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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科25巻12号

1990年12月発行

雑誌目次

視座

迫ってくる超高齢化社会

著者: 塚本行男

ページ範囲:P.1339 - P.1339

 60歳代の方の外来,入院において占める割合を特に調べたわけではないが,相当の数にのぼるであろう.当然,変性疾患が多く,症状に応じて定期的な通院や入院も勧めてみる.ところが,「私は老人を抱えているのでそんなことは出来ませんよ」との答が返ってくることがままある.考えてみれば,最近では60歳代の方が80,90歳代の両親,あるいは片親の面倒をみている方も稀では無いはずである.これは大変な御苦労であろうと同情する.
 一方では,大腿骨頸部骨折などで入院した高齢者の患者さんの中のかなりの方は,整形外科的には一応の治療のゴールには達したものの,痴呆やその他の内科的疾患のため自立生活は到底無理な場合が少なくない.これらの患者さん達を必ずしも家族は引き取ってくれない.この場合,次の収容先を探すのに病院側も四苦八苦する.高齢化社会がひたひたと押し寄せてくるのが実感される.

論述

内側型変形性膝関節症に対する脛骨高位骨切り術後の10年間における下肢アラインメントの変化

著者: 土田隆政 ,   安田和則

ページ範囲:P.1340 - P.1346

 抄録:Coventry法による高位脛骨骨切り術後10年以上経過した,内側型変形性膝関節症30人,35膝の術後下肢アラインメントの経時的変化と臨床成績の関係を検討した.観察期間は,平均11.5(10~15)年であった.アラインメントの評価は,片脚起立膝正面単純X線写真での大腿骨脛骨角(FTA)・脛骨高原傾斜角(TPA)を用いた.FTAは術後1年時平均168.7°±5.3で,術後6年間まではほとんど変化せず,6年以降に3°以上の内反増加を11膝に認めた.TPAは10年間で変化を認めなかった.術後1年時のFTAが大きい症例ほど10年後の内反変形が強い傾向を示した(p<0.001).この変化は,1年時のFTAが165°付近の症例で最小であった.術後10年時の3大学試案による膝関節機能評価点の改善点数が30点以上の群のFTAは,術後1年時平均165.3°±5.7,10年時平均164.9°±4.9と変化が少なかった.FTAはHTOの長期成績に影響する重要な因子のlつで,その至適矯正角度は164°~168°と考えられた.

intramuscular myxomaの治療経験

著者: 白石秀夫 ,   川口智義 ,   松本誠一 ,   真鍋淳 ,   古屋光太郎 ,   磯辺靖

ページ範囲:P.1347 - P.1352

 抄録:myxomaは稀な良性軟部腫瘍であるが,他の軟部腫瘍,特にmyxoid liposarcoma,myxoid MFHとの鑑別には難渋する場合が,多々見受けられる.そこで,我々の経験した9例のmyxomaの臨床所見・画像診断・生検診断を総合的に評価し,他のmyxoid tumorとの鑑別点について検討した.myxomaの画像所見は静電画像,CT,超音波画像,血管造影を総合してみると血流に乏しい一様な筋肉内・筋間腫瘍として描出された.治療は手術が主体となるが,摘出標本の割面所見により初めて本症と診断された例もあり,その方法は,myxoid sarcomaに準じ行うべきであると思われた.

大腿骨頭辷り症例の検討―術後成績と術式の選択について

著者: 亀ケ谷真琴 ,   品田良之 ,   守屋秀繁 ,   秋田徹 ,   染屋政幸 ,   土屋恵一

ページ範囲:P.1353 - P.1361

 抄録:術後1年以上を経過した大腿骨頭辷り症37例42関節について追跡調査を行った.治療法は,in situ pinningを施行した例が29関節,Southwick法による三次元骨切り術を行ったものが13関節であった.その結果,術後のremodelingにより,in situ pinning例においては骨頭がいわゆる“つりがね様”を呈する傾向にあり,Southwick法例では反対に扁平化を示す傾向にあった.また,ATDの変化では両者ともに術後徐々に低下して行く傾向にあった.臨床的には,疼痛・可動域制限・脚長差ともに合併症例を除いては概ね良好であった.合併症例はin situ pinningでchondrolysisが3関節(10.3%),Southwick法例でchondrolysis 3関節,aseptic necrosis 1関節の計4関節(30.8%)と後者に高頻度に認められた.術式の簡便さと合わせ,今回の検討から,後方辷り40°まではin situ pinningの適応であると考えられた.

Miller-Galante型人工膝関節置換術の問題点

著者: 徳広聡 ,   宮津誠 ,   山下泉 ,   松坂成行 ,   竹光義治

ページ範囲:P.1363 - P.1368

 抄録:Miller-Galante型人工膝関節置換術(N=79,観察期間6カ月以上,平均16カ月)の短期成績として,アライメント,コンポーネントの挿入位置について調査し,合併症との関係について検討した.大腿脛骨関節については,良好なアライメントが得られていたが,膝蓋大腿関節の不適合を生じているものが6膝7.6%に認められた.原因として,脛骨コンポーネントの内旋位挿入と,アライメントの矯正に伴う内側支帯の弛緩弱化と,膝外反化による膝伸展機構のアンバランスが示唆された.成績向上のためには,膝蓋大腿関節のアライメントと,膝伸展機構の軟部組織バランスに十分な注意を払い,膝蓋骨のトラッキングを良好に保つことが重要と考えられた.

著しい脚長差を有する片側全人工股関節置換術の検討

著者: 松末吉隆 ,   山室隆夫 ,   奥村秀雄 ,   上尾豊二 ,   笠井隆一 ,   清水和也 ,   神先秀人

ページ範囲:P.1369 - P.1374

 抄録:一側にTHRを行い,反対側は高位脱臼の状態で著しい脚長差を有したまま経過をみた症例(以下脱臼群と略する)を,健側がほぼ正常の片側THR症例(コントロール群と略する)と比較した.脱臼群は11例で全例女性,手術時年齢は平均53歳(47~57歳),経過観察期間は2年から11年,平均5年であった.コントロール群は53例で手術時年齢43歳から65歳,平均54歳で経過観察期間は平均6.2年であった.日整会評価点数では両群に差はなく,歩行能力点数では脱臼群は平均12.5でコントロール群より劣っていた.X線評価では脱臼群はゆるみを認めないが,コントロール群はゆるみ7例(13%),revision 8例(15%)を認めた.ステム先端の大腿骨皮質の肥厚は脱臼群で45%と高率に認めた.股関節外転筋力は脱臼群では両側ともコントロール群と比べて低値であった.反対側に,高位脱臼を有するこのような特殊な例では,疼痛が強ければ積極的に一側のみにTHR手術を行って良いと考えられた.

脊髄腫瘍を合併したvon Recklinghausen病症例の検討

著者: 本間玄規 ,   室田景久 ,   司馬立 ,   近藤秀丸 ,   太田康人 ,   林克章 ,   伊藤博志 ,   舟崎裕記

ページ範囲:P.1375 - P.1383

 抄録:脊髄腫瘍を伴うvon Recklinghausen病の6例に対する手術経験を報告した.脊髄腫瘍の形態は,硬膜内髄外腫瘍が3例,馬尾神経腫瘍が2例,砂時計腫が4例で,6例中4例は多発性であった.脊柱変形は6例中3例,50%に認められ,全例dystrophic typeである.手術は,全例に腫瘍摘出術を行い,5例に脊椎固定術を併用したが,特にdystrophic kyphosisを呈する症例に対しては前方・後方固定術を行った.術後,神経症状は著明に改善し,脊椎固定術を併用した5例においては,全例に骨癒合が得られた.von Recklinghausen病に伴う脊髄腫瘍は,多発傾向を示し,多彩な発育様式を呈することから,各種の形態的検査法を用いて,脊柱周囲病変を含めた検索を十分に行うことが重要である.手術は,腫瘍の全摘出術を行うことが原則であるが,dystrophic changeを呈する症例においては,健常部を含めた広範囲で強固な固定術を併用すべきと考える.

手術手技シリーズ 関節の手術<下肢>

下位脛骨骨切り術

著者: 高倉義典

ページ範囲:P.1385 - P.1391

 足関節における変形性関節症は,他の荷重関節である股・膝関節に比してその発症頻度は少ない.そのうちでも骨折や靱帯損傷などの外傷後のもの,化膿性や結核性などの関節炎後のもの,距踵関節や三関節固定術後のものなどの二次性関節症がかなりの部分を占める.一方,明らかな外傷歴のない一次性と考えられる関節症も散見される.これらは脛骨下端関節面が内反位にあり,内果の末梢開きや形成不全などの構築上の特徴を有している.高齢化社会を迎えてこのような関節症が増加しつつある.

整形外科を育てた人達 第88回

Harold Buhalts Boyd(1904-1981)

著者: 天児民和

ページ範囲:P.1392 - P.1394

 Harold Buhalts Boydの名は日本の整形外科医の間にも良く知られているが,彼は整形外科の臨床医学者としては傑出した学者である.

臨床経験

“the hidden zone”への上方脱出型ヘルニアの治療経験

著者: 末綱太 ,   伊勢紀久 ,   武田久雄 ,   秋元博之 ,   福井要一 ,   岡田晶博 ,   小松尚

ページ範囲:P.1395 - P.1399

 抄録:我々は脱出型ヘルニアの中で比較的稀で,診断がつけにくく,また見逃されやすいMacNabの言う“the hidden zone”への上方脱出型ヘルニアの5例を経験した.現病歴から,症例は全例動作直後に激烈な下肢痛を来し,歩行困難を呈しており,更に平均年齢が50.6歳と比較的高齢であった.障害神経根を決めるのに痛みの局在,臨床所見からある程度予測は可能であるが,機能的診断法としてのselective radiculography(以下SRGと略す)は,術前の障害神経根の決定に有用であり,脱出方向,レベルの診断には脊髄造影のみでは不十分でdiscography,CT-discographyがヘルニアの脱出部位,方向の確認にきわめて有用であった.手術方法としては,椎間関節を含む片側椎弓切除術が取り残しをなくす安全な方法と思われた.

Kienböck病に伴った手根管症候群の1例

著者: 徳広聡 ,   船越正男 ,   石崎仁英 ,   奥山峻一郎

ページ範囲:P.1401 - P.1404

 抄録:Kienböck病に合併した手根管症候群の症例を報告する.症例は51歳の女性で,左母指の脱力感を訴えて受診,手根管症候群と診断された.X線上,高田分類IV期のKienböck病で,CTにて分離月状骨骨片が手根管へ突出しているのが確認された.症状発現には,分離骨片による手根管の狭小化と,手根配列の乱れに伴う,横手根靱帯の背側および近位への移動が関与していると考えられた.

脛骨遠位骨端線損傷に対し遊離脂肪移植および脚延長を行った1症例

著者: 柏木直也 ,   冨永芳徳 ,   多田弘史 ,   北本克則

ページ範囲:P.1405 - P.1410

 抄録:若年者の骨端線損傷による骨橋の形成は重篤な成長障害をひきおこす.そのためその診断と治療には特別な配慮が必要である.われわれは左脛骨遠位骨端線損傷により足関節の内反変形および脚長差を生じた1症例に対して数回の手術的治療を行い,成長が完了するまでfollow-upを行った.
 症例は交通事故により広範な皮膚欠損を伴った左脛骨の開放性骨折を来した5歳3ヵ月の男児である.左足関節の進行性の内反変形に対して骨切り術(osteotomy)と,骨橋の切除+自家遊離脂肪移植(physolysis with free autologous fat graft)にて対応したが,足関節内果部の皮膚性拘縮のために十分な矯正が得られず,有茎植皮術を必要とした.脚長差に対しては骨端線剥離牽引術(distraction epiphysiolysis)を行い,約9cmの延長が得られた.

先天性鎖骨偽関節症の1治験例

著者: 西川真史 ,   原田征行 ,   藤啓 ,   坪健司 ,   中沢重信

ページ範囲:P.1411 - P.1414

 抄録:先天性鎖偽関節症の1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.
 対象は7歳女児.主訴は右鎖骨部の突出変形.満期自然分娩にて2850gで出生.1歳頃母親が右鎖骨の突出変形に気づいた.本人の変形に対する改善の希望が強くなり,1989年3月15日弘前大学病院入院.右鎖骨中央で直径2cmの異常可動性のある骨性突出を認めるが,圧痛,運動痛はない.X線では,右鎖骨中央で骨の連続性が断たれ,偽関節様であったが,骨片の相対する端部に硬化像はなく,仮骨形成も認めなかった.

指伸筋腱脱臼の1例

著者: 後藤孝浩 ,   宮田守雄 ,   方宇壽恒 ,   川村正典

ページ範囲:P.1415 - P.1418

 抄録:患者は61歳,男性.虫撥き動作後の右中指MP関節部痛のため来院.外傷性指伸筋腱脱臼と診断し,手術による治療で良好な結果を得た.
 手指伸筋腱脱臼は変性性のものを除くと比較的稀で,報告されているものに本症例を含めると51例(64指)である.その中では外傷性が半数以上で中指が70%を占めている.伸筋腱脱臼のメカニズムについては手背腱膜の構造とその解剖学的名称がはっきり整理されていないため,報告者によって見解が異なる.治療法は大部分の症例に手術が行われ,さまざまな手術法で良好な成績が得られている.

脊椎血管腫の1例―骨蝋とオキシセルでくふうした新しい術中止血法の試み

著者: 斎藤晴彦 ,   見松健太郎 ,   原田敦 ,   村松哲雄 ,   矢崎進

ページ範囲:P.1419 - P.1422

 抄録:第2胸椎血管腫による高度の脊髄障害があり,椎弓から棘突起にかけて骨内が空洞化し,術中に大量の出血が予想される1症例に遭遇した.この症例に対して,椎弓にあけた小孔より骨蝋とオキシセルを密に詰め込んで止血し,最少限の出血で安全にlaminectomyおよび腫瘍摘出術を行うことができた.この方法は,栄養血管の豊富な脊椎腫瘍の椎弓切除術に応用できるのではないかと考えている.

頸椎伸展拘縮を呈したネマリン・ミオパチーの1例

著者: 小竹俊郎 ,   清水克時 ,   四方實彦 ,   新井達也 ,   西原秀紀 ,   樋口佳代子 ,   山室隆夫

ページ範囲:P.1423 - P.1426

 抄録:中年発症で,nemaline myopathyによる頸椎伸展筋の線維化が原因と考えられる,頸椎伸展拘縮の女性例を報告した.成人発症のnemaline myopathyの本邦での報告例は少なく,特に整形外科領域においての報告は,今までに見られない.症例は60歳,女性.55歳時頃より徐々に頸椎の伸展拘縮として発症した.我々は,頸椎伸展筋の異常による伸展拘縮と診断し,拘縮除去する目的にて,変性に陥った筋を切除した結果,頸椎の可動域は著しく改善した.病理学的には,筋の線維化・変性の所見と,電顕的に多数のnemaline bodyの存在を認めた.

慢性関節リウマチ,シェーグレン症候群に全身のcalcinosisを伴った1例

著者: 嘉森雅俊 ,   岩田久 ,   石黒直樹 ,   加藤龍也 ,   伊代田一人 ,   上田哲司 ,   三浦隆行

ページ範囲:P.1427 - P.1430

 抄録:RA,シェーグレン症候群(SjS)に全身のcalcinosisを伴った1例を経験したので報告する.
 症例は58歳,女性.主訴は両股関節痛で,昭和44年RAに罹患した.同59年より両股関節痛出現,近医受診し,右股関節周囲の石灰沈着を指摘された.平成元年両股関節破壊の進行を指摘され当院を受診した.多発性の関節腫脹,変形がみられたが,Raynaud現象,皮膚硬化はみられなかった.眼内乾燥を訴え,当院眼科にてSjSの診断を受けた.X線像で両股関節の関節裂隙の狭小化,両手指,手関節の破壊,両股関節周囲,両手指,両足,両肩,肘関節周囲に石灰沈着がみられた.検査所見はRA(-),抗核抗体(+,speckled pattern),抗SS-A抗体(+),抗SS-B抗体(-),ESR 100/hr,CRP 10.4であり,肝,腎機能,Ca,P,PTH等は正常であった.右股関節のopen biopsyを施行し,関節周囲の滑液包,関節滑膜に炎症性変化,石灰沈着を認めた.本例は代謝異常はみられず,異栄養性石灰化と思われる.

第5腰椎に骨破壊を生じた神経鞘腫の1例

著者: 山路哲生 ,   関恒夫 ,   佐々本博 ,   村上要 ,   西本聡

ページ範囲:P.1431 - P.1434

 抄録:今回われわれは,第5腰椎に広範な骨破壊を生じた稀な神経鞘腫の1例を手術的に治療し,良好な結果を得たので報告する.症例は28歳,男性.平成元年1月22日作業中,重量物を持って腰痛および右下肢痛が出現.2月3日当院へ入院した.入院時,単純X線写真で第5腰椎に骨破壊を認めた.疼痛のため体動はほとんど不能であったが,麻痺はなかった.また,体表に色素沈着なども認めなかった.MRI,CT像で第5腰椎椎体より後腹膜へ巨大な腫瘍が描出された.2月15日に,後方よりHarrington rodによる固定を行った後,腰椎前側方進入にて第5腰神経を含めて腫瘍を摘出し,骨欠損部を自家腸骨にて充塡した.病理組織診断は,Antoni A型の神経鞘腫であった.術後のX線写真での骨癒合は良好で,腫瘍の再発は認めず,右前脛骨筋の筋力低下を認めるも,足関節の背屈は十分可能で,日常生活動作にも全く支障なく良好な経過を示している.

第5中手骨に発生した軟骨肉腫の1例

著者: 山田高士 ,   木野義武 ,   服部順和 ,   岸精一 ,   近藤喜久雄 ,   紀平昌保 ,   小出敬之 ,   木俣一郎 ,   中尾悦宏 ,   近藤精司 ,   岩田佳久 ,   亀山泰 ,   市川恒信

ページ範囲:P.1435 - P.1438

 抄録:軟骨肉腫は,原発性悪性腫瘍としてはしばしば見られる腫瘍であるが,その手指骨発生例は比較的稀である.今回我々は,右第5中手骨に発生した軟骨肉腫を経験したので報告する.症例は65歳男性.昭和59年頃より右手部尺側の腫瘤に気付き,徐々に増大してきたために昭和62年12月11日初診.腫瘍は直径約8cmの球状で,単純X線写真では,右第5中手骨を中心とした腫瘍陰影を認め,第5中手骨の骨破壊像がみられた.これらの臨床症状およびX線学的所見より,悪性腫瘍を疑い,昭和62年12月23日,環指,小指を含めた腫瘍全摘術を行い,摘出後の皮膚欠損と骨露出部は,peroneal flapにて被覆した.摘出標本の病理組織学的所見などにより,軟骨肉腫と確定診断された.術後2年経過した時点では,局所の再発,肺などへの転移を認めていない.

感染人工股関節の治療経験―抗生物質混入骨セメントビーズを用いた,二期的再置換術

著者: 岡本哲軌 ,   安藤御史 ,   後藤英司 ,   松浦順

ページ範囲:P.1439 - P.1443

 抄録:我々は,感染人工股関節に対し機能の再建のため,抗生物質混入骨セメントビーズを用いた二期的再置換術を行っており,その有効性に関して検討したので報告する.
 対象は,女性3例,男性1例の計4例の人工股関節深部感染である.起炎菌は2例に表皮ブドウ球菌が検出されたが,2例は不明であった.手術方法は,人工股関節抜去,掻爬,抗生物質混入骨セメントビーズを挿入し,術後4~6週間にわたる脛骨鋼線牽引の後,人工股関節再置換術を行った.結果は,術後観察期間4カ月~2年10カ月と短期間であるが,いずれも感染の再燃は認められず,疼痛に関しても著しく改善した.
 本法の利点,問題点,理論的背景,適応に関して文献的考察を加え,検討した.本法は,適応を厳選すれば有効な治療法であると考えられた.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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