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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科27巻6号

1992年06月発行

雑誌目次

視座

医療におけることばの重み

著者: 高木克公

ページ範囲:P.659 - P.659

 整形外科医であると称するにはまだ大変未熟な頃であった,難治性慢性骨髄炎のある患者が,多くの病院を転々とした後に,こともあろうに私に手術をさせてくれた,後に彼が私に話したところによると,外来診察時という短い時間ではあったが,私との間には会話があって,手術方法についての具体的な説明があったので私にまかせることにしたのだということであった.多くの病院が,直ちに入院して直ちに手術を受けなさい,というだけであったというのである.
 よき臨床医の第一の条件は,何はともあれ,「病人とのコミュニケーション」を大切にすることであろう.患者との最初の出合いは病歴聴取から始まる.ところで,ジョンズ・ホプキンズ大学タマルティ教授(よき臨床医をめざして)の言をとるまでもなく,『病歴聴取は“会話”であって,聴いたことを写しとる口述筆記のことではない!(History taking is a conversation-not a dictation!)』

論述

鏡視下半月縫合術後の中短期成績―その適応と限界

著者: 今井俊一 ,   上野芳郎 ,   西川粛 ,   河内賢 ,   安田知重 ,   加藤光朗 ,   青木正幸

ページ範囲:P.660 - P.666

 抄録:鏡視下半月縫合術の適応と限界を探る目的にて,1986年1月より1991年2月までに当院で施行した半月縫合57膝の縫合群と,同時期にやむなく鏡視下半月部分切除術等を施行した69膝の非縫合群とを比較検討した.いずれも術後6ヵ月以上のfollow-upを有し直接検診した症例である.縫合の対象となったのは主に縦断裂であり,縫合術後の中短期成績は,非縫合群に比し有意差はなく,安定した成績が得られていた.非縫合群の内訳は,放置19膝,技術的にできなかった9膝,整復不能6膝,強い変性変化23膝,水平断裂等12膝であった.縫合術後の癒合状態につき関節造影ないし鏡視にて検索し得た症例の内訳は,完全癒合33膝,不完全癒合4膝,癒合不成功1膝,再断裂2膝であった.以上より,原則として整復し得る損傷半月は縫合の適応となり得ると判断され,一方,整復不能例,強い変性変化例,及び水平断裂例等は,現在のところ縫合の限界であり,縫合の適応となり得てない.

軟部腫瘍におけるMRIの臨床的意義

著者: 伊藤公一 ,   牛山隆 ,   原田栄志 ,   豊岡聡 ,   山本謙吾 ,   今給黎篤弘 ,   三浦幸雄 ,   海老原善郎

ページ範囲:P.667 - P.676

 抄録:我々は軟部腫瘍45例に対しMRIを施行し,その臨床的意義について検討した.0.5および1.5Tesla超伝導磁場装置を用い,SE法でT1,T2強調像,Gd-DTPA enhance像を撮像した.腫瘍の撮像条件は骨や脂肪との関係はT1強調像,周囲筋肉や血管との関係はT2強調像が有用で,enhance像はviable領域と壊死領域の鑑別,周辺浮腫の識別やvascularityの把握に有用であった.またT1,T2強調像の組み合わせにより,出血,壊死,線維化,のう胞性変化などの組織学的変化の識別が可能であった.良性・悪性の鑑別では,腫瘍形態,境界部性状,内部均一性,周囲軟部組織や骨への浸潤の5項目につき検討し,MRI評価点数を試案した結果,両者間に有意差が認められた.質的診断に関しては脂肪腫,血管腫等,一部を除き困難であった.切除標本とのサイズ比較では,MRIが平均2.1mmの過大評価となっており,腫瘍周辺の炎症や浮腫を病巣と評価するのが原因であると考察された.

骨軟部腫瘍におけるMRIの有用性

著者: 森友寿夫 ,   上田孝文 ,   山下和夫 ,   田野確郎 ,   小松原良雄 ,   門田強 ,   黒田知純

ページ範囲:P.677 - P.683

 抄録:骨軟部腫瘍の診断におけるMRIの役割を明らかにするため,転移性骨腫瘍を含む骨軟部腫瘍を対象とし,MRIの有用性と限界について検討した.単純X線及び従来の断層X線では診断できなかった転移性脊椎腫瘍がMRIにより診断可能であった.MRIは孤立性骨嚢腫などの嚢胞性病変の質的診断には有用であったが,良悪性の鑑別という点では限界があった.骨軟部腫瘍の局所診断については,MRIにより腫瘍の周囲軟部組織への進展度が術前に把握でき,手術計画を立てる上で有用であった.特に仙骨腫瘍においては,仙骨面に平行にスライスするMRI前額断画像により切除範囲を決定することができた.また,脊椎・脊髄腫瘍では,FLASH法により,脊髄と病変の関係がより明確になり,さらに撮像時間が短縮できるため,アーチファクトや患者の苦痛を軽減することができた.

bisurface knee(KU型膝人工関節)の関節可動域―Y/S II型との比較

著者: 上尾豊二 ,   三木尭明 ,   千束福司 ,   小谷博信 ,   原聖 ,   増田敏行 ,   高橋真 ,   松岡秀明 ,   河村洋行

ページ範囲:P.685 - P.689

 抄録:高度屈曲を目的とした膝人工関節:KU型膝の特徴は,関節の支持と運動の2つの機能を高めるため,関節構造を体重負荷を目的とした関節面と,屈曲運動を目的とした関節面の二面(bisurface)としたことである.屈曲を目的とした関節面は関節中央後方に曲率大の凸の球面を持つ大腿関節面と,それに対応する凹の脛骨関節面とからなる.その可動域評価を客観的に検討するため,Y/S II型膝を対照としたKU型膝の比較試験を行った.KU型膝20例25関節,Y/S II型膝19例29関節である.KU型膝は屈曲平均術前123°から術後133°に有意に増加し,Y/S II型膝は術前127°,術後128°と術前角度の保持にとどまった.しかし,両者に統計的な有意差は認めない.KU型膝には術前後の角度に有意な相関(r=0.5)があり,術前屈曲角度が大きいと術後屈曲角度も大きい.Y/S II型膝は術前後の角度に有意な相関はなく,術前屈曲が良くても約130°での頭打ちの傾向が見られた.

内側型変形性膝関節症に対する片側型人工膝関節置換術について

著者: 長谷川幸治 ,   大石幸由 ,   伊藤晴夫 ,   清水卓也 ,   猪田邦雄 ,   三浦隆行

ページ範囲:P.691 - P.698

 抄録:65歳以上の内側型変形性膝関節症に片側型人工膝関節置換術(UNI)を行い,術後2年以上経過した67膝(53例)の臨床およびX線評価を行った.全例セメントを使用した.男性12膝,女性55膝で,手術時平均年齢71歳(62~84歳)であり,一次性関節症55膝,膝骨壊死による二次性関節症12膝で,経過観察期間は平均39ヵ月であった.全例2週間以内に荷重歩行ができ,入院期間は平均40日であった.臨床成績は日整会点数が術前平均54点が,最終経過観察時平均85点に改善した.平均可動域は術前伸展-12°,屈曲125°が,術後伸展-8°,屈曲122°と不変であった.X線評価では,各コンポーネントの正確な設置が可能であった.下肢アライメントは術前FTA平均186°が術後平均176°に改善した.
 活動性の低い65歳以上の高齢者では,UNIは高位脛骨骨切り術と比べ,社会復帰が早いので適応を厳守すれば,優れた手術方法であると考えられた.

手術手技シリーズ 関節の手術<下肢>

足根骨癒合症に対する癒合部切除術

著者: 北田力

ページ範囲:P.699 - P.702

はじめに
 1750年に,Buffonが初めて報告したという足根骨癒合症(tarsal coalition)は,踵骨と舟状骨間および踵骨と距骨間にもっとも多い.稀に梗状骨と中足骨間にも見られることもあり,その出現頻度は,0.03%から1%の間であると言われている.
 病因については,mesenchymeのsegmentation defectによるとする説が有力で,GriffinとRandは,新生児の剖検例において踵骨と舟状骨間の軟骨性癒合症を見い出している.そのほか,遺伝的な要因も見逃せず,Leonardは一等親間では39%に癒合症が遺伝すると報告している.

整形外科を育てた人達 第104回

住田正雄教授(1879-1946)

著者: 天児民和

ページ範囲:P.704 - P.706

 日本の整形外科は,明治39年に東京大学に田代義徳教授が開講したのが最初で,整形外科の講座名も選定された.同年,京都大学には松岡道治教授が開講された上九州大学には明治42年に勅令142号により整形外科を開設することが決まったが,整形外科の専門の学者がいないので,第2外科の住田助教授が整形外科の勉強のためにドイツに留学することになり,明治41年から4年間留学した.

手術手技 私のくふう

腰椎椎間板ヘルニアに対するmicrosurgical discectomyの臨床的検討

著者: 菅谷啓之 ,   三村雅也 ,   栗飯原孝人 ,   宮坂斉 ,   関川敏彦 ,   永原健 ,   木田泰弘 ,   川口善治

ページ範囲:P.707 - P.712

 抄録:顕微鏡視下手術では,明るく拡大された視野のもとで愛護的に神経根を扱うことが可能になるなど,多くの利点がある.しかしながら,手技的に十分な熟練と経験を要するのも事実であり,限られた施設においてのみ施行されているのが実状である.
 そこで我々は,従来行われている顕微鏡視下手術の欠点を補いつつ,その利点を最大限に生かすべく,小さな侵襲という点にこだわりすぎることなく,アプローチの段階で従来のLove法の手技を取り入れ,主にその脊柱管内操作にのみ顕微鏡を使用する方法を採用した.

検査法

腰部脊柱管狭窄症に対する磁気刺激法による運動路評価

著者: 飯塚正 ,   吉野恭正 ,   巣山直人 ,   関口哲夫

ページ範囲:P.713 - P.719

 抄録:磁気刺激法は,従来の方法では困難であった深部の神経組織を無痛性非侵襲性に刺激可能であり,世界的に注目を集めてきている.当院では1987年以来200例以上の神経疾患に応用してきた.今回,本法により腰部脊柱管狭窄症16例32肢の運動路を評価し,66例132肢の健常対照群と比較検討した.頭刺激MEP潜時は,対照群より有意に遅延し,筋力低下とほぼ相関した.馬尾神経伝導速度は,馬尾型(混合型含む)で平均29m/s,片側神経根型の患側で36m/s,健側で46m/sであった.異常判定率は,馬尾型で100%,神経根型では67%であった.多椎間病変や頸椎症の合併例でも責任病巣の判定に有用であった.また,全例で副作用はなく,外来レベルでも容易に検査可能であった.以上から,本法は腰部脊柱管狭窄症の客観的運動機能評価法として有用であることが判明した.

臨床経験

2歳児の大腿骨近位部に発生したosteoid osteomaの1例

著者: 瀧森護 ,   土谷一晃 ,   米倉徹 ,   新井克佳 ,   茂手木三男 ,   亀田典章

ページ範囲:P.721 - P.723

 抄録:股関節周辺に発生したosteoid osteomaは関節痛を主症状として発症することから,関節炎として治療され診断が遅れることが指摘されている.また,小児では訴えが曖味で他の股関節疾患と誤診される危険がある.さらに,股関節炎を併発したosteoid osteomaは二次的に大腿骨頸部や骨頭に変形を生じることが知られており,早期治療と経過観察が重要とされている.
 われわれの症例は,2歳児の大腿骨近位部に発生したosteoid steomaで,跛行を主訴として来院し,X線検査にて大腿骨転子間部に骨硬化像を認め,さらに頸部横径の軽度増大と股関節裂隙の拡大を伴っていた.本症に対して外科的切除を行い,良好な結果が得られたが,なお長期にわたる注意深い経過観察が必要と考えている.

長母趾伸筋腱皮下断裂の1例

著者: 須田義朗 ,   山賀慎一

ページ範囲:P.725 - P.727

 抄録:稀な外傷である長母趾伸筋腱皮下断裂の1例を経験した.症例は25歳の男性で,スキー中,石をよけようとして踏ん張った際に受傷した.長趾伸筋腱を用いた再建術を施行し,良好な機能回復が得られた.断裂の誘因として,14年前に生じた同側の下腿骨骨折による筋腱移行部への血行不全が考えられた.

胸椎後側彎変形・四肢末梢の著明な骨吸収像を呈し,多発骨折を合併したWerner症候群の1例

著者: 堀江健次 ,   成尾政圀 ,   小柳英一 ,   浦門操 ,   椎葉睦生 ,   石堂康弘

ページ範囲:P.729 - P.732

 抄録:Werner症候群は,早期に老人様変化を現す疾患であり,強皮症様皮膚変化と白内障を伴う事を特徴とする.今回我々は,骨粗鬆症・胸椎後側彎変形・四肢末梢の著明な骨吸収像・多発骨折を呈したWerner症候群の1例を経験した.同様な症例は検索し得た範囲ではなく,稀な1例と考えられたので,臨床的特徴とX線所見を提示し,鑑別疾患と共に報告する.症例は47歳女性,老人様顔貌・低身長・亀背・四肢末梢の萎縮が著明であった.転倒後より右大腿部痛・左肩痛・腰背部痛が強くなり独歩不能となり,本院を受診した.家族歴は,両親がいとこ同志の血族結婚であった.X線検査で全身の骨萎縮・胸椎後側彎変形・四肢末梢骨吸収像・左鎖骨骨折・左肩甲骨骨折・両側多発肋骨骨折・右大腿骨頸部骨折を認めた.眼科精査にて両側白内障を伴っており,Werner症候群と診断した.本症候群は早老症の範疇に該当し,鑑別疾患として,Gottron症候群(acrogeria)が重要であった.

前十字靱帯再建術後の膝蓋大腿関節の軟骨変性について―再鏡視による検討

著者: 中川滋人 ,   史野根生 ,   井上雅裕 ,   中田研 ,   前田朗 ,   小野啓郎

ページ範囲:P.733 - P.737

 抄録:膝蓋部痛はACL再建術後の合併症のひとつとして注目されている.本研究の目的は,ACL再建術後の再鏡視の結果をもとに,①ACL再建術後の膝蓋大腿関節(PFJ)の軟骨変性の頻度を調査することと,②この軟骨変性に影響を及ぼすと思われる因子を検討すること,であった.対象は,新鮮あるいは陳旧性ACL損傷例に対して凍結保存同種腱または自家膝蓋腱を使用したACL再建術を行い,再鏡視も可能であった計181膝であった.まず,再建時と再鏡視時のPFJの軟骨変性所見を5段階に分類し,この所見の変化を調査した.さらに,軟骨の変性に影響を与えると思われる8因子の悪化率を求め,これに統計学的解析(カイ2乗検定,重回帰分析)を加えた.結果は,181膝中悪化93膝(51%),不変74膝(41%),改善14膝(8%)であった.関節切開自家膝蓋腱使用再建例に比べ,関節鏡視下同種腱使用再建例のほうが,PFJの悪化が少なかった上また,顆間窩形成術の追加がPFJの悪化に大きく影響していた.

指腱鞘ガングリオンに対する穿刺療法

著者: 吉田強 ,   石井清一 ,   薄井正道 ,   青木光広

ページ範囲:P.739 - P.741

 抄録:手のガングリオンには,手関節背側,掌側,そして指腱鞘から発生するものがある,手関節部発生例に対する穿刺療法は,再発が多いことから治療法としては不十分であることが知られている.一方,指腱鞘発生例の治療法として,津下は手術療法を,Brunerは,穿刺療法を勧めている.我々は1984年から,指腱鞘ガングリオンに対しては,注射針を用いた穿刺療法を原則として行ってきた.今回,穿刺療法によるガングリオンの再発率を調査し,本治療法の妥当性について検討した.1984年からのガングリオンの患者は250例でそのうち手部発生例は191例,指腱鞘ガングリオンは23例であった.経過観察をした2例を除く21例に対して穿刺療法を行った.平均23.0カ月のfoilow upにおける再発は2例(9.5%)とほぼ満足できる成績であり,穿刺療法を第一選択の治療手段としてよいことがわかった.

肥厚性脊髄硬膜炎により脊髄横断麻痺を呈した1症例

著者: 藤本啓治 ,   濱田彰 ,   浅田雄一 ,   日下部育男 ,   藤原正富 ,   菅俊光 ,   泉春暁

ページ範囲:P.743 - P.746

 抄録:胸椎部に発生し脊髄横断麻痺を呈し肥厚硬膜切除,および人工硬膜充填にて軽快した症例を経験したので報告する.症例は69歳の女性.両下肢の放散痛及び歩行障害を主訴に当科受診.ミエログラフィー,MRI,ミエロ後CTにて第1胸椎高位から第7胸椎高位までブロック像を呈し,入院精査中,痙性不全麻痺への進行が見られたため脊髄腫瘍を疑い,第1胸椎から第10胸椎まで全椎弓切除術,硬膜切除術,および人工硬膜充墳術を施行した.硬膜の肥厚は著明で特に第4胸椎高位から第6胸椎高位では著しく約8mmの厚さを有していた.組織学的には膠原繊維の増生と硝子様化した所見,およびリンパ球,プラズマの浸潤を伴った肉芽腫様の所見を認め,慢性炎症による硬膜の肥厚所見(pachymeningitis)と診断された.術直後より自覚的な下肢のしびれ感,知覚鈍麻,下肢筋力は改善し,術後10カ月で術前の麻痺症状は全く消失し,独歩可能で日常生活においても支障はない.

両側同時に発生した大腿骨頸部spontaneous fractureの1例

著者: 原田昭 ,   原田雅弘

ページ範囲:P.747 - P.750

 抄録:両側同時に発生した大腿骨頸部spontaneous fractureの1例を報告した.症例は67歳の女性で,明らかな誘因なく歩行時の両股関節痛が出現したため当科を受診した.初診時の単純X線像では両大腿骨頭下骨梁の硬化像および外側骨皮質の亀裂像が認められ,MRIでは骨頭下に低信号域のラインがみられ,骨折線が明瞭に描出されていた.治療は両側ともに三本螺子固定を行い,骨癒合が得られた.本症は骨粗鬆症の進行に伴う骨の脆弱化を基盤として,明らかな外傷の既往がなく日常生活動作の反復により発生する比較的稀な骨折とされてきた.しかし,本症は大腿骨頸部内側骨折の一型としてとらえることが可能であり,日常臨床上で,決して稀な骨折ではないことが推測される.

肘関節横分散脱臼の1例

著者: 新林弘至 ,   濱上洋

ページ範囲:P.751 - P.754

 抄録:肘関節脱臼は日常よくみられる外傷であるが,肘関節脱臼のうち,横分散脱臼は過去にX線像のある症例報告は9例しかなく,非常に稀である.我々は,5歳男子の横分散脱臼の1例を経験し,保存的治療により良好な結果を得たので報告する.

踵骨骨端症の2症例

著者: 野村茂治 ,   猪原史敏 ,   藤田信彦

ページ範囲:P.755 - P.758

 抄録:踵骨骨端症の2症例につき,骨シンチ及びMRIを施行したところ,骨シンチでは明らかな取り込みを認め,MRIではT1強調画像にて信号低下を認めた.これらの結果は,踵骨骨端症の発生に慢性ストレスが大きく関与していることを示唆していると考えられる.
 これまで,踵骨骨端症の診断は病歴,単純X線撮影によってなされることが多かったが,今後骨シンチやMRIを用いることでより正確な診断が可能となるばかりか,経過観察,成因の究明にも役立つものと考えられる.

shepherd's crook deformityを伴った大腿骨頸部骨折の治療経験

著者: 峰松康治 ,   土屋弘行 ,   安竹秀俊 ,   松本忠美 ,   富田勝郎 ,   渡辺省二

ページ範囲:P.759 - P.762

 抄録:今回我々は,19歳の女性で多発性線維性骨異形成症に皮膚色素沈着,性早熟を伴ったMcCune-Albright症候群の稀な1例を経験し,shepherd's crook deformityを伴う右大腿骨頸部内側骨折に対して外反骨切り術を併用した骨接合術を行った.
 手術はPauwelsの理論を応用し,転子下で外反骨切りを行うとともに,Ennekingの報告に基づいて,健側の腓骨を骨釘として大腿骨頭に移植した.術後18カ月経過した現在,骨癒合は完成し,脚長差も補正されて日常生活に不都合がないまでに改善した.

I-cell病(mucolipidosis II)の1例

著者: 二井英二 ,   小保方浩一 ,   原親弘 ,   藤澤幸三 ,   山崎征治 ,   中野千鶴子

ページ範囲:P.763 - P.766

 抄録:比較的稀な糖蛋白代謝異常症のひとつであるI-cell病(Mucolipidosis II)の1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告した.
 I-cell病は,酸性水解酵素のリン酸化障害によって,リソゾーム内への酵素の取り込みが低下し,体液中での酵素活性の上昇を認めることを特徴とする常染色体劣性遺伝疾患である.臨床的には,ムコ多糖症であるHurler症候群に酷似しているが,尿中へのムコ多糖の排泄増加がみられず,ムコ多糖症に比較して症状発現が早く,進行も急激である.
 本症の病因は,UDP-Nアセチルグルコサミン-1-ボスホトランスフェラーゼの活性の低下が一次障害であると考えられている.
 診断は,理学所見,X線所見などの臨床所見により可能であるが,確定診断には,酸性水解酵素の培養皮膚線維芽細胞中での活性低下,血清,尿,髄液など体液中での活性上昇を証明することが必要である.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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