icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科24巻4号

1989年04月発行

雑誌目次

特集 不安定頸椎—基礎と臨床—(第17回日本脊髄外科研究会より)

第17回日本脊椎外科研究会をふりかえって

著者: 河合伸也

ページ範囲:P.347 - P.347

 頸椎に不安定性が存在するという表現は日常よく用いられています.そしてその不安定性の有無によって治療方針の選択が大きい影響を受け,しばしば椎間固定術の必要性を判断する根拠となっています.しかし,頸椎の不安定性を一定の基準として具体的に説明することは決して容易でありません.年齢,性別,変性度等の多くの要素を考慮する必要もあります.明らかな辷りや彎曲異常があれば,その判断は難しくありませんが,実際には頸椎の機能撮影によって椎間の可動状態を種々の要素を勘案して総合的に判定していることもあるのが現状です.
 頸椎の不安定性を来す原因は多岐にわたります.代表的なものとして外傷,変性,腫瘍,炎症あるいは術後等が挙げられます.椎間不安定性の病態の把握や治療方針の決定に際し,原疾患の状態を考慮しながら検討する必要があります.

座長総括/「Ⅰ.病態(1)—基礎とMRI—」の部

著者: 原田征行

ページ範囲:P.348 - P.349

Ⅰ-1.頸椎不安定性の諸因子について―in vitroに於ける運動力学的研究—
 若野(川崎市立井田病院)はヒト頸椎のmotion segmentを用いて荷重実験を行った.応力—ひずみ曲線から,実験的に頸椎不安定性を定義した.この結果stiffness値とエネルギー損失比を求めた.その結果は頸椎の運動力学的特徴は,運動の種類,高位,個体の年齢,荷重の条件別に有意に変化した.

座長総括/「Ⅱ.病態(2)—X線学的検討—」

著者: 山本博司

ページ範囲:P.349 - P.351

 頸椎の不安定性を形態学的に把握しようとする場合に,現在のところでは,X線を用いた動態撮影が基本になっている.このセッションでは,頸椎運動の正常域と病的異常運動域の境界がどこにあるか,いかなる性状の運動が病的と診断されるのか,異常運動と臨床症状の関係,そして治療方針を決めるための画像情報の根拠などが,議論の中心となった.
 池田(岐阜大)は461名の症例の頸椎部可動域を測定し,その計測値について主成分値を算出し,症例別及び年齢別の頸椎椎間可動域の特徴について検討した.その結果,脊髄症状例では,環椎後頭間の動きが大きい反面,第3から第6頸椎間の動きが小さいとし,年齢別には,高齢者では全体に動きが悪いが,特に環軸椎間と5/6間での可動域が低下すると報告した.高齢者で下位頸椎の可動域の大きいものはriskが高いというsignになると言えよう.

座長総括/「Ⅲ.前方法の術後」の部

著者: 酒匂崇

ページ範囲:P.351 - P.353

 このセッションでは頸椎前方固定術後の頸椎柱のアライメントの変化や隣接椎間の不安定性の出現について主に検討された.
 辻(県立伊予三島病院)は前方固定術後のアライメントの変化(固定椎部のアライメントの変化とその頭尾側のカーブの代償性変化)を独自に5型に分類した.この分類における各型と141例の術後成績に検討を加えた結果,明白な相関関係は見出せなかった.しかし,頸部の不定愁訴は手術後のアライメントの変化をきたしたものに多い傾向を認め,また,隣接椎間の異常可動性の増強は姿勢変化による重力の負荷様式の変化も影響すると推測している.

座長総括/「Ⅳ.後方法の術後(1)」の部

著者: 平林洌

ページ範囲:P.353 - P.354

 脊柱管拡大術以外の後方除圧術における術後の不安定性についてのセッションであったが,比較の対照として拡大術も一部含まれていた.
 第1席の樋笠(徳島大)は,椎弓切除8例と棘突起縦割法による脊柱管拡大術12例を対象に,可動域15°以上,すべり3mm以上,局所後彎5°以上を「不安定性あり」と定義し,2群を分析,比較した.後彎を除いて「不安定性」を認めた症例では,両群に共通して術後成績は不良の傾向にあった.「不安定性の発生」には両群間に明らかな差を認めず,拡大術をもってしても術前に存在する不安定性を完全には制動しえなかったので,今後は棘突起縦割拡大術にone blockの骨移植を行う後方固定を採用する方向にあると結論した.

座長総括/「Ⅴ.後方法の術後(2)—脊柱管拡大術—」の部

著者: 黒川高秀

ページ範囲:P.355 - P.356

 頸部の脊柱管拡大術(椎弓形成術)は小山・服部らの発表以後さまざまな変法が考案され,我国では椎弓切除術に代って後方除圧術の主流となりつつある.この部の10題は,扱う術式がそれぞれちがっていたが,全体としては脊柱管拡大術の術式の大部分を網羅した.
 脊柱管拡大術は,椎弓切除術の術後にあらわれる脊椎の不安定性を克服することを主目的のひとつとして開発された術式であるから,この目的が達せられているかどうかは術式の存在理由にかかわる問題である.すでに大方の経験は,椎弓切除よりは術後の安定性が良好である点でほぼ一致している.それならば,どのような場合にこの術式の安定性保持力の限界が現われるか,隣接椎間への影響はどうか,どのような場合に脊柱管拡大術によって脊柱の安定化ができるかなどが今日の問題である.

座長総括/「Ⅵ.手術的治療」の部

著者: 竹光義治

ページ範囲:P.357 - P.359

 本sessionでは外傷,腫瘍,変性,RA,術後性等による不安定頸椎に対し,どのような固定法がよいか,各instrumentの適応,長所欠点等が討議された.
 42:齋藤(京大)は頭部付頸椎胸椎モデルを作成,有限要素法により,椎弓切除術後の前または後方固定追加例と,拡大術施行後発現しうる変形とその防止法についてsimulation解析した.何れも除圧椎弓上下端両分節に応力が集中するため,隣接健常部との間に固定を加えると防止し得ると述べた.白土(北大)は椎間板を一つの等方弾性体として解析することに疑問を持ったがこの場合問題なしと回答された(掲載論文).

座長総括/「Ⅶ.外傷」の部

著者: 金田清志

ページ範囲:P.359 - P.360

 平本ら(山形大)は中心性頸髄損傷52症例の治療経験からの報告で,受傷時Whiteらの基準で不安定性を認めたものが12例あり,6例に前方固定術を施行した.一旦症状軽快後に遅発性に不安定性が6例に出現し3例に手術を行った.遅発性不安定性出現の6例では受傷時全例に頸椎症性変化があった.脊柱管狭窄が高度になるにつれ重症度も増す,受傷後1カ月で麻痺回復の大方の予測が可能であり不安定性のない例でも脊柱管狭窄の著明なものでは除圧により遺残麻痺の改善があった(2例).遅発性不安定は進行性であったか,受傷時からの存在の見落としか(北大鐙)には,受傷前の予備状態が外傷を契機として遅発性不安定性をもたらしたものとした.
 植田ら(総合せき損センター)の発表は採用論文となっているので内容を省くが,MRIで急性期の棘上棘間靱帯損傷の診断の可能性の質問(北大成田)には症例が少なくわからないが可能であろうと答えた.骨傷の明らかでない頸髄損傷では一椎間のみならず多椎間におよぶことがありその判断をどうするか(島田市民病院野坂)には’現在では前縦靱帯断裂はMRIの駆使で判断できるとした.骨傷のない頸髄損傷で損傷部位決定の最も良い画像診断は何か(富山医薬大加藤)に,平本は脊髄造影とCT,植田はこれらに加えMRIがとって代るだろうとした.手術術式の選択基準は前縦靱帯損傷の明らかなものには前方法を,不明なものは脊柱管拡大術を行うと述べた。

座長総括/「Ⅷ.CPとRAなど」の部

著者: 辻陽雄

ページ範囲:P.361 - P.362

 治療上多くの問題を含むCPとRA頸椎病変に対し10題の発表と,約30の質疑が展開された.

座長総括/「Ⅸ.上位頸椎(1)—頭頸移行部と環軸椎部—」の部

著者: 小野村敏信

ページ範囲:P.363 - P.364

 この部門では上位頸椎不安定症に関するもののうち,後頭骨環椎間および環軸椎間の病態,診断,治療について,いくつかの問題がとりあげられた.
 三戸ら(弘前大)は後頭環軸椎間の回旋不安定症に関与する靱帯を死体を用いて検討し,回旋を制限しているのは関節包および反対側の翼状靱帯であり,これらの靱帯などの軟部損傷に対して今後MRIやCTが臨床的画像診断としての有用性を高めるものであることを述べた.

座長総括/「Ⅹ.上位頸椎(2)—環軸椎部の治療—」の部

著者: 米延策雄

ページ範囲:P.365 - P.367

 上位頸椎では,その『不安定性』が臨床上きわめて重要な意味を持つ.しかし,その不安定性をもたらす疾患は多様で,しかも同じ病名がつけられてもその病態は必ずしも一様でない.このため治療についてもまだ問題が多い.このセッションでは外科的治療を中心に発表が行われた.
 81:今井ら(竜操整形外科)は観血的治療を行った64例をもとに,病態・手術術式の選択・手術成績について報告した(掲載論文参照).

座長総括/「Ⅺ.上位頸椎(3)—CPとDown症候群—」の部

著者: 蓮江光男

ページ範囲:P.367 - P.368

 このセッションは上位頸椎の不安定性を,CPとDown症候群という2つの特殊疾患について検討した報告であり,大変貴重なデータが次々と示され,一般脊椎外科医にとって参考となった.
 大成ら(横浜市大および町田市民病院)はアテトーゼ型CPにおける環軸椎亜脱臼と,それによる脊髄麻痺の成因を5症例について,頸椎症を伴う5例を対照として,X線学的に比較検討した.環椎歯突起間距離,脊柱管最小矢状径,環椎前傾角(前屈位において環椎の前・後結節を結ぶ線と水平線との角),下位頸椎前彎角(軸椎椎体下縁とC7椎体下縁のなす角)を計測した結果,①亜脱臼例では前屈位の環椎前傾角が大きく,下位頸椎は後彎の傾向があり,アテトーゼ運動によるくり返しの不随意運動により,環軸椎亜脱臼が生ずる,②亜脱臼による脊髄麻痺3症例においては,生来の環椎部脊柱管矢状径が狭いため軽度の亜脱臼で麻痺を生ずる,と述べた.さらに質問に対する返答として,麻痺の責任高位決定にはSEPが有用であること,haloによる外固定の適否は不随意運動の程度によるとのことであった.

座長総括/「Ⅻ.上位頸椎(4)—RA—」の部

著者: 片岡治

ページ範囲:P.369 - P.371

 著者が座長として担当したセッションは主として上位頸椎のRAによる不安定頸椎の問題で,12題という多数の演題が寄せられ,最近のこの分野に関する関心の深さを示すものと思われる.
 RAの不安定頸椎としては,上位頸椎の環軸関節前方亜脱臼(AAS),環軸関節後方亜脱臼(APS)および環軸関節垂直亜脱臼(VS)と下位頸椎亜脱臼(SAS)が挙げられるが,12題中の10題がAAS,VS,APSという上位頸椎の,2題がSASの問題を検討している.すなわち,主としてAASとVSの経年変化または自然経過に関する検討が4題(99,100,103,104),AAS,VS,SASの発生頻度と臨床症状に関する検討が3題(101,102,108),APSの発生に関する演題が1題(105),AASとVSのMRI所見が2題(106,107),AASとVSの治療が2題(109,112)および手術後の他椎間の不安定性発生の検討が2題(110,111)である.

頸椎不安定の諸因子について—In vitroにおける運動力学的検討

著者: 若野紘一 ,   本間信吾 ,   平林洌 ,  

ページ範囲:P.373 - P.378

 抄録:人頸椎を用いてin vitroにおいて荷重試験を行い,頸椎に不安定性をもたらす因子について運動力学的検討を行った.
 白人・青壮年男子の新鮮屍体標本から採取した頸椎6体を二椎骨,一椎間から成る21個のmotion segmentに分割し,物質試験機に固定し,6自由度に沿って,緩徐な準静的,および急速な動的2条件荷重を加え,生じた変位を記録した.得られた荷重-変形の履歴曲線から,各motion segmentのstiffness値とエネルギー損失比(E. L. R.)を求め,結果を運動,標本,高位,荷重条件別にそれぞれ検討した.

頸椎における回旋不安定性の3次元解析

著者: 三村雅也 ,   守屋秀繁 ,   渡部恒夫 ,   後藤澄雄 ,   高橋和久 ,   山縣正庸 ,   斉藤康文 ,   平松健一 ,   望月真人 ,   丹野隆明 ,   板橋孝 ,   玉木保

ページ範囲:P.379 - P.386

 抄録:〈目的〉本研究は,頸椎不安定性の要素で特に,回旋不安定性を定量化するための基礎的dataを得ることを目的とした.〈対象および方法〉健常成人男性20名に対し,基準フレーム内で頸部を正面および左右に最大限捻転した状態にて2方向同時X線撮影を行った.得られたX線フィルムをディジタイザーおよびパソコンよりなる3次元解析装置を用いて計測し,正常頸椎の回旋可動域および捻転にともなうcoupling motionにつき検討した.〈結果〉正常頸椎の回旋可動域(両側合計)は,後頭骨から第7頸椎までの合計で平均105°であり,上位頸椎の可動域はその約70%を占めていた.捻転にともなう側屈couplingとして頸椎は,C3/4椎間以下では捻転方向へ側屈し,それ以上では反対方向に側屈していた.また同様に前後屈couplingとして,C5/6椎間以下では前屈し,それ以上では反対に後屈を示した.

棘突起・靱帯complexの頸椎安定性における役割と同complexを温存した頸部脊柱管後方拡大術

著者: 都築暢之 ,   田中弘美 ,   飯塚正 ,   岡井清士

ページ範囲:P.387 - P.396

 抄録:棘突起を椎弓から離断した頸部脊柱管後方拡大術(C2 or C3〜C7)では,頸椎全体が頸・胸椎移行部で前傾する傾向が認められた.また屍体(腹臥位)でC7〜T1間の棘突起結合靱帯を切離すると,C7〜T1間の棘突起間に離開が生ずることが観察された.これらの事実から,棘突起・靱帯complexの頸椎安定性における役割として,棘突起は傍脊椎筋および棘突起間結合靱帯が頸椎に牽引作用をおよぼす為のlever armとしての意義を有し,下位頸椎・胸椎間の棘突起結合靱帯は頸椎・胸郭間の静的結合にとって重要な働きをするものであると考えられる.頸部脊柱管後方拡大術において同complexを椎弓から離断せず温存すると,術後の頸椎安定性保持に役立つばかりでなく,術中,同complexの持つtension band効果を移植骨片保持に利用できる.

頸椎後方辷りの臨床的重要性の検討

著者: 国分正一 ,   桜井実 ,   鈴木隆 ,   田中靖久 ,   松田倫政 ,   石川隆 ,   石井祐信 ,   谷正太郎 ,   佐藤哲朗

ページ範囲:P.397 - P.403

 抄録:頸椎変性疾患における頸椎後方辷りの臨床的重要性を検討した.後方辷りの定義は伸展位側面X線像で,下位椎椎体の後縁に接して引いた直線を上方に延長し,上位椎椎体下縁との交点より同椎体後下角までの距離が2mm以上の椎間を後方辷り有りと判定した.
 一般人132人(20〜67歳,平均39歳)における後方辷りの発現頻度は44%であり,決して稀な所見ではない.年齢別では20歳台の19%から60歳台の89%まで増加し,椎間別ではC4-5椎間が31%で最も多かった.頸部痛,神経根症での発現頻度は一般人と差がなかった.

不安定性頸椎による頸椎症性脊髄症の病態と治療—dynamic canal stenosisの概念から

著者: 福井康二 ,   片岡治 ,   庄智矢 ,   鷲見正敏 ,   藤田雅之 ,   鍋島裕次 ,   一山茂樹

ページ範囲:P.405 - P.410

 抄録:頸椎不安定性によるdynamic canal stenosisが主原因と考えられる53症例を対象とし,その病態と治療およびdynamic canal stenosisの概念の妥当性について検討した.
 1.上記の条件をもつ本症は,高齢ほど,罹病期間が長くなるほど,動的脊柱管前後径の短縮が生じてdynamic canal stenosisが強度となりすべり度も増大する.そして,すべり度が増大するにつれてdynamic canal stenosisがより強度となって臨床症状が悪化するという傾向がみられた.

頸椎前方固定術後の非固定椎間不安定性

著者: 白崎信己 ,   冨士武史 ,   平山直樹 ,   久保雅敬 ,   濱田秀樹

ページ範囲:P.411 - P.419

 抄録:頸椎前方固定術後の非固定椎間での不安定性を出現させる因子を探るため,固定術34例のX線像を検討した.術後の不安定性の出現は6例に認めた.3例では術前可動域の大きな椎間が固定隣接椎間となっていた.6例中,術後非固定椎間での前方すべりを生じたものは4例5椎体あり’その椎間関節傾斜角は1椎体を除き対照のmean+S.D値以上であった.即ち,椎間可動域の大きな椎間,椎間関節傾斜角の大きい椎体が固定椎間に含まれない場合に,不安定性を生じる可能性が高かった.
 さらに,椎間関節傾斜角の,変性に伴うすべりに対する関与を調査するため,頸部脊髄症手術例58例274椎間の術前X線像を検討した.前方すべりは14椎間,後方すべりは44椎間にみられた.椎間関節傾斜角の大きさが対照のmean+S.D値以上のものに,前方すべりの発生率が有意に高かった.また,椎間関節傾斜角の配列の乱れを示すものに,後方すべりの発生率が有意に高かった.

頸椎前方手術後のC5神経麻痺の問題点と解決法

著者: 四宮謙一 ,   古屋光太郎 ,   黒佐義郎 ,   渕岡道行 ,   山浦伊裟吉 ,   佐藤浩一

ページ範囲:P.421 - P.428

 抄録:前方法,後方法を問わず,頸椎症性脊髄症の手術後に三角筋,上腕二頭筋などの筋力低下を示す症例を時として経験するが,その大部分は術直後に症状を認め,不適切な術中操作,除圧範囲の問題などが原因と考えられた.今回頸椎前方除圧手術後の症例の中には,術後3〜4日目以降に発症する遅発症例があることが明らかとなってきた.このような症例は,術後の経時的なX-P,脊髄造影,CTM所見より,その原因が術後の頸椎の変形によるC5神経根の障害と考えられた.このような頸椎前方手術後のalignmentの破綻を起こす原因を考えると,腸骨移植の問題,移植骨・椎体母床の採型の問題,臥床中の頸椎固定姿位の問題などが考えられる.この合併症を防ぐためには,横倒れ,回旋変形などが起こらないように移植骨の採型を工夫し,さらに3椎間以上の広範な前方除圧術にはsapphire screwなどの内固定を加えることにより解決できると考えた.

頸椎OPLLおよび頸椎症性神経根・脊髄症の術後不安定性についての検討

著者: 上岡禎彦 ,   山本博司 ,   谷俊一 ,   藤田泰宏 ,   石田健司 ,   沢本毅

ページ範囲:P.429 - P.435

 抄録:頸椎手術成績を向上させる目的で,前方法および後方法の各種頸椎手術術後のmobile segmentの不安定性について検討した.術後少なくとも7ヵ月以上追跡調査できた計102例を対象とし,術前・後頸椎R. O. M.の変化,各椎間可動域の変化,椎体前方・後方辷り,回旋などの不安定性出現の有無について検討した.ただし前方法では,不安定性は非固定残存椎間について検討し,またそれと固定椎角との関係についても検討した.後方法では,椎弓切除術に比べ,椎弓形成術の方が,術後のR. O. M.は温存でき,前方・後方辷りも改善することが多かった.前方法では,固定により失われた可動域の代償機能はC2/3,C6/7で最も著しかった.前方固定レベルのalignmentは,生理的前彎位に保つことが重要と思われ,そのためには固定椎角が安定する術後3ヵ月間は慎重な後療法が必要であると思われた.

頸髄腫瘍摘出後における頸椎不安定性の検討

著者: 勝見裕 ,   本間隆夫 ,   佐藤栄 ,   奥村博 ,   中村敬彦

ページ範囲:P.437 - P.444

 抄録:〈目的〉原発性頸髄腫瘍摘出のための椎弓切除に起因する不安定性について検討した.〈方法〉34例を対象に術前後頸椎単純X線像から頸椎柱の変化,各椎間および椎体の動きの変化,不安定性の有無を調査した.〈結果および考察〉7例(20%)に不安定性を認め,既に3例は固定術が必要であった.この7例を検討した結果,手術時年齢,術前中間位alignment,切除椎弓数,C2椎弓切除,椎間関節侵襲が不安定性発生に影響を及ぼす因子と考えられた.しかし術前頸椎可動域,性差,術後外固定期間,術後神経学的所見による影響は少ないと思われた.また各症例別に不安定性因子の数を検討すると,不安定性を生じなかった例が平均1.2項目と少ないのに対し,不安定性例はいずれも2項目以上平均2.5,特に固定術追加例はC2椎弓切除,椎間関節侵襲の因子を含む3項目以上が認められた.したがって不安定性因子の数から不安定性発生とその程度を予測できるものと思われた.

頸部脊柱管拡大術(服部法)における術後X線学的検討

著者: 砂金光藏 ,   河合伸也 ,   小田裕胤 ,   松岡彰 ,   城戸研二 ,   野村耕三 ,   田中浩 ,   貴船雅夫

ページ範囲:P.445 - P.452

 抄録:頸部脊柱管拡大術を施行し,術後1年以上追跡調査が可能となった88例について術後成績およびX線学的検討を行い,次のような結果を得た.CSMやOPLLなどの頸髄症における本法の術後成績は術後長期にわたり安定して良好な成績が維持されていた.X線学的検討では術後に出現する後彎傾向が問題であったが概して軽度であるため臨床成績への影響はほとんどない.しかし,術前から後彎形成のみられる症例のなかには後彎の増加から手術成績の低下するものがあった.頸椎可動域は術前の60%に減少し,この制動効果とともに術前にみられた椎間不安定性はほとんどの症例で消失ないしは改善しており,本法は術前に椎間不安定性を有する症例にも十分対処しうる.頸筋筋力では術後の後屈力の回復は相対的にやや低下するものの術後3〜6カ月で術前のほぼ90%まで回復しており,本法は長期的視野にたっても構築学的に安定した優れた術式といいうる.

頸部脊柱管拡大術後の頸椎可動性について—片開き式と棘突起縦割法の比較

著者: 大村文敏 ,   白井康正 ,   中川俊 ,   山口淳一 ,   藤原淳 ,   大場俊二

ページ範囲:P.453 - P.459

 抄録:頸部脊髄症に対し脊柱管拡大術を行い,術前後の頸椎可動性や彎曲異常の発生について,片開き式と棘突起縦割法との比較検討を行った.その結果,脊柱管拡大術後は頸椎可動性は制限され,術後新たな不安定性の出現はなかった.また術前に不安定性を有していた症例でも術後増強することは無く,むしろ制動されていた.可動域減少と症状改善率の間には正の相関があり,dynamic factorの除去による制動効果ありと言える.この制動効果は棘突起縦割法の方が片開き式より優れていたが,彎曲異常は棘突起縦割法に多く見られた.片開き式では蝶番側の椎間関節のみが侵襲された状態で残るのに対し,棘突起縦割法では両側で侵襲されたまま残り,さらに棘突起間の移植骨が骨性に癒合することがあるので,より強い制動効果を示すものと思われる.しかしいずれの術式でも術後は制動されるので,不安定頸椎の場合でも脊柱管拡大術の適応があるものと考えている.

頸椎椎弓切除術後の変形防止のための各手術法の比較—有限要素法によるSimulation

著者: 齋藤哲文 ,   山室隆夫 ,   四方実彦 ,   堤定美

ページ範囲:P.461 - P.469

 抄録:若年例の頸椎椎弓切除術後の変形防止のため,種々の手術法が行われている.我々はSpanning Element Theoryに基づいた有限要素法と,"displacement incremental method"を用いてSimulatronを行い,各手術法の変形防止の効果を解析した.解析に際しては,Swan-neck Deformityが起こるモデルを使用した.解析した手術法は,前方固定法,Robinson,Callahan,あるいは宮崎らによる後側方固定法,黒川らによる脊柱管拡大術の代表的な3法である.Simulationの結果は,前方固定法と後側方固定法はほぼ同程度の変形防止効果がみられたが,椎弓切除範囲に隣接した正常脊椎部の固定を行わなかったモデルでは,椎弓切除部の上下端脊椎と正常脊椎との椎間板部に正常例より大きな主応力がみられた.これらの椎間板部で軽度のAngulationがみられた.脊柱管拡大術でも変形防止効果がみられたが,脊柱管拡大部の上下端の棘突起と正常脊椎部の棘突起を骨性に連結すると充分な変形防止効果がみられた.変形防止には,後方要素の連結要素の温存,あるいは力学的な強度の増強が重要な要因と思われた.

頸椎に不安定性を有する頸髄症に対する後方除圧+後側方固定術について

著者: 宮崎和躬 ,   多田健治 ,   松田康孝 ,   奥野雅男 ,   安田義 ,   村上仁志

ページ範囲:P.471 - P.481

 抄録:昭和53年6月より昭和63年5月までの10年間に,不安定性頸椎や後彎変形およびS状椎などの術前の頸椎に変形のある頸髄症63例に後方除圧+後側方固定術を施行し,術後1年以上追試可能例は46例である.
 これらの術後成績は有効以上41例89.1%と良好な結果を得,X線学的にも,後側方固定部の骨癒合は65.2%が良好で,不安定性椎間は76.8%および同部の辷りも80.3%の高率に消失あるいは軽減されている.そして,不安定性椎間の骨癒合が不良の場合でも,本法施行によって同部に制動効果を生じ,不安定性が高率に改善されて後方除圧のための後方要素の弱体化による術後の頸椎のmalalignmentの増強による症状の増悪を予防している.以上の理由から,本法は術前より不安定性などのmalalignmentのある頸髄症で後方進入法が必要である症例に対して,従来の椎弓切除術の欠点を補いえる有効な手術法と考える.

X線上明らかな骨傷のない頸髄損傷の発生機序と不安定性の臨床的検討—MRI所見を参考にして

著者: 植田尊善 ,   芝啓一郎 ,   香月正昭 ,   白沢健蔵 ,   村尾哲 ,   森英治 ,   吉村豊暢 ,   石橋裕一 ,   劉成萬

ページ範囲:P.483 - P.490

 抄録:X線上明らかな骨傷のない頸髄損傷のMRI所見より,脊髄内に低信号領域として,脊髄損傷部を観察できた症例27例について,臨床像・X線所見を探り,発生機序・不安定性について検討を加えた.①前方脱臼自然整復例が4例にみられたが,著明な不安定性が存在した.②前方脱臼自然整復以外の23例についても損傷部位は1か所であることが極めて多く,2か所に認められたのは2例にすぎなかった.③損傷部と脊椎症性変化や脊柱管前後径との関連は薄いが,後縦靱帯骨化部は損傷部と関連が深かった.④術中所見から,前縦靱帯と椎間板の水平断裂のみられる例が多かった.これらの症例では伸展位で不安定であるが正中・屈曲位では安定である.また前縦靱帯断裂のない過伸展損傷も存在するが,これらは脊柱管狭窄が主因と考えられる.

中下位頸椎脱臼骨折例における不安定性と麻痺

著者: 香月正昭 ,   芝啓一郎 ,   植田尊善

ページ範囲:P.491 - P.496

 抄録:中下位頸椎における脱臼・脱臼骨折例の麻痺と脊椎の不安定性について検討した.不安定性の検討のため,レ線像により関節locking,損傷椎体間後彎度・辷り率・有効脊柱管径を,手術所見により前縦靱帯・後縦靱帯・棘上靱帯・黄靱帯の損傷・後方骨要素の骨折および椎間板組織の脊柱管内迷入を検索した.各靱帯損傷,後方骨要素骨折は麻痺の強い症例に多く認められるが,麻痺症状に比し各靱帯損傷の頻度は高く,脱臼骨折の脊椎不安定性は大きいと考えられた.しかし,レ線像によるこれらの靱帯損傷の有無の判断は,麻痺の軽い症例では若干推測できるが,困難な症例が多い.過伸展,回旋力,剪断力が複合作用したと考えられる症例があり不安定性が強く麻痺症状も強い.椎弓骨折の特殊な形態としてfloating laminaを呈する症例があり,不安定要素は大きいが脊髄が挟撃を免れ麻痺症状の軽い症例が認められた.また,椎間板組織の脊柱管内への迷入が予想以上に高率に認められた.

アテトーゼ型脳性麻痺に伴う頸椎不安定性

著者: 江原宗平 ,   米延策雄 ,   廣島和夫 ,   藤原桂樹 ,   山下和夫 ,   原田武雄 ,   山崎勇二 ,   小野啓郎 ,   梶浦一郎 ,   大川敦子 ,   森本吉春 ,   曽我部靖 ,   瀬口靖幸

ページ範囲:P.497 - P.503

 抄録:アテトーゼ型脳性麻痺(以下CP)における頸椎不安定性の特徴とメカニズムを矢状面からみて静的・動的に解析した.アテトーゼ型CPでは,S状カーブを中心とする頸椎malalignmentが多く,それらのカーブの移行椎部や頂椎部に頸椎不安定性を認めた.この頸椎不安定性の出現には頂椎部の水平に近いfacet angleや逆に移行椎部のfacet angleの急激な変化といった静的な構造的因子と動的にはアテトーゼ運動に伴う急速かつ,いびつな頸椎運動の反復が相乗して関与すると考えられた.

アテトーゼ型脳性麻痺に伴う頸髄症に対する棘突起縦割法脊柱管拡大術

著者: 大西五三男 ,   黒川高秀 ,   平林茂

ページ範囲:P.505 - P.510

 抄録:アテトーゼ型脳性麻痺を伴う頸髄症は,不随意運動があり,頸椎症性変化が広範かつ高度で,手術範囲も広いことが多く,その結果術式の短所が早期に現われる傾向がある.棘突起縦割法脊柱管拡大術の本症に対する効果を知る目的で治療成績を調査した.対象は当科で拡大術をした本症患者10名(男7,女3:年齢31歳〜65歳平均46歳:平均術後経過期間4年)である.全例に棘突起縦割法を行い,前方固定術を1名,後方固定術を7名に併用した.脊柱傍筋群の復原を4名に行った.術後の運動機能の回復および頸椎の彎曲の変化を評価した.10名中7名に運動機能の回復があったが3名は不変であった.脊柱彎曲は,変化なし6名過度の前彎の正常化2名,後彎の発現1名,後彎の進行1名であった.この術式は本症に対しても除圧効果があり,術後の脊柱彎曲は良く保たれた.椎間固定を行わず,脊柱傍筋群の復原を行った2名は術後の彎曲変化がなく,アテトーゼがあっても必ずしも椎間固定が必要でない事を示唆する.

上位頸椎の解剖と三次元的動態解析

著者: 山元功 ,   金田清志 ,   ,  

ページ範囲:P.511 - P.516

 抄録:ヒト新鮮屍体を使用し,上位頸椎部の解剖学的観察と三次元的動態解析を行った.翼状靱帯は,成書では軸椎と後頭骨を結ぶ靱帯とされているが,著者らの解剖学的観察ではその他に環椎と軸椎を結ぶ成分が存在するのを確認できた.三次元的動態解析では,靱帯を温存した頭蓋から第7頸椎までの検体を使用し,後頭環椎関節と環軸関節の動態について検索した.後頭環椎関節では’屈曲が3.5°,伸展が21.0°,片側への側屈が5.5°であった.本関節では,回旋がみられないとする報告があるが,本研究では一方向に7.3°の回旋がみられた.環軸関節では,屈曲が11.5°,伸展が10.9°であった.本関節において側屈がみられないとする報告が多いが,本研究では一方向に6.8°の側屈がみられた.この関節の特徴は回旋の動きが最大であることであり,著者らの研究でも一方向に38.9°の回旋がみられた.

Os odontoideumと環軸椎間の不安定性について

著者: 植野満 ,   里見和彦 ,   小柳貴裕 ,   柳田雅明 ,   戸山芳昭 ,   藤村祥一 ,   平林洌

ページ範囲:P.517 - P.524

 抄録:Os odontoideumにおけるX線上での環軸椎間の不安定性と臨床症状ならびに手術適応について検討した.
 対象とした症例は,当院で手術を行った11例で,臨床症状はRowlandの分類に準じて4群に分けた.

環軸椎関節亜脱臼の病態と治療

著者: 今井健 ,   守屋有二 ,   新田雅英 ,   近藤誠 ,   山脇康正 ,   角南義文 ,   中原進之介

ページ範囲:P.525 - P.533

 抄録:過去20年間に手術を行い術後1年以上経過した環軸椎亜脱臼64例についてその病態,手術方法の選択,手術成績について検討した.環軸椎亜脱臼あるいはatlanto-axial instabilityの原因はさまざまであるが,64例中46例,71.8%が脊髄症状を呈していた.手術方法は経口的前方法13例,後方法50例,後方法と前方法の合併手術1例である.手術成績不良例としては術中の体位変換の失敗,ワイヤー折損によるnon-union,Arnold-Chiari合併例,アテトーゼ型脳性麻痺に合併していた例,麻痺発現より長期間経過していた例などである.以前は主として後方法を行っていたが,最近ではその病態に応じて前方法をも選ぶようになり,術前,術中,術後の管理に十分注意し,術前よりharo-vestを装着し,装着下に手術を行い,早期離床させているが手術成績も向上してきた.

環軸関節転位の治療に関する検討

著者: 斉鹿稔 ,   忽那龍雄 ,   森山和幸 ,   川口宗義 ,   松下和徳 ,   堤幸彦 ,   河合伸也 ,   小田裕胤

ページ範囲:P.535 - P.541

 抄録:過去20年間に入院加療した環軸関節転位82例を対象として,不安定性,脊髄症状,治療法を調査して,retrospectiveな観点から不安定性と治療法の選択について検討した.
 歯突起の異常群では脊髄症状は32%にみられ,ADIは8〜17mm(平均12.1mm)であった.軟部組織の異常群では脊髄症状は73%にみられ,ADIは7〜13mm(平均9.7mm)であった.両群において,脊髄症状の有無とADIの程度には相関がなかった.

ダウン症候群における環軸椎不安定性の経年的変化—特に分離歯突起を伴わない症例について

著者: 大沢俊和 ,   井沢淑郎 ,   黒木良和 ,   大成克弘

ページ範囲:P.543 - P.549

 抄録:ダウン症児で5年間以上追跡でき,分離歯突起を伴わない69例について,臨床的,X線学的検討を行った.調査時の環椎・歯突起間距離(AOI)は初診時と比較して,屈曲位,中間位,伸展位ともに有意に減少しており,特に5歳までに著明であった.初診時69例中14例(20.3%)が環軸椎不安定性陽性であったが,調査時には4例(5.3%)に減少していた.しかし10歳を越えても不安定性陽性例が2例に認められた.
 環椎レベルの脊椎管最小矢状径(MSD)は初診時,調査時ともに各ポジション値の間に有意差は認められなかった.また調査時不安定性陽性例のMSD値は陰性例に比べ,小さい傾向があった.

慢性関節リウマチに伴う上位頸椎病変の自然経過

著者: 藤原桂樹 ,   米延策雄 ,   越智隆弘 ,   冨士武史 ,   江原宗平 ,   小野啓郎 ,   膳棟造 ,   宮本洋

ページ範囲:P.551 - P.556

 抄録:慢性関節リウマチに伴う上位頸椎病変であるAnterior Atlanto-axial Subluxation(AAS),Vertical Subluxation(VS)の自然経過について検討した.AAS 35例,AASにVSを合併した34例,VS 10例の計79例を対象とし以下の結論を得た.AASでは環椎は軸椎に対して前傾しつつ前方へすべる.環椎の前傾が進行するとAASにVSを合併する.VSが更に進行すると環椎前弓が下方へ落ち込むため計測上ADIは減少,AASは潜在化しVS単独となる.頸椎病変はAAS,AAS+VS,VSの順に進行する.AAS単独例では頸椎伸展位でADIは正常化し可動性良好な症例が多いが,AAS+VS例では可動性は低い.越智により提唱されたRAの病型分類(少関節破壊型,多関節破壊型,ムチランス型)でみると少関節破壊型は全例AAS単独でありVSを合併することはない.高度なVSにまで進行するのはムチランス型のみである.RAの病型分類は頸椎病変の最終段階を予測するうえで有効な指標となる.

慢性関節リウマチの上位頸椎異常に対するMRIについで

著者: 川井田秀文 ,   酒匂崇 ,   森園良幸 ,   吉国長利 ,   武富栄二 ,   橋口雅尚

ページ範囲:P.557 - P.563

 抄録:上位頸椎異常を示す慢性関節リウマチ患者55例について,頸椎X線写真上の種々の計測値(環軸椎前方亜脱臼と垂直性脱臼に関する計測値)とMRI矢状断面像における延髄や上位頸髄圧迫の有無との関係,および臨床症状との関係について検討した.垂直性脱臼例ではRediund-johnell値の異常例およびRanawat値が7mm以下では,MRIで全例に延髄の圧迫を認めた.前方亜脱臼例ではSACが13mm以下の全例に,またADIが8mm以上でも高頻度に上位頸髄の圧迫を認めた.これらの上位頸椎異常を有する例では後頭部痛や頸部痛が高頻度にみられ,とくにRedlund-Johnell値異常例では全例に認められた.頸椎X線写真より得られた種々の計測値から,延髄や上位頸髄の圧迫の有無を予想する事が可能となったので,慢性関節リウマチ患者の上位頸椎病変の治療に際し有用と考える.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら