合併症を予防するため観血的治療を行った.手術は,後方アプローチによる除圧および内固定術(Steffee's pedicle screw fixation,PLIF,PLF)を施行し十分な固定性を得た.第5腰椎の破裂骨折はL5/S間に十分な固定力が得られる内固定金属が殆どなく,これまで保存療法が主体であったが,pedicle screwfixationの発達で今後手術適応が広がり,良好な成績が得られるものと期待される.

放置された成人先天性内反足の1治験例

著者: 野口哲夫 ,   半田豊和 ,   野村栄貴

ページ範囲:P.1465 - P.1469

 抄録:出生時より放置された両側の先天性内反足の1例にpan-arthrodesisを施行し,良好な結果を得た.症例は54歳の女性で,生下時からの足部変形は放置されていた.歩行には「鼻緒」のある履物や長靴を使用していた.昭和60年3月頃より歩行時に足背や足底部に痛みやシビレ感が出現してきた.入院時には足部が高度の尖足・内反・内転の変形を呈して,足背の荷重部には胼胝を認めた.
 X線像は長軸アーチが高く内反・内転が高度であった.talocalcaneal angleは前方が約45度,後方約30度,Hibbs angleは約95度でcalcaneal pitchは約60度である.知覚異常は足根管症候群と伏在神経の外傷性神経炎に起因すると診断した.これに対して神経除圧術とpan-arthrodesisを施行した.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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