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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科27巻3号

1992年03月発行

雑誌目次

視座

愚考

著者: 茨木邦夫

ページ範囲:P.215 - P.215

 平成3年4月より附属病院長を,お引き受けしたが,国立大学附属病院には多くの改革を要する問題が山積している.これらの問題にふれてみたい.

論述

三次元表面再構成法(3D-CT)による股関節臼蓋の被覆度の検討

著者: 萩野哲也 ,   矢野悟 ,   木村真二 ,   橋本規 ,   中川夏子

ページ範囲:P.216 - P.222

 抄録:三次元表面再構成法(3D-CT)を用いて股関節臼蓋前方外側部の被覆の状態を定量的に観察し,単純X線写真像と比較検討した.対象は,3D-CTで撮影した疾患群36股関節と正常群20股関節である.3D-CT画像の正面像をデジタイザーを用いて骨頭の面積,骨頭を覆う臼蓋の面積を計測し,前方被覆率を求めた.また各症例のSharp角およびCE角を求め,両者の間の相関の有無,被覆度判定の有効性などについて比較検討した.Sharp角およびCE角と前方被覆率とは良く相関したが,症例によっては3D-CTがより有効であった.Chiari骨盤骨切り術施行直後の前方被覆率は外側ほど改善せず,remodelingによって覆われていくことが示唆された.臼蓋の前方外側部という一定の球面をとらえるには,角度でとらえたパラメーターよりも面積でとらえた3D-CTの方が有効であり,今後股関節領域における重要な検査法の一つになることが予想される.

TKR術後の膝蓋大腿関節の適合性についての検討

著者: 村田雅明 ,   大月健二 ,   浪花紳悟 ,   百田靖 ,   上平用 ,   林寛一

ページ範囲:P.223 - P.228

 抄録:人工膝関節置換術後のpatellaの適合性がしばしば問題となる.我々はpatella positionなるパラメーターを考案し,84膝の人工膝関節置換術後の膝蓋大腿関節の適合性に影響する因子を検討した.術前術後の下肢アライメントの矯正角度,patellaの前後径の変化,patellar heightの変化,術前の膝蓋大腿関節の適合性等を調査した.その結果,これらはすべてある程度影響を及ぼすようであるが,とりわけ術前の膝蓋大腿関節の適合性が問題となるようであった.
 術後にpatellaの亜脱臼を生じないためには,脛骨コンポーネントの内旋に気を付けることは勿論のこと,特に術前亜脱臼傾向を認めた例では術中patellar trackingを確認し,必要ならlateral releaseを加えるべきである.

腰椎椎間板ヘルニアのMRIと各種画像診断との比較

著者: 西島雄一郎 ,   谷口充一 ,   道下正光 ,   太田義明 ,   近藤毅 ,   利波久雄 ,   山崎安朗 ,   東田紀彦 ,   山本達

ページ範囲:P.229 - P.234

 抄録:MRIが腰椎椎間板ヘルニアの従来の画像診断にとって変わり得るかを検討する目的で,手術で椎間板の病態を確認できたヘルニア例について術前のMRI所見を手術所見と比較し,ヘルニアの有無,高位,局在,形態の各項目の診断精度を従来の画像診断と比較した.術前にMRI,myelography,CTM,Discography,CTDが行われている58例,63椎間を対象にした.ヘルニア診断のMRIの正確度は78%で,他の画像診断と大差はないが,感度は96%と最も高く,特異度は25%と最も低かった.高位が正しく判定できた割合は,MRIでは77%で,CTM,CTDに比べて低かった.MRIのtransaxial像で左右の局在の一致率は55%でCTM,CTDに比べて低かった.
 extrusionとprotrusionの鑑別は,MRIでは困難であった.MRIはヘルニア有無のスクリーニング診断には最も適当であるが,高位,手術進入側の決定には他の画像診断が必要で,ヘルニア形態の診断も確実とは言えなかった.

顆粒細胞腫の6例及び悪性顆粒細胞腫の2例

著者: 関矢一郎 ,   川口智義 ,   松本誠一 ,   真鍋淳 ,   黒田浩司 ,   谷川浩隆 ,   蛭田啓之 ,   澤泉雅之 ,   水野広一 ,   山田博之

ページ範囲:P.235 - P.240

 抄録:顆粒細胞腫6例及び悪性顆粒細胞腫2例を経験したので報告する.良性例6例は皮下発生が4例,筋肉内発生が2例であり,3例に広切,1例に追加広切,2例に摘出術を施行し,術後1カ月から11年3カ月,全例再発を見ない.
 悪性例1は49歳,女性.大胸筋筋肉内発生で,針生検で悪性が示唆され広切術を施行.4年後胸腔播種を認め死亡.悪性例2は33歳,女性.両肘発生で他院で摘出後来院し追加広切を施行.術後2年7カ月,再発,転移を認めない.

シンポジウム 頸部脊柱管拡大術の長期成績

緒言

著者: 竹光義治

ページ範囲:P.241 - P.241

 頸部脊柱管拡大術-椎弓形成術の歴史を紐解いてみると,1973年小山・服部らのユニークな椎弓形成術と1976年桐田の広範同時除圧のアイデアに始まり,1978年平林の片開き式頸部脊柱管拡大術,1981年宮崎・桐田の椎弓拡大術,1982年黒川らの棘突起縦割法脊柱管拡大術,同年伊藤・辻らのen bloc laminectomy,1982年岩崎の拡大椎弓形成術,その他次々にユニークな方法が開発され,わが国脊椎外科の特技となったことは言うまでもない.それまでの逐次的な広範椎弓切除術の成績が思わしくなかったことから,先人達が大変な苦労の末開発したこれらの椎弓形成術は,15年余りを経てその好成績から今や安定した手術法として広く定着し適応も拡大した感がある.
 しかし,遠隔成績をみると,すべて満足というわけではなく,幾つかの注意点も見いだされている.第64回日整会において山室会長は本手術の遠隔成績についてのパネルを企画され,筆者に座長を依頼された.そこで永年,多くの経験症例をもつ施設の研究者に5年以上の成績につき発表をお願いした.パネルは盛況で,興味ある討議が展開された.ポイントをあげてみると

頸椎椎管拡大術(服部法)の長期成績

著者: 中村克巳 ,   河合伸也 ,   砂金光藏 ,   土井一輝 ,   斉鹿稔 ,   高野信一

ページ範囲:P.243 - P.248

 抄録:頸椎部脊髄症に対する椎弓切除術は,頸椎の後方部分を切除するために,術後の支持性の減弱による彎曲異常や不安定性の増悪をきたしうる等の危惧がある.1971年,服部名誉教授は十分な後方除圧と共に後方要素の再建を行い,頸椎の支持性を保持する“頸椎椎管拡大術”を考案した.以来,私達は症例を選んで,主に服部法による椎管拡大術を施行してきた.これまでに服部法を140例に行っており,今回改めて服部法の5年以上経過例(CSM45例とOPLL35例)の成績を調査し,検討を加えた.術後は術前の脊髄の病態に応じた良好な成績が得られる.さらに,術後長期にわたって良好な成績が維持されている.拡大された椎管腔は,長期にわたって維持され,椎弓の背側には骨新生が起こり,強固な骨性の支持組織が形成される.頸椎の後彎化傾向は軽度だがみられ,その多くが術後6カ月以内に起きているので骨性の支持ができるまでは,彎曲異常の出現には注意を要する.

頸椎後縦靱帯骨化症に対する脊柱管拡大術(桐田-宮崎法)の手術成績―術後5年以上経過例について

著者: 佐藤栄修 ,   金田清志 ,   白土修

ページ範囲:P.249 - P.255

 抄録:頸椎後縦靱帯骨化症に対する脊柱管拡大術として,広範囲同時除圧式椎弓切除術(桐田法)から両側へ翻転した椎弓を切除せず残す桐田-宮崎法を1980年より施行して来た.術後5年以上経過した33例を臨床的,X線学的に調査し,本法の妥当性を検討した.日整会スコアは術前8.9±2.3点が術後平均6年1カ月の調査時の12.8±2.6点で,最終改善率(平林)は48.6±39.4%であり,上下肢運動機能を評価した治療成績評価区分(黒川)では,改善以上が84.8%とおおむね良好な成績が得られた.調査時症状の再悪化は5例に認めた.MRIを調査した3例では脊髄萎縮を認めた.頸椎可動域は術前より平均56%減少した.新たな椎間不安定性の出現はなく,側溝に骨移植した結果の後方椎間骨癒合は90%で得られた.22例(67%)で平均16.7゜前彎が減少していたが,10゜以上の高度な後彎変形は3例(9%)のみであった.本法は安全確実な除圧が可能で,簡便な固定術によりある程度の制動効果をもつ.laminectomy scar membraneによる硬膜柱への圧迫もなく,脊柱管拡大術の一法として採用され得るものと考えられた.

棘突起縦割法椎弓形成術の長期成績

著者: 星野雄一 ,   黒川高秀 ,   町田秀人 ,   大西五三男 ,   栗林義昭 ,   星地亜都司 ,   侭田敏且 ,   税田和夫

ページ範囲:P.257 - P.262

 抄録:棘突起縦割法椎弓形成術後5~11年(平均7年)経過を観察した56名(頸椎後縦靱帯骨化症23名,頸椎症性脊髄症33名)において,脊髄症状および脊柱構築の変化を検討した.
 四肢運動機能の面から,80%の症例で手術効果が維持されていたが,頸髄症の再悪化が10%にあり,また変形性関節症等他の疾患による運動機能低下が10%にあった.

片開き式頸部脊柱管拡大術の長期成績―その意義と問題点

著者: 西幸美 ,   平林洌 ,   藤村祥一 ,   里見和彦 ,   高畑武司 ,   小野俊明 ,   手塚正樹 ,   河野亨

ページ範囲:P.263 - P.270

 抄録:片開き式脊柱管拡大術の長期成績を明らかにするため,術後5年以上経過した51例(OPLL 33例,CSM 18例)について臨床症状,X線所見,CT所見を調査し,その経年的推移を追跡した.臨床症状としてのJOAスコアは術後短期間で良好な改善を示し,その成績は術後5年以上にわたり安定維持されていた.X線所見では脊柱管の拡大状態は長期間安定し,頸椎可動域は術前に比べ半減し,頸椎彎曲は若干の直線化,後彎化傾向を認め,OPLL例は約40%の症例に骨化増大を認めた.本術式の長期成績は全般的に安定していたが,術後3年以降に8例の症状悪化例があり,この原因は,骨化増大,他部位での骨化出現・増大,頸椎後彎増強などであった.従って,特にOPLL例では脊柱管の十二分な拡大とその保持が,他部位の骨化に関しては慎重な経過観察が,特に術前後彎・直線型を示す症例に対してはその進行を防止,さらには改善すべく術式の改良も含めた特別な配慮が必要と考えた.

頸部脊柱管拡大片側固定術の検討―術後5年以上症例について

著者: 松﨑浩巳 ,   徳橋泰明 ,   若林健

ページ範囲:P.271 - P.279

 抄録:頸部脊柱管拡大片側固定術は広範囲な拡大に加え,脊髄の前方にある骨棘やOPLLの不連続部の圧迫病変(dynamic compression factor)に対して,後方で片側固定を追加して対処する術式である.平均6.3年のfollow upで平均改善率は60.5%であり,とくにspondylosisとstenosis例は良好であった.頸椎のアライメントは前彎の減少や直線化の傾向があり,6例(11.5%)に後彎の発生があった.また,拡大隣接部の変化として,14例(26.9%)に隣接椎弓への癒合が認められた.片側固定部内では,片側固定椎弓と一致した椎体の34例(65.3%)に自然椎体癒合が見られた.後彎防止には筋組織の温存と椎間関節に侵襲を加えないことが重要であった.
 最小限の固定と確実な除圧を得るために,術中超音波診断を用いて脊髄後方移動と前方のcompressionfactorを確認し,同部に片側固定を施行することが合理的な方法と考えられる.

頸椎en bloc laminoplastyの長期成績と問題点

著者: 米澤孝信 ,   加藤義治 ,   北川秀機 ,   辻陽雄 ,   伊藤達雄

ページ範囲:P.281 - P.286

 抄録:頸椎en bloc laminoplastyの術後5年以上経過した圧迫性脊髄症60例を対象とし,その長期成績からX線学的,臨床的問題点を検討した.X線学的には,脊柱管前後径は5年間で平均0.78mm減少し,C2-C7間では前彎度は平均12゜,可動域は平均27゜の減少があり,その代償として後頭軸椎間では前彎度と可動域の増大がみられた.椎体不安定性は改善されたものが多く,椎弓間癒合も半数以上にみられた.脊髄症状の日整会点数の改善率は平均69%で再増悪症例はみられていない.術後の頸部愁訴,可動域制限は,35%の症例で自覚していた.術後神経根症の発現または増悪は約5%にみられた.脊髄除圧という点では前方要素を残すものの,本術式の有用性は高く,後方要素改築による支持性の低下はなくむしろ適度な制動性を得ることができた.一方,これら構築変化は術後の頸部愁訴,可動域制限ならびに神経根症発生との関連性もあり,今後の課題である.

手術手技シリーズ 関節の手術<下肢>

イリザロフ法による変形矯正術

著者: 桝田理

ページ範囲:P.287 - P.293

はじめに
 1951年以来,ソ連邦のG. A. Ilizarovは独自で開発した創外固定器を用いて治療経験を重ねるうち“Tension-stress effect”なる理論を生みだした5,6).これは,“Distraction histogenesis”という,生体のあらゆる組織は伸延することにより再生するという理論である.しかし,その輝やかしい臨床成績は西側諸国では知られることなく,1980年になってようやくイタリアで,また北米では1986年より迫試され始めたばかりである1~4).我々は,1989年に本邦に導入されて以来,本創外固定器による治療を行い,その適応は広く骨折,偽関節,脚延長のみならず四肢の変形矯正にまで及んでいる.本稿ではそのうち足部変形矯正,なかでも治療機会の多い内反足についての手術手技,後療法について述べる.

整形外科を育てた人達 第102回

William Cheselden(1688-1752)

著者: 天児民和

ページ範囲:P.294 - P.296

 William Cheseldenの名は我々も余り詳しく知らないが,英国では有名であるJohn Hunterの指導者の一人であった.私は既にJohn Hunterの伝記も書いていたが,調査が不十分でCheseldenのことは全然書いていなかった.その後資料を整理してCheseldenの伝記も書き得るようになった.整形外科の創始者はNicolas Andry(1658-1742)であるが,Cheseldenは少し後輩であるが,英国で身体の変形の治療を始めたので英国の整形外科の先達と思う.

臨床経験

TKAを施行したアルカプトン尿症性関節症の1例

著者: 福本和生 ,   葛原啓 ,   今井亮 ,   川北苭三 ,   浦田洋二

ページ範囲:P.297 - P.300

 抄録:我々は,稀なアルカプトン尿症性関節症の1例にTKAを施行したので,若干の文献的考察を加え,報告する.症例は55歳,男性.両親がいとこ結婚である.幼少時より尿の黒変に気づいていた.40歳頃より両膝関節痛を自覚するようになり徐々に悪化,歩行困難となり入院した.各種検査にてアルカプトン尿症と診断し,疼痛の強い左膝に対して平成元年6月TKAを施行した.
 我々は,病理組織学的所見および生化学的根拠より,本症における軟骨破壊のinitial stepは軟骨基質障害と考えられるよりもむしろ軟骨細胞障害であると考えた.すなわち,メラニン様色素は,主に軟骨細胞内で酵素反応により産生され,cell deathとともに軟骨基質に放出され,コラーゲンにtightに結合し,そのため軟骨基質の正常な代謝が二次的に障害され,易損性となり,さらに脱落した軟骨片がmacrophageを介して炎症反応を助長し,変形性関節症に進行する可能性が示唆された.

繰り返す足趾骨髄炎に対し患趾を温存し得た糖尿病患者の1例

著者: 小野直司 ,   上野尚 ,   上野八重子

ページ範囲:P.301 - P.305

 抄録:繰り返す足趾骨髄炎に対し患趾を温存し得た糖尿病患者の1例を経験した.症例は60歳女性,1988年1月近医にて糖尿病を指摘された.1989年3月に左母趾,1990年3月に右第2趾の骨髄炎を発症したが,いずれも病巣掻爬,抗生剤投与,インスリンによる血糖コントロールにて軽快し,患趾は温存されている.本症例において骨髄炎を繰り返した原因と,患趾を温存し得た点について考察を加え報告する.

翼状肩甲骨に対して肩甲骨固定術を行った顔面肩甲上腕型筋ジストロフィーの1例―Leeds-Keio人工靱帯の使用経験

著者: 香山幸造 ,   謝典穎 ,   生田進一 ,   清家重郷 ,   藤井正司 ,   原田義昭

ページ範囲:P.307 - P.310

 抄録:翼状肩甲骨に対して肩甲骨固定術を行った顔面肩甲上腕型筋ジストロフィーの1例を経験したので報告する.症例は13歳女性,10歳時より両上肢挙上困難が徐々に出現した.入院時の肩関節可動域は,自動で外転左右50゜,屈曲右50°,左75゜であり,両肩外転時に著明な翼状肩甲骨を呈した.上肢挙上機能再建の目的で両肩甲骨固定術を行った.術後,外転右130゜,左105゜,屈曲右85゜,左110゜と改善し,翼状肩甲骨も消失した.肩甲骨の内縁は比較的厚みがあるのに対し,棘下窩は非常に薄いという解剖学的特徴を有する.それ故に従来の手術方法は,主に肩甲骨内縁を肋骨に固定しているに過ぎず十分な固定とは言えない.筆者らは肩甲骨内縁を第4~6肋骨に金属ワイヤーで固定し,さらに厚みの乏しい肩甲下窩を移植骨と第4~6肋骨ではさみこみ,これらを一塊としてLeeds-Keio人工靱帯でたすきがけに締結した結果,より広範囲に強固な固定性が得られた.

長期経過観察し得た両側上腕三頭筋拘縮症の1例

著者: 松本隆志 ,   中邨裕一 ,   小川清久 ,   高橋正明 ,   矢部裕

ページ範囲:P.311 - P.314

 抄録:筋肉内注射が原因と考えられる両側上腕三頭筋拘縮症の1例を治療し,その長期経過を追跡した.二関節筋である長頭が拘縮したため,肩関節の外転制限と肘関節の屈曲制限が互いに影響を与えあっていた.重症の左側には9歳時に手術を,軽症の右側には保存療法を行ったが,その効果は成人になっても保たれていた.

著明な骨粗鬆症と多発骨折をきたしたCushing症候群の1例

著者: 桜井隆 ,   東文造 ,   藤原桂樹 ,   北野継弐 ,   荻野洋

ページ範囲:P.315 - P.317

 抄録:副腎腺腫によるCushing症候群によって著明な骨粗鬆症と多発骨折をきたした症例の骨塩量をDEXA(dual energy X-ray absorptiometory)にて追跡した.症例は33歳,女性.31歳頃より無月経.高血圧精査のため1988年9月当院内科受診.副腎腺腫によるCushing症候群と診断され腺腫摘出術が施行された.入院時より腰背部痛,股関節痛を訴え当科を受診.X線写真及び骨シンチグラフィーで第12胸椎,第2腰椎,肋骨,両側坐骨および恥骨に多発骨折を認めた.DEXA(Norland XR-26)による骨塩定量ではL2-L4 BMD 0.655g/cm2,Ward's BMD 0.511g/cm2,total body BMC 1605.6gと著明な低下を認めた.副腎腺腫摘出術後の内分泌異常の改善とvit. D3の投与により骨塩量は2年間で特に海綿骨部で約20%改善した.患者のpeak bone massの低値,出産による骨塩の喪失,血中ステロイドレベルの急激な上昇,合併する続発性副甲状腺機能亢進症などが著明な骨粗鬆症をきたした原因と考えられる.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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