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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科24巻9号

1989年09月発行

雑誌目次

視座

Cementless THRについて

著者: 上野良三

ページ範囲:P.1009 - P.1009

 人工股関節置換術におけるセメントの弊害が認識され,cementless THRが普及するにつれて多くの関節が報告されている.初回手術,再手術のいずれにおいてもcementless THRが使用される機会が増加するものと思われるが,人工関節の進歩には,力学的要素(頸部断端の長さ,頸部切除面の傾斜,カラーの有無など),生物学的要素(骨組織と人工関節との接触面の形状と種類,生体との親和性,stress shieldingなど)を多面的に検討することが必要であり,階段的な改善が期待される.このように多くの要素に支えられているcementless THRであるが,まず人工関節の素材では,生体親和性の高いチタン合金の開発(Ti-Al-Nbなど)が行われ,stemの初期固定の主流となっているのは,骨幹部の内,外側骨皮質と接触し,大腿骨中枢端で海綿骨と接触するpress-fit typeで,2次的な固定は,stemの表面構造に依存するものが多い.たとえば3〜5μmの表面上げ(Zweymüller 1988),porous-coating(Engh 1988)などがあり,開発途上のものとしては,代表的な生体内活性物質であるハイドロオキシアパタイトを表層に重ねることにより,結合織を介さない骨組織と人工関節との結合を目指したものがある.

論述

悪性軟部腫瘍の患肢温存のための併用療法について

著者: 姥山勇二 ,   後藤守 ,   山脇慎也 ,   井須和男

ページ範囲:P.1010 - P.1020

 抄録:悪性軟部腫瘍の治療のfirst choiceは外科的治療である.しかし健常組織を含めて切除する根治広切法は,患肢の重大な機能喪失を生じる危険も大きい.そこで手術治療にあたって放射線や化学療法の併用が,患肢の機能温存にどの程度有用であるかを検討した.これまで手術治療を行った四肢発生の悪性軟部腫瘍は176例である.その主な内訳は,切離断43例(術前照射3例),根治広切45例(動注4例,術前照射1例),術後照射58例である.広切法による局所再発は3例(6.6%),術後照射による局所再発は14例(25.4%)で,局所再発防止には広切法の方がすぐれている.一方合併症も含めた重篤機能喪失例は,広切で8例(17.7%),術後照射で10例(18.1%)と大差ない.以上より下肢に関しては外科的再建や補装具を必要としても根治広切法を第1選択とすべきである.しかし上肢は機能代償が困難で患者の不自由度も大きいので,併用療法による縮小手術も考慮に入れるべきである.

大腿骨頸部骨折を合併した片麻痺患者の移動能力

著者: 薩摩真一 ,   角田雅也 ,   早川啓 ,   高田正三 ,   坂田敏郎 ,   中島咲哉 ,   澤村誠志 ,   南久雄

ページ範囲:P.1021 - P.1025

 抄録:脳血管障害後の片麻痺患者に合併した大腿骨頸部骨折の予後につき,年齢,性別,治療法などの点から検討した.
 対象は昭和45年から昭和62年にかけ当センターで治療を行った17例である.性別は男性5例,女性12例,年齢は49歳から77歳にわたり平均63.6歳であった.

Bateman UPF Prosthesisによる治療経験—荷重機能撮影による検討

著者: 池田俊彦 ,   冨永芳徳 ,   多田弘史 ,   萱澤比呂志

ページ範囲:P.1027 - P.1032

 抄録:昭和55年2月以来,昭和62年8月まで主にGarden III,IV型の大腿骨頸部骨折,及び偽関節に対してBateman UPF prosthesisを用いて治療を行った.今回,内26例28関節に直接検診によるfollowupを行った.結果は,日整会変股症評価基準で平均80.5点で,高齢であることも考慮にいれると,機能的には満足できる.X線的には,3mm以上のdistal migration(sinking)を5例に認めたのが目立った.又,立位患側荷重外転後のX線撮影も行った.その結果,全外転角20.3°に対し,bearingで6.1°,outerheadで14.2°外転しており,outer headでの外転率は66.6%であった.そして,outer headの外転率がほぼ90%以上の6例中3例で3mm以上のcentral migrationを認めた.componentの可動性に影響する因子は,まず臼蓋軟骨の状態が挙げられるが,その他の因子については不明である.bipolar型人工骨頭におけるcentral migrationを防止するためには,これらの因子の解明が必要であると思われる.

脛骨外側顆剥離骨折の病態—膝靱帯損傷との関連を中心に

著者: 吉田顕 ,   安田和則 ,   斉藤裕 ,   大越康充 ,   計良基治

ページ範囲:P.1033 - P.1041

 抄録:膝外傷1167例中,脛骨外側顆剥離骨折は新鮮例が18例,陳旧例が17例存在した.新鮮18例中,14例(78%)に外側支持機構以外の合併靱帯損傷を認めた.その68.6%にACL損傷が,20%にPCL損傷が,8.6%にACL・PCL両者の損傷が合併していた.十字靱帯損傷の側から見ると,全ACL損傷の12.6%,全PCL損傷の10.6%,ACLおよびPCL合併損傷の17.6%に本剥離骨折が存在した.X線写真上本骨折を認めた時は,複合靱帯損傷との合併率が高いことを念頭においた注意深い診察が必要である.また新鮮例のX線写真像を4つの型に分類した.IaおよびIb型は保存療法で,IIaおよびIIb型は手術的治療で良好な骨癒合と外側支持機構の修復が得られた.この脛骨外側顆剥離骨折の分類は,受傷機序の理解と治療法の決定に有用と思われた.

変形性膝関節症に対する楔状足底板を用いた保存的治療の長期臨床成績

著者: 遠山晴一 ,   安田和則

ページ範囲:P.1043 - P.1050

 抄録:内側型変形性膝関節症に対し従来の薬物療法に加えて楔状足底板を処方し7年7カ月から12年2カ月(平均9.5年)を経過した症例61人および従来の薬物療法のみの症例16人に対し,楔状足底板を用いた保存的治療の長期成績に関する調査を行った.足底板を用いた保存療法の効果は第1次調査時(平均2.5年後)と比較し第2次調査時(平均9.5年後)ではいずれの病期でも低下していた.しかしstage Iの疼痛,stage IIの疼痛と歩行能力においては第2次調査時においてもその効果は認められた.また薬物療法のみの症例と比較した結果,第2次調査時のstage IおよびIIの症例における足底板自体の効果は疼痛に関しては認められたが歩行能力に関しては認められなかった.X線学的変形性変化の進行に関しては,足底板の有無は影響を与えなかった.楔状足底板はその効果と限界を理解して用いれば,変形性膝関節症の保存的治療の中心的役割を果たすことが可能であろう.

整形外科基礎

圧縮荷重下における椎体・椎間板の応力解析—胸腰椎部粉砕骨折の発生機序について

著者: 白土修 ,   鐙邦芳 ,   金田清志 ,   但野茂 ,   石川博將

ページ範囲:P.1051 - P.1057

 抄録:胸腰椎部粉砕骨折の発生機序を知る目的で,有限要素法により圧縮荷重下における椎体・椎間板の応力解析を行った.解析には,人屍体摘出腰椎標本の側面X線写真にもとづき2椎体と介在する1椎間板を忠実に描写したモデルを作成し,平面ひずみ問題として行った.椎間板の変性が,圧縮荷重に与える影響も調べるために,髄核に相当する節点に内圧を加え,変性度をシミュレートした.高応力領域は,海綿骨では,髄核直下に,また,皮質骨では,髄核直下と椎体後壁中央部にみられた.髄核直下の高応力領域は,椎間板の変性が進むにつれて,減少する傾向にあった.以上の結果から,粉砕骨折の発生機序を次のように推察した.すなわち,圧縮荷重により,髄核直下の海綿骨とend-plateが破断し,髄核が椎体内に陥入する.その結果,骨折線は,椎体後壁中央部に及び,骨片が脊柱管内に突出する.さらに,椎間板変性の高度な高齢者では,粉砕骨折が少ない理由も推察できた.

整形外科を育てた人達 第74回

Louis Bauer(1814−1898)

著者: 天児民和

ページ範囲:P.1058 - P.1060

 米国の整形外科はWilliam Ludwig Detmold(1808-1894)がドイツのHanoverで整形外科の開祖の一人であるGeorg Friedrich Louis Stromeyer(1804-1876)から整形外科を学び,米国に移住した時から発展して来たことは既に紹介したが,今回は同じくドイツより米国に移り活躍したLouis Bauerについて書くことにした.Bauerは医学者であるが政治にも関心を示し,民主主義政党に属していた.又,友人の研究業績に対しても遠慮せずに批判したが,彼自身は米国の最初の整形外科教科書を出版した有能な学者である.

認定医講座

頸椎症性脊髄症

著者: 小田裕胤

ページ範囲:P.1061 - P.1067

はじめに
 頸椎の椎間板変性が基盤となり,二次的に頸椎の椎体および周辺組織に生じた加齢的変化により脊柱管内や椎間孔部において,脊髄や神経根が圧迫され,症状を来した疾患が頸椎症である.本症はさらに脊髄に対する圧迫症状を主とする脊髄症と,神経根の圧迫・刺激症状を呈する神経根症とに分けられる.この両者は臨床症状にそれぞれ特徴を有しており,治療法,予後にも差異を認めることからその診断には特に注意を要するといえる.
 本稿では頸椎症の中でも一般に臨床的に重篤で予後も不良例が多い脊髄症の病態と治療について述べる.

肩関節周囲炎

著者: 薄井正道

ページ範囲:P.1069 - P.1076

はじめに
 肩関節周囲炎は1896年Duplay2)によって報告されたhumeroscapular periarthritisという疾患名の邦訳である.本疾患の原因は今日もなお不明であり,この点についてはのちに述べるように種々の見解が報告されている.一方,肩関節周囲炎に相当するわが国の疾患概念として「五十肩」がある.両者を同一のものとみなすべきか否かについても意見が一致していない.
 筆者は肩関節周囲炎と「五十肩」は,肩関節の有痛性制動症であるが表1のような共通した特徴を有していると考えている.ここでいう肩関節周囲炎は,このような特徴を有する限りにおいて五十肩と同一疾患と考えられるが,まず肩関節周囲炎の概念の歴史的変遷および「五十肩」との関係についてのべることとする.次に本症の発生機転を理解する上で必要な機能解剖,診断,治療法の順に話しをすすめることにする.

手術手技 私のくふう

Cotrel-Dubousset instrumentationによるpedicle screw fixationを併用した腰椎後側方固定術

著者: 宮下裕芳 ,   熊野潔

ページ範囲:P.1077 - P.1083

 抄録:腰椎後側方固定術に対し,われわれは従来のinstrumentationの短所を補い,さらに臥床期間を短縮するとともに骨癒合をより確実にする手術法として,Cotrel-Duboussetのinstrumentationを使ったpedicle screw fixationを併用して行った.この方法(CD法)が従来の方法(従来法)との比較において,その長短の検討を目的とした.対象はCD法34例と従来法の9例で,手術方法と手術結果を比較して以下の結論が得られた.
 本法は従来法に比べ手技はやや煩雑で,手術時間は長く出血量は多くなるが,術後の臥床期間は顕著に短縮される.本法は,特に2椎間以上の固定や広範な椎弓切除術への併用,辷り症および不安定性のある腰椎に対し,骨癒合と術後早期の成績に信頼がおける術式と考えられる.

脂肪層をつけた遊離皮膚移植術の経験—含皮下血管網遊離全層植皮法

著者: 扇内幹夫 ,   服部憲明 ,   知野公明 ,   永嶋和男 ,   塚原哲夫 ,   山上繁雄 ,   藤巻悦夫

ページ範囲:P.1085 - P.1089

 抄録:遊離植皮で術後に皮下脂肪のある植皮であれば四肢には有効である.今回,塚田の開発した含皮下血管網遊離全層植皮法に準じた植皮(薄い脂肪組織をつけた遊離植皮)を28例に追試した.恵皮部は全例鼡径部である.その結果,100%生着は20例(71%),部分壊死(80%以上生着)は5例(18%),不成功例(70%以上の壊死)は3例(11%)であった.生着率は従来の全層植皮術と同等と考えられた.しかも,全層植皮で得られなかった移植部の適当な厚みと移動性を得ることができた.手術適応は従来の全層植皮と同様であり,母床状態が良くなければならない.血行の悪い母床には熱傷用PVF spongeを用い,良好な肉芽の形成を得ることが可能であった.しかし過剰な肉芽には適当な削除が必要であった.本方法は植皮部に移動性や弾力性が得られるので,手の外科や関節近傍には最適と考えられた.

臨床経験

膝蓋上包に限局して発生したSynovial osteochondromatosisの1例

著者: 漆原信夫 ,   司馬立 ,   近藤秀丸 ,   本間玄規 ,   井ノ口雅貴 ,   今井敬人

ページ範囲:P.1091 - P.1094

 抄録:著者らは,膝蓋上滑膜ひだにより隔離された膝蓋上包内にのみ限局して存在する稀なsynovial ostechondromatosisの1例を経験したので報告する.症例は56歳の男性で,左膝関節痛を訴え来院した.単純X線像で左膝蓋上包部に大豆大多数の石灰化陰影が認められ,空気造影にてこれらの石灰化陰影が膝蓋上滑膜ひだによりほぼ完全に隔離された膝蓋上包内にのみ限局して存在していることが判明した.手術的治療を行い,遊離体摘出ならびに膝蓋上滑膜ひだと上包部滑膜の切除を施行した.術後2年5カ月の現在,再発はなく膝関節痛も消失している.

上腕骨顆上突起骨折の1例

著者: 伊崎寿之 ,   矢部啓夫 ,   野本聡 ,   辻野昭人 ,   中西忠行

ページ範囲:P.1095 - P.1098

 抄録:症例は6歳男子.自転車で転倒し,左肘関節を打って上腕骨顆上骨折をきたした.同じX線上で,骨折部の内上方3cmに骨性突起を認めた.長さ17mmの台形の基底をもつ高さ9mmの鉤状の突起が下方へ向かい突出していた.さらに,その突起の基部で横骨折を起こしていた.以上から,上腕骨顆上骨折に併発した顆上突起骨折と診断した.治療は,16日間の垂直牽引とそれに続く10日間のギプス固定であったが,この時点で顆上突起はほぼ骨癒合をしていた.受傷後8カ月の現在,肘の可動域制限はなく,正中神経に障害を思わせる所見もない.
 顆上突起は日本人では比較的稀にしか見い出されないが,正中神経の走行とのかかわりから臨床的意義がある.なお,この突起の骨折例は海外では10余りの報告があるが本邦には見当らない.

ソフトボール選手にみられた上腕骨疲労骨折の1例

著者: 山本和司 ,   村上敬明 ,   高橋洋 ,   三木仁

ページ範囲:P.1099 - P.1101

 抄録:上腕骨疲労骨折は,little league shoulderである上腕骨近位骨端線離開や少年野球肘における上腕骨内上顆剥離骨折を除くと,その報告は極めてまれである.今回われわれはソフトボール選手に発生した上腕骨骨幹部疲労骨折の1例を経験したので報告する.
 症例は13歳の男子で右利き,守備位置は外野.昭和62年4月より1日約3時間の練習をほぼ毎日行っていたところ,5月末頃より投球時に右上腕部痛が出現した.6月23日の初診時,右上腕外側中央部に圧痛があり,X線上右上腕骨骨幹部外側に均一な骨膜反応像を認めたので上腕骨疲労骨折と診断.右上肢の安静を指示し,5週間で症状消失した.初診後10週で投球再開したが,4カ月後の現在症状の再燃はない.

鎖骨骨折骨接合術に用いたKirschner鋼線の胸腔内迷入の1症例

著者: 新藤正輝 ,   前川和彦 ,   荒木崇一 ,   大野司

ページ範囲:P.1103 - P.1106

 抄録:鎖骨骨折の骨接合術に用いたKirschner鋼線が術後徐々に移動,胸腔内に迷入し術後2カ月目に発見された1症例を報告した.鋼線は右肺上葉を貫通,縦隔内に刺入し気胸の状態であったが,大血管,食道等の損傷は認められなかった.手術器具として用いられた鋼線迷入の報告は本邦では稀であるが,外国においては比較的多く,我々の調べ得た限りでは41例の報告がある.原因として鋼線が骨髄内を貫通していないこと,その端側が充分に曲げられていないこと,術後の固定が不十分なことなどが挙げられている.本症例も術後ギプスによる固定は行われていたが,端側は全く曲げられておらず,術後の経過中に胸痛,呼吸困難等の症状を訴えていたにもかかわらず放置されていたことが発見を遅らせる結果になったと思われる.

痛風に起因する手根管症候群の1例

著者: 五十嵐康美 ,   舟田公治

ページ範囲:P.1107 - P.1110

 抄録:68歳の女性が右手指の運動障害と正中神経支配域の知覚障害を訴え来院した.臨床所見より,手関節部の痛風結節と痛風性の腱鞘炎による手根管症候群と診断した.手術所見では,舟状骨部に生じた痛風結節と,手指屈筋腱の間に存在する嚢腫により,正中神経が絞扼されていた.痛風結節と嚢腫をできるだけ切除し,横手根靱帯を切離した.2カ月後に母指対立再建術を追加した.術後,指の運動は改善したが,示指の知覚の回復は不良であった.痛風に起因する手根管症候群は,痛風患者ではもともと手の症状が少ないうえ,薬物療法が普及したことによりまれなものである.しかし,痛風患者の増加に伴い,治療抵抗例または治療中断例の中から,手に症状を持つような重症例も増えると予想される.今後,痛風患者の診療に際しては,手根管症候群をはじめとする上肢の合併症も念頭におく必要があると思われる.

筋肉内腫瘤型サルコイドージスの1例

著者: 佐々木誠人 ,   川嶌眞人 ,   田村裕昭 ,   多田勝弘

ページ範囲:P.1111 - P.1113

 抄録:サルコイドージスは全身の諸臓器に非乾酪性の類上皮細胞性肉芽腫を形成する原因不明の疾患であるが,骨格筋に症状を呈することは非常に少ない.今回我々は腓腹筋部に腫瘤を形成するが,他の部位には異常を認めない極めて稀な筋肉内腫瘤形成型のサルコイドージスの1例を経験した.症例は28歳の女性で主訴は左腓腹部の腫瘤であった.既往歴や家族歴には特に関連性のあるものはなかった.血液・生化学検査,胸部X線写真や眼科的にも異常はなかった.血管造影やCT-scan等を施行するも明らかな診断がつかないため手術を施行した.臨床所見,手術所見及び組織学的所見から筋肉内サルコイドージスと診断した.近年サルコイドージスの病因の一つとして常在菌であるPropionibacterium acnesがいわれており,軟部腫瘍の補助診断の一助として検体の細菌培養が必要と考えられた.

骨折を繰り返したKallmann症候群の1例

著者: 松田達男 ,   長谷川幸治 ,   安藤伸也 ,   伊藤晴夫

ページ範囲:P.1115 - P.1118

 抄録:36歳の男性で,右肘関節痛を主訴に来院した.幼少時より嗅覚欠如があり,二次性徴発現もなかった.21歳で登山中滑落し,右足関節骨折して以来左肘頭骨折,右中手骨骨折の既往があった.
 交通事故にて右Monteggia開放骨折,右第5中足骨開放粉砕骨折をし,さらに右上腕骨骨幹部骨折を続発した.

転移性馬尾腫瘍の1例

著者: 木村真二 ,   島崎和久 ,   井口哲弘 ,   宇田宙照 ,   廣畑和志

ページ範囲:P.1119 - P.1122

 抄録:乳癌による転移性馬尾腫瘍の1例を経験したので報告する.症例は54歳女性で6年前乳癌根治術を受けた.術後5年目に右下肢痛,歩行障害が出現し,ミエログラフィーにて部分ブロック像を認め,椎弓切除,腫瘍摘出術を行った.病理組織は管腔様構造を形成する腺癌で,臨床経過から乳癌の馬尾への転移と考えた.
 悪性腫瘍の硬膜内への転移はきわめてまれで,渉猟しえた報告は42例で,この内で明らかに馬尾に転移した報告は21例であった.転移経路として血行性転移が示唆された.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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