臨床経験
軟部襄腫性病変に対するフィブリン接着剤の使用経験
著者:
重野陽一1
福島美歳1
山本浩司1
清水広太1
李勝博1
辻村亨2
片山正一2
中村宣雄3
白川一夫4
所属機関:
1国立呉病院整形外科
2国立呉病院臨床検査科
3住友病院整形外科
4マッターホルン整形外科病院
ページ範囲:P.307 - P.309
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抄録:整形外科領域での臨床応用が注目されつつあるフィブリン接着剤を,保存的治療に難渋を示し,患者が手術的治療を希望しない軟部襄腫性病変に用い,良好な結果を得た.対象疾患は,膝窩部襄腫4例,足関節背側滑液包炎3例,膝蓋前滑液包炎1例,手関節背側ガングリオン1例で,9例いずれの症例も過去に穿刺歴が複数(2~23)回あり,これに強い抵抗を示したものであった.処置後1.5~13カ月の経過観察を行ったが,7例は処置後消退し,2例に再発を認めた.再発例のうち1例は摘出術を実施したが,その病理組織所見は滑膜組織よりフィブリン接着剤内へ,毛細血管網の新生と線維性肉芽組織の侵入を認めた.他の1例は再度同処置を実施し消退を認めた.
フィブリン接着剤は,骨・軟骨領域を中心に神経,半月板などにも広く利用されつつある.今回の試みにより,軟部襄腫性病変にも有効であることが示唆された.