シンポジウム 悪性骨軟部腫瘍への挑戦
緒言
著者:
内田淳正
小野啓郎
所属機関:
ページ範囲:P.714 - P.715
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Musculoskeletal Tumorsの治療における第一のbreakthroughは1970年代に起こった.これは,一つの偉大な発見によるものでなく,工業技術の進歩に見るように,多くの無名の果敢な挑戦によって成し遂げられた.診断技術の進歩,化学療法の導入,surgical staging systemの確立などにより,その治療成績は飛躍的に向上した.骨肉腫の5年生存率も1970年以前の10~15%が60%前後まで改善してきたのは周知の通りである.orthopaedic oncologistの活躍の場も広がってきた.綿密な化学療法スケジュール作成やその実施中の注意深いcare,広範切除術やその後の機能再建術における創意工夫,術後の正確な機能評価にと一挙に仕事量が増えた.若い優秀な人材も集まった.腫瘍の完全制圧の光が見えたと感じられた時でもあった.しかし,聳え立つ巨大な壁が,依然として行く手に立ちはだかっている.
今,目指す第二のbreakthroughには,腫瘍学全体にわたる広い知識を背景とした,新しいものへの挑戦が何よりも大切である.そこで,平成2年7月,第23回日本整形外科学会骨軟部腫瘍学術集会を開催したのを機に,この誌上シンポジウムを企画した.現在の骨軟部悪性腫瘍の治療におけるadjuvant therapyの中心である化学療法の理論と実際,および新しい展開が期待されている重粒子線療法を重点とした.