icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科26巻11号

1991年11月発行

雑誌目次

視座

足持ち3年,巻き8年

著者: 長尾悌夫

ページ範囲:P.1227 - P.1227

 私が整形外科を志した時代には“足持ち3年,巻き8年”とよく言われた.言うまでもなく“桃栗3年,柿8年”をもじったもので,一人前の整形外科医になるには,ギプス巻きや手術時の足持ちを3年,ギプス巻きに至っては8年の研鑽を必要とするという意味であり,足持ちとギプス巻きの重要さを具現した言葉である.
 学生の頃,登山中転倒して腓骨骨折をおこした私は,帰京後某先輩にギプスを巻いていただいた.そのギプスは学生の私が見ても実に見事なものだったが,切割された時,割面を見てその厚みの配分の妙にまた驚き,私はそれを保存して,整形外科に入局してからも時々出してきては自分のギプス巻きの未熟さの反省材料とした.ohne Gips keine Orthopädieと言われた時代の先輩達のギプスは見事なものが多かった.整形外科の進歩と共に足持ちもギプス巻きも様変りし,創外固定の出現と共に架橋ギプスはほとんど姿を消したし,各種装具の開発と共にギプスを巻く機会も確実に減った.最近はハッと息をのむような素晴しいギプスには滅多にお目にかかれない.足持ちも手術台が代行してくれることが多くなってきたが,足持ち3年,巻き8年の精神は変ってはならないと思っている.

論述

皮下に発生した悪性軟部腫瘍―治療上の問題点

著者: 前田公 ,   平野徹 ,   岩崎勝郎 ,   神代敏之 ,   林広三郎 ,   吉良秀秋

ページ範囲:P.1228 - P.1233

 抄録:皮下に発生した悪性軟部腫瘍11例の臨床経過および治療結果から,その問題点を調べ,それに対してどのように対処すべきかについて検討した.その結果,全症例が初回治療で不完全な外科的切除を受けていたことが解った,この様な不完全な初回治療が施行された場合でも,1カ月以内に適切な追加治療が行われた7例では局所再発は見られなかった.しかし4カ月以上放置された4症例は,すべて局所再発を起こした.このうち筋層内へ浸潤していた2例の再発腫瘍は追加治療にも拘らず,再び局所再発した.以上,皮下腫瘍の初回治療に当たっては,常に悪性の可能性を念頭に置き安易な切除は慎むべきであり,また初回治療で不完全な摘出が行われた場合,速やかな追加治療の必要性が示唆された.

dysplasia epiphysealis capitis femorisについて―X線学的特徴を中心に

著者: 杉基嗣 ,   開地逸朗 ,   国司善彦

ページ範囲:P.1235 - P.1243

 抄録:dysplasia epiphysealis capitis femoris(以下,DECF)とペルテス病との鑑別のため4歳以下で,大腿骨中枢骨端核の変形を有する32例を対象としてX線学的検討を行った.DECFと診断したのは18例24股で,ペルテス病は22例23股で,両疾患の合併は両側骨端核に両疾患が同時に見られたのが8例,同一骨端核にDECFが先行したのち,ペルテス病を発症したのは1例であった.DECFのX線学的特徴は,初期には顆粒状の核や骨端核基底部に広がる濃縮像であり,経過とともに核表面の凹凸不整像や窪みなどを経て半球状へと短期間に改善していた.一方,ペルテス病群では若年例でも年長例と同様な経過を辿っており,両名は異なった範疇の疾患と考えられた.DECFは予後良好な疾患であり,前述したX線所見により鑑別することが治療上重要と考えられた.DECF例では核出現の遅延が見られ,MRIによる検索でも核の未熟性が推測され,DECFの背景として骨成熟の遅れが関与しているのではないかと推測された.

下位腰椎損傷に対する手術治療の検討

著者: 浅野聡 ,   金田清志 ,   佐藤栄修 ,   鐙邦芳 ,   橋本友幸 ,   藤谷正紀

ページ範囲:P.1245 - P.1251

 抄録:比較的まれである第4腰椎以下の下位腰椎損傷に対する手術治療の特徴について検討した.手術施行後,1年以上の経過観察が可能であった24例(男13,女11)を対象とした.受傷時年齢は平均34歳,経過観察期間は平均4年10カ月であった.損傷部位はL4が18例,L5が4例,L5/6が2例で,損傷タイプは破裂骨折が22例と大多数を占めた.馬尾障害を11例,神経根障害を9例に認めた.手術は前方法8例,後方法12例,前方+後方法4例で,2例を除きspinal instrumentationを併用した.神経障害は1例を除いて改善した.下位腰椎損傷に伴う神経障害は後方除圧が可能であった.骨癒合が得られたのは19例(79%)で,偽関節はすべて前方手術例であった.transpedicular fixation systemを併用した後側方固定は,最小限の固定範囲で全例に骨癒合が得られ,生理的な腰椎前彎も保持できた.下位腰椎損傷には,transpedicular fixation systemを併用した後方除圧固定が有用である.

頸椎椎間板ヘルニアにおける臨床症状と手術成績の検討

著者: 吉田裕俊 ,   四宮謙一 ,   岡本昭彦 ,   松岡正 ,   古屋光太郎 ,   山浦伊裟吉 ,   佐藤浩一

ページ範囲:P.1253 - P.1258

 抄録:当科において頸椎椎間板ヘルニアの診断のもとに1椎間前方固定術を施行した症例は44例である.そのうち脊髄症例28例と神経根症状を呈した例16例の画像診断上の違いを,①脊柱管前後径,②罹患椎間可動域,③CTDにおけるヘルニアの線維輪穿破位置とヘルニア塊の脱出方向,④CTMにおける脊髄の圧迫,回旋変位および変形,root sleeveの圧迫の有無,の4つの項目について検討した.次に脊髄症を呈した28例を,初発症状の発現の仕方により,上肢初発群16例,下肢初発群7例,上下肢同時初発群5例の3群に分け,おのおのについて上肢機能,下肢膀胱機能の術前,術後点数,改善率について検討した.その結果,初発症状の出現の仕方により上肢機能,下肢膀胱機能の術前,術後点数,改善率に特徴的な違いが認められ,初発症状が脊髄の障害部位と障害程度を推測するうえで重要な意味を持つことを示した.

高位脛骨骨切り術の治療成績と軟骨下骨drilling併用の有無との関連について

著者: 石田博英 ,   松野誠夫 ,   大関覚 ,   小熊忠教 ,   葛城良成 ,   村元敏明 ,   平賀博明 ,   八木知徳

ページ範囲:P.1259 - P.1265

 抄録:高位脛骨骨切り術の治療成績の向上を目的としてdrillingの併用を試みた.昭和61年9月より昭和63年1月までにHTOにdrillingを伴用した13膝のうち11膝を対象症例とした.手術時年齢は平均67.0歳,経過観察期間は平均2年9カ月であった.また同時期にdrillingを併用せずにHTOのみを行った症例10膝を対照群とした.三大学試案による膝関節機能評価,X線計測によるFTA,内側関節裂隙の変化について調査を行ったが,結果はいずれも両群間で有意差は認めなかった.drillingを併用した症例における成績不良例では,骨切り角度が不足していた.drillingの併用は高位脛骨骨切り術の治療成績を向上させる要因になっているとは言い難く,手術時に理想的な骨切りが行われたならば,HTOのみでも良好な成績を得ることができると思われた.

人工股関節置換手術に対する骨萎縮性変化の影響

著者: 中島秀人 ,   原田育生 ,   山沢猛 ,   長浜彰宣 ,   小田孝明 ,   下村裕

ページ範囲:P.1267 - P.1272

 抄録:二次性変股症の診断にて人工股関節置換手術を施行された50歳以上の女性47名55股関節を対象に,骨萎縮性変化と術後成績との関連について検討した.全身性の評価にはSinghの分類,慈大式分類,Barnett & Nordin法による椎体変形度,MD法による第2中手骨骨量度を用い,骨粗鬆化の認められる群と認められない群に分類し比較した.また局所的な評価としてfemoral indexならびにclear zoneの出現頻度を調査した.JOA scoreでは骨粗鬆化の認められる群の方が認められない群に比し,有意に低値を示し,各項目別では歩行能力で両群間に有意差を認めた.また骨粗鬆化の認められる群における術側のfemoral indexは,術前に比し術後に有意に高値を示し,stress shieldingによる骨萎縮が起こりやすいことが示唆された.clear zoneの発生は両群間で明らかな差を認めず,clear zone発生の原因には全身性,局所性の骨萎縮の存在が関与している可能性は低いと考えられた.

手術手技シリーズ 関節の手術<下肢>

先天性内反足に対する軟部組織解離術

著者: 加藤哲也

ページ範囲:P.1273 - P.1285

はじめに
 先天性内反足が整形外科領域における難治性疾患であることは周知のことである.近年の研究から胎内成長の過程において障害の及ぶ時期,期間によって変形,拘縮の程度が異なってくることがわかった15).したがって,1疾患名に対して画一的治療を行ってはならない.先天性内反足は観血的治療を要することが多いことは事実であるが,手術を前提として治療するのではなく,治療の過程において重症度を判定して重症度に応じた治療を行う.この場合も手術によって解剖学的異常を矯正することは,手順が正しければさほど困難なことではないが,手術に伴ういろいろなリスクや術後のある程度の不可避の拘縮などのdemeritと保存的治療を貫くことによるdemeritをよく勘案して治療方針を決定することが大切である.また手術を行う以上は再手術は間違いなく予後を悪化させるので,これを極力避けるように完全な解離がなされる手術方法を選択し,十分な後療法と長期にわたる経過観察を行うことが肝要である.今回は軟部組織解離術に限って,その適応,手術方法とその周辺,そして後療法について述べる.

整形外科を育てた人達 第98回

Michael Livingood Mason(1895-1963)

著者: 天児民和

ページ範囲:P.1286 - P.1288

 Masonは腱の縫合技術を発表しSterling Bunnellと共に手の外科の開拓者の一人である.彼の伝記の資料を集めるのに時間を要したが,充分な資料ではないが,彼の伝記を書く事にした.

臨床経験

小児脛骨遠位骨端線部分閉鎖に対しシリコン板挿入を施行した1例

著者: 関敬弘 ,   須川勲 ,   長野純二 ,   湊泉 ,   小林良充 ,   前原秀夫 ,   星亨

ページ範囲:P.1289 - P.1292

 抄録:小児脛骨遠位骨端線部分閉鎖により下腿果上部の内反変形を来した1例に,シリコン板を挿入し良好な成績が得られたので報告する.左脛骨内果骨折後に左脛骨遠位骨端線部分閉鎖を来した11歳5カ月女子に対し,骨性架橋を切除しシリコン板を挿入した.その結果,術前の骨端線傾斜角は内反15°であったが,術後1年にて内反0°に矯正され,術後3年2カ月においても再架橋は見られていない.LangenskiöldやBrightの報告によれば,術後の再架橋がそれぞれ11.6%と10%と多く見られ,問題である.そこでPetersonは再架橋防止のために,中間固形挿入物の骨端部分を大きくすることで成長とともに生ずる挿入物の逸脱を防ぐ試みを示している.本症例ではそのような試みはなされなかったが,再架橋は生じなかった.しかし,今後は以上のような試みを行えば,より確実に再架橋を防止できると考えられる.

長趾伸筋の偽腫瘍病変により深腓骨神経麻痺をきたした慢性関節リウマチの1症例

著者: 千福健夫 ,   福居顕宏 ,   前田昌巳

ページ範囲:P.1293 - P.1296

 抄録:慢性関節リウマチの経過中に長趾伸筋の腫瘍状腫大のため,深腓骨神経麻痺を生じた極めて稀な症例を経験したので報告する.
 症例は,63歳の女性で,30年来の慢性関節リウマチであるが,3カ月前から右下垂足をきたした.右下腿上部に腫大を認め,前脛骨筋,長母趾伸筋,長趾伸筋の著しい筋力低下を認めたが,その他の筋力,知覚には異常を認めなかった.CTで,右下腿前筋区画内に腫瘤像を認め,血管造影では,hypovascularであった.腫瘤摘出術を施行したところ長趾伸筋が腫大し,深腓骨神経を圧迫していた.切除腫瘤は筋膜に包まれ,変性萎縮した筋線維の遺残と多量の黄色粥状物から成っていた,組織学的には,フィブリノイド壊死であった.術後,下垂足は徐々に改善した.
 この筋病変の原因は不明であるが,慢性関節リウマチでは随所にフィブリノイド変性が生じることがあり,慢性関節リウマチとの関連性が疑われる.

先天性内反足における脚長差についての検討

著者: 宮城登 ,   飯坂英雄 ,   安田和則 ,   大関覚 ,   金田清志 ,   門司順一

ページ範囲:P.1297 - P.1299

 抄録:先天性内反足における大腿骨や脛骨の低成長の有無およびそれによる脚長差の存在についての報告はきわめて少ない.先天性内反足の片側罹患例53例を対象として,大腿骨,脛骨および足根骨の異常に基づく脚長差の有無をX線学的に検討した.また大腿骨長,脛骨長および足関節の高さの和を真の脚長と定義し,患側と健側とを比較検討した,患側においては脛骨長,足関節の高さおよび真の脚長はいずれも健側に比べて有意に短縮しており,その短縮率は脛骨長で1.6%,足関節の高さで7.6%,真の脚長で1.5%であった.真の脚長において3%以上の短縮率を認めたものは7例であり,そのうち骨盤傾斜を認め補高装具による治療を要したものは3例であった.保存群と手術群との比較では,足関節の高さの短縮率は保存群の5.3%に対して手術群では9.2%という有意に大きな値を示した.また脛骨長および真の脚長の短縮率においても手術群で保存群よりも大きな傾向がみられた.

民間療法により治療開始が遅れた進行期骨肉腫2例の治療成績の比較検討

著者: 生越章 ,   斎藤英彦 ,   井上善也 ,   堀田哲夫 ,   大塚寛 ,   犬飼亜早子

ページ範囲:P.1301 - P.1305

 抄録:最近民間療法を求め,本格的治療開始が遅れた小児骨肉腫2例を経験した.左脛骨骨肉腫の12歳,女児は,当院で骨腫瘍と診断されたが切断術を拒否し,約1年間の民間療法後に当科に再入院した.左大腿切断,術後化学療法を施行し,術後発生した肺転移巣の切除を要したものの,その後,局所再発や転移巣なく現在無病である.左脛骨骨肉腫の16歳,男児は約半年の民間療法後に当科に入院した.入院時すでに,骨,肺に多発性転移があり,術前化学療法,大腿切断,術後化学療法を施行したが,肺転移による呼吸不全のため死亡した.
 四肢切断や副作用の強い化学療法を患者や家族にいかに受け入れてもらうかは,手術のような単なる技術的問題以上に,医師の資質にかかっている.

patella cubitiの2例

著者: 面川庄平 ,   藤原博 ,   柿花剛 ,   三浦修一 ,   玉井進

ページ範囲:P.1307 - P.1311

 抄録:patella cubitiは,肘関節伸側に生じる膝蓋骨様の異常骨であるが,極めて稀な病態であり,その成因については明らかでない,1903年,Kienböckにより報告されて以来,その報告例は極めて少なく,本邦においては数例を数えるのみである.また,痛みを伴う事は少ないので手術的治療を行ったという報告もわずかである.我々はX線上異なったタイプの2症例を経験し,1例については手術を行った.本症の特徴と治療上の問題点について検討し,組織学的検索からその病因について考察を加えたので報告する

MRSAによる小児大腿骨骨髄炎に膿胸を併発した1例

著者: 村上弘 ,   松末吉隆 ,   小野講三 ,   大庭真央 ,   山室隆夫 ,   真弓光文 ,   浅井康一

ページ範囲:P.1313 - P.1315

 抄録:我々は市中感染によると思われる膿胸を併発したMRSAによる小児大腿骨骨髄炎の稀な1例を経験したので報告する.症例は3歳の男児で,平成2年6月初旬転倒し左膝を打撲した.約1週間後,発熱および左大腿遠位部の著明な腫脹および疼痛を生じ,さらに呼吸器症状が出現した.胸腔内からの膿の培養よりMRSAによる膿胸の診断のもとバンコマイシン,アミカシン等の抗生剤の投与により2回の再燃を繰り返したものの膿胸は軽快した.しかし左大腿部の病変は進行し病的骨折を生じたため,8月下旬に病巣掻爬と10日間のバンコマイシンによる持続洗浄を施行し,2カ月のギプス固定を行った.4カ月半後,骨癒合は良好で疼痛も消失し全荷重歩行は可能である.我々の渉猟しえた範囲では本邦でのMRSAによる小児大腿骨骨髄炎の報告は2例のみで,膿胸を併発した重篤な例はない.MRSAの増加している現在,このような症例の増加が予想され注意を要する.

人工膝関節置換術後に生じた深部静脈血栓の1症例

著者: 中村幸夫 ,   鳥巣岳彦 ,   多治見新造 ,   内田六郎 ,   真角昭吾

ページ範囲:P.1317 - P.1320

 抄録:四肢の手術では空気駆血帯は頻繁に使用されている.しかし稀ではあるが,合併症として静脈血栓を起こすことがあると報告されている.今回,両変形性膝関節に悩む78歳女性に対し,空気駆血帯使用下で左人工膝関節置換術を施行したところ,術後5日より患肢に腫脹を来し,3週目に静脈造影により深部静脈血栓と診断された1症例を経験した.静脈造影所見では鼠径部での大伏在静脈の途絶と側副血行路の発達を認め,駆血部の大腿静脈には造影剤の流入はみられなかった.静脈血栓症との診断後直ちにプロスタグランディン製剤の点滴静注を行い,投与後2週にて腫脹は著しく改善した.6週目の静脈造影では血栓はそのままであったが側副血行路は更に著明に発達していた.術後5カ月目の現在,軽度の腫脹は残存するが,肺塞栓の併発はなく,関節可動域も良好であり,ADLに支障はない.

硬膜内髄内外に発生した胸髄血管腫の1例

著者: 戸田克広 ,   檜垣哲基 ,   佐々木宏 ,   馬場逸志 ,   住田忠幸 ,   木村浩彰 ,   林雄三

ページ範囲:P.1321 - P.1324

 抄録:硬膜内髄内外腫瘍(以下,髄内外腫瘍)の1例を報告する.1978年頃より両下肢にしびれが生じ,1984年当科で脊髄造影を行ったが異常所見はなかった.1989年4月より急速に両下肢の麻痺が進行した.脊髄造影像にて第7胸椎高位で造影剤濃度の低下は認めたがQueckenstedt徴候は陰性,Gd-DTPA MRIにて同部に雪だるま状の陰影を認めた.硬膜切開前に超音波法を行い髄内外腫瘍と判明し,顕微鏡下に髄外部分,髄内部分を全摘し椎弓形成術を行った.組織像では軽度拡張した毛細血管の増生はみられるが,いわゆるstromal cellの増生はなくhemangiomaと診断された.術後知覚障害,歩容が改善された.
 髄内外にわたる腫瘍は稀であり,術前の診断が困難である.我々は髄内外hemangiomaの1例を経験し,その全摘を行ったので報告する.

第1趾IP関節内種子骨嵌入の1症例

著者: 佐本憲宏 ,   田中康仁 ,   植田百合人 ,   高倉義典 ,   玉井進

ページ範囲:P.1325 - P.1328

 抄録:第1趾IP関節への種子骨の嵌頓は比較的稀な病態である.また発生機序については諸説があるが,嵌頓しやすい種子骨の形態についての検討は現在までなされていない.
 今回,種子骨嵌頓の症例を経験し,他の本病態の報告例を加え,正常足87例とをX線学的に比較検討を試みた.

後腹膜腔に発生した神経鞘腫の1例

著者: 茶野徳宏 ,   斎藤潤 ,   石澤命仁 ,   松本圭司 ,   福田眞輔 ,   岡部英俊

ページ範囲:P.1329 - P.1332

 抄録:後腹膜原発の良性神経鞘腫の報告は比較的稀で,それらも腹部外科および泌尿器科領域での報告が多く,整形外科にて治療されることは少ない.最近我々は,本腫瘍を経験したので報告する.症例は49歳女性で,約20年間の経過観察の後,手拳大に増大した後腹膜腫瘤と腫瘤圧迫による右下肢への放散痛のために,当科へ紹介された.臨床症状,CT等より神経鞘腫を疑い,摘出術を施行した.病理組織学的には,Antoni A/B型であったが,二次変性が強く,神経線維腫との鑑別を要した.当疾患が術前に診断されることは稀であるが,本症例では腫瘤圧迫による末梢への放散痛が特徴的であり,診断に役立った.また本症の様に腫瘍が巨大であった場合でも,超音波外科用吸引装置(CUSA)を使用して腫瘍容積を縮小すれば,発生母地の神経を可及的に温存することが可能であった.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら