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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科24巻3号

1989年03月発行

雑誌目次

視座

Information Explosionに思う

著者: 三浦幸雄

ページ範囲:P.237 - P.237

 最近数十年,わが国の遂げた物質的飛躍には著しいものがあり,ついに世界の経済大国になった.この影響は各方面に及んでいる.しからば,学術,研究の面ではいかがなものであろうか,我々臨床医学に携わるものから見ると,大学からの研究費は平行スライドで少しも増額されていない.研究費が足らない,或いは実績に対する研究費給付という実態はあまり変っていないように思われる.研究は,本来,真に独創性に富むものであれば,短期間では成果が上がらないものでも与えられなければならないように思う.近視眼的な思考はあまり戴けない.しかし研究費が足らないからという弁解めいた口実は,独創的研究が生れないということに使うにはかなり不合理な面をもっていると言える.
 日本の医学界から発表される研究成果は,その研究者,あるいは業績発表の数に比して独創性のあるものが少ないのではないか,という批判もある.その根拠はやや不明確であるがこの意見には謙虚に耳を傾けなくてはならないと思う.

論述

特発性大腿骨頭壊死症の画像診断

著者: 鈴木克憲 ,   増田武志 ,   松野丈夫 ,   長谷川功 ,   一岡義章 ,   大野恵一

ページ範囲:P.238 - P.244

 抄録:症例は,大腿骨頭壊死症両側罹患例20人,片側罹患例20人,検査時壊死が明らかでないSLE5人である.
 これらの症例に対する単純X線,骨シンチ,CT,MRIの各画像所見を検討し,以下の結果を得た.

下肢の悪性骨腫瘍などにおけるRotation-Plasty(患肢温存的回転形成術)の経験

著者: 井上治 ,   茨木邦夫 ,   乗松尋道 ,   新垣宜貞

ページ範囲:P.245 - P.252

 抄録:Rotation-plastyは成長期に発生した大腿骨あるいは脛骨近位の悪性腫瘍に対し現在,脚長差が問題にならない唯一の患肢温存手術であり,欧米では好結果が報告されている.その方法には大腿骨遠位あるいは脛骨近位の病巣部を切除し,残存患肢を180度外旋して足関節を膝関節として機能させるknee rotation-plasty,あるいは大腿骨近位の病巣を切除後,膝関節を股関節として,また足関節を膝関節として機能させるhip rotation-plastyがあり,いずれも踵荷重の長下肢装具にて下腿切断に匹敵する歩行能力が得られる.当科では大腿骨骨幹部Ewing肉腫人工骨幹置換後,大腿骨遠位難治性骨髄炎および脛骨近位骨肉腫人工骨頭置換後の3例にknee rotation-plastyを,また大腿骨頸部骨肉腫にhip rotation-plastyを行いほぼ満足できる結果が得られた.手技上の問題点は患肢が内旋位に固定され易いこと,revision例では合併症が起こり易いことであった.

症例検討会 骨・軟部腫瘍6例—日本整形外科学会 骨・軟部腫瘍研究会

〔症例1〕骨原発性の悪性血管腫と思われる1症例について

著者: 吉原哲 ,   飯島康司 ,   黒木良克 ,   光谷俊幸 ,   阿部光俊 ,   今村哲夫

ページ範囲:P.253 - P.256

 症例:65歳,男性
 昭和62年1月初旬より特因なく右下腿下部前面に疼痛出現し,放置するもその後徐々に疼痛増強し同年2月下旬より同部の発赤および腫脹がみられ,3月中旬,他院を受診し脛骨部骨腫瘍の疑いにて当科紹介され精査治療目的にて入院となった.初診時,果部より約7cm中枢側で脛骨前面に圧痛点を認め,同部に発赤および軽度の腫脹を認めた.X線上,脛骨遠位部に6×3cmの骨皮質の破壊を伴った境界不明瞭な骨吸収像を認めた(図1-1).99mTc-HMDP scintigramにてX線上病変の見られた部位に一致してuptakeの増加がみられた.62年4月21日Angiographyおよび骨生検を施行した.Angiographyにて動脈偏位およびtumor stainが観察された.

〔症例2〕左腸骨骨腫瘍

著者: 岩下俊光 ,   橋本洋 ,   恒吉正澄 ,   横山良平 ,   宮ヶ原俊郎 ,   遠城寺宗知 ,   増田祥男 ,   牛島正博 ,   篠原典夫

ページ範囲:P.256 - P.258

 症例:32歳,男
 経過:昭和62年5月11日夜就寝した後,誘因なく左股部から臀部に至る疼痛が出現したため某医を受診したところ,骨盤に穴があいていると言われた.痛みが強くなり,5月18日九大整形外科を紹介され受診した.単純レ線検査にて,fibrous dysplasiaが疑われ,外来にて経過観察していたが,疼痛の増強のため8月26日精査入院となった.単純レ線では左腸骨に溶骨性変化を認め(図2-1),CT scanでは腸骨に溶骨性変化が骨髄質にあり骨皮質は一部外側内側ともに破壊され(図2-2),血管造影では軽度の血管の増加を認めたが,骨シンチは陰性であった.生検にて悪性腫瘍と診断され,10月6日左骨盤半載術が施行された.切除標本では腸骨部に白色の脆弱な腫瘍が結節状および連珠状に増殖しており,割面では乳白色の腫瘍が骨髄質全体を占め,骨皮質の一部も破壊され骨外の軟部組織に連続性に浸潤していた(図2-3).組織学的には腫瘍細胞は卵円形および紡錘形の核と帯状の好酸性の細胞質をもち,腫瘍細胞が束状に配列しherring-bone patternもみられた(図2-4).赤玉細胞とおたまじゃくし様の腫瘍細胞さらにきわめて少数ながら明らかな横紋のある腫瘍細胞を軟部にも骨内にも認めた(図2-4).

〔症例3〕踵骨骨腫瘍

著者: 清水透 ,   千木良正機 ,   館野勝彦 ,   宇田川英一 ,   町並陸生 ,   福田利夫 ,   伴聡

ページ範囲:P.258 - P.261

 症例:47歳,男性
 昭和62年6月より,外傷の既往なく歩行時に右踵部外側の疼痛が出現した.歩行可能であったが疼痛の改善がみられないため某医を受診し,X線検査で右踵骨の異常陰影を指摘された.7月21日に群馬大学整形外科を受診した.初診時,右踵部外側に軽度の圧痛および熱感を認めた.単純X線像では,踵骨に斑点状の石灰化陰影を含む骨透亮像を認め,軸写像では踵骨外側骨皮質が破壊し軟部へ腫瘤が突出していた(図3-1).Digital subtraction angiographyでは踵骨の前方に軽度のtumor stainを認めた.99mTcシンチグラフィーおよび67Gaシンチグラフィーでは右踵骨への著明な集積が見られた.血液生化学検査では異常を認めなかった.

〔症例4〕異なる組織像を示した軟部腫瘍及び隣接する骨病巣

著者: 節田和義 ,   村山均 ,   飯田萬一 ,   亀田陽一 ,   亀田典章 ,   蛭田啓之 ,   宝積豊

ページ範囲:P.261 - P.264

 症例:71歳,女性
 昭和61年1月,右臀部腫瘤に気付いた.昭和61年1月より腫瘤は急激に増大し,3月5日当科へ入院した.右臀部の腫瘍は20×20cm,表面平滑,弾性硬であった.単純X線像では,軟部腫瘍と同側の右腸骨内下方に円形の溶骨生変化を認めた(図4-1a).CT像では,筋肉下に巨大な軟部腫瘍があり,その腫瘍に接して腸骨病巣を認めた(図4-1b).血管造影はhypervascularityを示し,多くの細いラセン状の血管が見られ,tumor stainは濃淡が不均一で長く停滞していた(図4-1c).昭和62年4月10日,広範切除術を行った.軟部腫瘍と腸骨病巣には直接の連続性は認められなかった.軟部腫瘍の割面は分葉・結節状で境界明瞭に増殖し,出血はなく壊死もわずかであった.組織学的には,比較的均一な紡錘形細胞がstoriformに増殖し,強い異型性を示す部分もあった(図4-2).

〔症例5〕左背部軟部腫瘍

著者: 広瀬隆則 ,   工藤英治 ,   檜澤一夫 ,   寺前俊樹 ,   村瀬正昭 ,   井形高明

ページ範囲:P.264 - P.266

 症例:52歳,男性
 昭和62年4月,左背部に腫瘤があるのを家族に指摘され,増大傾向を認めたため同年6月12日徳島大学整形外科を受診した.腫瘍は約5cm径で左側傍脊柱筋内に存在しており,CTではTh 11-L2のレベルにわたって存在し,周囲筋組織と比較的よく境界されていた.血管造影では,肋間動脈を栄養血管とし,蛇行,狭窄,hypervascularity,poolingなどが認められた.X線上骨破壊像は見られず,他の血液生化学検査も正常範囲であった.以上の所見より悪性が疑われたため,7月1日に広範囲切除術が施行された.術後,化学療法が行われたが,約8ヵ月後,左肺下葉に転移巣が出現し,下葉切除術が施行された.その後,化学療法が続けられているが,初回手術から約1年4ヵ月後の現在,再発および他の転移巣は見いだされていない.

〔症例6〕左下腿軟部腫瘍

著者: 森本一男 ,   井上博司 ,   藤原武 ,   指方輝正 ,   岡村明治

ページ範囲:P.267 - P.269

 症例:56歳,男性.職業,木工技師
 主訴:左下腿の腫瘤

整形外科を育てた人達 第69回

Gerhard Küntscher(1902-1972)

著者: 天児民和

ページ範囲:P.270 - P.273

 Gerhard Küntscherは髄内釘(Marknagelung)の開発者として有名で1940年にこの新しい骨折治療技術を発表したが,この年に第二次世界大戦が始まりこの技術が全世界に伝わるのは少し遅れた.しかしKüntscherはこの技術で戦傷兵の治療をして,その素晴しい治療成績は人々を驚かした.しかも敵も味方も差別することなく親切に治療した.戦後KüntscherのMarknagelungは日本にも伝わり,彼も3回日本に来て私とは大変親密な交友を続けていた.

検査法

骨肉腫の肺転移巣に対する骨シンチグラフィーの有用性

著者: 鵜飼和浩 ,   土井田稔 ,   水野耕作 ,   広畑和志 ,   松本圭司

ページ範囲:P.274 - P.280

 抄録:当科で治療を受けた骨肉腫で肺転移巣のある10症例における骨シンチグラフィーの有用性について検討した.原発巣及び骨転移巣の骨シンチグラムはすべて陽性であるが,肺転移巣では原発巣のレントゲン像が溶骨性及び混合性病変を示す5例の骨シンチグラムはすべて陰性であった.一方,硬化性病変であった5例中4例が骨シンチグラム陽性であり,中でも傍骨性骨肉腫は強陽性であった.病理組織所見では原発巣が溶骨性病変の症例では腫瘍性類骨は見られても類骨石灰化像は全例で観察されず,また肺転移巣でも類骨石灰化像は存在しなかった.一方,硬化性病変の症例では原発巣に類骨石灰化像の存在する例が多く,肺転移巣でも類骨石灰化さらに骨形成所見を認める症例が多く,それらはいずれも骨シンチグラムは陽性であった.
 以上より,骨シンチグラフィーによる肺転移巣の検索は硬化性病変に対しては有用であるが,溶骨性病変の場合には有用性に疑問があると考えられた.

認定医講座

慢性関節リウマチ(含む強直性脊椎炎)

著者: 上尾豊二

ページ範囲:P.281 - P.287

慢性関節リウマチ(Rheumatoid Arthritis,RA)
 診断:RAは病因のいまだ決定しない慢性の多関節炎症疾患であり,診断上,例えば結核性関節炎が組織所見で確定診断可能なような決め手がない.そこで1つの症候群としての類似性で診断をつけざるをえない.現在まで基準として用いられたのが1958年に制定されたアメリカリウマチ協会(ARA)の診断基準である(表1).この基準ではRAをClassical,Definite,Probable,Possibleに分類しているのが特徴である.またRAは一般に疼痛を主訴とする疾患であるが,診断に際しては主観的な痛みの程度は評価しにくく,客観的に評価のできる腫脹を重視しているのがポイントである.
 1987年に新しいARA診断基準が発表された(表2).この診断基準ではClassical,Definite等の分類は廃止されている.除外項目も廃止されている.基準項目での主な改訂部分は,疼痛,組織検査,関節液検査の項目の削除である.関節腫脹が診断の基本であることは,前の診断基準から一貫しており,そのことがさらに強調されている.

頸部椎間板ヘルニア

著者: 国分正一

ページ範囲:P.289 - P.297

 頸部椎間板ヘルニアは頸椎椎間板組織が後方線維輪を破って後方あるいは後側方に脱出し,脊髄,神経根が圧迫されて脊髄症,神経根症の症状が生じる疾患である.日常診療において稀ならず経験され,その重要性は腰部椎間板ヘルニアに劣らない.

臨床経験

大腿骨頭無腐性壊死症を初発症状とした白血病の1症例

著者: 笠井隆一 ,   奥村秀雄 ,   山室隆夫 ,   北大路正顕 ,   沢田博義

ページ範囲:P.299 - P.302

 抄録:外来初診時,右股関節大腿骨頭無腐性壊死症と診断された18歳,男性の症例は,血液検査等の結果,慢性骨髄性白血病と診断された.慢性骨髄性白血病は入院後Ph1-positiveと診断され,当初interferonによる治療が行われたがその後,Busulfanにより良好な治療経過を得た.この間大腿骨頭壊死症に対しては免荷を含む保存療法を行った.良好な寛解が得られたので,外来通院加療により経過観察を行ったが,脳障害と思われる突然の意識喪失を来し死亡した.この大腿骨壊死症を初発症状とした稀な慢性骨髄性白血病の1症例につき,治療経過等を含め報告し,若干の文献的考察を加えた.

金製剤による間質性肺炎の死亡例

著者: 可徳三博 ,   原田正孝 ,   川上宏治

ページ範囲:P.303 - P.305

 抄録:81歳の男性の慢性関節リウマチ患者に,シオゾールを使用し総量295mgにて重篤な呼吸不全が発症した.胸部レントゲン写真,臨床経過などから金製剤による間質性肺炎と診断した.シオゾール投与の中止,ステロイドの投与,呼吸管理などを行ったが効果なく死亡した.金製剤を使用するにあたっては,間質性肺炎も念頭に置き十分な呼吸器系の検索を行っていくことが必要である.

Active Pivot Shiftに関する筋電図学的検討

著者: 遠山晴一 ,   安田和則

ページ範囲:P.307 - P.310

 抄録:Active Pivot Shift(以下APS),すなわち自己の筋力により随意的に脛骨外顆を前方に亜脱臼させることが可能な,陳旧性ACL損傷患者に筋電図検査を施行しAPSの作動筋に関する検討を行った.検査方法は患者を仰臥位膝90度屈曲位とし,大腿直筋および腓腹筋外側頭に表面電極を貼付し,膝窩筋には一心同心型針電極を刺入した.APS施行時および大腿四頭筋,腓腹筋の単独最大収縮時の各筋の筋電図を記録した.APS時に筋活動を示した筋は膝窩筋と腓腹筋であった.腓腹筋はAPSを繰り返すことによりその筋活動は減少したのに対し,膝窩筋は振幅約0.5mVの一定した活動電位が認められた.この間,肉眼的にはAPSの前方移動量は変化しなかった.APSの主作動筋としては膝窩筋が考えられ,腓腹筋は共同筋であるが,その効果は第二義的なものと推察された.

第5頸神経前根切断の1例—Keegan型頸椎症の病態に関して

著者: 那須正義 ,   長野博志 ,   森下嗣威 ,   三宅完二

ページ範囲:P.311 - P.314

 抄録:解離性運動麻痺を示す頸椎症の病因には未だ不明の点も多い.21歳男性で一側の第5頸神経前根のみを切断した1例を報告した.彼は術前右肩挙上不能であったが,術後10日で右肩の挙上は可能になった.本報告例をもとに文献的考察を加え,いわゆるKeegan型頸椎症の病因に,髄内病変の存在を推論した.

外傷性横隔膜ヘルニアを合併した骨盤骨折の1例

著者: 甲斐信 ,   緒方正光 ,   国崎正二 ,   長元法喜

ページ範囲:P.315 - P.317

 抄録:最近経験した骨盤骨折に伴う外傷性横隔膜ヘルニアについて報告する.骨盤骨折に伴う合併症は,種々の報告があるが,横隔膜ヘルニアについてはほとんど記載がない.しかしその発生機序を考えれば,決して稀な疾患ではないことが分かる.そして強大な外力が作用した外傷の場合,本疾患の合併も考えるべきだと思われる.臓器脱出を起こしていない場合本症の存在を知っていても,診断は難しい.

脊柱管内血管脂肪腫の2例

著者: 小島朗 ,   冨士武史 ,   白崎信己 ,   倉都滋之 ,   原田武雄 ,   久保雅敬 ,   濱田秀樹 ,   虎頭廉 ,   中岡和哉 ,   佐谷稔

ページ範囲:P.319 - P.324

 抄録:脊髄血管脂肪腫は稀であるとされているが我々は硬膜外血管脂肪腫の2症例を経験した.
 症例1は60歳男性で主訴は歩行障害であり,両下肢の痙性不全麻痺を認めた.腫瘍は第5胸椎高位から第10胸椎高位に及び,完全切除は不可能であったが術後神経症状は改善した.現在手術後9年を経過したが神経症状の再発を見ていない.症例2は76歳男性で主訴は咳嗽であり,胸部以下の軽度の知覚障害と両下肢の痙性を認めた.腫瘍は第9,10胸椎高位にあり硬膜外腔だけでなく脊柱管外にも広がっており砂時計腫型発育をしていた.腫瘍切除により知覚障害の消失と痙性の軽減を得た.脊髄血管脂肪腫は現在我々が知りえた範囲では34例報告されており,今回の2例を含めて36例を検討し報告した.

Recklinghausen病に発症した低燐血症性くる病の1例

著者: 伊崎寿之 ,   鈴木邦雄 ,   道振義治 ,   桃原茂樹 ,   大橋洋 ,   花岡英弥 ,   矢部啓夫

ページ範囲:P.325 - P.329

 抄録:Recklinghausen病に低燐血症性くる病を発生した稀な症例を報告する.症例は12歳女子で,生下時より左半身にカフェ・オレ色素斑を認め,4歳時より側彎のため装具療法をうけている.10歳時に左下腿部に疼痛が出現し,歩容異常をきたし,その後他の部位にも疼痛が出現してきたため精査したところ,血清学的所見ではアルカリフォスファターゼ(Al-p)の著明な高値,血清燐の低値,尿細管燐再吸収率に低下を認めた.X線所見では左側の骨盤,大腿骨,脛骨に著明な骨萎縮と骨改変層があり,腸骨より採取した骨病理組織所見は骨軟化症を示した.なお知能指数は47であった.昭和61年11月(11歳時)よりビタミンD25万u/dayより漸次増量し,昭和62年4月からは1α(OH)D3の投与に変更した.投薬開始2カ月後より症状の改善が得られ,1年後の現在,骨圧痛も消失し,X線上明らかな骨陰影の濃化を得ている.

Cheiralgia Parestheticaについて—2症例報告

著者: 石田和宏 ,   石井清一 ,   薄井正道 ,   沢田研司 ,   舛田和之 ,   浅野奨

ページ範囲:P.331 - P.334

 抄録:1932年Wartenbergは,橈骨神経浅枝のmononeuritisに対してCheiralgia Parestheticaと命名した.以来,報告は稀であるが,時計バンド,腕輪,手錠,手術に使用されたプレートによる圧迫が原因となることが多いと報告されている.我々は,特に原因なくして発生した本疾患の2例を経験した.症例1:58歳男性で職業は検品業,橈骨神経浅枝領域に異常知覚を訴え受診となる.前腕末梢の橈背側に圧痛点を認め,同部へのステロイド剤と局麻剤の浸潤により症状の軽快を認めた.症例2:44歳女性で職業は飲食店業,右母指背側にかけて「ビリビリして袖が触れても痛い」感じを訴え受診となる.圧痛点は,前腕末梢の橈背側で,ステロイド剤の浸潤も効果なく,手術を施行した.M. brachioradialisとM. extensor carpi radialis longusの間の筋膜から橈骨神経浅枝が皮下に出る部分でentrapmentされていた.術後8週で症状の消失を認めた.以上の2症例に文献的考察を加えて報告する.

骨軟部腫瘍におけるシスプラチン二経路化学療法(Two-route chemotherapy=TRC)

著者: 松本誠一 ,   川口智義 ,   網野勝久 ,   真鍋淳 ,   石井義昭 ,   古屋光太郎 ,   磯辺靖

ページ範囲:P.335 - P.339

 抄録:1985年7月から1987年4月までの期間に7例の骨軟部肉腫に対しシスプラチンとその拮抗剤であるチオ硫酸ナトリウムを用いた二経路化学療法を施行した.その結果,切除材料の組織学的効果判定では6例中3例が有効であった.また腫瘍部を流れると思われる蛋白非結合型Pt濃度について見ると,本法では全身投与の約10倍の高値を示した.しかも副作用は全身投与に比較し僅かであった.以上より本法は原発巣の局所療法としては有効な手段であると結論した.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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