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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科27巻12号

1992年12月発行

雑誌目次

視座

患者の接遇―常識の再点検

著者: 福田宏明

ページ範囲:P.1323 - P.1323

 去る3月末で8年間の素人院長役(東海大学医学部付属大磯病院)から解放され,ほっとすると同時に,得難い経験が出来たことを感謝している.今でも時々朝の各科合同医局会で話をする場面を想いおこす.例えば対象が3カ月毎に配属される研修医諸君とする.「頭髪,ひげの手入れを怠らないこと,ネクタイをすること,白衣のボタンをかけること,みがいた靴を履くこと…」.何を今更と思われるむきもあろう.しかし,身だしなみの点検は医療の現場でもなお古くて新しい課題である.身だしなみだけではない.朝夕の挨拶が出来ない,また指導者に対する事例の報告を怠る研修医がいかに多いことか.これらの欠落現象は家庭教育に依るところが大きいと判断せざるを得ず,したがって根も深いが,研修医教育の中の重要な項目と考えられる.
 「患者は学客である」という.多くの若い研修医をかかえる大学病院では正に患者から学ぶことが日常的な仕事である.その意味で患者はわれわれの学問上の客人である.その大切な客に対する接遇の実態はどうであろうか.以前より随分良くなったとはいえ,いまだ病んでいる人の方が気を遣って医師との人間関係を構築しようと努力する場面が多いのではないか.医療の基本は,患者と医療者の相互信頼にあり,円満なinformed consentに至る経過がいかに初対面に始まる人間関係に依存するかは贅言を要さない.

論述

内側膝蓋型変形性膝関節症に対する高位脛骨骨切り術の10~15年成績―膝蓋大腿関節症の影響と脛骨粗面浮上術の効果

著者: 真島任史 ,   安田和則 ,   葛城良成 ,   金田清志

ページ範囲:P.1324 - P.1329

 抄録:内側膝蓋型変形性膝関節症(OA)に対する高位脛骨骨切り術(HTO)後10年以上経過症例26人28膝を対象とし,HTOの長期成績に与える膝蓋大腿関節(PF)OAの重症度の影響と,付加手術として行った脛骨粗面浮上術の効果を調べた.対象症例は男性8人9膝,女性18人19膝,手術時年齢は平均60.7歳,経過観察期間は10~15年,平均12年であった.脛骨粗面浮上術は12膝に行われていた.
 脛骨粗面浮上術を行っていない群において,PF-OAの重症度と臨床成績の改善点数との間には有意の連関を認めた(P<0.05).PF-OAの重症度はHTOを受けた膝の長期成績を左右する重要な因子である.PF-OA stage II,IIIの症例のなかで,脛骨粗面浮上術を行った群と行わなかった群の間には有意の差は認めなかった.PFにStage II・IIIのOAを有するHTO適応症例において,脛骨粗面浮上術は付加手術としての効果を10年以上にわたって維持していなかった.

先天性股関節脱臼におけるリーメンビューゲルによるスクリーニングの意義―骨頭壊死予防の観点から

著者: 後藤英司 ,   安藤御史 ,   伊林克也 ,   稲尾茂則

ページ範囲:P.1331 - P.1335

 抄録:乳児先天性股関節脱臼の治療において骨頭壊死予防の観点からリーメンビューゲル(RB)によるスクリーニングの意義を検討した。当科初診時未治療の119例の乳児先天性股関節脱臼に対し,38例は外来でRB治療を行い,91例は入院下に患児の反応を監視しながら治療の適応を決め,RB,Pavlansky法,徒手整復,観血的整復のいずれかを選択して行った.予後不良の全壊死の発生頻度は外来RB群で38例中2例(5.2%),入院治療群で81例中1例(1.2%)であり,外来RB群に全壊死の発生頻度が高かった.この結果から,RBによるスクリーニングは安全と言えず,治療開始時からその症例に最適の治療法を選択すべきと思われる.

骨移植を併用したTHRのX線成績―骨移植術の併用の有効性と移植骨の経時的変化

著者: 松坂成行 ,   安藤御史 ,   後藤英司

ページ範囲:P.1337 - P.1341

 抄録:切除した大腿骨頭,頸部を用いた自家骨移植術併用のチャンレー型全人工股関節置換術について移植骨の経年的変化とソケットの機械的ゆるみについて検討した.
 自家骨移植を行って術後最低4年以上を経過した低位脱臼15関節(女15例15関節,手術時平均年齢52.4歳,経過観察率100%)を同時期,同一術者で施行された非自家骨移植群28関節(男1例1関節,女25例27関節,手術時平均年齢59.8歳,経過観察率100%)と比較検討した.骨移植群ではソケットのクリアゾーンの出現頻度は有意に少なく,移植骨は荷重部では骨梁の再構築が,非荷重部では萎縮,吸収が認められたが移植骨の圧潰は認められなかった.

特発性大腿骨頭壊死症のリスク要因としての飲酒,喫煙,およびその他の因子の検討

著者: 森満 ,   福田勝洋 ,   柴田彰 ,   樋口富士男 ,   井上明生 ,   西基 ,   三宅浩次 ,   長尾正人 ,   石井清一 ,   松野丈夫 ,   安藤御史 ,   岡本哲軌 ,   山根繁 ,   廣田良夫 ,   廣畑富雄 ,   柳川洋

ページ範囲:P.1343 - P.1347

 抄録:1988年から2年間,北海道と福岡県の5医療機関において1症例に対して2対照を選定した特発性大腿骨頭壊死症の症例対照研究を行った.選定基準(ステロイド剤服用者の除外など)を満たした症例49名とその対照98名を調査した.単変量解析の結果,3ヵ月以上の肝疾患の既往歴,20歳頃および調査時のbody mass index(体重(kg)÷{身長(m)}2),Brinkman and Coates指数(1日の喫煙本数×年数),および1ヵ月当たりのアルコール摂取量(g)と本疾患の間に有意な関連がみられた.この5要因を独立変数として多変量解析的に検討した結果,20歳頃のbody mass indexは本疾患と有意な負の関連を,一方,Brinkman and Coates指数および1ヵ月当たりのアルコール摂取量(g)は有意に正の関連を示し,これら3要因と本疾患との間にはそれぞれ有意の用量反応関係がみられた.

整形外科基礎

電気刺激による骨形成の機序について

著者: 松永俊二 ,   井尻幸成 ,   酒匂崇 ,   吉国長利

ページ範囲:P.1349 - P.1355

 抄録:電気刺激による骨形成促進の機序は未だ解明されていない.我々は主として直流電気刺激を臨床応用しており,この直流電気刺激による骨形成促進の機序解明を目的とした一連の実験を行ってきた.
 実験は,電気刺激の造骨系細胞に対する直接作用を知るための組織学的,酵素組織化学的および免疫組織化学的実験と炎症などの微小環境の影響を知るため,刺激部局所の血流,血管透過性およびプロスタグランディンなどのサイトカインの関与を調べた実験からなる.この実験結果から想起される骨形成の機序としては,電気刺激による未分化間葉系細胞の分化,増殖の促進作用の他に,プロスタグランディンなどを介した炎症の関与による間接的な作用も電気刺激の骨形成機序として重要であることがわかった.

境界領域

整形外科手術における自己血輸血―血液センターとの協力について

著者: 樋口富士男 ,   山下寿 ,   井上明生 ,   清川博之 ,   前田義章

ページ範囲:P.1357 - P.1359

 抄録:自己血輸血は輸血の合併症を避ける目的で有効であるが,血液の管理に不慣れな整形外科医にとって,不便を感じることもある.血液センターと協力すれば,採血も保存も専門的にできるので,安全で簡便である.また,長期の液状保存のみならず冷凍保存法やフィブリン糊等も利用できる.

整形外科を育てた人達 第110回

Dallas Burton Phemister(1882-1951)

著者: 天児民和

ページ範囲:P.1360 - P.1362

 Phemisterは骨の解剖,生理の先達で,臨床に必要な知識を広めた功績は大きいが,特に米国では骨の病理の研究者として尊敬されているので,その伝記を執筆することに決めた.

整形外科英語ア・ラ・カルト・6

Fracture(フラクチャー)(その1)

著者: 木村專太郎

ページ範囲:P.1364 - P.1365

 今回は骨折に関することを書く.

臨床経験

ガードナー症候群に合併した軟骨芽細胞腫の1症例

著者: 片桐浩久 ,   田島宝 ,   杉山晴敏 ,   森山明夫 ,   佐藤士郎 ,   岩瀬敏樹 ,   加藤哲弘 ,   浦崎哲哉 ,   住田憲治 ,   鳥居修平 ,   山瀬博史

ページ範囲:P.1367 - P.1370

 抄録:ガードナー症候群は大腸ポリポーシス,骨腫瘍,軟部組織腫瘍を3徴候とする疾患である.大腿骨頸部病的骨折を契機に発見された23歳男性の症例を経験した.軽微な外傷で大腿骨頸部骨折を来たし,単純X線写真にて境界の比較的明瞭な骨透亮像を認めた.易出血性の腫瘍を掻爬し,captured hip screwにて骨接合後,自家骨をハイドロキシアパタイトと混合し移植した.組織所見より軟骨芽細胞腫と診断された.術前著明な貧血を認め,術後大腸ポリポーシスが発見された上頭部骨腫も認められこの時点で不完全型ガードナー症候群と診断した.結腸全摘術も行い術後経過良好であったが,3年後下腹部腫瘤が発現した.腫瘍腹壁合併切除および大腿直筋による腹壁再建術を行った.組織所見はデスモイドであり完全型ガードナー症候群と診断した.完全型ガードナー症候群は全体の10%以下と稀であり,渉猟しえた範囲では軟骨芽細胞腫の合併例はない.

項部に発生し,被膜内に骨化を認めた傍骨性脂肪腫の1例

著者: 橋間誠 ,   宗円聡 ,   熊野文雄 ,   濱西千秋 ,   田中清介 ,   細川宏一 ,   橋本重夫

ページ範囲:P.1371 - P.1373

 抄録:42歳,女性,主訴,左項部の腫瘤,平成3年5月頃より左項部隆起を自覚した.入院時所見は項部に大きさ7×8cm,表面平滑で,色素沈着や発赤,静脈怒張のない隆起を認め,腫瘤は,緊満弾性,表面平滑,境界明瞭,可動性良好で,波動,局所熱感,圧痛は認められなかった.CT,MRIにて第1~第4頸椎にかけ,棘突起及び椎弓に接して,被膜内に石灰化を伴う脂肪性の腫瘍陰影が認められた.全摘出術施行後,組織学的に成熟した脂肪組織の増殖と,被膜内と一部腫瘍内に軟骨及び骨組織が観察され,骨との密接な関係より,傍骨性脂肪腫と診断した.被膜内骨化の原因としては,項靱帯,棘間靱帯が被膜化して骨化した可能性,あるいはこれが脂肪腫でなく,骨,軟骨組織の混在する間葉腫である可能性等も考えられた.

不安定性胸・腰椎損傷に対するpedicular screwing

著者: 島田洋一 ,   佐藤光三 ,   阿部栄二 ,   山本正洋 ,   千葉光穂 ,   成田裕一郎 ,   水谷羊一 ,   森田裕己

ページ範囲:P.1375 - P.1380

 抄録:Pedicularscrewを用いて再建を行った不安定な胸・腰椎損傷について検討した.対象は12例(男11例,女1例)で,手術時年齢は平均37.5歳,経過観察期間は平均2.9年である.損傷型は屈曲回旋脱臼骨折が9例で最も多く,屈曲伸展損傷が2例,勢断脱臼骨折が1例であった.損傷高位はT11/12,T12/L1がそれぞれ3例と最も多かった.使用した内固定用システムはSteffee 4例,CD 3例,Kaneda式3例,我々のシステム(Akita式)2例であった.術前と経過観察時の麻痺の推移をみると,術前,FrankelのB,C,Dの不全麻痺9例中5例,55.6%が1段階以上の改善を示した.胸椎部の屈曲回旋脱臼骨折と屈曲伸展損傷9例の局所後彎の推移をみると,全例でよく改善し,術前の平均後彎角度25.7°が術後8.1°となり,後彎が平均68.5%改善されていた.重篤な合併症はみられず,全例で骨癒合が得られた.本法は椎体の一部にvertical stabilityが得られる場合は特によい適応があると思われた.

腸骨に発生した動脈瘤様骨嚢腫のsolid variant(Sanerkin)の1切除例

著者: 中森和仁 ,   宮崎秀一 ,   浅沼和生 ,   富田泰次 ,   室田景久 ,   二階堂孝 ,   下田忠和 ,   牛込新一郎 ,   福田国彦

ページ範囲:P.1381 - P.1384

 抄録:27歳女性の腸骨に発生した動脈瘤様骨嚢腫(solid variant)の1切除例を報告する.X線学的には右腸骨に限局する膨張性骨融解像を認めた.生検術施行後,腫瘍切除術並びに骨移植術を行った。切除標本では骨形成線維形成,小嚢胞形成,多核巨細胞集族などの領域が混在し,非腫瘍性増殖性病変と思われた.本病変の鑑別診断,並びにgiant cell reactionやgiant cell raparative granulomaとの関係についても考察した.

前仙骨部神経鞘腫の1例

著者: 中山博文 ,   北野喜行 ,   横川明男 ,   片山元 ,   田中豊也

ページ範囲:P.1385 - P.1388

 抄録:前仙骨部腫瘍の1例を報告する.症例は68歳,男性.主訴は仙骨部痛.現病歴は直腸診で左側に偏在する平滑・弾性軟で辺縁が明確な鶏卵大腫瘤を触知した.神経学的には異常はなかった.単純X線写真では異常を認めず,CTでは仙骨前面で左側の仙骨神経孔に接する球状の低濃度域を認めた.MRIのTI強調SE法矢状断像では,仙骨前面に接するように,低信号の腫瘍を認めた.腫瘍内部の性状では信号強度不均一な部分を一部に認めた.神経原性腫瘍を疑い後方より傍仙骨侵入法にて施行した.仙骨前面と直腸後面の間に黄色・軟性の腫瘍を認め,S3神経根を切離し腫瘍を摘出することが出来た.割面では分葉状に増殖し粘液様変化を伴う4.5×5cmの被膜を有した充実性腫瘍であった.病理組織によりAntoni-A型神経鞘腫と診断された.術後1年の現在,経過は順調である.

pubic osteolysisと思われる2症例

著者: 石井薫 ,   末松典明 ,   三上和雄

ページ範囲:P.1389 - P.1392

 抄録:単純X線にて恥骨に骨溶解像を認め,pubic osteolysisが疑われた2例を経験したので報告する.2例とも高齢の女性で悪性腫瘍の既往があった.症例1は放射線治療の既往があったが症例2にはなかった.X線上の特徴は骨折線とその周囲の骨溶解像の出現であった.症例1は骨硬化像が強かったが,症例2には認められなかった.病理組織学的には壊死骨,破骨細胞,新生骨,線維性結合織に占められた骨髄腔が認められ,骨折の修復像と考えられた.症例1は新生骨,症例2は壊死骨,破骨細胞に富んでいた.
 診断について,症状の経過,理学所見も重要ではあるが,確定診断のためには開放生検が必要であると考えられた.しかし,症例1のように放射線治療の既往がある場合には,開放生検を行ってもpubicosteolysisと放射線性骨壊死との鑑別はつけ難い.

頸椎・胸椎・腰椎多発性椎聞板ヘルニアにより広範脊柱管狭窄症状を呈した1例

著者: 保坂泰介 ,   四方實彦 ,   田口保志 ,   田中千晶 ,   多田弘史 ,   相馬靖 ,   古川泰三 ,   石田勝正

ページ範囲:P.1393 - P.1398

 抄録:我々は頸椎・胸椎・腰椎すべてのレベルに多発性に生じた椎間板ヘルニアに対し,合計5椎間の手術を一期的に施行した1例を経験したので報告する.症例は45歳,男性,主訴は歩行困難.当科入院時,両上・下肢に腱反射亢進と異常反射が見られ,両大腿と右下腿の筋力低下,左下肢の発汗異常・温痛覚低下・シビレ感と両大腿前面の異常知覚を認めた.MRIにてC5/6・C6/7・T11/12・L11/2・L2/3レベルの椎間板の後方膨隆による脊髄・硬膜圧迫,ミエログラムにて同部の通過障害を認めた.手術はまず,胸腰椎部に対し前方侵入による除圧と骨移植による椎間固定,さらにL1-3に金田デバイスによる椎体前方固定を行った.次に,頸椎前方除圧と骨移植による固定を行った.頸椎・胸椎・腰椎に対する一期的手術と上部腰椎に対するinstrumentationにより,術後の早期離床・早期リハビリが可能となり,良好な成績を得ることができた.

根治的頸部廓清術後に発生した鎖骨疲労骨折の2例

著者: 河野仁 ,   小川清久 ,   磯貝豊

ページ範囲:P.1399 - P.1402

 抄録:根治的頸部廓清術後に発生した鎖骨の疲労骨折と考えられる2例を経験したので,考察を加えて報告する.
 症例1は50歳,男性.舌癌のため右根治的頸部廓清術,術後放射線療法を施行.7ヵ月後に右鎖骨骨折が発生した.保存的に加療した結果,偽関節を形成したもののADL上支障はない.
 症例2は56歳,男性.下咽頭癌のため右根治的頸部廓清術,術後放射線療法を施行.2年後に右鎖骨骨折が発生した.保存的に加療し,骨癒合は得られなかったもののADL上支障はない.
 根治的頸部廓清術では副神経と胸鎖乳突筋を切除するため,鎖骨に下方への屈曲ストレスが働く.2症例とも,この屈曲ストレスにより疲労骨折を生じたと考えられるが,放射線照射の影響も完全には否定し得ない.

若年者体操選手に発症した上腕二頭筋長頭腱断裂の1例

著者: 尾崎智史 ,   室捷之 ,   錦見純三 ,   伊藤裕夫 ,   二宮正志 ,   前沢祥司 ,   服部祥明 ,   鈴木博明 ,   近藤正樹

ページ範囲:P.1403 - P.1405

 抄録:上腕二頭筋長頭腱断裂は通常,中高年者に発症する障害であり,若年者では非常に稀である.今回,若年者体操選手のつり輪競技中に発症した上腕二頭筋長頭腱断裂の1例を経験し,結節間溝への腱固定術を行った.組織所見では,腱断端の変性を認め,若年者でもover useにより中高年者と同様の機序で,断裂が生じることが示された.本症例では将来の職業も未定であり,体操復帰の意志が強かったために観血的治療を選択したが,本症が若年者.スポーツ選手に発症した場合,現在のところ,個々の症例に応じた治療法を選択せざるをえないと考える.

上腕骨骨折に対するinterlocking intramedullary nailingの小治療経験

著者: 武田信巳 ,   四方實彦 ,   濱本肇 ,   増田敏行 ,   武田記和 ,   谷澤紳 ,   山本博史 ,   野瀬優

ページ範囲:P.1407 - P.1412

 抄録:上腕骨骨折の内,横止め螺子併用の髄内釘(ILN)にて治療した新鮮骨折4例と偽関節2例について報告する.年齢は20歳から71歳までで,男5例,女1例であった.骨折部位は骨幹部中央1/3と近位1/3が各2例.遠位1/3と頸部下端が各1例で,骨折型は横骨折が4例,斜骨折が2例であり,すべて皮下骨折であった.手術法は,中枢刺入が4例,末梢刺入が2例であり,リーミングはイメージ下,新鮮例は閉鎖性に,偽関節例は骨移植を加えたため開放性に最小限の範囲で行った.ILNはシリンダー釘3例,G & K釘2例,キュンチャー釘1例で,それぞれ,横止め螺子で強固に固定して,偽関節例を除き,外固定はせず,早期の肩回旋運動を含む後療法を開始し,新鮮例で8~12週,偽関節例は5~7カ月で骨癒合が得られた.適応としては,横骨折,重複骨折及び多発外傷例が良く,偽関節や骨粗霧症を伴う骨折にも拡げられると考えられた.

上腕骨内側上顆投球骨折の1例

著者: 湯川泰紹 ,   渡部健 ,   浦田士郎 ,   矢崎進 ,   大脇義宏 ,   杉浦博基 ,   宮崎芳一 ,   加藤斉 ,   森宗茂

ページ範囲:P.1413 - P.1416

 抄録:上腕骨内側上顆の投球骨折は1960年BrogdonがLittle leaguer's elbowとして3症例を報告して以来注目を浴び過去国内でも24例報告されているが,そのほとんどが骨端線閉鎖以前に骨端線離開として生じている.我々は骨端線閉鎖後に発生した稀な1例を経験したので報告する.

絞扼性肩甲上神経障害の電気生理学的所見―2例の手術前後の変化

著者: 田山信敬 ,   菊地臣一 ,   乗上啓 ,   佐藤譲

ページ範囲:P.1417 - P.1420

 抄録:絞扼性肩甲上神経障害の2例に対し手術を施行し良好な結果を得た.本症の診断にあたっては電気生理学的検査が有用であった.症例は2例で,術前の電気生理学的検査として,まず筋電図検査を左右の三角筋,棘下筋に行った.その他Erb点刺激による棘下筋のM波終末潜時の導出を行った.術前の筋電図検査では,三角筋には異常所見を認めず,棘下筋に神経原性変化が認められた.Erb点刺激の棘下筋導出によるM波終末潜時は,健側に比べ明らかに患側が遅延(4.0msec以上)していた.術後に棘下筋での神経原性変化の消失と終末潜時の改善を認めた.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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