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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科26巻3号

1991年03月発行

雑誌目次

視座

日本人気質と臨床

著者: 井上一

ページ範囲:P.223 - P.223

 日常の臨床では,普遍性と妥当性が問われるばかりでなく,より高い安全性と認容性が求められる.例えば,全人工股関節置換術をとってみると,少なくとも10年以上一応安定した成績をもったものとなると,Charnley型に優るものはなさそうである.昨今では,この完成された術式により多くの患者が救われているが,最近発刊されたCharnleyの伝記を読むと,大変な試行錯誤の上に完成されたものであることを知らされる.初期の臼蓋ソケットは,ほとんど早期に再置換されたのは周知の事実であるが,科学的な裏付けがあったにしても概ね失敗に帰した人工関節を,あくない忍耐と努力で完成にもち込んだ彼自身もさることながら,それを受け入れた国民性にも高く敬服する.今日,我々日本人は,そうした人工関節の開発の苦労もなく輸入し,整形外科医として患者への福音を間近にみることのできる幸せを味わわせて戴いている.症例を限定すれば,最初に挙げた普遍妥当性を備え,なお安全でかつ容認される最たる例であろう.
 しかし,考えてみると,開発の初期には逆の出来事が起こり,Charnley自身の苦労も想像以上であったものと思われる.平素手術的治療の術式選択に当たって,前記の条件を頭におくことはいうまでもない.また,同じ術式によるまとまった症例の長い追跡調査から,次の段階に進む着実さも重要であることはもちろんである.しかし,それだけで,難治の疾患を根本的に解決していく手法が生まれてくるであろうか.

論述

術前療法を併用したユーイング肉腫手術例の検討

著者: 松本誠一 ,   川口智義 ,   真鍋淳 ,   黒田浩司 ,   古屋光太郎 ,   磯辺靖

ページ範囲:P.224 - P.230

 抄録:術前療法を併用したユーイング肉腫11例の,画像変化,切除材料,予後について検討した.画像にて軟部腫瘍陰影の縮小を認める場合を有効とし,さらに軟部腫瘍陰影の消失,破壊された骨皮質の完全な修復を認める場合を著効とした.その結果,画像上有効例では組織学的にも有効であったが,髄内に生存する腫瘍細胞を認め,術後遠隔転移する例があった.手術は原発巣付近の微小転移巣を考慮しcurative procedureが望ましいと思われた.画像上著効例では,髄内に腫瘍細胞はなく,予後良好であった.しかし,骨外の骨膜様瘢痕組織あるいは変色部には腫瘍細胞がわずかに存在し,手術はwide procedure以上にすべきと思われた.

足関節外側靱帯付着部裂離骨折―新鮮例に対する保存的および手術的治療成績の検討

著者: 平岡正毅 ,   安田和則 ,   青木喜満 ,   門司順一

ページ範囲:P.231 - P.237

 抄録:足関節外側靱帯付着部裂離骨折の新鮮例における手術的および保存的治療の結果を比較検討した.観血的に裂離骨片の整復固定を行った症例は9例であり,ギプス固定による保存的治療を行った症例は7例である.術後の足関節痛・可動域制限・不安定感・スポーツ活動中の障害などの主観的評価およびストレスX線写真での不安定性の定量による客観的評価では,手術治療群で全例良であり,保存的治療群では骨癒合が得られなかった3例が不可であった.診断上,骨端線閉鎖以前の若年例では単純X線写真で裂離骨片が確認できない場合でも,軟骨裂離を念頭においた診断が重要である.新鮮例の治療は,観血的に裂離骨片の整復固定を行う方が確実な方法であることが示唆されたが,保存的治療でも骨癒合する症例もみられた.

足関節外側靱帯付着部裂離骨折―陳旧例に対する手術成績の検討

著者: 平岡正毅 ,   安田和則 ,   青木喜満 ,   門司順一

ページ範囲:P.239 - P.246

 抄録:陳旧性足関節外側靱帯付着部裂離骨折に対する手術的治療の成績について検討を行った.症例は男性9例女性11例であり,これらを主観的症状として足関節の不安定感を主訴とする群(9例)と足関節痛を主訴とする群(11例)に分け,比較検討を行った.裂離骨片が大きい場合にはZuggurtung法にて,骨片が小さい場合にはpull-out法により整復固定を行った.術後の足関節痛・可動域制限.不安定感などの主観的評価およびストレスX線写真での不安定性の定量による客観的評価では,不安定性群で全身弛緩性を有する1例のみが不可であった.陳旧例では診断上,骨片と過剰骨との鑑別が問題となる.治療上の問題として,陳旧例では靱帯部分が短縮し裂離骨片を母床に整復不能である症例があり,このような症例をどう治療するかが今後の問題となる.全身弛緩性を有する症例では,裂離骨片の整復固定だけでは満足な結果が得られず,靱帯再建術を考慮する必要があると考えられた.

血管柄付腓骨移植術による上肢再建

著者: 面川庄平 ,   玉井進 ,   水本茂 ,   矢島弘嗣 ,   吉井尚

ページ範囲:P.247 - P.255

 抄録:1976年10月以降,当科および関連病院で行った血管柄付腓骨移植術86例中,上肢の再建に用いた10例の術後成績を検討し,その適応と問題点について考察を加えた.内訳は男性5例女性5例で,手術時年齢は3~67歳,平均32.3歳,対象疾患は外傷性骨欠損・偽関節4例,骨巨細胞腫3例,先天性偽関節症2例,先天性内反手1例であった.移植部位は上腕骨1例,橈骨7例,尺骨2例であり,橈骨遠位端骨巨細胞腫の2例と先天性内反手の1例には手関節を再建するために,血管柄付腓骨頭移植を施行した.経過観察期間は9カ月~13年1カ月,平均6年であった.全例に骨癒合が得られ,追加骨移植を要したものはなかった.本法の手術適応は,外傷性骨欠損や難治性偽関節,腫瘍切除後の再建,先天性偽関節症であり,いずれも満足すべき結果を得た.

外傷性母指MP関節脱臼の検討

著者: 谷口泰徳 ,   嶋公大 ,   木下裕文 ,   玉置哲也 ,   河原史郎 ,   辻寛

ページ範囲:P.256 - P.262

 抄録:外傷性母指MP関節脱臼に関するまとまった報告は少ない.今回われわれは,過去13年間に経験した12症例について,文献的考察を加え報告する.症例は,背側脱臼11例,掌側脱臼1例で,男性8例,女性4例,受傷時年齢は3~54歳であった.受傷原因はスポーツ外傷に多い傾向を認め,脱臼整復までの期間は受傷当日より3カ月であった.治療法は徒手整復8例,観血的整復4例であった.MP関節脱臼を背側脱臼,掌側脱臼の2型に分類し,過去の報告例とともに検討を加えた.整復障害因子は背側脱臼では掌側板とともに種子骨,側副靱帯,関節包,長母指屈筋腱であり,掌側脱臼では背側腱膜,関節包,掌側板,長母指伸筋腱,短母指伸筋腱であった.そのため観血的整復術は,背側脱臼では掌側進入がよく,掌側脱臼では背側進入が選択されると考えられた.また陳旧症例では関節固定術が適応となると思われた.

手術手技シリーズ 関節の手術<下肢>

三関節固定術,中足根部骨切り固定術

著者: 野村茂治 ,   仙波英之 ,   猪原史敏

ページ範囲:P.263 - P.278

 はじめに
 三関節固定術および中足根部骨切り固定術は年長児および成人を対象にするが,種々の足部変形に対し足部の安定および足蹠歩行を可能にする最後の切札といえる.手術に際しては変形の把握はもちろん,筋力,軟部組織の状態,骨萎縮の程度,足趾の変形を考慮しなくては満足のいく結果が得られない.三関節固定術にしても先天性内反足に行う場合と弛緩性麻痺足では骨の切除が異なる.尖足変形も足関節での変形か前足部での変形かにより手術法が異なる.術前に十分な検討を行い,効果的な骨切除が望まれる.症例をもとに手術法について述べる.

整形外科を育てた人達 第91回

島啓吾教授(1911-1974)

著者: 天児民和

ページ範囲:P.279 - P.281

 島啓吾教授は,北海道地区の整形外科の開拓者の一人であると思うので,島教授の伝記も是非書き残したいと思い,資料を集めるため各方面にお願いした.島淳子夫人,北大の松野・金田両教授,秘書をしていた新田美奈子女史,久留米時代のことは弟の矢野禎二博士,宮城名誉教授にお願いして,この伝記を書くことが出来た.その多数の御援助に感謝致します.

臨床経験

腕相撲による上腕骨内側上顆骨折

著者: 石田保夫 ,   福沢玄英 ,   浜辺正樹 ,   清水弘之 ,   津田敦彦

ページ範囲:P.283 - P.286

 抄録:腕相撲による上腕骨内側上顆骨折の報告は少ない.今回,我々は小児の本骨折の5例を経験したので報告する.症例は,14歳2例,15歳3例ですべて男性であった.発生状況については優勢位での発生が3例,始めた途端1例,劣勢位での発生が1例であった.諸家の報告では互角以上で手関節掌屈力を増した時に発生しているものが多いが,本報告例では劣勢位で発生したものと優勢位で急に力を抜いた時に発生したものが各1例あった.
 Watson-Jones分類ではI型2例,II型3例で著明な転位や脱臼を伴うものはなかった.I型の2例は保存的に加療し,II型の3例はすべて観血的整復術を行い,良好な結果が得られた.

Miller-Galante型人工膝関節膝蓋骨コンポーネント破損の1例

著者: 葛原啓 ,   城守国斗 ,   今井亮 ,   式田年晴 ,   須津富鵬 ,   山下文治 ,   平沢泰介

ページ範囲:P.287 - P.290

 抄録:Miller-Galante型人工膝関節の膝蓋骨コンポーネント破損の1例を報告する.症例は67歳の男性で,身長159cm,体重85kgの肥満体である.両変形性膝関節症に対して左膝にM/G型人工膝関節置換術を行った.術後経過は順調であったが,術後2年目,特に誘因なく疼痛の出現と関節水腫を認め,X線像にて膝蓋骨コンポーネントHDP部分の脱転が認められた,手術時,膝関節内はコンポーネントの摩耗により,黒色の色素沈着が認められ,膝蓋骨コンポーネントはHDPとメタルバックの接着部で剥離し,大腿骨コンポーネントの外顆部も一部摩耗していた.本邦では,同じタイプの人工膝関節置換術が約7000例行われ,現在まで膝蓋骨コンポーネントが破損した症例の報告はないが,Galanteらは122例中12例に破損例を認めたと報告し,術後2年前後で,比較的年齢の若い,体重80kg以上の男性に破損例が多いことを報告した.今後,本邦において同様の合併症を生じる可能性があり,本人工関節施行例の注意深い術後経過の観察が必要である.

足関節に発生した滑膜性骨軟骨腫症の1例

著者: 石川淳一 ,   佐藤栄修 ,   菅野大己 ,   小林昌幸 ,   鈴木克憲 ,   菅原修 ,   大矢卓 ,   木村敏信

ページ範囲:P.291 - P.294

 抄録:足関節に発生し,関節内より関節外へ進展するという特異な発育過程を示した滑膜性骨軟骨腫症の1例を経験した.手術時所見にて同腫瘍は茎をもって関節包前面より関節外に進展しており,さらに浅腓骨神経を圧排していた.本例のように,関節内より関節外に進展した同疾患は極めて稀であり,数例の報告をみるのみである.病理組織像を含めた症例の詳細を示した.さらに同疾患の治療法についても若干の文献的考察を加えた.

成人型低リン血症性ビタミンD抵抗性骨軟化症の1例

著者: 砂山千明 ,   渡辺省二 ,   富田勝郎 ,   和田真

ページ範囲:P.295 - P.298

 抄録:骨痛および筋力低下を主訴とし,X線上,多発する骨改変層を認め,約15年間で35cmの身長低下をきたした重症の成人型低リン血症性ビタミンD抵抗性骨軟化症の1例を経験した.本症例に対し経静脈的リン酸塩を併用した活性型ビタミンDの大量療法を施行した.治療開始後3カ月頃より臨床症状が改善し始め,X線上も骨改変層が完全に修復されていった.硬組織標本においても治療前後で明らかな石灰化障害の改善がみられた.dual photon absorptiometryを用い腰椎の骨塩量を測定したところ,治療前のBMD 0.701mg/cm2から1年後には0.982mg/cm2と改善をみた.

scapulothoracic dissociation4例

著者: 山野慶樹 ,   赤司浩二郎 ,   岡本雄策

ページ範囲:P.299 - P.302

 抄録:外傷による上肢帯と胸郭の離開は強い外力が上肢帯に加わって起こる比較的稀な損傷で,近年scapulothoracic dissociationと診断され,鎖骨下動静脈,腕神経叢損傷を伴うと報告されている.
 我々は他院での治療例を含め4例を経験した.年齢は17,21,25,26歳で,いずれも男性で,scapulothoracic dissociationに伴う骨・関節損傷は鎖骨遠位端骨折1例,肩甲骨頸部骨折1例,鎖骨骨折2例であった.動脈損傷は鎖骨下動脈断裂3例,腋窩動脈1例で,鎖骨下動脈断裂の1例には人工血管移植,腋窩動脈断裂例には静脈移植を行った.神経損傷はroot avulsionを伴う全型麻痺が3例で,他の1例は叢部での部分損傷であった.

転移性脊髄髄内腫瘍の1例

著者: 木下藤英 ,   松崎浩巳 ,   丸山公 ,   平良勝成 ,   鳥山貞宜

ページ範囲:P.303 - P.306

 抄録:悪性腫瘍の転移部位として脊椎や脊髄硬膜下腔はよくみられるが,脊髄髄内は稀である.今回,我々は上顎洞癌を原発として脊髄髄内に多発性転移を来した1例を経験したので報告する.症例は71歳,男性.主訴は腰痛である.1987年6月,上顎洞癌で当院耳鼻科で切除術,放射線療法を受けている.1988年12月頃,特に誘因なく腰痛出現,歩行障害も出現したため,1989年1月9日当科に入院した.入院時,両下肢筋力低下と知覚鈍麻がみられた,胸腰椎の単純X線像では異常を認めなかったが,脊髄造影像でTh12下縁以下での造影剤の途絶像を認め,MRIではTh12レベルの脊髄に境界不明瞭なhigh signal areaがみられた.2月6日手術施行.Th8からLIまでを椎弓切除後,硬膜を開いたところ,Th10~12レベルで3カ所に髄内腫瘍を認め,腫瘍切除術を行った.病理組織所見では原発巣と同様の扁平上皮癌の所見がみられた.

軟部襄腫性病変に対するフィブリン接着剤の使用経験

著者: 重野陽一 ,   福島美歳 ,   山本浩司 ,   清水広太 ,   李勝博 ,   辻村亨 ,   片山正一 ,   中村宣雄 ,   白川一夫

ページ範囲:P.307 - P.309

 抄録:整形外科領域での臨床応用が注目されつつあるフィブリン接着剤を,保存的治療に難渋を示し,患者が手術的治療を希望しない軟部襄腫性病変に用い,良好な結果を得た.対象疾患は,膝窩部襄腫4例,足関節背側滑液包炎3例,膝蓋前滑液包炎1例,手関節背側ガングリオン1例で,9例いずれの症例も過去に穿刺歴が複数(2~23)回あり,これに強い抵抗を示したものであった.処置後1.5~13カ月の経過観察を行ったが,7例は処置後消退し,2例に再発を認めた.再発例のうち1例は摘出術を実施したが,その病理組織所見は滑膜組織よりフィブリン接着剤内へ,毛細血管網の新生と線維性肉芽組織の侵入を認めた.他の1例は再度同処置を実施し消退を認めた.
 フィブリン接着剤は,骨・軟骨領域を中心に神経,半月板などにも広く利用されつつある.今回の試みにより,軟部襄腫性病変にも有効であることが示唆された.

切除後13年を経過したdysplasia epiphysealis hemimelicaの1例

著者: 重野陽一 ,   姜武 ,   鍋島隆治 ,   加藤次男 ,   広瀬一史 ,   土井照夫

ページ範囲:P.311 - P.317

 抄録:摘出後13年を経過観察し得たdysplasia epiphysealis hemimelicaの1例を報告する.患者は女性で,1歳6カ月時よく転倒するので近医を受診.5歳時,右膝関節内側に腫瘤が出現し徐々に増大した.6歳時,関節面および後方の病巣の一部を除き摘出術を施行,epiphysisより連続性のある骨軟骨腫であった.8歳時,再度右膝内側腫瘤が増大したため,再度摘出術施行.その後11年を経過した現在,右膝の腫脹はないが右膝内側部痛を訴えている.単純X線上,右大腿骨内顆の変形とスリガラス様の均質像を残すが,以前の不整石灰化像はremodelingされ,内側脛骨関節面には骨硬化像を認めている.

肘関節離散状脱臼の1例

著者: 太田元 ,   大溪紀男 ,   荒木聰 ,   渡辺健太郎

ページ範囲:P.319 - P.321

 抄録:小児肘関節離散状脱臼の1例を経験したので報告する.本脱臼は,divergent dislocationと呼ばれ,肘関節損傷の中では極めて稀である.過去の報告例の中で明確なX線像を提示しているのは,1981年DeLeeの報告以来4例しかなく,今回渉猟した範囲では,本邦での報告例は見られない.1890年Stimsonは,本脱臼を,antero-posterior typeとlateral typeに分類している.しかし,我々の症例やX線像を提示している過去の報告例を検討すると,橈尺骨が同方向へ脱臼するタイプの中にも本脱臼に含まれるものがあると考えられた.そこで筆者らは,それらをpostero-posterior typeとし,Stimsonの2つの分類に追加した.治療は原則として保存的治療であり,徒手整復不能な場合や神経・血管障害を合併している場合に限り観血的治療が行われる.本脱臼は,重度の肘関節損傷にもかかわらず,早期に整復すれば予後は良好である.

脛骨に単発した骨Paget病の1例

著者: 松本智子 ,   秋山寛治 ,   大坪義正 ,   本川哲 ,   井上喜博 ,   群家則之

ページ範囲:P.323 - P.325

 抄録:49歳,女性が,左下腿の彎曲変形を主訴に来院した.X線像では脛骨の前外方への彎曲と骨皮質の肥厚を認め,骨シンチでは脛骨全体に取り込みが増加していた.血液生化学的検査では,血清のアルカリフォスファターゼ値は軽度上昇していたが,他には特に異常を認めなかった.脛骨の骨生検像で骨髄に線維性結合組織を伴い,層状骨の骨梁は不規則でいわゆるモザイク構造を示していた.以上の結果より,脛骨に単発した骨Paget病であることがわかった.本疾患はわが国では稀とされているが,文献的に単発例の場合は脛骨に比較的多く見られる.しかし,本例のように,中年以後の女性の脛骨に単発した場合,下腿の内反変形があっても見過ごされている可能性もあり,このように長管骨の変形を来した場合には,念頭においておく必要のある疾患ではないかと考えられる.

良好な神経学的回復を得た第4胸椎脱臼骨折の1症例

著者: 館野勝彦 ,   清水敬親 ,   柘植和郎 ,   宇田川英一

ページ範囲:P.327 - P.330

 抄録:Th4の脱臼骨折により高度な脊髄損傷を呈した27歳の男性に,Harrington rodによる観血的整復固定術を施行し,順調な麻痺の回復を得て社会復帰しえた症例を経験した.画像診断にては,上記骨折の他にTh4の椎弓根部での骨折が確認され,さらに術中Th3~Th6の椎弓骨折が確認された.Harrington instrumentationを用い整復固定術を行い,良好な麻痺の回復が得られた.麻痺の回復が良好であったのは,椎弓根部骨折,および広範な椎弓骨折により脊柱管が前後に拡大したため,脊髄は圧迫を免れ,かつ早期の観血的整復固定術により新たな障害を加重しなかったためと考えている.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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