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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科27巻10号

1992年10月発行

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視座

医学情報知識の重量

著者: 東田紀彦

ページ範囲:P.1107 - P.1107

 先日,医学書院から送られて来たメディカルインフォメーションをみると,本年度後半に開催が予定されている整形外科関係の学会は20ある.各種の研究会や地方会を含めると整形外科関連学会は年間300以上にもなろう.
 臨床医学は細分化されると共に学際領域の拡大は著しく,それぞれの学会も認定医や専門医制度を規定したところが多く,その取得と維持のため生涯教育を受けることが医師の宿命となった.

論述

頸髄症に対するナロキソン髄注療法の効果について

著者: 望月真人 ,   後藤澄雄 ,   村上正純 ,   喜多恒次 ,   小林康正 ,   袖山知典 ,   南昌平 ,   北原宏 ,   守屋秀繁 ,   岡本弦 ,   豊田敦

ページ範囲:P.1108 - P.1113

 抄録:頸髄症症例に対して,ナロキソン2mgのくも膜下腔注入療法の臨床効果及び電気生理学的所見について報告した.臨床効果としては,頸髄症による四肢遠位の異常知覚,特に上肢の異常知覚に関しては,ほぼ90%の症例に効果が認められた.また筋萎縮を主訴とした症例では6例中4例に筋力増強効果があった.効果発現は投与直後より15分以内に認められたが,効果持続は最長8日間であり,他の症例では6時間以内に消失する傾向があった.電気生理学的には,術中同様にナロキソン2mgを投与し,一側の正中あるいは尺骨神経刺激による分節性脊髄誘発電位の振幅変化を検討した.ナロキソン投与直後より10分以内に最大陰性波の振幅増大があり,その後徐々に減少傾向を示した.ナロキソンの効果は一過性であるが,今後は投与回数,投与方法の工夫により有用な治療薬となるものと思われる.また障害脊髄の機能予後判断との観点からナロキソンの使用も考えられた.

AWガラスセラミック製椎弓スペーサー使用による棘突起縦割法頸椎脊柱管拡大術の経験

著者: 加茂裕樹 ,   竹光義治 ,   浜田修 ,   山賀慎一

ページ範囲:P.1115 - P.1122

 抄録:棘突起縦割法頸椎脊柱管拡大術において,生体活性AWガラスセラミックを用いて新しい椎弓スペーサーを作製し,その臨床成績を検討した.症例は27例(男18,女9),手術時平均年齢は59歳,経過観察期間は平均18ヵ月であった.スペーサーはlarge typeとsmall typeの2種類で計109個を使用した.単純X線写真にて術後1ヵ月の初期固定性,経過観察時の安定性を検討したが,初期固定性は全例優であり,安定性は優11例,良15例であり,不可は皆無であった.6ヵ月以上経過観察し得た20例において,CTで椎弓との結合状態,骨の新生状態を検討した.結合状態,骨新生状態ともに頭側で高く,尾側で低い傾向があった、平均84%で結合が得られており,83%で骨新生がみられた.後屈回旋時に雑音を呈し不快感を訴える例が5例あった.棘突起縦割法頸椎脊柱管拡大術での椎弓スペーサー使用は臨床上,安全であり,手術侵襲を軽減することができ,有用である.

脛骨骨折に対するエンダー法の検討―骨折型と仮骨量について

著者: 山路哲生 ,   安藤謙一 ,   佐々本博 ,   中村秀明 ,   沼尻保 ,   岡本健 ,   片田重彦

ページ範囲:P.1123 - P.1130

 抄録:過去5年間に脛骨骨折に対してエンダー法を行った84例87肢において,仮骨,特に外仮骨形成に影響を与える臨床的な条件について調査した.X線学的に脛骨骨折部に術後出現した外仮骨の横断面を楕円形として,その断面積を測定し仮骨量とした.外仮骨形成は,粉砕骨折において単純骨折の約2倍も多く形成されていた.
 従来,粉砕骨折の骨癒合には強固な固定が必要とされてきたが,エンダー法による弾性固定を行えば,多量の仮骨形成が促され良好な骨癒合が可能となることがわかった.

慢性関節リウマチにおけるD-penicillamine長期投与例の検討―とくに効果減弱例について

著者: 浜田佳哲 ,   四宮文男 ,   岡田正彦 ,   神沢賢 ,   大石達生 ,   荒木誠

ページ範囲:P.1131 - P.1136

 抄録:抗リウマチ剤であるD-penicillamine(DP)の長期的有用性について,とくに効果減弱例との関連で検討した.我々はDPを金剤などが無効例への第2選択として1日100mg程度の低量長期投与法で使用している.無効あるいは副作用中止例を除き1年~10年9ヵ月,平均3年8ヵ月間投与しえたRA 110例を対象にLansbury活動指数,lg値,血清補体価,RFの経年的変化を調査した.Lansbury指数は投与前平均68.6%から,投与後1年で29.6%,2年で32.2%,3年で33.6%へと改善を示し,lg値の低下も有意であった.炎症が再燃しBucillamineなどへ移行した効果減弱例は,投与後2年と6年に多く計44例にみられ,これらは炎症再燃に先行してlg値が高値を示していた.DPの効果が持続した例は5年で75%,10年で50%であった.DPの長期的有用性は高いが,効果減弱例の存在は明らかであり留意が必要と思われた.

整形外科を育てた人達 第108回

飯野三郎教授(1908~1978)

著者: 天児民和

ページ範囲:P.1138 - P.1141

 飯野教授は東北大学整形外科の二代目の教授である.初代は三木威勇治であったが,昭和24年に東京大学の高木教授が定年退職され,その後任に三木教授が選ばれて東京大学に移られた.そのため東京逓信病院から飯野三郎博士が選ばれ,昭和24年5月30日に東北大学整形外科教授に着任されて22年余を仙台で活躍された.

整形外科英語ア・ラ・カルト・4

BONE(ボーン)(その2)

著者: 木村專太郎

ページ範囲:P.1142 - P.1143

 前回は骨のことを書き,頭部から橈骨の部分よで書いたので,そのつづきを書く.

臨床経験

人工靱帯を用いて補強した足関節外側側副靱帯新鮮損傷の治療例

著者: 臼田修二 ,   加藤哲也 ,   細川昌俊 ,   横井秋夫 ,   高橋正明

ページ範囲:P.1145 - P.1150

 抄録:足関節外側側副靱帯新鮮損傷の症例のうち,一次縫合では強度が不十分と判断される場合,また早期復帰を希望するスポーツ選手に対して,Leeds-Keio人工靱帯を用いて補強を行った.症例はスポーツ選手5例,5関節である.手術はElmslie法に準じて,前距腓靱帯,踵腓靱帯を人工靱帯で補強する方法である.後療法は,術後4,5日でギプスシーネを除去し,2週後より部分荷重を開始する.4週後より軽いランニングを許可し,6週以後,全力疾走が可能になったらスポーツに復帰させている.
 結果は,平均で術前の前方引き出し11mm,距骨傾斜骨7°が,術後それぞれ4mm,3°に改善した.日常生活への復帰は6週,スポーツへの復帰は8週で可能であった.日整会成績判定基準によれば術前56点が95点となった.

乳児に発生した脊髄損傷の1例

著者: 坪田聡 ,   五十嵐一郎 ,   沼田仁成 ,   鹿野尚英

ページ範囲:P.1151 - P.1154

 抄録:乳児に発生した,骨傷を伴わない外傷性脊髄損傷を経験した.症例は10ヵ月の女児で交通事故にて受傷し,対麻痺を主訴として当科受診.初診時,第4腰髄以下の知覚障害と完全弛緩性対麻痺があり,深部腱反射は消失していた.胸腰椎単純X線像では異常所見はなかったが,受傷後1週目のmagnetic resonance imaging(MRI)で第12胸椎/第1腰椎椎間板高位の脊髄に,T1強調画像で低信号強度,T2強調画像でも低信号強度で一部高信号強度の所見があり脊髄内の出血と浮腫と考えられた.受傷後7週目のMRIでは,T1,T2強調画像とも脊髄萎縮を認め,同部はT1強調画像で低信号強度,T2強調画像で高信号強度であり,空洞の形成過程と考えられた.本症のように骨傷を伴わない脊髄損傷に対して,MRIは損傷高位および範囲の検索や経時的変化の観察に大変有用である.

外傷性舟状骨・月状骨間解離の治療経験

著者: 井上五郎 ,   桑波田恵生

ページ範囲:P.1155 - P.1158

 抄録:舟状骨・月状骨靱帯の破綻によって生ずる外傷性舟状骨・月状骨間解離の新鮮例5例に観血的整復・靱帯縫合術を行った.X線的評価では3例に3mm以上の舟状骨・月状骨間間隙が残ったが,Cooneyの手関節機能評価基準による臨床的評価は優1,良2,可1,不可1であった.
 手関節過伸展外傷においては必ず本外傷を念頭において診察すべきであり,その治療は観血的整復・靱帯縫合術を行うのが望ましい.

TAE(transcatheter arterial embolisation)にて救命し得た血管損傷を伴う骨盤,大腿骨骨折の治療経験

著者: 由良茂人 ,   富永芳徳 ,   柏木直也 ,   竹中幸治

ページ範囲:P.1159 - P.1163

 抄録:4例の血管損傷を伴った骨盤,大腿骨骨折に対して経カテーテル的動脈塞栓術(transcatheter arterial embolization;TAE)による止血を施行した.初期治療においてこの方法は非常に有効な救命手段であった.

腹直筋皮弁による大転子部潰瘍の2治験例

著者: 茂木定之 ,   生田義和

ページ範囲:P.1165 - P.1168

 抄録:単純に縫合閉鎖出来ない大転子部潰瘍の治療方法として,大腿部を中心に各種の皮弁がある.しかし創周囲に瘢痕が著明で周辺から皮弁を挙上出来ない時,治療は困難である.胸壁乳房,頭部,四肢の再建によく利用されている腹直筋皮弁は,下腹壁動静脈を血管柄とする有茎皮弁として大転子部の再建に利用可能である.今回我々は周囲に手術療痕を認める大転子部潰瘍の2症例の治療に,腹直筋皮弁を使用し良好な結果を得た.多くの利点を有する腹直筋皮弁は,大転子部潰瘍の有力な治療手段と思われた.

アキレス腱病的断裂をきたした透析患者の1例

著者: 由良茂人 ,   富永芳徳 ,   柏木直也 ,   竹中幸治 ,   前田士郎 ,   辻岡俊幸 ,   山本昌弘

ページ範囲:P.1169 - P.1171

 抄録:アキレス腱部に疼痛を訴えて当科を受診していた長期透析患者が,非常に軽微な外力によってアキレス腱断裂をきたした.観血的に治療を行い良好な治療結果を得たが,透析患者のアキレス腱断裂の報告は稀であり,病理学的検索を施行した.この結果,断裂部の腱組織中にβ2-microglobulin沈着によるアミロイド変性が証明された.

Brown-Séquard症候群を呈した胸髄硬膜内くも膜嚢腫の1例

著者: 藤原正利 ,   秋山治彦 ,   田村清 ,   幸茂男 ,   田中友二

ページ範囲:P.1173 - P.1176

 抄録:Brown-Séquard症候群を呈した胸髄硬膜内くも膜嚢腫の報告は極めて少なく本症例を含め2例のみである.症例は右下肢脱力を主訴とした47歳女性である.昭和60年より左下肢の知覚鈍麻を自覚,昭和62年頃より右下肢の脱力をきたし歩行困難が徐々に進行したため平成元年11月当科初診.Brown-Séquard症候群を呈しており,MRIにて胸髄くも膜嚢腫を疑い,平成2年4月入院となる.同月,Th4~6の椎弓切除を行い硬膜切開したところ,くも膜嚢腫を認め,脊髄は圧迫されていたため,嚢腫を摘出した.術後左下肢の知覚鈍麻は消失し,右下肢の筋力も改善した.

骨肉腫に対する術中照射を利用した患肢温存手術の工夫

著者: 平野徹 ,   岩崎勝郎 ,   神代敏之 ,   林靖之

ページ範囲:P.1177 - P.1182

 抄録:大腿骨遠位部および脛骨近位部の骨肉腫6例に対して,術中照射を利用した患肢温存手術を行い,その術後成績を臨床的に検討した.手術は次のような手順で行った.①病巣を周囲軟部組織からcurativeないしwide marginで切離する。②骨幹部で骨切りを行い,病巣を持ち上げ照射野を設定後,60~85Gyの術中照射を施行する.③その後,照射野内の軟部組織や脆い腫瘍組織は,関節包と靱帯以外,可及的に切除する.④骨切り部を内固定し,骨掻爬部には骨移植を追加する.術後観察期間は平均1年4ヵ月で,術後合併症として創部の表層感染が1例に,創癒合遅延が2例に起きたがいずれも治癒した.局所再発は認めていない.温存患肢機能は優,良,可が1例,3例,2例であった.脛骨近位部例は優と良であり,本手術法はこの部の骨肉腫に対して特に良い適応と考えた.

腰椎に発生したganglioneuromaの1例

著者: 武上泰光 ,   石田義人 ,   長坂昌登 ,   熊谷俊幸 ,   筒井祥博 ,   小野芳裕

ページ範囲:P.1183 - P.1186

 抄録:神経節腫はneuroblastomaなどと共に交感神経系由来の腫瘍に分類される良性腫瘍であるが,脊柱管内にみられることは稀である.この腫瘍は緩徐に発育し,脊柱管内の神経節腫では,症状的に神経筋疾患と類似した経過を取る例の報告が散見される.病理組織学的には神経線維腫や機械的刺激によって肥大した脊髄神経根などとの鑑別が問題となる.また,高率に側彎症を合併する.我々の脊柱管内神経節腫の1例は,4歳の女児にみられ,脊柱側彎症として経過を追っていたが,脊髄性筋萎縮症と類似した経過を呈した.経過観察中下肢痛が出現し,下肢の筋力低下が急に悪化し,麻痺症状を呈した.MRIによってdumb-bell tumorが発見され,腫瘍摘出術によって症状は改善した.

遠位関節拘縮症候群の1例

著者: 二井英二 ,   小保方浩一 ,   原親弘 ,   平田仁 ,   須藤啓広 ,   藤浪周一

ページ範囲:P.1187 - P.1190

 抄録:遠位関節拘縮症候群に舌奇形を伴った稀な1例を経験したので報告した.症例は,1歳3カ月の女児で,両側手指に屈曲拘縮,両足関節に尖足変形がみられ,その他の近位関節には拘縮はみられなかった.舌は,両側縁が上方に反転し,巻き舌状に変形しており,常時口唇より突出していた.Hallは,遠位関節拘縮症候群を遠位関節の拘縮のみで,顔面脊柱に奇形または変形のみられないものを1型,みられるものをII型に分け,さらにII型をその合併奇形により5つの亜型に分類している.II型の報告は非常に稀であり,また,これらの分類のいずれにも当てはまらない症例の報告が散見されている.また,舌の奇形は非常に稀なもので,報告例は少なく,特に本症例のように巻き舌様の奇形は,我々が調べ得た限りでは本邦において報告はみられない.本症例も舌奇形を伴っていることからII型に分類できると思われるが,どの亜型にも分類不可能であり,単に遠位関節拘縮症候群II型とすべきであると思われた.

興味ある非外傷性橈骨頭単独脱臼の1例

著者: 尼子雅敏 ,   政田和洋 ,   山沢猛 ,   大野博史 ,   稲森康彰 ,   今井智仁 ,   下村裕 ,   原孝

ページ範囲:P.1191 - P.1193

 抄録:非外傷性橈骨頭単独脱臼は,先天性のものとdevelopmentalなものとに分類される.今回我々は明らかにdevelopmentalと思われる1例を経験した.この症例は片側の非外傷性橈骨頭単独脱臼の治療中に反対側の橈骨頭前方脱臼をきたしたものであり,X線上両側の尺骨骨幹部に前方凸の骨性隆起が認められた他には異常所見は認められなかった.渉猟し得た範囲ではこのような報告は見当たらないので報告した.

low grade central osteosarcomaの2例

著者: 石田博英 ,   松野丈夫 ,   金田清志

ページ範囲:P.1195 - P.1199

 抄録:low grade central osteosarcoma(以下LGCOS)は1977年にUnniらにより報告された臨床的予後の良好な骨肉腫であるとされているが,本邦での報告例は極めて少ない.我々は,このLGCOSの2例を経験したので,若干の考察を加え報告する.〈症例1〉40歳,女性.右膝部痛を主訴として当科入院.諸検査の結果より骨肉腫と判断し右大腿切断術を施行.切断標本組織所見からLGCOSと診断した、術後.12年9ヵ月を経過し,再発・転移を認めていない.〈症例2〉19歳,女性.左上腕部痛を主訴として初診.左上腕骨近位骨幹端部に異常陰影を認め入院.諸検査の結果LGCOSと診断し広範囲切除術を施行した.術後5年1ヵ月経過の現在,再発・転移を認めていない.我々はLGCOSの組織学的診断基準として腫瘍内のごく一部にでもhigh gradeの部分が見られた場合には,この腫瘍の範躊に含めてはならないと考えている.本腫瘍の治療法は広範囲切除術であり,化学療法の必要性は少ないと考えられる.

踵骨骨折による長母趾屈筋腱腱鞘炎の1例

著者: 関谷勇人 ,   水野洋宏 ,   西崎友保

ページ範囲:P.1201 - P.1204

 抄録:踵骨骨折による長母趾屈性腱腱鞘炎を経験したので報告する.症例は32歳の男性で,右踵骨骨折後7週頃から右母趾の強制伸展による足関節内踝後方の疹痛を生じた.弾発現象は認めなかった.単純X線像で載距突起の直下に骨棘を認めた.右長母趾屈筋腱腱鞘内に局麻剤を注入すると約1時間症状が消失したがその後再発したので,観血的治療を施行した.長母趾屈筋腱の腱鞘を切開すると,腱には多数の線維方向の断裂を認めた.腱の滑走は骨棘の切除により初めて可能となった.

STT関節固定術後に母指CM関節症の急速な進行をきたした1例

著者: 大野博史 ,   政田和洋 ,   稲森康彰 ,   中島秀人 ,   下村裕

ページ範囲:P.1205 - P.1208

 抄録:STT関節症に対するSTT関節固定術後,母指CM関節症が急速に進行した1例について報告する.症例は61歳の主婦で,STT関節症に対してSTT関節固定術を施行した.術後疼痛は消失したが,術後7ヵ月頃から母指基部に新たな疼痛が出現した.X線上母指CM関節の不正像を認め,母指CM関節症と診断した.術前すでに母指CM関節に軽度の関節症性変化が存在し,STT関節固定術により急速な進行をきたしたものと考えられた.

腰椎高度後方脱臼骨折に施行した反張位牽引療法

著者: 千川隆志 ,   川端義正 ,   浦岡秀行 ,   杉峰雅彦

ページ範囲:P.1209 - P.1212

 抄録:腰椎脱臼骨折の多くは,胸腰椎移行部に発生し,しかも前方脱臼骨折の型をとるが,中・下位腰椎の後方脱臼骨折は稀である.今回我々は,高度の転位を伴った腰椎後方脱臼骨折の1例を経験したので報告する.症例は58歳男性で,山桃の木より転落し受傷した.腰背部痛と歩行不能を訴え,両下肢不全麻痺の状態で来院し,X線上第2腰椎後方脱臼骨折と第3腰椎粉砕骨折を認めた.両大腿骨鋼線牽引に対抗牽引と吊り上げ法を追加した反張位牽引を施行し,良好な整復位が得られた.その後牽引を継続しつつ,その位置で反復位ギプス固定を行った.受傷後10週目に,第3腰椎椎弓切除による除圧,Harrington rodによる後方固定および後側方固定術を施行した.術後はADL上ほぼ支障なく独歩可能で経過良好である.治療は脊椎損傷一般に言えるように,早期の整復固定が必要であり,本例では良好な整復位を保持するのに反張位牽引療法が有効であった.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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