臨床整形外科27巻4号

1992年04月発行

特集 主題・腰部脊柱管狭窄症／パネルI・脊椎転移性腫瘍の手術的治療／パネルII・脊椎脊髄MRI診断（第20回日本脊椎外科学会より） パネルI　転移性脊椎腫瘍の手術的治療

脊椎転移性腫瘍に対する再建手術―多脊椎病変に対する後方手術

著者： 清水克時¹ 四方實彦¹ 飯田寛和¹ 岩崎廉平¹ 吉川順介² 山室隆夫¹

所属機関： ¹京都大学医学部整形外科 ²吉川病院

ページ範囲：P.475 - P.479

　抄録：1982年より9年間に紹介された脊椎転移性腫瘍170例のうち75例（44％）に手術を行った．病変が限局し，種々の条件が良好な例では前方手術単独または後方＋前方併用手術を採用した（前方手術：26例），条件の不良な症例には椎弓切除と後方固定術で治療した（後方手術：49例）．本論文では，多脊椎にわたる病変をもつ9例の後方手術の治療結果を調べた．術中出血量は平均3,400g，3例でDICが合併した，神経症状の改善は7例でみられ，悪化例はなかった．除痛効果は全例て得られた．しかし，術後経過は乳癌以外では短く，術後平均2.5カ月で死亡した．多脊椎転移に対する後方手術の予後は原疾患により左右され，予後の短い腫瘍では，手術効果は短期間の神経症状改善，除痛，体位変換が楽になることにとどまる．乳癌のように長期予後の予想される腫瘍では，後方手術のみでも長期の治療効果が期待出来るものもあるので，侵襲は大きいが価値のある治療法である．