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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科26巻4号

1991年04月発行

雑誌目次

特集 主題I:Spinal Dysraphism/主題II:Pedicular Screwing(第19回日本脊椎外科学会より) 主題I:Spinal Dysraphism

Spinal Dysraphism―研究の現状と課題〔座長総括〕

著者: 山本博司

ページ範囲:P.338 - P.339

 第19回日本脊椎外科学会において,主題Iとして,「spinal dysraphism」が小野村会長により取り上げられ,集中討議された.成因・病態・電気生理学的検索,治療等に関して,28題に及ぶ報告があった.その後に,この方面の経験の豊富な6人の討論者と座長をつとめた山本,渡辺の計8人でspinal dysraphismの病態と治療に関する総括討論が行われた.
 まず,報告された演題28題は,いずれも優れたものであったが,そのうち印象深かったいくつかのものについて紹介してみたい.

実験的に作製した脊椎脊髄形成異常に関する知見

著者: 岩井宏次 ,   谷内幹弘 ,   渡辺秀男 ,   小野村敏信 ,   山本定 ,   大島正義 ,   稲毛昭彦

ページ範囲:P.341 - P.349

 抄録:WisterラットとDonryuラットの妊娠母獣にtrypan blueを投与することにより作製した脊椎脊髄奇形獣に関して検討した.得られた脊椎奇形は比較的画一的なlumbosacral agenesisであった.胎生早期に嚢疱が形成され,これによりneurulationが障害されるためにこの一連の奇形が生じると考えられた.これらのラットの運動麻痺の脊髄レベルは脊椎奇形上限のレベルとほぼ一致し,知覚麻痺のレベルは運動麻痺のレベルより平均4.1髄節下位であり,これは脊髄腰膨大から脊髄円錐にかけての前角の形成不全が,対応する後角のそれより強いためであると考えられた.これらの奇形仔獣のなかに後肢にmirror movementsを示すものが得られ,前部腰髄の形成異常がその原因であると考えられた.後肢麻痺を有するラットの内反足等の変形に関しては,胎生末期の自動運動の欠如がその重要な因子であり,胎生期の予宮内環境により異なった変形が生じるものと考えられた.

二分脊椎症における脊椎奇形

著者: 渡辺秀男 ,   小野村敏信 ,   桝田理

ページ範囲:P.351 - P.360

 抄録:脊髄と脊椎原基はともに脊索の誘導のもとに発生し,互いに関連しながら発達していく.そのため二分脊椎症例には椎弓披裂以外にも奇形椎がしばしば合併し,その病態が複雑となっている例を経験する.そこで,何らかの神経症状を有した二分脊椎症(spina bifida aperta)の284例における脊椎奇形をX線学的に分析し,その発生学的,臨床的意義について検討し,考察を行った.
 1)椎弓披裂の高位と神経障害の高位は一般的には相関するが,なかには一致しない例も存在し,その神経系の異常は多様である.

spinal dysraphismにおける脊髄機能障害に対する電気生理学的検討

著者: 木田和伸 ,   谷俊一 ,   山本博司 ,   藤田泰宏

ページ範囲:P.361 - P.367

 抄録:spinal dysraphismにおける脊髄・神経機能障害の病態解明およびその診断を目的に電気生理学的なアプローチを試みてきた.犬を用いた脊髄牽引・圧迫障害の発症に関する実験的研究では,脊髄誘発電位の変化により,神経根および脊髄機能の障害が確認された.また,脊髄牽引は圧迫に対する易損性を高めた.これらの結果は,tetherd cord syndromeの症状発現機序解明に重要な糸口を与えるものと思われた.また,臨床面では,脊髄の機能異常を非侵襲的に捉えるべく,傍脊柱筋の伸張反射に検討を加えた,傍脊柱筋からは,潜時の異なる複数の応答が得られたが,最も潜時の短いものは単シナプス反射と考えられ腰椎レベルの記録では,胸椎レベルに比べて常にその頂点潜時は長かった.spinal dysraphism症例への応用の結果,本症の診断向上に役立つ検査法となり得ることが期待された.

脊髄繋留症候群手術に対する術中モニタリング

著者: 四宮謙一 ,   渕岡道行 ,   岡本昭彦 ,   小森博達 ,   松岡正 ,   吉田裕俊 ,   武藤直子 ,   古屋光太郎 ,   安藤正夫

ページ範囲:P.369 - P.375

 抄録:腰仙部脊髄繋留症候群に対する手術時には,下肢のみならず膀胱直腸機能をもモニタリングしなければならない.また脊髄繋留症候群の手術では,脊髄あるいは馬尾を,脂肪腫,奇形組織などから剥離,切離する事が主目的となる.このため脊椎矯正手術時などのモニタリング法とは異なり,剥離前にその組織が神経組織を含むか否を診断できなければならない.そこで切離予定部分を電気刺激して,誘発される誘発筋電図を下肢筋群あるいは外肛門括約筋,外尿道括約筋から導出して指標とした.膀胱内圧は刺激に対する反応が遅く,モニタリングとしては難点があるが,外尿道括約筋とは神経支配が異なるためその意味は大きい.誘発筋電図は脊髄円錐部,馬尾,神経根のレベルでは即座に反応するので,大変有効な指標となる.知覚のモニタリングとして手術部位より頭側の脊髄部に記録電極を設置しておけば,脊髄誘発電位が同時に導出でき,更に正確なシステムとなる.

diastematomyeliaの病態ならびに治療について

著者: 榊原健彦 ,   牧野光倫

ページ範囲:P.377 - P.385

 抄録:diastematomyelia 8症例の臨床像をもとに,病態,診断ならびに治療について記述した.本症にみられる脊髄奇形には,種々のvariationが存在し,脊髄の解剖学的機能面より,diplomyeliaとは明確に区別する必要がある.診断法として特徴的臨床所見に加え,画像診断としてmyelography,CT-M,MRIなどが有用であった.麻痺発症のメカニズムとして,septumによる脊髄へのtethering effectのほか,occult spinal dysraphismに基づく脊髄合併奇形の関与が推察される.いったん,脊髄麻痺が発症した場合,不可逆性病変に陥る可能性が大であり,進行性の麻痺を呈する症例では病態を見極めた上で,早期手術を行う必要がある.本症には,先天性脊柱変形の合併が高頻度に認められるが,安易に矯正手術を行うことは危険であり,術後麻痺の予防のためにも矯正術を行う前にseptumの切除を行うべきである.

neural spinal dysraphism―diastematomyelia, lipomeningoceleの診断と治療

著者: 北原宏 ,   渡部恒夫 ,   南昌平 ,   礒辺啓二郎 ,   中田好則 ,   望月真人 ,   高橋弦 ,   松本忠男 ,   大塚嘉則 ,   新井貞男

ページ範囲:P.387 - P.399

 抄録:neural spinal dysraphismのうち,diastematomyelia 8例と,lumbosacral lipomeningocele 14例の診断・治療法・結果につき検討した.診断には,orthopedic syndrome,cutaneous changes(hypertrichosis,skin dimple,hemangioma,tumor mass etc.),神経症状を参考に,X線では先天性側彎症,潜在性二分脊椎(spina bifida occulta)の有無を検索し,脊髄の検索には脊髄造影,CT,CT-myelography,MRIが必須である.diastematomyeliaの手術では,先天性側彎症の変形矯正に先立ち,骨性ないし線維性中隔を顕微鏡鏡視下に切除術を施行する.術後対麻痺の危険性があり,治療は慎重でなければならないが,高度変形になる例が多く,早期発見・治療が必要と考える.lipomeningoceleの症例で成長期,成人期に腰痛,神経症状の発現・悪化することがあり,手術適応となるが,手術はcordのuntetheringを第一義に考え,後根分岐の背側かつ尾側でlipomaを切離する.

10歳以後のspinal dysraphism患者の臨床的検討

著者: 山根友二郎 ,   亀ヶ谷真琴 ,   品田良之

ページ範囲:P.401 - P.406

 抄録:背部皮膚になんらかの外見上の異常を呈し,かつ神経障害を有するspnal dysraphism患者の30症例の臨床症状を検討した.神経障害は5歳までに26例(87%)に出現していた,膀胱障害は25例にみられた.下肢障害なく膀胱障害のみが4例,趾あるいは趾および足部に限局した変形のあるものは8例,足関節および下腿に変形等のあるものは18例であった.左右に変形差,脚長差,足長差のあるものが約半数の16例であった.このうち知覚障害に差を認めたものは7例であった.知覚で一髄節以上の左右差のあったものは,全体で9例であった.褥瘡は常にありが2例,時々ありが10例であった.解離手術に関しては,2歳までに解離手術が施行されたものに神経障害が軽いものがあった.患者のすべてはcommunity ambulatorであり,膀胱障害を除くと開放性二分脊椎に比べ,本症は日常生活での障害は少なかった.

二分脊椎児者の社会的不利に関する調査

著者: 鈴木伸治 ,   管野妙子 ,   畠山貞三 ,   熱田裕司 ,   浜田修 ,   竹光義治

ページ範囲:P.407 - P.414

 抄録:二分脊椎児者の社会的不利について検討するため,北海道に在住する二分脊椎児者137名の社会参加の現状についてアンケートを用い調査した.アンケート回収総数は69名(50.4%)であった.
 身体面:体の痛みが高頻度でみられ,年齢が高い程腰痛の占める割合が高く,脊柱に関わる障害の重要性が示された.また各年齢を通じて疲れ易く,体の痛みとともに社会参加を妨げる一因と考えられ,体力の増進を計ることが重要であると考えられる.

主題II:Pedicular Screwing

pedicular screwingをめぐる現状と諸問題〔座長総括〕

著者: 大谷清

ページ範囲:P.416 - P.418

 pedicular screwingの原理は,そう新しいものではなく,Micheleら(1949)1)の報告が最初である.この方法がつい最近まで等閑視されてきた理由は,本法は手技的に難しく,特に神経損傷を合併する危険性が高いこと,加えてinstrumentの開発が遅れていたことにあると思う.今日,本法がにわかに普及してきた背景にはinstrumentの開発に負うところ大であろう.
 第19回日本脊椎外科学会でpedicular screwing法が主題として取り上げられ,61題の本法関連演題が発表された.これら演題をもとに,本法の現状と問題点につき私見を加えてまとめてみた.

強直性脊椎炎に対する脊椎矯正骨切り術へのAO internal fixatorの応用

著者: 谷仁孝 ,   辻本正記 ,   小林昌明 ,   福田眞輔 ,   吉川玄逸 ,   喜多貞夫

ページ範囲:P.419 - P.426

 抄録:強直性脊椎炎の進行した症例では,若年性の脊椎後彎変形を示すものがある.後彎変形に起因する障害が著しい場合には,脊椎矯正骨切り術を考慮しなければならないが,以前より手術による合併症の報告も多く,その適用は慎重に決定する必要がある.
 われわれは,後方要素のwedge osteotomyにinstrumentとしてAo internal fixatorを使用し良好な成績をおさめている.このシステムの特徴としては,
 ①安全性が高く,強い矯正力
 ②侵襲が比較的少ない
 ③狭い範囲で強い固定力が得られる
 ④ある程度の側彎矯正も可能
 などがあげられる.われわれの経験では,1椎間での矯正骨切りに本システムは適していると思われた.

腰椎辷り症に対するpedicle screw fixation法の問題点

著者: 本間玄規 ,   室田景久 ,   司馬立 ,   近藤秀丸 ,   伊藤博志 ,   漆原信夫 ,   舟崎裕記 ,   神人護

ページ範囲:P.427 - P.434

 抄録:pedicle screw fixation法(PSF法)を施行した腰椎辷り症34例の手術成績を調査し,本法の問題点とその対策について考察を加えた.本法に後側方固定術(PLF)と椎体間固定術(IF)を併用した群では,辷りが矯正され,さらに局所後彎が前彎位へと改善され,全例に骨癒合が得られた.また,PLFに加えて棘間固定術(ISF)を行った群では,辷りの矯正には軽度のもどりを認めたが,生理的前彎位は保持されていた.一方,PLF単独群では,術後,高率に矯正の戻りと偽関節の発生を認めた.instrument failureの発生には,骨粗霧症,後側方のみの固定術,screw and rod system使用など種々の因子が関与していたが,全例に共通して,骨粗鬆症の合併が認められた.以上の結果から,本法を腰椎辷り症に応用する場合,生理的前彎を保持するためには,PLFにIFもしくはISFの併用が望ましく,特に骨粗鬆症を有する症例に対しては,手術適応を含めて慎重な検討が必要である.

腰仙椎部分離辷り症に対するposterior spinal instrumentationの生体力学的研究

著者: 白土修 ,   金田清志 ,   ,  

ページ範囲:P.435 - P.443

 抄録:腰仙椎部分離辷り症の手術的治療に使われる各種posterior spinal instrumentationの固定性を検討することを目的に,仔牛屍体脊柱を用いて,圧縮,屈曲,伸展,回旋の4種類の負荷による生体力学的研究を行った.腰仙椎部分離辷り症を模擬するために,仔牛L6両側椎間関節間部に欠損を作り,L5/6間の後方靱帯をすべて切除した.検討した群は,①Harrington dual distraction rods,②transpedicular C-D system with a transverse approximating device,③Steffee transpedicular screw and plate,④PLIF,⑤PLIFとC-Dの併用,⑥PLIFとSteffeeの併用,である.3椎間固定のHIは,圧縮を除くすべての荷重において最も不安定であった.PLIFの単独使用は,固定性をむしろ減少させる傾向にあり,instrumentationの併用が望ましいと思われた.transpedicular screw systemは,PLIF併用の有無に拘わらず,1椎間固定ながら最も大きい固定性を示した.

pedicle screw fixation法における力学的固定性に関する研究

著者: 山縣正庸 ,   北原宏 ,   南昌平 ,   高橋和久 ,   礒辺啓二郎 ,   高相晶士 ,   太田秀章 ,   守屋秀繁 ,   玉木保

ページ範囲:P.445 - P.450

 抄録:Dick internal spinal fixator,Steffee plate,Luque ISF法,modified Zielke法,我々が開発中であるplate-screw法の固定性について力学的強度の比較検討を行った.screw自身の疲労試験で最大の疲労強度を有したのはSchanz screwであるが,それでも生体内での負荷が続く限り折損する可能性が示唆された.システムの強度から,Dick ISF,Steffee plateは,rigidで脱臼骨折等,整復を要するものに良い適応がある.一方,他のいわばsemirigidなtypeは腰椎変性疾患などでin-situ fusionで済むものに良い適応がある.screwの引抜き強度は椎体骨密度と正の相関を示し,osteoporoticな椎骨では骨とscrew間の固定性が著しく低下してしまう.osteoporosisの合併例ではinstrumentationに際して,固定椎体の形状と共に骨密度をも評価することが重要であり,術後外固定を併用するなどの配慮が必要と考えられた.

pedicle screwの固定力に関する実験的研究―骨粗鬆症との関係について

著者: 曽雌茂

ページ範囲:P.451 - P.457

 抄録:椎体の骨粗霧化の程度とscrewの固定力との関係を調べるために,腰椎部の摘出標本を用いてscrewの引き抜き試験を行った.骨粗鬆化の程度は慈大式分類,骨塩量,MD法にて評価した.screwの引き抜き強度は,7.0mmのscrewを使用した場合,慈大式分類別にみてみると,正常群では平均1056.4Nであったのに対し,1度群では平均495.6N,2度群では平均269.5Nであり,正常群の約1/2,および1/4に低下していた.また,骨塩量,MD法の各パラメーターとの間にも相関が認められた.従って,術前にこれらの方法を用いて骨粗鬆化の程度を判定することが,screwの固定力を予測するうえで重要と考えられた.一方,骨粗鬆化を有する椎体にbone cementを使用した場合,その引き抜き強度は,bone cementを使用しない場合の約2倍の値を示したことから,骨粗鬆化の高度な症例では,bone cementを使用することも有用と思われる.

骨移植法の違いから見たSteffee VSP systemの検討

著者: 谷代弘三 ,   本間隆夫 ,   穂苅豊 ,   勝見裕 ,   奥村博 ,   平野明

ページ範囲:P.459 - P.465

 抄録:強力な矯正とその保持力をもつとされるSteffee VSP systemにおいて,骨移植法の違い,すなわち,後側方固定術(PLF)と後方進入椎体固定術(PLIF)に分けて,手術侵襲,矯正およびその保持,骨癒合,合併症について,比較検討した.対象症例は1987年12月~1989年12月の間に施行した44例で,手術時年齢は18~81歳,平均50歳である.PLFは矯正およびその保持および骨癒合の判定の点で明らかにPLIFに劣っていた.一方,PLIFはこれらの点においては明らかにPLFより,優れているが,手術侵襲がやや大きく,操作が煩雑で,そのための合併症がある点では問題が残っている.しかし,骨粗鬆症を伴う例でも矯正およびその保持がより良好であった点なども考えあわせると,本法ではPLFよりもPLIFを骨移植法として,用いるべきと思う.すなわち,本法は強固なシステムであるが,骨移植法により,大きく影響を受けていた.

胸椎・腰椎損傷に対するtranspedicular fixation法

著者: 芝啓一郎 ,   香月正昭 ,   植田尊善 ,   白澤建蔵 ,   森英治 ,   大田秀樹 ,   力丸俊一 ,   加治浩三 ,   比嘉穎秀

ページ範囲:P.467 - P.476

 抄録:胸椎・腰椎損傷91症例にtranspedicular fixation法を行い,矯正力とその保持力を調査し,本法の適応,deviceの選択,手技,および問題点について検討した.
 破裂骨折53例,脱臼骨折30例,チャンス型骨折7例,および圧迫骨折1例であった.破裂骨折の多くの症例と脱臼骨折で前方圧迫因子がある症例では前方除圧固定を併用し,主に改良型Zielke systemによる可及的損傷椎間のみの内固定を目指した.

PLIFに追加したpedicle screw法の効果―Roy-Camille plateとSteffee VSPの比較

著者: 山本利美雄 ,   太田信彦 ,   大和田哲雄 ,   稲岡正裕 ,   能勢和政

ページ範囲:P.477 - P.483

 抄録:1979年以来各種の腰椎変性疾患(椎間板ヘルニア,変性辷り症,分離辷り症)に対する固定術にClowardのPLIFをfirst choiceとし採用してきた.単一椎間固定例については,初期の280例ではPLIFで終っていたが,1987年からはPLIFにRoy-Camille plateによる内固定を追加し,最近の53例にはSteffee VSPを追加した.PLIF単独群で頻発した骨癒合に関する合併症(移植骨のcoilapse,遷延癒合,nonunion)の予防が目的であった.
 今回,術後6カ月以上の追跡調査を行い,骨癒合の結果に基づいてRoy-Calmille plateとSteffee VSPの効果を比較した.その結果,Roy-Camille plateは変性辷り症では有効性を認めたが,他の疾患群では効果はなかった.一方,Steffee VSPは全疾患を通じてきわめて高い有効性を発揮した.この効果の差異は両者の構造,とりわけスクリューとプレートの連結法の違いによると推測した.

脊椎疾患へのCotrel-Dubousset pedicle screw systemの使用経験

著者: 平林茂 ,   熊野潔 ,   黒木武房 ,   高橋隆二 ,   稲坂理樹

ページ範囲:P.485 - P.495

 抄録:1986年8月から89年11月までに,Cotrel-Dubousset pedicle screw system(以下CDIP)を用いて手術を行った99例(男58例,女41例,手術時年齢19~76歳,平均52歳,術後経過最長39カ月)の臨床経過を検討した.疾患は,腰椎変性疾患83例(分離・すべり症35例,腰部脊柱管狭窄症29例,“不安定腰椎”19例),脊椎外傷9例,脊柱変形5例(側彎3例,後彎2例),腫瘍2例(脊髄と脊椎とが各1例)であった.その結果,CDIPは下位胸椎から仙椎にかけての不安定脊椎を固定するのみならず,すべりの矯正,hook systemとの併用による変形の矯正,椎体前方固定術への応用など多様な使い方ができるため,さまざまな疾患に広く使用できる利点があり,骨癒合不全を生じないよう留意すれば,いずれも良好な手術成績が得られることがわかった.

pedicle screw fixationに対する多方向からの検討

著者: 佐野茂夫 ,   木村雅弘 ,   山崎隆志 ,   飯田惣授 ,   堀智芳 ,   堀中晋

ページ範囲:P.497 - P.506

 抄録:pedicle screw fixation 108例を多方向から検討した.①screw holeの鈍的穿孔と自製X線markerの使用により,安全,確実,かつ理想的なscrewの挿入が可能であった.②CDは側彎の矯正には適するが,すべりの整復には適さなかった.CDでlooseningが多かった.Steffee VSPはすべりの整復に優れ,in-situ fusionにも適した.③仙骨ではlooseningが多く,椎体前面の骨皮質までscrewを貫く必要があった.しかし大血管損傷を避けるため,screwは十分内側に向け,椎体前方骨皮質をわずかに貫く程度にとどめる必要があった.④固定椎間数が増えると成績が悪化した.変性隣接椎間への固定範囲の拡大は慎重に行う必要があった.⑤圧力計つき自製椎弓根エレバによる最大挿入圧はscrew固定性のよい指標になった.20kg以下ではloosening率が増加した.⑥合併症では死亡3例,脳塞栓と肺塞栓1例,術後肝炎2例,神経麻痺5例,感染4例,instrument failure 7例,loosening 16例,偽関節4例が生じた.

pedicle screw plating法の問題点―神経障害とスクリューについて

著者: 松崎浩巳 ,   徳橋泰明 ,   奥村栄次郎 ,   石原和泰 ,   若林健 ,   星野雅洋 ,   平良勝成 ,   鈴木精 ,   鳥山貞宜

ページ範囲:P.507 - P.514

 抄録:腰仙椎疾患に対して,除圧,後側方固定術に加え,pedicle screw plating(PSP)法を行った.術後8カ月以上経過した80例について神経障害の発生とインストルメントの関係を検討した.スクリューの刺入角度について腰椎側面X線像よりsagittal screw angle(SSA)を,CT像よりtransverse screw angle(TSA)を測定した.神経損傷例は8例(10%)に認められ,SSAがマイナスの場合,神経の損傷をきたす傾向にあった.ペディクルの内下方1/4は神経損傷が起こり易いcritical zone,上内方1/4は比較的安全なsafety triangleが存在する.screwingの際,SSAを0゜か軽度プラスにすることが肝要と考えられた.スクリュー折損は30例(37.5%)に認められたが,大部分は術後6カ月の骨癒合が完成した後であり,移植骨のelasticityがスクリューの疲労折損を招来すると考えられた.骨癒合後も脊柱の可動性がある程度存在するため,スクリューの折損は必ずしもマイナスの側面ばかりではないといえる.また椎体間の安定化のためdistractionよりもcompressionを追加することが有効と思われた.

一般演題

os odontoideumによる環軸椎間不安定症に対するC1-2 transarticular screw fixation(Magerl)の使用経験

著者: 伊藤達雄 ,   杉木繁隆 ,   沼田仁成 ,   北野悟 ,   辻陽雄 ,   加藤義治 ,   米沢孝信

ページ範囲:P.515 - P.523

 抄録:os odontoideumによる環軸椎間不安定症は前後屈,左右化則屈,左右回旋などすべての方向に転位を生ずる可能性があり,固定方法ならびに術後管理に苦慮することが多い.Magerlの開発したC1-2 transarticular screw固定法は,後方からC2椎弓根を通して,環軸関節を貫通し,C1側塊へ螺子を両側性に挿入するものである.本法にBrooks法による椎弓間固定術を併用することにより全方向への十分な固定性を得られる.これらの全操作が後方展開のみで達成され,かつ神経組織の確認も出来,安全面での利点も大きい.重大な不安定性を有するos odontoideum 3例に対し,本術式を用いたが,良好な位置で十分な固定性を発揮し,全例に順調な骨癒合が得られ,極めて有効な術式であることが証明された.しかし環軸関節展開とスクリュー孔作製には手技上の困難な点があり,若干の工夫をつけ加え,本法の小経験を述べる.

頸髄後方除圧後の神経根障害成因に関する検討

著者: 都築暢之 ,   田中弘美 ,   阿部良二 ,   堀田芳彦 ,   岡井清士

ページ範囲:P.525 - P.534

 抄録:頸髄後方除圧後に発生する神経根障害発生頻度は,後方除圧術式により異なり,それぞれ20~30症例を含む異なる術式6群において,0~21%の範囲であった.
 頸髄後方除圧後の神経根障害は,後方除圧により生ずる脊髄の後~側方移動や回旋に伴い,各頸神経根に,その神経根長,およびその神経根に対する椎弓・椎間孔性神経根圧迫・滑動阻害因子の程度に応じ発生する伸展力,および圧迫力が主障害因子となり,総合障害力の程度が神経組織の抵抗性を上回った場合,発生するものと考えられた.神経根長は中位頸神経根において最も短く,また,椎間孔性神経根滑動阻害度は,中位頸椎において最も高度である.この両要因の存在が,中位頸神経根に神経根障害が好発する一因をなすものと推測された.

腰仙移行椎例における神経根の髄節レベルについて

著者: 会田育男 ,   久野木順一 ,   蓮江光男

ページ範囲:P.535 - P.540

 抄録:腰仙移行椎を有する単一神経根障害例26例の,障害神経根の髄節レベルを機能的に分析した.移行椎を伴わない単一神経障害例37例を対照とした.移行椎例は,胸椎より椎体数を数えて,腰椎数4+移行椎をS型,腰椎数5+移行椎をL型とした.S型の障害神経根は,解剖学的にはL5神経根に相当し機能的にも対照例のL5神経根にほぼ一致していた.しかし,L型の障害神経根は解剖学的にS1神経根に相当しているが,機能的にはL5神経根の要素を有する割合が多く,注意が必要である.

腰部椎間孔部神経根障害の治療

著者: 久野木順一 ,   蓮江光男 ,   会田育男 ,   浜中一輝 ,   三好光太

ページ範囲:P.541 - P.551

 抄録:腰部椎間孔部神経根障害手術例26例に対し,各病態に適した手術法と手術成績について検討した.症例のうちわけは,椎間孔内または椎間孔外ヘルニア8例,ヘルニアを合併しない椎間孔部神経根絞扼18例であった.椎間孔部ヘルニア例では外側開窓術または骨形成的片側椎弓切除術により,固定術を併用せずに良好な成績が得られた.腰部脊椎症に伴う椎間孔部神経根絞扼例に対しても,術前に不安定性のない例では,同様の術式で固定術を併用せずに良好な成績が得られた.術前診断の確実な例では,椎間関節を温存する選択的除圧術が試みられてよい.脊柱管内病変の合併により本症と確定されない例では,神経根を中枢部より除圧するのが好ましい.除圧によりたとえ片側でも椎間関節切除を必要とした例では,年齢に関係なく何らかの固定術を併用すべきである.

経皮的椎間板髄核の蒸散法

著者: 米沢卓実 ,   小野村敏信 ,   小坂理也 ,   野々村淳 ,   田中真一郎 ,   宮地芳樹 ,   渡辺秀男 ,   阿部裕輔 ,   井街宏 ,   渥美和彦 ,   鎮西恒雄 ,   満渕邦彦 ,   藤正巌

ページ範囲:P.553 - P.560

 抄録:1986年来,レーザーによる椎間板髄核の蒸散能を利用し,キモパパインによるキモヌクレオライシスや土方らによる経皮的椎間板摘出術にかわり,より安全・容易・確実かつ短時間に椎間板ヘルニアの治療を行いうる方法を開発してきた.現在,動物による実験段階はほぼ終了し,臨床応用に向け準備中である.本文の構成は,①蒸散が可能であるか,②組織学的に,また減圧の点について有効であるか,③安全性の確立について,④さらに,本法の有効性を確立するために基礎実験に並行し開発,改良を加えたレーザー装置,オリジナルのダブルルーメン針,そして圧センサーを紹介し,⑤本法の手技を紹介する.⑥また,治療効果を確実とするために術前・術後のMRI値によるヒストグラム,CT値,術中の減圧効果を確認するための圧センサーについて述べる.最後に,髄核の吸光度を含め本法のアウトラインについて考察を加えた.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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