文献詳細
臨床経験
文献概要
抄録:今回我々は,胸髄硬膜外血管脂肪腫の1例を経験した.症例は,44歳の女性で,肋間神経痛様痙痛の増強,軽快の反復と,膀付近以下のしびれを主訴とした.神経学的に,Th8以下に知覚の低下を認め,運動,反射は異常なかった.脊髄腔造影,MRIの結果,Th6-9の硬膜外腫瘍と診断し,Th5-9の椎弓切除術と腫瘍摘出術を施行した.腫瘍は脊柱管内後方に位置し,周囲脂肪組織との境界が不明瞭であり,組織学的に血管脂肪腫であった.術後には,全ての症状は消失した.硬膜外血管脂肪腫は全脊髄腫瘍の0.1%を占める稀な腫瘍である.症状の増悪,軽快がみられることが特徴の1つであり,他の脊髄疾患との鑑別上重要である.その原因として,①腫瘍体積の増減,②腫瘍血管の盗血流現象(steal effect),③腫瘍内出血が考えられている.また,周囲の脂肪組織との境界が不明瞭であることがあり,取り残しを防ぐため,正常硬膜外脂肪組織の一部も含めて充分に切除することが重要である.
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