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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科27巻2号

1992年02月発行

雑誌目次

視座

骨粗鬆症と整形外科

著者: 高橋栄明

ページ範囲:P.109 - P.110

 社会が高齢化してきた本邦では,骨粗鬆症が最近医学の世界のみならず,社会的にも注目されてきている.昭和20年代後半に始まった本邦における骨粗鬆症に対する研究は,日整会でも昭和39年に青池勇雄会長により,シンポジウムとして取り上げられた.このシンポジウムの内容は単行本として故三木威勇治東京大学名誉教授によって刊行されたが,その時三木名誉教授はその序文の中で次のように述べた.「わが国でも平均寿命が延長してきて,老人病が社会の注目を引くようになった.整形外科領域では,関節の変形性関節症と並んで骨粗霧症が主要な老人病である.」驚くべき先見性である.
 さて,人の生涯で骨はどのように変わっていくのであろうか.骨量(bone mass)は,成長期に増加して,だいたい30歳代で最高に達し,この時をpeak bone mass(最大骨量)というが,それ以降徐々に減少していく.そして,特に女性では,閉経期に急速に減少して,あるいは老年期に達して骨折危険域に達し,大腿骨頸部骨折,脊椎圧迫骨折,Colles骨折などを起こすことが知られている.

論述

脊髄腫瘍摘出術における後方アプローチの検討

著者: 三橋雅 ,   井形高明 ,   村瀬正昭 ,   福島孝 ,   森田哲生 ,   中村巧 ,   山田秀大 ,   柏口新二

ページ範囲:P.111 - P.116

 抄録:従来,脊髄腫瘍摘出術における後方アプローチには椎弓切除術が一般的であるが,術後の不安定性,彎曲異常,硬膜外腔の瘢痕形成などが懸念される.我々は,脊髄腫瘍及びsyringomyeliaなどの脊髄疾患に対し,脊柱管の再建,脊椎後方支持要素の温存を目的として採用している後方アプローチ法を報告する.対象症例は,男性19例,女性17例,計36例で,年齢は2~73歳平均38.9歳であった.対象疾患は,neurinoma 12例,lipoma 6例,AVM,meningioma,ependymoma各2例,syringomyelia 4例を含むその他12例であった.手術方法は,原則として,①1椎体以内の偏在性髄外腫瘍には片側部分椎弓切除術,②2椎体以上の偏在性髄外腫瘍には片開き式椎弓形成術,③腫瘍が横断性ないし正中性髄内外腫瘍には,正中縦割法,あるいは形成的椎弓還納固定法を選択した.いずれの方法も術中操作に十分な視野が確保でき,術後の脊柱変形も予防できている.

多発性脊髄神経鞘腫の検討

著者: 藤本吉範 ,   久保田政臣 ,   岩崎洋一 ,   西川公一郎 ,   水野芳隆 ,   中光清志

ページ範囲:P.117 - P.121

 抄録:皮膚症状に乏しい多発性脊髄神経鞘腫の臨床上の位置づけは,現在でも曖昧である.そこで,筆者らは多発性脊髄神経鞘腫とvon Recklinghausen病の関係を明らかにする目的で,多発性脊髄神経鞘腫自験例を検討した.対象は,1970年から1990年の21年間に手術的治療を行った男性4例,女性4例の計8例で,初回手術時年齢4~65歳(平均33.3歳)である.このうち母娘例を含む3例が遺伝歴を有した.皮膚症状として,2例に皮内神経鞘腫を認めたが,全例において,café au lait斑はCroweの基準を満足しなかった.8例中7例と高率に,聴神経,四肢末梢神経,あるいは食道の神経鞘腫を合併した.多発性脊髄神経鞘腫の多くは,National lnstitute of Health(NIH)分類のneurofibromatosisタイプ2に属すと考える.

感染人工股関節の検討

著者: 松井康素 ,   長谷川幸治 ,   岩田久 ,   元田英一 ,   片岡祐司 ,   三浦隆行 ,   小西伸夫

ページ範囲:P.123 - P.129

 抄録:当院にて治療した人工骨頭,人工股関節全置換術後の感染例を調査し,感染の予防,治療法の確立を目的とした.症例は9例(男5例,女4例,初回手術時平均年齢58.3歳,人工骨頭置換術後5例,THR後4例).発症までの期間は,平均1年8ヵ月(急性発症例2例,遅発例7例).術後の経過観察期間は,平均2年.全身的,局所的な臨床症状は明らかでないものが多かったが,血液検査所見では,血沈,CRPは中等度以上の上昇を認めることが多く感染の指標となり得た.起炎菌は,Staphytococcus epidermidisが3例,Staphyfococcus aureusが2例と多かった.X線所見ではstem下部(zone 3,5)を中心とした広範なlooseningが多かった.全症例の最終受診時の臨床評価は,日整会点数で平均55.4点と良好ではなかった.人工関節を再置換した症例は,抜去状態の症例より成績が良かった.再置換術は,人工関節抜去後6カ月以上経過を観察し,感染沈静化の確認後に二期的に行うのが安全と考えられた.

いわゆるobservation hipについて―その初期像及び追跡調査

著者: 小林大介 ,   細見新次郎 ,   金原宏之 ,   藤井正司

ページ範囲:P.131 - P.137

 抄録:いわゆるobservation hip 101例についてその初期像の検索,追跡調査を行った.経過中,病名変更を要した症例が4例ありobservationの必要性を痛感した.初診時のX線像にてTDDの拡大が6%,骨萎縮が5%に認められた.血液検査所見にてCRP陽性例が16%,ASLO陽性例が21%に認められた.再発例は40%に認められ,扁桃炎を合併したものがその傾向が強いと考えられた.101例中1年以上追跡可能であった42例に対し調査を行った(平均4年4ヵ月).追跡調査時の臨床所見はおおむね良好であった.X線像にて健側と比較して2mm以上のcoxa magnaとなった症例は7%に認められた.初診時のTDDの拡大とcoxa magnaとの関連性は認められなかった.退行性変化を認めた症例はなかった.
 これらの結果に対し若干の文献的考察を加え報告する.

手術手技シリーズ 関節の手術<下肢>

リウマチ足の手術療法

著者: 東文造 ,   山本隆文 ,   木村友厚 ,   越智隆弘

ページ範囲:P.139 - P.145

はじめに
 慢性関節リウマチ(以下RAと略す)における足部変形は比較的頻度が高く,しかも早期に出現し,病気の進行とともにしばしば日常生活に支障をきたす.RAの薬物療法に加え保存療法として足挿板や各種の変形予防装具がなされるが,一部のRAではこれらの保存療法に抵抗し,足部変形の急速な進行をみることも多い.このことはRAが現在の薬物療法を含む保存療法では抑えきれない慢性の進行性疾患であり,変形がどのように進行するのか知らなければその手術適応を適切に決めることはできない.足部の各関節を含めた全身の関節の罹患頻度は,我々の提唱するRA病型により大きく異なることを以前から報告してきた.
 今回RAの足部変形を中足部~後足部と前足部に分け,我々の提唱するRA病型を踏まえその特徴について検討し,手術適応と現在当科で行っている手術の実際について述べる.

整形外科を育てた人達 第101回

Sir Ludwig Guttmann(1900-1980)

著者: 天児民和

ページ範囲:P.146 - P.148

 整形外科で脊椎の外傷を取り扱うとき当然脊髄損傷も治療せねばならないので脊髄損傷の治療への関心は深いはずである.Sir Ludwig Guttmannは整形外科医ではないが,この方面の権威であるので,今回はGuttmannの伝記を書く決心をした.

臨床経験

経口的軸椎前方除圧術が有効であった脊髄空洞症の1例

著者: 清水真 ,   清水克時 ,   岩崎廉平 ,   板本啓 ,   山室隆夫

ページ範囲:P.149 - P.153

 抄録:頭蓋底陥入症 先天性頸椎癒合症 先天性側彎症等よりなる頭蓋脊椎骨奇形に合併した脊髄空洞症の1例を経験した.神経症状の増悪が認められたためsyringo-subarachnoid shuntを施行したが,効果は不十分で,症状はさらに進行した.第2回手術として経口的軸椎前方除圧術を行ったところ,空洞は縮小し神経症状は一部改善し進行が停止した.その後,前方固定の骨癒合不全により一時的な症状の悪化がみられたが,第3回手術として後頭骨-頸椎後方固定術を行ったところ症状は安定した.本症例の治療経過より,頭蓋底陥入症を伴った脊髄空洞症に対して,経口的軸椎前方除圧術は,有効な手術方法であると考えられた.

切断母指を橈骨遠位部に再接着してピンチ機能再建を行った1例

著者: 浦田士郎 ,   稲垣善幸 ,   渡部健 ,   森宗茂 ,   岩掘裕介 ,   大脇義宏 ,   岩瀬敏樹 ,   杉浦博基 ,   宮崎芳一

ページ範囲:P.155 - P.159

 抄録:23歳,男性.プレスによる手関節部挫滅切断例で,唯一圧挫を免れていた母指を橈骨断端部に異所性に再接着し,受傷3ヵ月後に桟骨断端から5.5cm中枢寄りの位置に移行して前腕断端と母指とのピンチ動作再建を試み,静的二点識別5mmの良好な知覚と4kgのピンチカを有する把持機能が再獲得された.再接着不能な重度損傷例において,切断指の異所性再接着により前腕断端でのピンチ機能再建が可能であると考えられた.

壊死性筋膜炎の1例―早期診断におけるMRIの有用性

著者: 吉野恭正 ,   飯塚正 ,   井上哲夫

ページ範囲:P.161 - P.165

 抄録:壊死性筋膜炎は比較的稀な細菌感染症で,診断および外科的治療が遅れると敗血症で死亡(本邦報告55例中12例で死亡率約20%)し,予後不良である.MRIが早期診断に役立ち,治癒しえた1例を経験したので報告する.
 症例は,40歳の男性で,平成2年11月25日転倒し,左膝に擦過傷を生じた.受傷後8日目より急激に同部の有痛性腫脹が出現し,抗生剤投与を受けたが症状は増悪し,12日目に入院となった.単純X線像で軟部組織にガス像は認めず,MRIのT2強調画像で,広範囲かつ全周性に浅層筋膜を中心に高信号領域を認めた.MRI所見と臨床症状より壊死性筋膜炎を疑い,入院当日生検し,確定診断した.3回のデブリドマン後植皮し,治癒し得た.渉猟しえた範囲では,本疾患のMR1像の報告はない.今回,MRI像が早期診断に役立ち,下肢切断することなく治癒できた.MR1は本疾患の早期診断に対する有力な補助診断法である.

関節造影による急性化膿性肩関節炎の1例

著者: 松井健郎 ,   小川清久 ,   飯田雅文

ページ範囲:P.167 - P.169

 抄録:関節疾患の補助診断法として関節造影は最も一般的な検査であるが,重篤な合併症の危険性も皆無ではない.今回,関節造影後に化膿性肩関節炎が生じた27歳男性例を経験したので報告する.
 肩関節造影の翌日安静時痛が出現,5日目には37.5℃前後の発熱もみられ,造影後16日目に当院を受診した.関節穿刺により得られた15mlの淡黄白色の膿性液から黄色ブドウ状球菌が検出された.感受性の高い抗生剤の経静脈投与,関節穿刺による排膿と洗浄,下垂位・回旋中間位固定と,早期の運動療法により良好な機能回復を得た.

腓骨近位端に発生し傍骨性骨肉腫様浸潤を示した通常型骨肉腫の1例

著者: 小竹森一浩 ,   山中芳 ,   中村俊夫 ,   村上要 ,   矢部啓夫

ページ範囲:P.171 - P.174

 抄録:傍骨性骨肉腫は比較的稀な腫瘍であり,通常の骨肉腫に比べ予後は比較的良いといわれている.しかし,その診断には正確な画像断や病理診断が必要で,特に予後不良な類似疾患との正確な鑑別が適正な治療を可能にする.今回我々は,17歳女性の左腓骨近位端に発生し傍骨性骨肉腫様浸潤を示した通常型骨肉腫を経験し治療したもので報告する.初回X線上,左腓骨近位端に傍骨性腫瘍を認め,更に骨髄内浸潤が示唆された.術前にアドリアシンとシスプラチンを用いた化学療法を強力に行い,その後広範囲切除術を行った.術後の組織標本では,腫瘍の組織学的悪性度はgrade IIIで通常型骨肉種,骨芽細胞型,硬化型と考えられた.化学療法の効果は,大星・下里の分類でII-bと判定し有効と考えた.術後2年の現在,局所再発・肺転移を認めず生活している.

嚥下障害を呈した強直性脊椎骨増殖症の2例

著者: 石川淳一 ,   岩崎公彦 ,   佐藤栄修 ,   倉上親治 ,   橋本友幸

ページ範囲:P.175 - P.180

 抄録:強直性脊椎骨増殖症(ankylosing spinal hyperostosis)は椎間板線維輪,前縦靱帯の骨化,骨増殖により,ついには隣接椎体間の癒合を呈す疾患である.この疾患による特徴的な症状はないが,稀に頸椎において前方に異常に増殖した骨化層により,食道,気管が圧排され,嚥下障害あるいは稀に呼吸困難を呈することがある.今回我々は,頸椎前方の異常骨化層により嚥下障害を呈した同疾患を経験した.1例に対しては手術的に骨化層を切除し,術後完全な嚥下障害の改善が得られた.もう1例は嚥下障害に加えて,嗄声,口渇感も合併しており,咽喉頭周囲の浮腫,炎症性変化の関与も考えられ,さらに,症状が比較的軽度であることより,現在経過観察中である.骨化層による食道の機械的圧迫が嚥下障害の原因と考えられる症例に対しては積極的な手術的切除が有効である.

移植骨固定に用いたalumina ceramic screwの破損により生じたbipolar型人工股関節置換術後のmetallosisの1例

著者: 保坂泰介 ,   山室隆夫 ,   奥村秀雄 ,   笠井隆一 ,   松末吉隆 ,   松田康孝

ページ範囲:P.181 - P.185

 抄録:我々は,移植骨固定に用いたalumina ceramic screwの破損によりBateman UPFのinner headの摩耗を生じ,重篤なmetallosisを来した1例を経験したので報告した.原因は,outer headのmigrationが進行し,alumina ceramic screwに接触・圧迫してscrewが破損,その破片の一部が,high density polyethylene(以下HDPと略す)のbearing insert内面に付着してinner headを研磨し,Co・Cr・Moの摩耗粉が流出したためと思われた.金属粒子は,生体に対する影響として細胞毒性・アレルギー反応・腫瘍原性等を有するため,生体組織内への沈着は極力避けねばならない.素材としてのalumina ceramicは,優れた生体親和性を有する反面,極めて脆性的(brittle)な性質をもち,特にscrewのような細長い構造をとると破砕し易いので,その危険性に十分配慮して慎重に適応を考えるべきである.

人工靱帯による前十字靱帯再建術後,感染を生じ,再手術した1例

著者: 伊藤靖 ,   佐々木康夫 ,   青木正幸 ,   安間英毅 ,   金物壽久 ,   山田英世 ,   高橋成夫

ページ範囲:P.187 - P.191

 抄録:人工靱帯による前十字靱帯再建術後,感染を生じ再再建術を施行した1例を経験したので報告する.症例は,20歳の男性で,左膝前十字靱帯損傷に対して,関節切開にてLeeds-Keio人工靱帯による関節内再建,関節外補強術を行った.術後2週で黄色ブドウ球菌による化膿性膝関節炎の診断を受け,直ちに持続洗浄,抗生剤の全身投与を開始したが,感染の沈静化を認めないため,術後40日で靱帯の抜去,鏡視下滑膜切除術を行い,持続洗浄を再開し,関節炎を治癒させた.血沈,CRPの正常値が続き,X線像も異常を認めないため,感染後21ヵ月で関節切開にて腸脛靱帯を用いた二重支持再建法を施行した.再再建術後1年では,感染の再発なく,不安定性も認めず,Lysholm's scoreにて98pointsと良好な結果であった.人工靱帯の感染例に再手術が必要なときは,感染に強いと考えられる自家組織,特に有茎で使用できる腸脛靱帯などを使用するべきと考える.

急性対麻痺を来した腰椎硬膜外膿瘍の1症例

著者: 甲山篤 ,   高松浩一 ,   岡本晃 ,   河野久 ,   河本晃市 ,   山田英嗣

ページ範囲:P.193 - P.195

 抄録:本症例は16歳,男子で腰痛・発熱を主訴に来院した.血液検査で炎症反応が強く,強固な腰痛と高度の発熱とともに対麻痺症状も発現した.ミエログラフィーとMRIにて,L2レベルを中心とした脊髄硬膜外膿瘍を認めたために,緊急手術を施行した.L1,L2レベルの傍脊柱筋内と硬膜外腔に膿瘍を認め,L2左椎弓部分切除及び膿瘍を除去した.膿からは黄色ブドウ球菌が同定された.術後の経過は順調で,若干の知覚鈍麻を除いてほとんど回復した.本症は稀な疾患であるが,腰痛・発熱・軽度神経障害を呈する患者では常に念頭におくべき重要な疾患である.

外科的治療を行った腰椎椎間板症におけるMRIおよび椎間板造影の対比

著者: 西良浩一 ,   井形高明 ,   成尾政圀 ,   小柳英一 ,   浦門操 ,   椎葉睦生 ,   梶浦清司 ,   児玉太郎 ,   堀江健次

ページ範囲:P.197 - P.200

 抄録:現在,腰椎椎間板の変性度の評価は,MRIと椎間板造影によって行われている.両画像の相関性について数多く報告されているが,変性椎間板における相関性は明らかにされていない.今回我々は,対象を手術的治療を行った腰部椎間板症に限定し,両画像における椎間板変性度を比較検討した.両画像には76.7%の相関性が認められたが,従来の報告より低いものであった.これは,病的変性椎間板では,含水性と形態は平行して変化しないことを示唆している.従って,変性椎間板については,MRIのみならず椎間板造影による病態把握の意義があると考えられる.

脊椎後方部分に発生した血管腫の1例

著者: 伊藤敏範 ,   見松健太郎 ,   加藤文彦 ,   中神和賀雄

ページ範囲:P.201 - P.204

 抄録:第12胸椎後方部分より発生し,硬膜外腔に腫瘤を形成したと思われるcavernous hemangiomaの1症例を経験した.この症例では椎体に明確なMRI上の信号変化はなく,腫瘍の局在診断にMRIが有用であった.MRIは経過観察にも無侵襲で,かつ質的に評価することが可能であり,きわめて有用と思われた.

特発性脊髄ヘルニアの1例

著者: 後藤昭彦 ,   近藤秀丸 ,   田村守 ,   大野直樹 ,   斉藤浩哉 ,   国府田英雄

ページ範囲:P.205 - P.208

 抄録:今回,胸椎部に発生した極めて稀な特発性脊髄ヘルニアに対して手術を施行する機会を得たので,その所見につき報告する.症例は58歳の男性で,歩行障害を訴えて来院した.初診時,両下肢の著明な筋力低下と第6胸髄節以下の知覚障害を認め,脊髄造影,CTM,MRIで脊髄の萎縮・前方偏位,第6胸椎高位での脊髄陰影欠損像を認めたため,脊髄ヘルニアを疑い手術を施行した.第5胸椎から第7胸椎まで椎弓切除を施行,硬膜を切開すると,二重になった腹側硬膜の内層に7×25mmの裂孔を認め,くも膜に覆われた脊髄が同部に嵌頓,癒着していた.裂孔周囲の硬膜を切除し,脊髄腹側の癒着を剥離して除圧を行った.

完全摘出しえた巨大なくも膜憩室の1例

著者: 関真人 ,   本間隆夫 ,   奥村博 ,   河路洋一

ページ範囲:P.209 - P.212

 抄録:脊髄症を呈した頭尾側方向に10cmの長さの巨大な脊髄くも膜憩室を,一塊として完全に摘出することができた.
 症例は,23歳男性で,左下肢脱力感を主訴とし,MRIでくも膜憩室を疑われ紹介された.脊髄腔造影によって確定診断でき,壁を壊すことなく憩室を完全に一塊として剥離摘出しえた.組織的には,憩室壁のcollagen fiberの増生が著明であった.術後1年のfollow upで,症状の再発はみられない.
 本例のような巨大な憩室を,そっくりそのまま摘出しえた報告は稀である.また,最終診断には,近年診断能が高いと考えられているMRIよりも水溶性脊髄腔造影が有用であった.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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