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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科26巻9号

1991年09月発行

雑誌目次

視座

整形外科の境界領域とフィールドワーク

著者: 原田征行

ページ範囲:P.1009 - P.1010

 整形外科医を希望する医師が近年増加の傾向にあると言われている.日本整形外科学会に毎年入会する新入会員が900人を越える数である.これは卒業し,国家試験に合格する8600人前後という人数に比較すると,医師になった11%近くが整形外科を希望していることになる.
 この数字の裏付けは,我々の教室でもみられ,入局希望者も年々増加している.ドイツ医学の分類からかつては外科はメジャー,整形外科はマイナーの科とされていた.入局者が少なかったことに加えて整形外科の分野が必ずしも特定されていなかったためもあろうかと思われる.

論述

胸椎・胸腰椎移行部損傷に対する我々のHarrington instrumentationについて―dynamic stabilizationの応用

著者: 清水敬親 ,   塩島和弘 ,   森隆之 ,   堺堀洋治 ,   石井秀幸

ページ範囲:P.1011 - P.1019

 抄録:胸椎・胸腰椎損傷に対するHarrington法について我々の手術手技を詳述し,36例の臨床結果を報告した,「distraction rodの弾性」と「前縦靱帯の張力」を巧みに利用したdynamic stabilizationによる強力な3点固定の概念をよく理解して用いれば,3椎間のみのshort Harrington法も十分可能でありinstrumentation failureも極めて少ない事を示した.「強力な整復力と内固定力」,「固定範囲の短縮化」,「短期的・長期的合併症の予防」,「抜去可能],[骨粗鬆症への対応]という解決すべき5条件について検討してみると,最近のHarrington法に対する各方面からの批判とは裏腹にむしろ本法が優れた能力を持っている事が示唆された.dynamic stabilizationが実行できるか否かに本法の成否がかかっている.

足関節靱帯損傷に合併する関節軟骨損傷―関節鏡所見

著者: 多賀一郎 ,   史野根生 ,   井上雅裕 ,   永野重郎 ,   前田朗 ,   小野啓郎

ページ範囲:P.1021 - P.1027

 抄録:陳旧性足関節靱帯損傷に対する靱帯再建術後も足関節痛が遺残する症例にしばしば遭遇するが,その原因を知るために関節鏡検査を施行し関節内病変合併の有無を調べた.対象は足関節外側靱帯損傷患者31例(新鮮損傷9例,陳旧損傷22例;男16例,女15例;平均年齢20歳)であった.全例,靱帯縫合術あるいは靱帯再建術を施行した患者で,手術の直前に関節鏡検査を施行した.関節軟骨損傷は,新鮮例の89%,陳旧例の95%にみられた.これらの病変はほとんどが関節の内側半分にみられ,特に脛骨天蓋の前内側に多かった.このうち,重度の関節軟骨病変は陳旧例の8例にみられたが,新鮮例にはみられなかった.術後1年以上経過した現在,遺残関節痛は,重度の病変を有する8例のうち4例に軟骨病変に一致した部位にみられた.足関節靱帯損傷では陳旧例ほど軟骨損傷を高率に合併しており,重度なものは関節痛の原因となりうる.

手術手技 私のくふう

アキレス腱皮下断裂に対する経皮的縫合法について

著者: 泉清治 ,   林泰夫 ,   上村光治 ,   外園不二夫 ,   小糸博文 ,   伊達徹 ,   田中宏明 ,   高木茂 ,   緒方博司

ページ範囲:P.1029 - P.1033

 抄録:目的;アキレス腱断裂の観血的縫合に伴う局所感染,皮膚と腱との癒着,皮膚綾痕形成などを防止する目的で,我々は最近,経皮的縫合法を採用しているので,その治療法の実際と成績を報告する.方法;直径2.4mmのスタインマンピンの中央に穴をあけ,両端を鋭くした約15cmの縫合針を作成して用いた.アキレス腱断裂端のそれぞれ2cm近位,遠位側の内,外側の4ヵ所に局麻後,近位内側部に約0.5cmの皮切を加え,ここより縫合針で順に腱縫合を行った.後療法としては足関節下垂位ギプス,中間位ギプス固定をそれぞれ3週間行い,術後4週から荷重歩行を許可した.結果;症例は7例,全例スポーツが原因の完全断裂で,受傷から手術までの期間,手術時間,入院期間,手術から職場復帰の期間はそれぞれ平均1.6日,16分,28日,2.3ヵ月であった.足関節の背屈制限は健側と比較して5°以内であり,美容的にも良好で,短期成績ではあるが再断裂はない.

境界領域

関節疾患に使用される生体材料の核磁気共鳴画像におよぼす影響

著者: 久保俊一 ,   堀井基行 ,   平澤泰介

ページ範囲:P.1035 - P.1038

 抄録:MRIは整形外科領域に広く普及する画像診断となった.一方,整形外科の治療には金属を主とした生体材料が用いられることが多く,これらの症例でMRIによる検索が行われたとき使用した生体材料の画像への影響が大きな問題となる.この影響を明らかにする目的で,現在用いられている生体材料として組成の異なる各種人工骨頭と各種ネジをファントム(塩化ニッケル溶液)中に入れて撮像し,周囲画像への影響を検討した.その結果,金属材料のうちでは強磁性体の含有比の小さいtitanium合金製の生体材料で画像の歪みが小さく実用的と考えられた.

整形外科を育てた人達 第96回

Max zur Verth(1847-1941)

著者: 天児民和

ページ範囲:P.1039 - P.1041

 Max zur Verthは四肢切断の場合に私は学生時代にその名を聞いていた.切断に成功しても義肢の装着に都合の良い切断部位をzur Verthが研究発表していたから,若い学生であった私も今日までzur Verthのことは時々思い出す.

臨床経験

化膿性仙腸関節炎の1例

著者: 武田記和 ,   光野一郎 ,   𣳾永募 ,   井戸一博 ,   西賀隆夫 ,   藤田仁

ページ範囲:P.1043 - P.1046

 抄録:症例は31歳,女性.昭和63年3月20日,左下肢の倦怠感,跛行を生じ,同夜入浴後,左殿部の激痛のため起立不能となった.入院時,仰臥位をとったまま体動不能であった.SLRの制限を認め,根性坐骨神経痛様であったが,発熱等の炎症所見を認めた.Ga scan,bone scanで左仙腸関節部に異常集積像を認め,enhanced CTで左仙腸関節前方に膿瘍を認めた.動脈血培養でStaphylococcus aureusが検出された.安静と抗生剤投与で軽快し,膿瘍も消失した.化膿性仙腸関節炎は比較的稀な疾患で早期診断が困難と言われている.本症例ではbone scan,Ga scanが早期診断に有用で,感染部位の検索に適していた,更に感染巣の詳細な把握にはenhanced CTが有用であった,また,抗生剤投与を早期に開始したため膿瘍に対し手術的療法を必要としなかった.日常診療において,仙腸関節ストレステスト(pelviccompression test,Gaenslen test,Patrick test)の必要性を強調したい.

銅欠乏症により特異な骨変化のみられた1例

著者: 二井英二 ,   横角健二 ,   原親弘 ,   荻原義郎 ,   山崎征治

ページ範囲:P.1047 - P.1051

 抄録:症例は,2歳の男児で,先天性多発性小腸閉鎖症の術後,短小腸症候群となり,完全静脈栄養施行中,四肢の腫脹,運動制限をきたし,X線上四肢の著明な骨膜性骨肥厚所見がみられた.完全静脈栄養の既往,血清銅値の低下,著明な全身の筋緊張の低下等より,銅欠乏症によるcollagenの代謝異常のため起こった骨変化と診断した.銅は,種々の反応における触媒作用を有し,重要な機能としては,ミトコンドリアにおけるエネルギー代謝,エラスチンおよびコラーゲン形成,色素形成,造血機能に関するものなどがあげられ,その欠乏により様々な症状を呈する.人における銅欠乏症は,欧米25例,本邦8例,計33例の報告がみられるが,本症例のように完全静脈栄養による銅欠乏症で骨変化のみられたものは,欧米7例,本邦3例の計10例の報告をみるに過ぎない.X線上の変化は,くる病様,壊血病様とされており,これらとの鑑別が特に重要である.

最近経験した骨関節結核の8例

著者: 西村英也 ,   西塔誠

ページ範囲:P.1053 - P.1057

 抄録:1988~1989年に経験した骨関節結核の8例を報告した.年齢は18~72歳,男性5例,女性3例.罹患部位は脊椎6例,膝関節1例,足根骨1例である.三者併用を主とした化学療法を行い,膝関節,足根骨の2例は手術療法も加えた.鑑別診断に難渋した脊椎結核例(症例5)と,数十年間寝たきりであったが,化学療法を加えながら運動療法を行い,結核の再燃なく歩行に至った脊椎結核例(症例8)の2例を供覧し,脊椎結核の鑑別診断と骨関節結核の化学療法について若干の文献的考察を加えた.

変形性股関節症に対する関節固定術の長期成績

著者: 村瀬伸哉 ,   永田正博 ,   青木茂夫 ,   大久保俊彦 ,   三木英之 ,   渡辺偉二 ,   岡本連三 ,   腰野富久

ページ範囲:P.1059 - P.1065

 抄録:変形性股関節症に対する関節固定術の適応は,近年では人工関節置換術等の進歩,普及により減少しているが,今回その長期成績を再検討した.症例は6例で,性別は全例女性,手術時年齢は28~49歳,平均43歳,追跡期間は9~16年であった.成績の評価は日整会判定基準,X線所見等により行った.なお,2例が両側変股症であった.結果は4例の片側変股症では疼痛,歩行能力の改善を認め良好で,患者の満足度も高かった.両側変股症のうち1例は非固定側に軽度の疼痛が出現したが,X線上は変化を認めなかった.他の1例は非固定側の悪化を認めた.非固定側の変化の強いものに対する固定術の適応は問題があると考えられた.

舟状骨骨折を伴った手関節脱臼の1例

著者: 小田孝明 ,   中島秀人 ,   大野博史 ,   田中修 ,   下村裕 ,   政田和洋

ページ範囲:P.1067 - P.1070

 抄録:極めてまれな舟状骨骨折を合併した手関節掌側脱臼の1例を報告する.
 症例は24歳男子で,単車走行中に転倒して受傷した.X線所見にて,橈骨掌側縁の小骨折をともなった橈骨手根骨間関節の掌側脱臼を認めたため,Watson-Jonse IV型の手関節脱臼と診断した.また,舟状骨骨折を合併していた.術中所見では,橈骨手根骨間関節の掌側靱帯の広範な断裂が認められたため,掌側骨片の内固定と靱帯の修復術を行い,術後経過は良好である.

月状骨骨折後,偽関節と壊死をきたした1例

著者: 小林昌幸 ,   三浪明男 ,   糸賀英也 ,   荻野利彦

ページ範囲:P.1071 - P.1075

 抄録:月状骨骨折は発生頻度が低く,その報告例は少ない.今回,筆者らは月状骨骨折後,骨折部が偽関節を呈し,さらに月状骨が壊死に陥った症例を経験したので報告する.また月状骨骨折とKienbock病の発生原因との関連について考察する.
 症例は21歳の男性で,交通事故にて左手関節を受傷した.初診時単純X線写真で月状骨骨折を認め,ギプスによる外固定を行った.しかし受傷後3週で,他医にてギプスを除去された.受傷後8ヵ月で当科を再診した時点では,月状骨骨折は偽関節となっていた.さらに手術時の病理組織学的検査により月状骨が骨壊死に陥っていることが確認された.

3椎体に発生した腰椎分離すべり症の1例

著者: 千葉英史

ページ範囲:P.1077 - P.1080

 抄録:極めて稀な3椎体に発生した腰椎分離すべり症の1例を経験した.症例は53歳,男性.若い頃から伐採作業,セメント破砕作業を行い,腰痛を覚えることがあった.50歳頃から右下肢のしびれを伴い増悪した腰痛のため歩行困難となり当科を受診した.腰椎不橈性つよく下肢反射は正常,Lasègue症候陰性で,右第5腰神経障害を認めた.X線像で椎体骨棘や椎間関節症性の変化に加え,両側第3,4腰椎分離症および第5腰椎分離すべり症を認めた.治療として各分離部への骨移植と第3腰椎一仙骨間後側方固定術を行い,術後7ヵ月で原職に復帰した.4年4ヵ月の現在も症状なく就労している,本症発生の原因は重労働による疲労骨折と考えられた.

手指基節骨頸部骨折の治療経験―rotational supracondylar fractureの9症例

著者: 小酒井治 ,   田名部誠悦 ,   山内裕雄 ,   楠瀬浩一

ページ範囲:P.1081 - P.1084

 抄録:手指基節骨頸部骨折のいわゆるrotational supracondylar fractureは,主に小児に見られる比較的稀な骨折とされ,その治療法についても論議の絶えないところである,今回,我々が経験した9症例について,若干の文献的考察を加え報告する.
 症例;9症例の平均年齢は13.3歳であり,9症例中6症例は徒手整復を試み,アルフェンスシーネ或いは絆創膏による固定を行った.結果としてはROMも保たれ,ADL上特に支障は見られなかった.整復されずに放置された陳旧例や整復困難例など3症例は観血的療法を行ったが,PIP関節の拘縮等を残しているものも見られ,結果としては芳しくなかった.
 結語;当骨折は原則として保存的療法で試みるべきであり,回旋(回転)転位にさえ注意すれば,良好な結果を得られるものと考えられる.

長母指伸筋腱,長橈側手根伸筋腱,伸筋支帯間の破格腱の1例

著者: 谷口泰徳 ,   吉田宗人 ,   船岡信彦 ,   島欽也 ,   池田芳樹

ページ範囲:P.1085 - P.1087

 抄録:われわれは長母指伸筋腱,長橈側手根伸筋腱,伸筋支帯間の稀な破格腱を1例経験したので報告する.症例は20歳の男性で,右前腕伸側に瘢痕状の筋萎縮を伴った陳旧性の後骨間神経麻痺に対して1990年5月25日,手指の伸展機能再建のため津下法による腱移行術を施行した.その術中に以下の破格腱が確認された.すなわち,長橈側手根伸筋腱の橈側に副腱が存在し,さらにその副腱は伸筋支帯から起始した腱と癒合しており,その癒合した破格腱は第1中手骨の中央レベルで長母指伸筋腱に連絡していた.この破格腱は,小杉らの分類による長母指伸筋腱IV b型と長橈側手根伸筋腱III d型の混合したタイプと推察された.
 過去の伸筋腱の解剖学的研究の報告にも.われわれの症例のように長母指伸筋腱.長橈側手根伸筋腱,伸筋支帯間に連絡をもつ破格腱の記載はなく非常に稀な破格腱と考えられた.

Ehlers-Danlos症候群の兄妹例

著者: 二井英二 ,   横角健二 ,   原親弘

ページ範囲:P.1089 - P.1093

 抄録:Ehlers-Danlos症候群(以下EDSと略す)は,関節の過可動性,皮膚の過伸展性,皮膚の脆弱性を3徴候とする比較的稀な遺伝性結合組織性疾患群として知られている.今回我々は,VI型と思われるEDSの兄妹例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告した.症例は,いとこ結婚の両親を持つ22歳と19歳の兄妹例で,その他の家族歴には特記すべき事項はなかった.EDSは現在,臨床的,遺伝学的,生化学的にIIの亜型に分類されている.本症の病因についてはコラーゲンの成熟機能の障害が予想され,近年,各型において生化学的欠損が明らかにされつつあり,IV,V,VI,VII,IX,X型では各種の酵素欠損が明らかにされている.EDSの報告は,本邦において現在までに81例の報告がみられている.そのうちVI型と診断されたEDSの報告は7例あるが,臨床所見を中心にした診断であり,酵素欠損を証明したものはみられない.本症例においても,皮膚生検等による生化学的検索は行っていないため,酵素欠損の有無は不明であるが,臨床症状,遺伝等より眼症状型であるVI型と診断した.

誤嚥性肺炎を反復した強直性脊椎骨増殖症の1例

著者: 時岡孝光 ,   安田舜一 ,   光田昌弘 ,   西山瑩

ページ範囲:P.1095 - P.1098

 抄録:誤嚥性肺炎を繰り返した強直性脊椎骨増殖症の1例を経験した.症例は74歳の男性で,頸椎C3からC7の巨大な前縦靱帯骨化が食道を圧迫していた.骨化巣を切除したが術直後に誤嚥性肺炎を起こしたため,鼻腔栄養を行いながら2週間後より摂食訓練を開始し,約2ヵ月で嚥下が可能となった.嚥下困難の原因は単に物理的圧迫のみならず,食道の器質的変化が生じて嚥下機能障害が起きたと考えられた.術後の嚥下機能の回復は迅速には得られず,誤嚥防止対策や段階的な摂食訓練などの注意深い術後管理が必要と思われた.

関節唇が骨頭―臼蓋間に介在していた変形性股関節症の3症例

著者: 山崎謙 ,   黒木良克 ,   斉藤進 ,   扇谷浩文 ,   小原周 ,   林淳慈

ページ範囲:P.1099 - P.1103

 抄録:関節唇が股関節の機能上どのような役割を果たすかはいまだ明らかではない.今回,筆者らは変形性股関節症(以下変股症と略す)について,股関節唇が骨頭-臼蓋間に介在した3例を股関節造影,股関節鏡を用いて確認し得たので報告した.
 新生児,乳児の股関節において骨性部分に比較して軟骨成分が多く骨頭に対する骨性臼蓋の幅は非常に小さい.従って歩行を始める前段階と,歩行を始めて十分な骨性臼蓋が発育する成長段階ではlimbusは臼蓋の深さを増し求心性を保つため,正常の股関節の発育には必要不可欠であろうと,筆者らは考えている.
 しかし,成長終了時に関節唇が骨頭-臼蓋に介在する場合,股関節痛の原因となり,また相対する骨頭側の軟骨を損傷する可能性があるため,術前に関節造影,関節鏡を行いlimbusの状態を検索する必要がある.また骨頭-臼蓋に介在するlimbusが股関節に対し悪影響を及ぼす場合,摘出したほうがよいと思われた.

外側広筋に発生した化膿性筋炎の1例

著者: 猪飼純市 ,   松井寿夫 ,   金森昌彦 ,   北本亮一

ページ範囲:P.1105 - P.1107

 抄録:症例は34歳女性,右大腿後外側部の打撲2ヵ月後より,局所の腫脹,疼痛,熱感および弛張熱が出現した.波動は触れず,皮膚との癒着はなかった.MRIでは,T1強調像およびプロトン密度像で高輝度を呈する異常陰影を右外側広筋内に認めた.腫瘤の穿刺液の培養にて,黄色ブドウ球菌が検出され,化膿性外側広筋炎と診断された,発症には打撲が関連していたと推察された.排膿・病巣掻爬および抗生物質の投与にて治癒した.

上腕二頭筋長頭腱皮下断裂

著者: 荒木聰 ,   内山真 ,   岸具弘 ,   西村隆

ページ範囲:P.1109 - P.1113

 抄録:上腕二頭筋長頭腱皮下断裂は,国外ではその多数例報告が散見されるが本邦での報告は比較的少ない.本皮下断裂は中高年齢層に多く発症し,受傷機転のはっきりしない例が多い.また発症から受診まで比較的長期間を経る例が多い.成因として,長期間の使用によるストレスのため上腕二頭筋長頭腱が変性に陥り断裂に至ったものと考えられている,その治療法に関しては,観血的あるいは保存的と意見が分かれている.我々は最近8年間に10例の本皮下断裂を経験し,治療はすべて放置経過観察とした.3ヵ月から5年の経過観察後の予後は全例日常生活に支障なく良好であった.以上の経験より,我々は壮年以降の本断裂の治療は放置が最善の方法であろうと考えている.

肋骨に発生した血管内皮腫の1例

著者: 山崎克彦 ,   鴨川盛秀 ,   大野烈士 ,   盛本正男

ページ範囲:P.1115 - P.1118

 抄録:肋骨に発生した血管内皮腫の1症例を経験したので報告する.
 症例は50歳男性で,右側胸部痛が出現し,X線上肋骨に異常陰影を指摘されたがそのまま放置し,2年後に当科を初診した.X線上右第6肋骨は基部から近位1/3にかけて膨隆し,同部の骨皮質の破綻は見られなかった.骨外への腫瘍の波及は見られなかったが,過去2年間で急速な拡大が認められたので,悪性腫瘍も考え胸膜・肋間筋を含めて腫瘍部分を広範に切除した.組織学的には,管腔を形成し異型性を有する内皮細胞の増殖が認められたことより血管内皮腫と診断した.
 骨に発生する血管内皮腫は,原発性骨悪性腫瘍中稀であり,その発生部位,組織像について若干の考察を加えた.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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