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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科25巻4号

1990年04月発行

雑誌目次

特集 不安定腰椎(第18回日本脊椎外科研究会より)

第18回日本脊椎外科研究会を開催して

著者: 山本博司

ページ範囲:P.353 - P.353

 主題として,「不安定腰椎」を取り上げさせていただいた.腰痛の成因には,いろいろなものがあるが,活動的年齢である青壮年期に於いては,腰椎のいわゆる「不安定性」が腰痛や下肢症状の直接的,間接的な成因に関わっていることが多い.
 不安定腰椎を招く病態因子として,先天的弱点,分離症,椎間板障害,椎間関節形態特性,空間における位置関係,日常生活環境,,加齢的変化など様々あり,これらが多因子性に関与している.不安定という物理学的な見方をするならば,近年のバイオメカニクス的解析手法の進歩は目ざましいものがあり,病態分析に重要な役割を果たしてくれるものと期待される.実際に,バイオメカニクス面から解析した優れた報告がいくつか出され,はっきりとした病態解明への進歩に接することができた.

座長総括

「Ⅰ.運動解析」の部

著者: 辻陽雄

ページ範囲:P.354 - P.355

 このセッションでは腰椎部脊柱機能単位の退行変性において問題となる支持性と運動性の評価およびその臨床的意義について,基礎的あるいは臨床的研究が報告された.
 まず山元(北大)らはエール大学との共同研究として新鮮屍体腰椎柱を用いて,長軸圧縮荷重下で屈曲伸展回旋を行わせ,脊椎の動きを実験的に解析した.回旋を強制すると側屈運動が一定のパターンすなわちL1-2~L2-3では荷重と反対方向の側屈,L4-5およびL5-Sでは同じ方向への側屈がみられ,それはL4-5に応力集中がおこることを示唆し,側彎強制で軽度屈曲と反対方向への回旋を,屈曲伸展では,couplingはみられなかったという.これらの所見は従来の定説と一致し,かつより生理的に近いデータと考えられるとした.

「Ⅱ.病態と診断(1)」の部

著者: 井形高明

ページ範囲:P.355 - P.357

 不安定腰椎ならびにそれに係わる神経障害病態の臨床的把握には,画像診断法が多用される.最近のCTさらにはMRIの導入により,病理学的所見に接近した結果を得るに至っている.神経障害の病態については,電気生理学的検査や手術所見,あるいは側面的ではあるが治療成績より検討を加えることができる.本セクションの演題はこうした臨床的立場から不安定腰椎ならびに神経障害の病態が発表され討論された.
 岩河ら(岡山大)は職場の従業員を対象として腰痛とX線で把えた腰椎彎曲ならびに椎間関節所見との関連を調査している.腰痛の強さが前彎角や腰仙角の増強に係わり,また椎間関節のOA変化より椎間板高狭小化に影響されていることを見出している.

「Ⅲ.病態と診断(2)」の部

著者: 蓮江光男

ページ範囲:P.357 - P.358

 このセッションでは,下部腰椎の不安定性(主として変形すべりや変性側彎)を,CTを含むX線検査によってどう診断するか,X線所見と臨床症状との関連性はどうか,さらにすべりの発生機序についての発表・討論がなされた.
 福島ら(徳島大)は単純X線検査とCT検査により,変性すべり症群と対照群との対比を行った.変性すべり症のX線学的特徴は,腰椎前彎の増強,すべり椎の台形化,椎弓角の鈍化,椎間関節の矢状面化,すべりおよびシーソー現象であると述べた.また,自然経過によりおよび手術後にすべりが増大した5例をすべり不変例と比較し,腰椎前彎度31度以上,椎間関節開角66度以下,すべり運動距離2mm以上,シーソー現象のうち,3項目以上陽性なのは,すべり進行の危険性があるとした.なお,不安定性自体は神経症状発症に,直接関与していないと推定した.

「Ⅳ.自然経過と保存療法」

著者: 小野啓郎

ページ範囲:P.359 - P.360

 腰椎の「安定性」あるいは,「正常の支持性」を定義することははなはだ困難である.複合組織の連結構造からなる対象で,たえず,三次元的に動いているものをとらえて「安定している」と言おうとしても,所詮無謀かもしれない.「不安定性」を「一定限度の応力下において正常でない挙動をする腰椎」と言ってみても似たものであろう.しかし不安定性腰椎は厳然としてわれわれの目の前にあり,患者さんを苦しめることはなはだしいものがある.
 松永(鹿児島大学)と佐藤(福島県立医大)が自然経過の中で不安定腰椎の特徴をとらえようとした.松永は平均8.2年の経過を追えた40症例の変性辷りについて,30%を占める進行例と非進行例を比べて以下の事実を明らかにした.進行を助長する要因として肉体労働があり,当該椎間には著しい狭小化や骨棘形成のないこと,初診時の辷りの程度も20%以下と低い例が圧倒的であったとしている.つまり,辷りの進行に対する抑止機構の働きがない例に増悪がみられるのではないかということである.なお,臨床症状は辷り進行例でも必ずしも悪化を示さないという.

「Ⅴ.展示討論(1)―病態と診断―」

著者: 大井淑雄

ページ範囲:P.360 - P.362

 最近のポスターセッションは以前考えられがちであったような,口演演題の補欠の感じから脱却して,ポスターにふさわしいものが選ばれている.この研究会においても会長がそのような意図の下に選択されたと見えて内容は口演のそれに優るとも劣らぬものが多かった.演者も討論者も熱心で質疑応答も白熱したものであった.何百入も何千人もが坐っている会場で5分とか10分とかの口演をして,その後かなり離れた遠方の場所から相手の顔もよくわからぬぐらいの距離で質問してもなかなか議論はかみ合わない.得てして賛成演説になったり,年上の者が発言することが多かったりしておもしろくないこともある.そのような欠点を補うのにポスター展示に討論を加えるのは賢明である.P1~10までを司会進行係りをつとめ全体の印象とはかかるものであった.腰椎の分離辷りの運動は側方向からの観察のみでは三次元の動きを捉えられない,つまり三つの面での複雑な不安定性を示すという考えは数年前から国際学会などでも常識となっているがその判断の方法としてP1の鈴木(東北大)は同時2方向撮影装置を考案しP2の星島(高知医大)らは回旋不安定性を計測して報告した.加齢による辷りの度合の変化がほとんどなく,辷り分類のI,II度などにより可動域が変りIV度になるとほとんど低下するという結果は納得できるものである.

「Ⅵ.術後の不安定性」

著者: 金田清志

ページ範囲:P.362 - P.363

 演題32は腰椎椎間板ヘルニアの骨形成的椎弓切除(78例),Love法(18例)の平均術後11年の追跡で,X線写真上にて椎間不安定性と,椎間板圧縮と開大,前後方向への辷たりにつき調査し,不安定性の出現を認めなかった.
 演題33はLove法施行後平均6年の87例の検討で,手術椎間に7.4%,上下隣接椎間に3.3%で不安定性がおこっていた.前方固定72例中15例32%にて隣接椎間板に不安定性の出現を認めた.この2題への討論では,術前手術を要するヘルニア例の側面機能写では十分な可動域の得られないことがあり,術前後の機能写での不安定性比較は必ずしも意味がない(岡山大・中原)との指摘もあったが,現時点ではこれに代り得るものはない.脊柱不安定性評価の基準作成にはいくつかの解決されねばならない課題がある.前方固定術後の隣接椎間での不安定性出現に対し,固定椎間にアライメント異常がなかったか(富山医薬大・加藤),千葉大での30年以上経過例で10年以内の早中期例で隣接椎間に不安定性を認めても,その後は不変かrestabilizationの時期をむかえ成績は安定している(千葉大・宮本)という発言があった.

「Ⅶ.後側方固定術」

著者: 竹光義治

ページ範囲:P.363 - P.365

 後側方固定術(以下PLF)は不安定腰椎疾患に対する手術的治療の中で主流をなすものである,本法は,手技も簡単で,除圧範囲に関係なく行うことができ,癒合率も高く,隣接椎間の変性促進も少ないとされている.果たしてそうであろうか.癒合率向上のコツは何か.このセッションでは,本法の適応,成績instrumentation(instr.)の要否,成績等について論じられた.
 42―木下(信州大)は,1970隼以降,腰椎分離辷り症20例に対し,PLF 11例,前方固定術(ASF)8例を行った結果,ASFは殊に辷り高度例では完全固定が困難で,神経除圧ができないことより,根障害が遺残し成績はよくなかったのに対し,PLF群では辷り度の大きい例での神経根障害例でも直視下に対応でき,好成績であった,と報告した.本発表に対し,平林は,演者が行ったASFの成績不良の原因はASFそのものの欠点ではなく,癒合不全を来したためで,再度ASFを行い成功すれば全治した筈,とコメントした.

「Ⅷ.前方固定術」

著者: 平林洌

ページ範囲:P.365 - P.366

 第1席(東海大有馬)は,術前に不安定性(前後屈側面像で辷り率の差と開大度の大なるもの)を示した分離辷り症12例を不安定性のない38例と比較,検討した結果,演者らの整復,固定術はむしろ辷りの整復度やミエロ像の改善などの点で不安定性の強い症例に好成績を得た.骨癒合率もほぼ100%であったことから,instrumentation過剰の現在,演者らの単なる整復,固定法の見直される可きことを強調した.
 第2席(千葉大高橋)は論文別掲.

「Ⅸ.展示討論(2)―臨床経過と治療―」

著者: 玉置哲也

ページ範囲:P.367 - P.368

 今回の研究会の新しい企画の一つとして,展示討論が行われたが,休憩時間を有効に使って充分な討論をという会長の意向を存分に反映し,活発な意見の交換が行われた.
 筆者の担当した8題はいずれも腰椎不安定性に関連した演題であったが,大別して,椎間板ヘルニアに関連するもの(2題),変性ならびに分離腰椎辷り症に関するもの(6題)であった.

「Ⅹ.前方法と後方法の比較」

著者: 河合伸也

ページ範囲:P.369 - P.370

 腰椎に限らず,脊椎椎間の不安定性を評価し,症状との関連を把握することは決して容易なことではない.症例毎に悩みながら判断しているのが現状である.
 症状の発現が椎間の不安定性に基づくと考えられれば,多くの場合手術的に椎間固定術が適用されている.椎間固定術としては前方進入による椎体間固定,後方進入法による後側方固定と椎体間固定の3つの方法が現在主として用いられており,さらにinstrumentationの併用の有無があり,各術式のmodificationも加えると,数多くの方法が考えられる.術式の選択も症例毎に悩みながら決めているのが現状である.

「Ⅺ.Instrumentation(1)―wiringなど―」

著者: 黒川高秀

ページ範囲:P.370 - P.371

 石田(高知医大)は,腰椎分離症に対しsegmental transverse wiringを行い,上・下椎間関節への影響が少ないという長所を強調した.これに対し,橋本(熊本大),山縣(千葉大)らより術式の合理性に賛意が表明されるとともに,接合した分離部への応力集中による鋼線折損や分離再発の懸念が指摘された.また手術手技や神経根除圧効果について多くの質疑応答があったが,この方法の根本的な欠陥は見出されないようであった.
 新井(立川綜合病院)は,腰椎分離すべり症に対する前方固定の骨癒合率を上げるために,前方固定に分離部固定する術式を行った9例の経験から,分離部に骨移植と鋼線締結を併用するBradford法が有用であることを示した.

「Ⅻ.Instrumentation(2)―rod systemなど―」

著者: 原田征行

ページ範囲:P.371 - P.372

 70:Knodt instrumentationを腰椎辷りの矯正や骨癒合するまでの脊柱の安定を目的として使用した.術後1年以上経過した53例につつて経過を調査した.辷りの矯正は辷り率は術前16.1%が術直後平均11.5%が調査時には15.1%となり術後の経過とともに辷りの戻りがあった.全例に骨移植を行い偽関節の発生が1例のみであった。合併症としてhookによる刺激症状が15例にあり,hook抜去した.
 フロアからKnodt rod使用のさい矯正力は後方を開大するために局所的には後彎形成となること,罹患椎をはさんで3椎体の固定となること,今後も使用するinstrumentationかの質問があった.これに対して,局所の後彎は腰椎では非生理的であり問題点であること,骨癒合に対しての補助手段としては評価できるし今後も使用したいと述べた.

「XⅢ.展示討論(3)―Instrumentation―」

著者: 山本博司

ページ範囲:P.373 - P.374

 腰椎辷り症に対して,様々なpedicular screwingが用いられるようになっている.しかし,screwやそれを連結するシステムも様々であり,適応や手技もいろいろである.安全性,確実性や意義の面で問題も多いようである.
 菅(菅整形外科)は,経皮的pedicle screw tractionによって辷りの整復を試みているが,安全性や臨床的意義の点で問題点が多い.脊損に対するexternal fixationとしてのpedicle screwingもあるが,辷り症は脊損のような緊急性や救難性とは違ったオーダーの疾患である.より慎重な検討を望みたい.

「XⅣ.Instrumentation(3)―pedicular screwingなど―」

著者: 片岡治

ページ範囲:P.374 - P.376

 pedicular screw system(PSS)は現在のspinal instrumentation surgeryにおける最も興味をもたれているテーマであるだけに2つのセッションにわたり15題もの演題が収録されている.
 76席の朝妻(Vermont大)らはブタ腰仙椎を用いて各種instrumentationによる固定後の安定性を各椎節ごとに計測して比較検討している.その結果,Harrington sacral bar systemはPSSに比べて約1/2の安定性しかなく,他方,各種のPSSはいずれも良好な安定性をえたと結論している(掲載論文).

「XⅤ.Instrumentation(4)―pedicular screwingなど―」

著者: 小野村敏信

ページ範囲:P.376 - P.377

 pedicular screw-plate法は腰椎後方固定に際して最近用いられることの多くなったinstrumentation systemであり,本研究会でも少なからぬ数の演者により本法の経験が述べられた.このsessionでは別掲の7題の発表があったが,その中から共通の問題点のいくつかを拾い出してみたい.
 まずこの方法の利点は椎弓根を通して刺入した螺子によりいくつかの椎体を保持し,これらを適当な彎曲をつけたplateによって連結固定することにより,ある程度の整復や矯正などを加えながら椎節間固定を行いうることである.また椎弓根を利用することにより椎弓切除を行った高位にも適用できるために,神経除圧後の後方固定を最小限の範囲にとどめることができること,強固な内固定により術後の外固定の省略や早期離床を目指しうることも大きな特徴である.各演者はそれぞれ腰椎のすべり症,変性疾患など腰椎に不安定性をもつ患者に,種々の方式によるpedicular screwを用いて固定を行った結果を報告した.その成績はいずれも「ほぼ」満足であったとされるが,予期に反した経過や合併症もみられている.すなわち術後経過中にscrewの折損が5乃至20%の症例におこり,術直後に得られていた整復や椎間腔拡大について矯正損失が少なからずみられたことには注意すべきである.

論文

全腰椎における三次元動態解析

著者: 山元功 ,   金田清志 ,  

ページ範囲:P.379 - P.386

 抄録:〈目的〉腰椎不安定性評価および定量化のために,基礎となる全腰椎の三次元的な生理的動態を解明した.〈対象〉10体の腰仙椎を含むヒト新鮮屍体全腰椎.4体は腸腰靱帯を持ち,腸腰靱帯の腰仙部動態に及ぼす影響についても解析した.〈方法〉検体に屈曲,伸展,両回旋,両側屈の最大10N-mの純粋なモーメントを加え,stereophotogrammetry法およびcomputer演算処理により各椎体の三次元動態を求めた.〈結果〉解析結果より,全腰椎の屈曲,伸展,回旋,側屈における各椎間動態値をmain motionとcoupling motionについて提示した.coupling motionでは,回旋時,随伴する側屈の方向がL4/5を境に上位椎間と下位椎間で異なった.側屈時,随伴する回旋の方向は側屈荷重と反対でL4/5で最大であった.腸腰靱帯は腰仙部の全ての動態に変化を与えた.側屈が最も影響を受け,前屈もその影響が大きく,回旋は最も影響が少なかった.

腰椎分離・すべり症,変性すべり症における回旋不安定性について―2方向同時X線撮影法を用いて

著者: 三村雅也 ,   守屋秀繁 ,   北原宏 ,   高橋和久 ,   山縣正庸 ,   村上正純 ,   高田啓一 ,   宮本和寿 ,   玉木保

ページ範囲:P.387 - P.392

 抄録:腰椎回旋不安定性の病態を解明することを目的として,健常成人24例,腰椎分離・すべり症21例,変性すべり症29例の腰椎回旋運動を,2方向同時X線撮影法による3次元解析装置を用いて解析した一罹患椎間の%回旋可動域の平均は,正常群のL4/5,5/S椎間の平均が約22%だったのに対し,分離症で約44%,分離すべり症で約43%,変性すべり症で約34%であり,変性すべり症で小さいが,いずれも正常群に比べ有意に増大していた.また,腰椎分離・すべり症では前後屈不安定性の大きいものほど回旋不安定性も大きくなっていたのに対し,変性すべり症では前後動揺性の大きいものほど回旋不安定性も大きいという関係を示した.以上,腰椎分離・すべり症,変性すべり症における回旋不安定性の存在を明らかにし,その病態を考察した.

腰椎辷り症における椎体の回旋不安定性

著者: 星島一夫 ,   山本博司 ,   谷俊一 ,   上岡禎彦 ,   山下弘

ページ範囲:P.393 - P.398

 抄録:155例の腰椎分離辷り症,変性辷り症について腰椎動態単純X線写真によって椎体の回旋を計測する方法を開発した.計測の結果,回旋不安定性は腰椎辷り症のL3/4間にもっとも多く,L5/Sでは回旋はほとんど認められなかった,また屈曲位で最大となる傾向にあった.回旋度の大きさと辷り率の変化とは有意な相関がなかった.各椎間レベルでの差は,立体的な椎間関節の形態や腸腰靱帯や,L3への広背筋腰部線維などの付着などの構築上の差異によるものが大きいと思われた.CT写真によって計測された椎間関節角度の左右差は,回旋度とは相関しなかった.神経症状など臨床症状の発現について,回旋不安定性を示す椎間数と症状の間に有意な関連を認めた.以上より,椎体の異常回旋を現象としてのみでなく,辷り症の病態解明や適切な治療法の選択に反映すべきと考えられた.

腰椎変性すべり症の症状発現機序と治療法の選択

著者: 里見和彦 ,   平林洌 ,   藤村祥一 ,   戸山芳昭 ,   朝妻孝仁 ,   小柳貴裕 ,   早川武憲 ,   鎌田修博 ,   金子修

ページ範囲:P.399 - P.406

 抄録:腰椎変性すべり症(DS)63例の術前ミエログラフィー,CTM,ディスコグラフィー,CTDを検討し,DSの症状発生機序につき検討した.その結果,ミエログラム所見を3段階に,CTM所見を4段階に分類した.すべりの初期には,椎間不安定性による腰痛と,すべり椎の前方偏位による歩行時の下肢痛が出現する(CTM-Stage 1).すべりの進行にともない間欠性破行を呈するようになるが(CTM-Stage 2),これまでの時期には,治療法としてすべりの整復と固定のできる腰椎前方固定術が最適である.ミエログラムで完全狭窄像を呈するGrade 3になると,安静時でも下肢症状が見られるようになる.しかし,CTM上はすべり椎の下関節突起の関与のみの例があり,年齢が65歳以下であれば前方法の適応となる(CTM-Stage 3).一方,すべりの下位椎の上関節突起の関与が強くなった例では(CTM-Stage 4),後方除圧術が必要となる.

腰椎変性側彎症の病態と神経障害発現に関する臨床的検討

著者: 戸山芳昭 ,   中村俊康 ,   依光悦郎 ,   塩尻邦彦 ,   赤坂勁二郎 ,   平林洌 ,   藤村祥一 ,   里見和彦

ページ範囲:P.407 - P.416

 抄録:馬尾・神経根障害を伴う腰椎変性側彎症(DLS)33例を対象に,側彎変形や神経障害発現の病態について検討した.DLSについては,腰椎部における椎間板変性を基盤に生じたCobb 10°以上の症候性側彎変形と定義し,論じるべきことを述べた.DLSは,その変形の形態と神経障害発現の病態から3群に大別された.Type-Iは,L4-L5の椎間板楔状化とL3-L4の側方すべり,その上位に軽度側彎を認める変形で,L4-L5凹側部における神経根障害例が多かった.Type-IIは,中位腰椎部の多椎間板変性に基づく側彎変形で,椎体の回旋による馬尾障害例が多く,Type-IIIはその他型であった.DLSに伴う神経障害発現の病態は,①椎間板楔状化凹側部における神経根障害,②側方すべり椎による馬尾・神経根障害,③椎体回旋に伴う椎間関節亜脱臼による馬尾.神経根障害であった.以上より,DLSを腰部脊柱管狭窄症の中で一つの病態を成す疾患として分類すべきことを提唱した.

腰椎変性辷り症の発生機序について

著者: 小田裕胤 ,   河合伸也 ,   城戸研二 ,   田口敏彦 ,   伊原公一郎 ,   芦田一郎 ,   新庄信英

ページ範囲:P.417 - P.424

 抄録:腰椎変性辷り症のX線所見では,辷り椎の椎弓角の水平化とともに,下位椎となす椎間関節の矢状化,さらに関節裂隙の狭小,硬化および頭尾側や内外側への著しい増殖性変化など椎間関節を含む後方要素に特徴的所見をみる.かかる後方要素の変性辷り発生に対する関与を検索する目的で,50歳以下の非辷り例のX線学的長期自然経過を調査した.121例の平均19.3年の調査結果から,新たな変性辷りの発生は22例に認められ,女性17例,L420例と,女性のL4に好発していた.発生因子を分析すると変性辷りは椎間関節の形態の安定したX型には1例も発生せず,全て矢状化したM型,W型に認められさらに椎弓角,椎間関節裂隙角とも深く相関することが統計学的にも確認された.そこで椎間関節の形態がM型かW型であり,椎弓角110°以上,椎間関節裂隙角105°以上が変性辷り発生のrisk factorといえ,腰椎変性辷りの発生は予見しうるといえた.

腰椎変性辷り症の自然経過―辷りの発生と進行の機序を中心として

著者: 松永俊二 ,   酒匂崇 ,   森園良幸 ,   武富栄二 ,   増田明敏 ,   山口正男 ,   徐郁峰

ページ範囲:P.425 - P.432

 抄録:腰椎変性辷り症の自然経過を知ることを目的として5年以上直接観察ができた40症例について,主として辷りの発生機序と辷りの進行の有無について臨床的およびX線学的に検討した.辷りの進行は12例(3o%)に認められ,辷り進行関連因子として辷り進行患者の75%が重労働に従事しており,辷り腰椎部への力学的負荷の関与が示唆された.X線学的には椎間腔狭小や椎体の骨棘形成,軟骨下硬化像,靱帯骨化などの認められた症例では辷りは進行しておらず,脊椎におけるrestabilizationの機序が示唆された.また,辷りの発生因子として本症ではgeneral joint laxityの認められるものが多く,このような全身的因子も本症の発生の一因ではないかと考えられた.臨床症状と辷りの程度および進行の有無とは相関がみられず,生体のrestabilizationの機序を含めた本症の自然経過をよく考慮したうえで本症の治療方針を決定すべきであると考える.

不安定腰椎の自然経過―10年以上経過例について

著者: 佐藤日出夫 ,   菊地臣一

ページ範囲:P.433 - P.438

 抄録:腰椎6方向撮影3720例中,不安定性を713例に認めた.このうち,10年以上経過を観察し得た100例について検討を行った.結果は以下の通りであった.
 1)脊椎症ではADL支障例の大部分は腰下肢痛を愁訴としており,その原因は不安定性とは相関がなく,初診時の外側陥凹前後径の狭小化に関連性を認めた.

腰部脊柱管狭窄症に対する拡大開窓術後の不安定性について

著者: 大川淳 ,   山浦伊裟吉 ,   黒佐義郎 ,   宮沢あかね ,   中尾清孝 ,   中井修

ページ範囲:P.439 - P.447

 抄録:中心性狭窄を呈する腰部脊柱管狭窄症30例56椎間に対する拡大開窓術後,長期経過観察(平均5年)で12例13椎間に不安定性が認められ,うち2例は短期成績優から不可に悪化した.そこで,術前X線立位2方向像において術後の不安定性に関与する因子についてretrospectiveに検討した.その結果,後方・側方すべり,椎間板の側方模状化などが危険因子であり,逆に下関節突起の下位椎弓へのくい込みや椎弓根と下位上関節突起尖端との接触,kissing spineなどは安定化に寄与していることが分かった.術後これらの部分は椎間板の狭小化とともに骨硬化・肥大を呈することが多く,椎間板機能が破綻した場合,後方要素が圧迫荷重の一部を代償性に負荷し,新たなthree-joint complexを形成することが推定された.術前よりこのthree-joint complexが破綻しているか,除圧によりこれを保持しえない場合は固定術併用の適応と考えられる.

部分および全椎弓切除術後の腰椎不安定性

著者: 飯田康夫 ,   片岡治 ,   庄智矢 ,   鷲見正敏 ,   広瀬哲司 ,   別所康生 ,   小林大介

ページ範囲:P.449 - P.453

 抄録:40歳以上で部分または広範椎弓切除術を施行した46例を対象に,X線像上の不安定性と臨床症状との比較検討を行った.60歳未満の広範椎弓切除術では,部分切除術よりも,手術椎間の不安定性(特にすべり)が発生または進行するものが多い.この不安定性の発生には,全椎弓,棘突起,椎間関節,黄色靱帯などの後方要素の切除による影響が大きいものと考えられた.60歳未満と60歳以上,また術後経過期間3年未満と3年以上に分けた年齢と術後経過期間との両群間には,不安定率に有意差はみられなかった.臨床症状との比較では,不安定例にやや悪化が多いが明らかな差は認められなかった.術後の症状の悪化は,不安定性のみならす,瘢痕組織などの他の因子の影響を受けるためと考えられた.

Degenerative Spondylolisthetic Stenosisに対して行った手術的治療の検討

著者: 辻充男 ,   栗原章 ,   裏辻雅章 ,   正田悦朗 ,   水野敏行

ページ範囲:P.455 - P.461

 抄録:Degenerative spondyloisthetic stenosisに対して行った広範囲椎弓切除術の成績と,術前後のX線像の変化につき検討を行った.固定術を併用した群の成績がやや優れているが,非併用群でもGood 76%,Fair 20%,Poor 4%であり,良好な結果を得ていた.非併用群では術後にすべりの増強することがあるが,臨床症状とは直接の関連はなく,総合成績に影響していなかった.術後成績に影響する因子は,患者の年齢および罹病期間であった.今回の検討から患者が高齢であることを考慮すると,手術時間も短く,術中の出血量も少ない広範囲椎弓切除術は,これに適した手術法である.しかし,良好な成績を持続させるためには術後の躯幹筋訓練と,3~4ヵ月間の体幹装具の確実な装着が必要である.なお,症例によっては一次的に固定術の併用が必要となる場合もある.

加齢的要因による腰部脊柱管狭窄状態に対する固定術の意義に関する考察(後方法について)

著者: 清水敬親 ,   森隆之 ,   塩島和弘 ,   斯波俊祐 ,   堺堀洋治 ,   石井秀幸 ,   宇田川英一 ,   柘植和郎

ページ範囲:P.463 - P.471

 抄録:加齢的要因による腰部脊柱管狭窄状態(LSCS)に対する観血的治療を企図するにあたって後方術式に議論を限定した場合,我々は“除圧”と“固定”という2つの異なった概念をもって対処せねばならない.そこで,(1)PGE1投与後歩行負荷試験,(2)画像診断の再評価,(3)術中髄液圧モニター,(4)髄液ガス分析,の4調査結果からまずLSCSの病態を再考し適正な除圧法を検討した上で,各々に見合う固定術の必要性につき考察した.その結果,病態改善には拍動性髄液流を狭窄部末梢まで行きわたらせることが必要と推察され,そのために必要な除圧範囲は変性すべり症と脊椎症では異なること,症例によってはdistractionも除圧の一要素となりえることが明らかとなった.固定術は各除圧手技によって得られた神経周囲環境維持のために必要と考えられ,脊椎症に比し変性すべり症の場合に固定術を要すことが多く,distractionも考慮すべきと考えられた.

腰椎変性すべり症に対する前方固定術の治療成績について

著者: 高橋和久 ,   北原宏 ,   山縣正庸 ,   村上正純 ,   高田啓一 ,   宮本和寿 ,   三村雅也 ,   高橋弦 ,   李泰鉉 ,   守屋秀繁

ページ範囲:P.473 - P.478

 抄録:腰椎変性すべり症に対する前方固定術施行症例の長期成績をもとにその生涯的経過を検討することを目的とした.対象は千葉大学整形外科にて腰椎前方固定術を受けた腰椎変性すべり症,男5例,女34例の合計39例である.手術時年齢は34歳より74歳,平均51歳である.術後経過観察期間は6ヵ月から29年10ヵ月,平均12年7ヵ月である.本手術法施行後の長期経過についてJOA ScoreをもとにKaplan-Meier法による生存率曲線14を用いた検討を行った.また,変性すべり症の病態解明を目的として,22例の変性すべり症例につき,すべり高位でのCT撮影を行い椎体の回旋変形につき検討した.その結果,1)JOA Score 25点以上の成績良好例の割合は,術後10年で76%,20年で60%,30年で52%であった.2)手術時年齢別にみると,各年齢群とも65歳前後までは良好な成績が期待できる.3)腰椎変性すべり症の症状発現には前後動揺性に加え,回旋不安定性の関与が示唆された.

腰椎前方固定術におけるA-O screwing and wiring法の固定効果に関する実験的研究

著者: 大熊哲夫 ,   ,   ,   平林洌 ,   若野紘一 ,   里見和彦

ページ範囲:P.479 - P.486

 抄録:腰椎前方固定術におけるA-Oscrewing and wiring法をSteffee screw and plate法と比較し,その固定効果を比較検討した.9個の人新鮮靱帯付腰椎標本を用い,この2法を第4-5腰椎椎問に順次施行し,前後屈,左右側屈,左右回旋のモーメントを標本の頂椎に加え,それぞれのstageで固定椎間および固定隣接椎間の可動域をSelspot II systemで記録した.後屈時には骨移植のみで可動域は著明に減少し,前方からのscrewing and wiringでの固定効果は本実験が急性実験のため明らかでなかった.前屈時には後方からのpedicular screwing and wiringで固定効果がみられ一側よりも両側の方が効果が大であった.側屈は3カ所のscrewing and wiringで固定効果が認められたが回旋に対しては効果が認められなかった.Sfeffee法はいずれのモーメントに対しても最も強い固定効果を示したがA-O screwing and wiring法も満足すべき固定力を示し,強固な矯正,整復力を要する症例を除いた大部分の症例に適応されうる有効な内固定法といえた.

腰椎変性すべり症に対する後方進入椎体間固定術(PLIF)―移植骨のcollapseとその対策について

著者: 山本利美雄 ,   門脇徹 ,   太田信彦 ,   大和田哲雄

ページ範囲:P.487 - P.494

 抄録:変性すべり症に対して,充分な除圧と同時固定が可能な手術法であるとの判断で,ClowardのPosterior Lumbar Interbody Fusion(後方進入椎体間固定術・PLIF)を行った.67例中64例の結果を調査した.
 このうち,27例にはPLIFを単独で行ったが,残り37例には三種類の内固定を追加した.棘突起間固定(16例),Roy-Camile plate(13例),Steffee plate(8例)である.

腰椎分離症に対するSegmental Transverse Wiring法

著者: 石田健司 ,   山本博司 ,   谷俊一 ,   上岡禎彦

ページ範囲:P.495 - P.499

 抄録:腰椎分離症に対する治療法は諸々認められるが,分離症が10~20歳代の若年齢層に多くみられるので,腰椎後方構築性およびその運動機能を温存する方法として,我々は障害椎のみで分離部を修復できるSegmental Transverse Wiring法を行っている.昭和57年5月より,保存療法に抵抗する腰椎分離症および軽度の辷りを有する分離症に対し,本法を行って来たが,今回少なくとも術後1年以上経過を追跡し得た27例について検討した.術後臨床症状では27例中腰痛改善群25例,不変群2例で悪化群はみられなかった.骨癒合では,Bilateral union 23例,Unilateral union 1例,Non-union 3例であった.第5腰椎分離症に本法を行った25症例の術前後の上下椎間可動域には,有意な差は認められなかった.Segmental Transverse Wiring法は,後方構築物を温存しながら,障害椎のみのSegmentすなわち分離部のみで処理できるという特徴があり,各腰椎椎間関節の運動機能に影響を与えない良い手術法であると思われた.

不安定腰椎の予防に対する人工靱帯による靱帯再建術

著者: 広藤栄一 ,   田中清介 ,   中野彰夫

ページ範囲:P.501 - P.506

 抄録:椎弓切除術後の罹患椎に運動性を残し,かつ不安定性を予防するために,「ハ」の字型椎弓切除とscaffold型ポリエステル製入工靱帯による靱帯再建術を試みた.術式を紹介すると共に短期ではあるか術後成績を検討することにした.対象は変性型腰部脊柱管狭窄症で辷りや不安定性の軽度な13例である.最長8カ月の経過観察では,臨床症状の改善もよく,術後に辷りや不安定性の出現や増強はみられす,切除椎弓部での中間位での前彎度の変化も前後屈による可動域の変化も軽度であり,合併症もなかった.以上より,術後経過は短いが,不安定腰椎の予防としての椎弓切除後の人工靱帯による靱帯再建術は容易であり,かつ良い成績が得られていることより,現段階では有用な術式と思われる.

不安定性腰椎に対する北大式後方instrumentationの固定性に関する検討

著者: 藤谷正紀 ,   斉田通則 ,   金田清志 ,   樋口政法

ページ範囲:P.508 - P.514

 抄録:1978年以来当院においてcombined systemの北大式instrumentation使用による腰椎後側方固定手術例は260例である.その骨癒合率は96.2%であり,安定した成績を得ている.最近の34例に対して術後4週毎にX線機能撮影を行い可動性の有無を検討した.術後骨癒合完成の6カ月頃まで全く可動性を認めず固定性の良好な例が24例,術後一時可動性を認めるも6ヵ月以内に固定した例が4例,術後1年以内に固定した例が3例,instrumentationの締め直しを必要とした例が2例,術後1年以上経過しても可動性を認めた例が1例であった.不安定性の強い腰椎変性辷り症を含め1椎間固定の25例中21例は術後全く可動性を認めないまま固定が完了した.1椎間固定に対するcombined systemの北大式instrumentationの有効性が確かめられた.術後のfusion area lordosisは1椎間が10.8°,2椎間が18.2°であり,術後一時的に可動性を認めた例を含め北大式instrumentationはfusion area lordosisの保持に関しても有効であった.

腰仙椎instrumentationのstabilityに関する実験的研究

著者: 朝妻孝仁 ,   ,   ,   鈴木信正 ,   平林洌

ページ範囲:P.515 - P.525

 抄録:ブタ腰仙椎を用いて各種instrumentationによる固定後の各椎間の可動域を計測,比較,検討した.使用したinstrumentationは,Harrington sacral bar system(HR),Luque Galveston system(LQ),Steffee plate(ST),Vermont Fixateuer(VT),Zielke posterior system(ZL),Zi-Lu-Ki(ZLK)の6種類である.各instrumentationによりL5/6,L6/7,L7/Slの3椎間を固定した後,実験用フレームに標本を設置し,前屈,後屈,左右側屈,両回旋の各torqueを段階的に加えた.stereophotogrammetry systemを用いて,各椎間の可動域を計測したところ,ST,VT,ZL,ZLKのpedicle screw systemは,HR,LQに比して優れた固定力を示した.また固定後の各椎間の可動域は,一般的に固定範囲の中央の椎間(L6/7)で最も小さかった.

重度脊椎すべり症に対する後方からの整復固定術とその問題点

著者: 宮地芳樹 ,   小野村敏信 ,   渡辺秀男 ,   田中真一郎 ,   井上隆 ,   小林一朗

ページ範囲:P.527 - P.535

 抄録:脊椎下垂症をふくむMeyerding分類III°以上の重度脊椎すべり症4例に対して,後方より進入し一期的に整復操作を行いpedicular screwとplateによる固定と骨移植を行った.すべりは57~100%の改善が認められ,特に下垂症の2例ではほぼ完全な整復が得られ,すべりの再発もなく強固な骨癒合が得られた.術前の局所後彎や姿勢異常,歩容異常,痙痛や直腸膀胱障害などに術後著明な改善が得られた.下垂症の2例では術後,一側第5腰神経根の麻痺症状が出現したが,2例とも現在足関節の背屈力の改善が見られている.
 重度脊椎すべり症においては良い整復位のもとに確実な骨癒合を得る事が大切であり,なかでも成長期においては後彎の矯正が重要である.しかし先天性素因を基盤とする下垂症においては整復操作もふくめて手術侵襲は大きなものにならざるを得ない.特にこの整復により下位腰神経根は解剖学的に走行が大きく変化するため,その障害発生の予防には充分注意する必要がある.

腰椎異常動揺性を認めない不安定性腰椎に対する腰椎instrumentationの検討―後方除圧術後の再手術例に関して

著者: 佐野茂夫 ,   横倉聡 ,   永田善郎 ,   尹政善

ページ範囲:P.537 - P.545

 抄録:1.不安定性を示唆する臨床症状としてpainful catchとapprehensionを仮定し,不安定性腰椎を腰椎異常動揺性の側面と,臨床症状の側面とから包括的に定義した.
 2.腰椎異常動揺性を認めない不安定性腰椎の病態と腰椎instrumentationの効果につき考察した.

腰椎辷り症に対するspinal plate & pedicular screwing法―術前・術後の不安定性の検討

著者: 上岡禎彦 ,   山本博司 ,   谷俊一 ,   星島一夫 ,   山口龍彦

ページ範囲:P.547 - P.553

 抄録:腰椎辷り症に対して,我々が施行してきたspinal plate & pedicular screwing法が隣接残存椎間にいかなる影響を及ぼすのか,術前・術後の腰椎不安定性について検討した.術後少なくとも7ヵ月以上追跡調査できた腰椎分離辷り症13例,腰椎変性辷り症13例の計26症例を対象とし,術前・術後腰椎R. O. M.の変化,各残存椎間については,その可動域の変化,椎体前方・後方辷り,回旋等の不安定性出現の有無につき検討した.また,固定椎角および辷りの整復度が上下隣接残存椎間に及ぼす影響や,術前・術後の固定椎間板高についても検討した.椎間固定術は,当然上下隣接残存椎間に影響を及ぼしてくるが,椎間可動域の代償機能は辷りの整復度よりも,むしろ固定椎角に影響を受けていた.生理的前彎位に固定することが最も重要で,そのためにはP. L. I. F.移植骨の圧潰予防や,獲得alignmentを維持するための工夫が重要と思われた.

神経根障害を伴う腰椎分離辷り症―除圧とTranspedicular Screw法による脊柱再建

著者: 鐙邦芳 ,   金田清志 ,   倉上親治 ,   橋本友幸 ,   山元功 ,   白土修 ,   浅野聡 ,   畑山明広 ,   伊藤肇 ,   小熊忠教 ,   佐藤栄修

ページ範囲:P.555 - P.562

 抄録:神経根障害を伴う腰椎分離辷り症49例に対し,分離部における神経根除圧とSteffee法を主とするtranspedicular screw法による椎間固定を行った.術前の放射線学的検査では,分離部中枢端のbony ragged edgeやfibrocartilagenous massによる椎間孔の狭窄が示された.手術により,93%の高い骨癒合と著明な臨床症状の改善が得られた.特に,術前の自覚症状として頻度の高かった下肢痛や間性跛行は,殆どの例で消失した.transpedicular instrumentationによる脊椎配列の変化のため,椎体後側方からの骨棘や膨隆椎間板が新たな神経圧迫因子となり,2例の神経根合併症が生じた.instrumentationは椎間孔外側までの充分な除圧後に行われるべきであるが,必要によっては,下位椎上関節突起の上部や椎体後側方の骨棘も切除すべきである.

Pedicle Screw Plating法の問題点とその対策

著者: 松崎浩巳 ,   徳橋泰明 ,   松本不二生 ,   星野雅洋 ,   木内哲也 ,   鳥山貞宜

ページ範囲:P.563 - P.570

 抄録:腰痛,下肢神経症状を伴うすべり症など腰椎疾患57例に対して,除圧術,後側方固定術に加え,Pedicle Screw Plating(PSP)法にてspinal instrumentationを施行し,PSP法に伴う種々の問題点について検討した.神経障害合併は6例(11%)であり,そのうち恒常的障害は知覚障害の2例(3.5%)ですべて初期の症例であった.スクリュー折損は294本中17本(5.7%),12症例(21%)に認められ,1椎問例では固定尾側部に発生する傾向にあった.すべり症の整復率は術直後平均53%が1年後に35%まで戻り現象が認められた.しかし,distractionを加えないためスリップアングルは良好に維持されていた.スクリューの折損防止には材質の改善ならびにプレート,ナット,スクリューが全方位的に固定されるよう改良すべきである.PSP法はスクリュー刺入に習熟すれば,除圧部位にrigidな固定ができ,アライメントが矯正できる有効なspinal instrumentationである.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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