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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科24巻8号

1989年08月発行

雑誌目次

視座

Japanese are too methodological

著者: 玉置哲也

ページ範囲:P.897 - P.898

 以前に親しい英国人の神経生理学者から,Japanese are too methodological.という言葉を聞かされた.彼のもとに1〜2年間留学して,臨床神経生理学に関連した研究を行った若い日本人を指導して感じたことだと言うことであった.これは,あまりにも方法論のみを追いかける姿勢を批判した表現であったと理解している.さまざまな手段を用いて新しい生体現象を導き出そうとするあまりに,手法を見出すことが目的になってしまったことを指摘したのであろう.留学生達は期間が限られていたことから,さらにそういった傾向に拍車がかかったと考えるが,既にこの欄でも多くの先達によって指摘されているように,最近の整形外科領域の研究においてもこの傾向が一段と強いように思える.すなわち,すばらしいテクノロジーの発達に伴い,極めて優れた機器や新しい手法が開発され,生体の複雑な構造や機能を定性的,定量的に観察することが可能となって来たのであるが,それらを利用した観察をあたかも実験的研究と錯覚している報告が少なくない.ある現象を観察すること,あるいはそれを行い得たということが,重要な意味を持つと評価するあまりにその現象を生み出している生体の複雑さに挑戦することをなおざりにする傾向になっているのではないだろうか.
 研究は改めて強調するまでもなく観察に始まり推理,分析を行い,さらに帰納と実証を繰り返して発展する.すなわち我々は注意深く生体を観察するばかりでなく,時にはある条件を加え,惹起された現象をさまざまな機器や新しい手法という媒体を介して観察し,分析を行うわけであるが,そこにまた多くの陥穽が生じ得る.その1例として現在われわれの手にある各種の測定機器にも個性があり,たとえ正常に機能しており操作が間違っていなくとも極めて微妙ではあるが測定結果に差異が存在し得ることが上げられる.実例を示そう.製作者が異なる生体用増幅器を数台用意し,同じ周波数帯域など条件を一定として,同一個体より,ある誘発電位を記録したとする.このときに記録される電位は,発生源は同一であるにもかかわらず,微妙な点で一致しないことがしばしばあり,この傾向はその電位が微小な多くの電位で構成される場合に一層著明になる.その理由は,測定器の電気的特性の規定に多少の幅が許容されていることによるのであるが,もし,そのような差が発生し得ることを認識していなければ,その微妙な差に惑わされてしまうことになる.これと同じ様なことは,ほとんど全ての分野の測定機器にあてはめられることであろうと考える.すなわち,機器あるいは手段を過信し,絶対視してはならないのであって,常に疑いと厳しい批判の目でもって得られたデータを分析する心構えを忘れてはならない.基本となる事実を確認するためには常に第三者的冷徹さをもって行い,それに立脚した思考の展開を大胆に行うべきであろう.

論述

早期ペルテス病と単純性股関節炎—選択的動脈造影所見による比較検討

著者: 近藤博嗣 ,   星秀夫 ,   船山完一 ,   藤井玄二 ,   北純 ,   舩渡恒男 ,   成田雅治

ページ範囲:P.899 - P.906

 抄録:比較的早期のペルテス病2例と単純性股関節炎の2例につき臨床症状,単純X線写真像,関節造影像,99mTc-MDP骨シンチグラム,選択的骨頭栄養動脈造影像および生検組織像の検索を行い,両疾患の病態の相違を特に脈管学的な立場から検討した.ペルテス病では関節包外部分を含む広範囲の骨外栄養血行路に障害を認めたが,単純性股関節炎では関節包内部分に至るまで栄養血管の障害は認められなかった.骨シンチグラムにおけるペルテス病の骨頭骨端骨部の低集積および単純性股関節炎の正常集積像は,それぞれ,血行障害の有無に対応した.すなわち,ペルテス病は前述の血行障害に基づく大腿骨頭骨端骨中心の阻血性骨壊死症であり,単純性股関節炎は股関節の炎症状態と考えられた.従って,両者はたまたま小児股に発症するが,その後の臨床ならびにX線学的経過が必然的に異なると考えられる.

慢性関節リウマチ3病型の自然経過に基づく膝関節の手術適応について

著者: 脇谷滋之 ,   越智隆弘 ,   大脇肇 ,   木村友厚 ,   小野啓郎

ページ範囲:P.907 - P.913

 抄録:慢性関節リウマチ(RA)の自然経過により分類した3つの病型に基づいて,RAの膝関節に対する早期滑膜切除術および人工膝関節置換術(TKR)の成績および適応を検討した.対象は膝関節早期滑膜切除術またはTKRを受けたRA患者90例であった.軽症病型である少関節破壊型(LES)では早期滑膜切除術は臨床症状の改善がみられ良い適応であり,骨破壊の進行が少なくTKRに至る症例はなかった.重症病型である多関節破壊型(MES)では骨破壊が進み,早期滑膜切除術の効果が少なかった.この病型ではTKRに至る症例も多く,その適応の判断にはX線上の自然経過,全身の炎症反応および臨床症状などを考慮する必要がある.最も重症病型であるムチランス型(MUD)では骨破壊の進行は更に急速で全例TKRの必要が生じ滑膜切除術の適応はなかった.また,病勢を示す全身の炎症反応や自然経過の予後因子である血中CIq値は手術によって改善されなかった.

著明な外反動揺性を示した新鮮膝関節靱帯損傷の検討

著者: 中村博行 ,   史野根生 ,   井上雅裕 ,   浜田雅之 ,   中田研

ページ範囲:P.915 - P.918

 抄録:著明な外反動揺性を示す新鮮膝関節靱帯損傷は,MCL完全損傷にACL損傷の合併が多いと言われるが,その他の関節構成体の合併損傷についてはまとまった報告はない.我々は如何なる合併損傷が生じるかを調べる目的で当科の最近5年間の症例について検討した.対象は1982年から1986年に当科を受診し,著明な外反動揺性を示した新鮮膝関節靱帯損傷30例30膝で,年齢は16歳〜64歳(平均27.3歳),全例関節鏡もしくは手術を施行した.
 (結果)MCL単独損傷4例,ACL損傷合併19例,ACL・PCL損傷合併4例,ACL・LC損傷合併2例,ACL・LCL損傷合併1例であった.半月損傷は12例であり,MM 5例,LM 7例で内外側半月損傷はなかった.

鎖骨骨折に対するKnowles pin固定法の治療経験

著者: 仲川喜之 ,   尾崎二郎 ,   増原建二 ,   梅垣修三 ,   広岡靖隆

ページ範囲:P.919 - P.928

 抄録:1983年8月より1988年3月までに27例の鎖骨骨折に対しKnowles pin固定法を施行した.その治療経験に基づき,手術手技を中心に,手術適応,術後成績についても検討を加えた.27例全例で一次的に早期に骨癒合が得られ,変形治癒も全く認められなかった.Knowles pin固定法は手術手技が容易で,かつ安全であり,Knowles pinの形態学的特徴より,強固な整復・固定が得られ,術後の外固定を全く必要とせず,骨癒合完成前より早期社会復帰が可能であることより非常にすぐれた治療法であると考えられた.Knowles pin固定法の適応は鎖骨中央1/3部の骨折で転位が大きく,遷延治癒や偽関節発生の危険のある症例や外固定よりの開放・早期社会復帰を希望する症例に限られ,遠位1/3部の骨折にはその適応はないものと考えられた.

手術手技シリーズ 関節の手術<下肢>

高位脛骨骨切り術

著者: 緒方公介

ページ範囲:P.929 - P.936

 変形性膝関節症に対する高位脛骨骨切り術の適応,術式,矯正角度,後療法については諸家によりまちまちである.術式では楔状骨切り(closing wedge osteotomy)に内固定を使用する方法と1,2,7,9,14,15,21),ドーム状骨切りに創外固定を使用する方法がよく用いられている2,12),合併症は比較的少ないと言われているが,偽関節,腓骨神経麻痺,感染,コンパートメント症候群などの発生も見られており,本手術は必ずしも技術的に容易で安全なものではない2,4,11,16,19,20).術後成績は矯正角に大きく影響され,適度に過矯正された症例では長期にわたり優れた除痛効果が期待できる1,5,10)

認定医講座

肩のスポーツ障害

著者: 濱弘道

ページ範囲:P.937 - P.942

I.肩の機能解剖と病態
 一般にスポーツ障害は,小外傷の反復に起因するものと,強い外力により非生理的運動を強制されたあとに発生するものとからなる.肩のスポーツ障害でも反復性肩関節脱臼に代表される後者よりも,前者すなわちoveruse syndrome(使いすぎ症候群)に分類されるものがはるかに多く,その頻度はきわめて高い.このことは,スポーツにおける6つの基本動作,すなわち立つ,歩く,走る,跳ぶ,蹴る,投げるのうちで最もよく行われるものが「投げる」動作であるといわれることからも十分理解できる.
 いわゆる「投げる」動作は,バレーボールのスパイク,テニスのサーブなどと同様に,通常3相,すなわち第1相:コッキング期,第2相:加速期,第3相:フォロースルー期に分けられる(図1).第1相では肩は外転・外旋・伸展し,その前方要素が過緊張を強制される.ついで内旋が始まり第2相の加速期に入り,球をはなし,もしくは打ち,強く内転・内旋して第3相のフォロースルー期につづく.この第2相から第3相では後方要素が制動作用を果たしながら,強く牽引をうける.このような運動が反復されてoveruse syndromeに至るものと考えられる.

四肢の画像診断

著者: 松本誠一

ページ範囲:P.943 - P.950

I.はじめに
 四肢の画像診断には多くのものがあるが,それぞれの検査法には,利点と欠点とがある.従って,実際に検査を施行するに際しては,各検査法の適応と限界を十分に考慮し,必要十分な検査のみ行うことに留意すべきである.ここでは,以下の検査法についてふれることとする.
  電子写真(Xeroradiography,KIP)
  超音波検査
  RI検査(骨シンチ,Gaシンチ)
  CT
  MRI

整形外科を育てた人達 第73回

Walter Mercer(1891-1971)

著者: 天児民和

ページ範囲:P.951 - P.953

 私が神中教授のご指導を受けたのは1930年で,その頃の整形外科の教科書はFritz LangeのLehrbuch der Orthopaedieが多く用いられていた.河邨文一郎先生の御尊父の日本語の翻訳もあったが,1932年にWalter MercerのOrthopaedic Surgeryが出版され,ドイツ的な整形外科の教育を受けていた私にはMercerの著者を読むと新鮮な感じがしたのでMercerの名は今日まで忘れていない.彼はEdinburgh大学の整形外科の教授となり,国際的に有名であるのでその伝記をご紹介する必要があると思い執筆した.

検査法

骨軟部腫瘍のMRI画像診断

著者: 佐藤啓二 ,   高橋満 ,   深谷直樹 ,   三浦隆行 ,   浅野昌育

ページ範囲:P.955 - P.959

 抄録:目的:骨軟部腫瘍の画像診断上MRIの果たす役割と注意点を検討する.
 対象および方法:骨腫瘍19例,軟部腫瘍19例を対象とし,それぞれ15例は0.15Tの東芝社製MRIを,それぞれ4例は0.5Tのピッカー社製MRIを用い,スピンエコー法にてT1およびT2強調画像を撮像した.骨腫瘍については,髄内伸展度,軟部組織浸潤度を,軟部腫瘍については,周辺組織進展度を検討すると共に,両者について実測値とMRI上の計測値の対比,血管神経束との位置関係を検討した.

臨床経験

先天性大腿骨短縮症に対する手術治療の1例

著者: 木次敏明 ,   笠原吉孝 ,   瀬戸洋一 ,   駒井理

ページ範囲:P.961 - P.964

 抄録:我々は,左右で程度の異なった両側性大腿骨短縮症の1例を経験した.浜西の分類で,右側はIII a型(proximal femoral focal deficiency),左側はII型(simple femoral hypoplasia)であった.また,両膝関節の屈曲拘縮と,右上腕骨・橈骨癒合症が認められた.股関節内反・後捻と,大腿骨の彎曲変形の強い右側大腿骨に対して,股関節外反・増捻骨切り術(3歳3ヵ月),右膝関節拘縮に対して,大腿骨顆上部で20度伸展骨切り術(4歳1ヵ月),更に大腿骨外反骨切り術(5歳9ヵ月)を行った.
 現在,約4cmの脚長差が認められるが,補高靴を装着して,介助なしで歩行している.今後,大腿骨の延長術を予定している.

肩甲下筋単独皮下断裂の1治験例

著者: 梅藤千秋 ,   平山隆三 ,   佐藤幸宏 ,   川岸直子

ページ範囲:P.965 - P.968

 抄録:肩腱板断裂の多くは,棘上筋腱に発生し,肩甲下筋が単独に断裂することは極めて稀である.我々は,直達外力による新鮮肩甲下筋単独皮下断裂の1例に対しMcLaughlin法に準ずる縫合固定を行い,良好な結果を得た.発生頻度,肩甲下性断裂の持つ意義,肩関節脱臼との関係,治療について文献的考察を加えて報告する.

Idiopathic chondrolysis of the hipの1例

著者: 伊藤康夫 ,   井上一 ,   赤沢啓史 ,   田辺剛造

ページ範囲:P.969 - P.971

 抄録:股関節のchondrolysisは,大腿骨頭辷り症,外傷,リウマチ性疾患の一症状あるいは合併症として知られている.しかし,これらの疾患をともなわないものを1970年にJonesが9例報告して以来,idiopathic chondrolysis of the hip(以下ICHと略す)として約60例の報告がみられる.本邦では,柘植の発表以来我々の症例を入れ10例の報告がある.今回,本疾患と思われる1症例を経験し,4年間経過を観察できたので,鑑別診断を含め検討した.症例は20歳,女性.16歳の時50m走った後に左殿部痛出現.全身状態良好で炎症所見なく,血液生化学検査に異常を認めなかった.軽度の痺痛と可動域制限がありX線にて関節裂隙好きの狭小化を認めた.以後,過度の運動を避け半年毎の外来検診を行って,発症後4年の現在特別な疾患の併発はなく,臨床症状の増悪はみられていない.諸家の報告をふまえ,本症例はICHと診断した.

Clear cell chondrosarcomaの3例

著者: 真鍋淳 ,   川口智義 ,   網野勝久 ,   松本誠一 ,   北川知行 ,   町並陸生 ,   古屋光太郎 ,   磯辺靖 ,   和田成仁

ページ範囲:P.973 - P.981

 抄録:clear cell chondrosarcomaの3例を経験したので文献的考察を加えて報告する.症例1:29歳女性.大腿骨骨頭〜頸部発生例.切除+人工骨頭置換術後11年経過し再発,転移を認めない.症例2:39歳男性.大腿骨骨頭〜頸部発生例.他院にて切除+人工骨頭置換術後9年で局所再発し骨盤半截を施行し4年6カ月経過した現在再発転移を認めない.症例3:57歳男性.立方骨発生例.他院にて掻爬骨移植術後1カ月で局所再発と脛骨にskip lesionを認め下腿切断を施行した.その後骨転移をきたし肺癌も合併し,1988年9月頸椎転移にて死亡した.
 掻爬,切除を行った2例で局所再発し内1例は骨転移を生じ悪性度の高い例があることがうかがえる,文献上2)も切除,掻爬例の93%が局所再発し26%が肺転移で死亡したとの報告があり通常の軟骨肉腫と同様の広範切除が必要といえる.また10年以上経過後の再発が少なくないため長期follow-upを要する.

尺骨神経麻痺を伴ったMilch Type I上腕骨内顆骨折の1例

著者: 上石聡 ,   伊藤恵康 ,   堀内行雄 ,   高山真一郎 ,   市川亨 ,   山中一良 ,   三倉勇閲 ,   松林経世 ,   野々宮広章

ページ範囲:P.983 - P.986

 抄録:我々は極めて稀な,尺骨神経麻痺と肘関節脱臼を伴うMilch Type I上腕骨内顆骨折を経験した.
 症例:8歳女児,雲梯より落下し,左肘関節屈曲位で肘部を打撲した.初診時,中等度の尺骨神経麻痺がみられた.X線写真では,上腕骨内側上顆より滑車に至る骨折で,骨片は遠位に回転転位し,肘関節の後側方脱臼を伴っていた.受傷4日後に観血的整復固定術を行った.尺骨神経は中枢骨折端に引っかかり,牽引と圧迫を受けていた.

弾撥現象を呈した長母趾屈筋腱腱鞘炎の1例

著者: 杉谷繁樹 ,   野口耕司 ,   松下睦 ,   下地昭昌 ,   柴田博次 ,   赤星義彦

ページ範囲:P.987 - P.989

 抄録:22歳男子で両側性に長母趾屈筋腱腱鞘炎があり,右側は狭窄性腱鞘炎が著明で疼痛を伴った弾撥現象及びlockingを生じたため腰麻下に腱鞘切開術を施行して良好な結果を得られた.手術時所見は他の報告例のほとんどが示すように,踵骨載距突起下の線維性pulley内で腱は著明に変性して紡錘状に肥大しており,これが弾撥現象の原因と推察された.また変性部位には比較的新しいと思われる縦断裂を認めた.この弾撥現象は14歳頃に発現しており,この発生機転には明らかにスポーツの関与(短距離走)が考えられ,長母趾屈筋腱が繰り返しbowstringの作用を受けたため腱の変性を生じたものと推察される.主にクラシックバレエによる障害として同様の報告が散見されるが,他のスポーツを含めて一種のスポーツ障害として本障害を念頭に置く必要があろう.

膝蓋靱帯に広範な石灰化を来した石灰沈着性腱炎の1例

著者: 立花敏弘 ,   鵜飼和浩 ,   黒坂昌弘 ,   山本英明 ,   広畑和志

ページ範囲:P.991 - P.994

 抄録:膝蓋靱帯に広範な石灰化を来した1症例を経験した.過去にOsgood-Schlatter病に対し脛骨結節部のdrillingを受けており,このことが誘因となり石灰沈着を来したものと思われる.石灰沈着物は透過電顕および分析電顕にてbasic calcium phosphate(BCP)と推定され,膝蓋靱帯には発生例の稀な石灰沈着性腱炎と考えられた.

多発性脊髄神経鞘腫の1例

著者: 小城琢朗 ,   園田隆 ,   酒匂崇

ページ範囲:P.995 - P.998

 抄録:多発性脊髄腫瘍の発生頻度は,脊髄腫瘍全体の数%にすぎず,しかもそのほとんどは,Recklinghausen病に伴うものである.今回我々はRecklinghausen病を合併しない,可動性を有する多発性脊髄腫瘍の稀な1症例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.
 症例は,47歳女性で,腰痛及び両下肢痛を主訴とし来院した.

腰椎粉砕骨折の保存療法におけるCT像の追跡

著者: 斯波俊祐 ,   橋口孝 ,   柘植和郎 ,   高木祐一

ページ範囲:P.999 - P.1005

 抄録:胸腰椎移行部粉砕骨折においては,遅発性の脊柱変形や神経合併症が問題とされ,治療法に関しては種々の議論のあるところであるが,手術療法が推奨される場合が比較的多い.今回我々は,軽度の神経症状を伴う粉砕骨折3例と神経症状を伴わない粉砕骨折4例に保存療法を行い,最短5カ月,最長3年9カ月,平均14カ月の経過を観察したところ,良好な成績が得られ,CT像にて脊柱管が徐々に修復されていく傾向が認められた.単純レントゲン像にては全例に骨癒合が得られたことが示唆された.したがって,神経症状のない症例あるいは軽度の神経症状の症例ならば保存的に治療可能である.いわゆる不安定性という言葉の定義は統一されておらず多様な意味が含まれているため,一元的に論ずることはできないが,粉砕骨折を保存的に治療する場合,ある程度骨癒合するまで軸圧負荷をかけないということが重要である.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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