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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科27巻7号

1992年07月発行

雑誌目次

巻頭言

第7回日本整形外科学会基礎学術集会を開催するに当たって

著者: 室田景久

ページ範囲:P.769 - P.770

 第7回日本整形外科学会基礎学術集会を主催させていただくことを光栄に存じております.
 学会は平成4年10月8日(木),9日(金)の2日間にわたり,東京新宿の京王プラザホテルの9会場をフルに使用して開催されますが,この時季の東京は気候も良く,活気溢れる新都心の美しい夜景が会員諸先生を暖かくお迎えすることでありましょう.

論述

大腿骨頭辷り症に対する徒手整復の検討

著者: 飯田哲 ,   篠原寛休 ,   藤塚光慶 ,   矢島敏晴 ,   佐久間博 ,   堂後昭彦 ,   丘真澄 ,   守矢秀幸

ページ範囲:P.771 - P.777

 抄録:大腿骨頭辷り症に対する非観血的徒手整復の成績について検討を行った.対象症例はacute type:2関節,acute on chronic type:4関節,計6例6関節である.本法の適応は受傷後3週間以内のacute type及びacute on chronic typeの大腿骨頭辷り症で,X線上後方傾斜角30°以上であり,数日間の介達牽引にて整復されない症例に限った.整復手技は,全麻下背臥位で患側股関節を愛護的に屈曲・内旋・外転させる.骨端線のstabilityは受傷からの期間やX線像からだけでは一様に決められないため,この方法で整復されない症例は既に辷り部骨端線においてそれなりのstabilityが獲得されていると考え,整復位が得られる得られないにかかわらず整復操作はただ1回のみとした.術後平均4年1ヵ月の経過観察においてX線上全例に頸部短縮を認めるものの,1例の骨頭壊死もなく良好な結果を得た.

進行期股関節症に対する寛骨臼回転骨切り術の経験

著者: 土田芳彦 ,   長尾正人 ,   久木田隆 ,   河村正朋 ,   大辻芳樹

ページ範囲:P.779 - P.783

 抄録:寛骨臼回転骨切り術は,前,初期股関節症から,最近では進行期股関節症にまでその適応が広げられてきている.今回我々は,22例の進行期股関節症に対して行った寛骨臼回転骨切り術の短期臨床成績を評価し,X線画像上の関節症性変化の推移を分析した.臨床症状はほとんどの症例で改善が認められたが,特に疼痛点数の改善が著しく,歩行能力の改善も認められた.X線像では,関節裂隙の狭小化は1例を除き不変であり,骨嚢胞は3例を除き縮小または不変であった.また骨硬化像は1例を除き不変であった.関節症性変化の増悪例は術後の関節適合性の不良に原因があると思われた.以上より,進行期股関節症においても,術後の関節適合性がある程度良好ならば,寛骨臼回転骨切り術によって臨床症状の改善と関節症性変化の進行を抑止することが期待できる.

膝関節拘縮に対する関節鏡視下授動術

著者: 八木知徳 ,   平岡正毅 ,   佐々木鉄人

ページ範囲:P.785 - P.791

 抄録:膝関節の外傷や手術後に発生する関節拘縮は治療に難渋する合併症の一つである.筆者らは関節内癒着を原因とする拘縮例に対し,関節鏡視下に癒着を剥離する関節鏡視下授動術を行い,良好な成績を得たので報告する.
 対象は18例の膝関節拘縮例で,内外膝蓋下ポータルより関節鏡視する.膝蓋上嚢の癒着を剥離し,内外膝蓋支帯の癒着を切離したのち徒手矯正を行うのを原則とした.

股関節周辺の不顕性骨折に対する診断―MRI,骨シンチの有用性

著者: 中村宣雄 ,   西塔進 ,   中嶋洋 ,   津田隆之 ,   勝部博之

ページ範囲:P.793 - P.799

 抄録:高齢者の骨折の中にはX線上骨折線の見られないいわゆる不顕性骨折の型をとるものが存在する.特に股関節周辺の不顕性骨折は日常診療における重要な問題である.当科で経験した10例の股関節周辺の不顕性骨折(大腿骨頸部骨折6例,骨盤骨折3例,大転子骨折1例)につき早期診断における諸画像検査の有用性を検討した.10例はいずれも転倒により発症し,うち8例は歩行不能であった.初診時には単純X線,X線断層撮影にて異常なく,理学所見から9例を大腿骨頸部骨折,1例を恥骨骨折と診断した.確定診断は8例が骨シンチで,2例がMRIによりなされ,仙骨骨折はCT検査により初めてその骨折線が明らかとなった.いずれの例も早期の手術療法あるいは安静により順調に回復した,以上のことより,丹念な患者診察から不顕性骨折を疑うことが重要で,骨シンチとMRIにより早期の確定診断が可能であることがわかった.

膝関節外側半月板損傷の臨床像

著者: 八塚知二 ,   王享弘 ,   小林晶 ,   徳永純一 ,   福元敬二郎 ,   吉本隆昌 ,   後藤元徳 ,   濱渉 ,   浅野茂利

ページ範囲:P.801 - P.807

 抄録:膝外側半月板(以下LMと略す)損傷は膝内側半月板(以下MMと略す)損傷に比べて臨床症状が乏しく,関節造影も判読が困難な場合があり診断に苦慮する.外側円板状メニスクス(以下LDと略す)を除くLM損傷の臨床像を明確にするのを目的とした.当院で手術したM損傷は788症例835Mであった.MM,LM損傷の発症頻度は1:0.51とMMに多かったが,1984年以降はLM損傷の比率が増加している.発症機転は非外傷性損傷がLMでは多く,臨床症状の発現はLMは少なかった.断裂型ではLMでは横断裂の頻度が多かった.断裂部位ではLMでは前,中節での断裂が多かった.LM損傷の関節造影診断率は77.1%であった.M損傷の内外側の部位診断の誤診は30症例に認められ,LM損傷をMM損傷としたものが最多であった.LM損傷は臨床症状が乏しく関節造影の診断も困難なことがあり,内側に症状が認められた場合,MM損傷と誤診する可能性があることが示唆された.

整形外科基礎

有限要素法による椎体骨梁形成シミュレーション―特に正常骨と粗鬆骨での骨梁形態の差の生じる理由

著者: 上尾豊二 ,   堤定美

ページ範囲:P.809 - P.814

 抄録:骨構造の解析は,既に出来上がった骨構造についての生体力学的分析を行うものであった.逆に,その骨構造がなぜそのような形態でなければならないかについての分析は困難であったといえる.その目的のためには,全く無定型の状態から生体力学的な要請に適合して発生する骨構造をシミュレートする必要がある.
 我々は骨が形成されていく過程を有限要素法を用いコンピュータでシミュレーションする事に成功した.この手段を用いて骨粗鬆症に見られる椎体骨梁パターンがカルシウム不足の状態下で最も力学的に適応していることを明らかにした.

整形外科を育てた人達 第105回

小谷 勉教授(1917-1976)

著者: 天児民和

ページ範囲:P.816 - P.819

小谷教授に私が注目したきっかけ
 今回,小谷勉教授の伝記を書く決心をした理由は少し複雑だが,そのことから書き始めたい.昭和32年に日本手の外科学会を開催した.これは,手の外科の開拓者であり米国の権威あるBunnellの手紙を持ってHarry Millerが来日し,私にその手紙を手渡されたことがきっかけとなった.
 この手紙には「人の生活には手の機能が大切であるが,生命に直接関係がないので,医学界でも重要視しないのは残念である.先日,米国の日本医学教育視察団が九州大学を視察し,手の外科を少数ではあったが実施していたとの報告を聞き,日本に手の外科学会を設立してこの方面の発展に協力を頼みたい」と書いてあった.そこで早速,神戸で手の外科学会を開催した.集まった人は少数であったが,第1回手の外科学会となった.

整形外科英語ア・ラ・カルト・1

ACHILLES TENDON(アキリーズ・テンドン)

著者: 木村專太郎

ページ範囲:P.820 - P.821

 整形外科の分野で使われる英語を解説することになった.「ア・ラ・カルト」としたのは,学問外のことも,多く書かせて戴きたいと考えたからである.
 九大医学部同窓会雑誌に過去8年間「医学英語落書ノート」と題して,アルファベットのAから現在Hの項まで,高校生の辞書に出てくる医学英語に関して色色と解説してきた.これがきっかけとなって,ここに整形外科英語を書くことになった,私は,米国で5年間一般外科のレジデンシイを終了し,専門医のボード試験も合格してきた.その間1年間整形外科を学び,整形外科のことも少しは知っているつもりである.

臨床経験

小児外傷性踵骨欠損の1例

著者: 黒柳律雄 ,   山根知哉 ,   須田光 ,   小竹伴照 ,   鳥居修平

ページ範囲:P.823 - P.827

 抄録:農業機械により高度の足部外傷を受け,踵骨を失った7歳男児を経験した.この外傷に伴い,足底から後足部にかけての皮膚が,広範な壊死に陥ったため,reversed peroneal island flapで被覆した.その後,踵骨再建術は行わず,足部は扁平足を呈し,素足での荷重時には足底後方部に軽い疼痛を訴える.しかし,残存したアキレス腱遠位端が距骨後下端でtenodesisの状態となったため,足底屈力も比較的良好で,簡単な足底装具の装着のみで,軽いランニングも可能である.大型床反力計による歩行分析を施行した.荷重中心は,健側よりやや後方に移動している.床反力の垂直分力は1峰性で,ピークも健側に比し小さい.前後分力の制動相が,非常に弱いことも特徴的である.しかし,これらの異常パターンも足底装具装着下の歩行では改善している.

感染ヒンジ型人工関節に対して保存同種骨を用いた膝関節固定の1例

著者: 綿谷勝博 ,   右近良治

ページ範囲:P.829 - P.832

 抄録:現在,慢性関節リウマチ患者の膝関節に対し人工関節全置換術(TKR)が,関節機能再建手術として一般的に行われているが,関節内に異物を挿入することから,感染症が惹起すると非常に問題となる.現在よく行われている表面全置換型人工関節に比較して初期のヒンジ型人工関節は,その構造上髄内への骨セメントの使用量も多く,一度感染が生じた場合,セメントの除去に際し生じる広範な骨欠損および骨皮質の脆弱性のため,再置換を含めた治療は非常に困難となる.更に,慢性関節リウマチ患者の場合,免疫能の低下とADL上の制限が著明なため,大腿切断を余儀なくされ不幸な結果となることが多い.
 今回,我々は両側TKRを行った重度の慢性関節リウマチ患者のヒンジ型人工関節に発症した難治性の遅発性深部感染症に対し髄内釘と抜去時に生じる広範な骨欠損部に保存同種骨を使用することにより患肢温存し得た症例を経験したので報告する.

MRIが部位診断上有用であった多発性馬尾神経鞘腫の2例

著者: 油川研一 ,   原田征行 ,   植山和正 ,   市川司朗 ,   新戸部泰輔 ,   武田裕介 ,   田偉 ,   岸谷雄三

ページ範囲:P.833 - P.838

 抄録:Von Recklinghausen病に伴わない多発性馬尾神経鞘腫を2例経験した.1例は1本の馬尾神経に4個数珠状に腫瘍が連なっており,もう1例は2本の馬尾神経より発生していた.2例とも術前のMRIで多発性であることを確認しており,術中所見より最小2mmまで確認できていたことになる.MRIは空間分解能が低いため小病変の描出には不向きとされるが,Gd-DTPAを使用したenhanced MRIを行えば,小腫瘍の診断にも十分有用である.

前腕に発生したclear cell sarcomaの1例

著者: 斉藤要一 ,   佐賀憲雄 ,   村上孝憲 ,   岩田貴文 ,   伊谷雅宏 ,   吉田邦雄 ,   松山努

ページ範囲:P.839 - P.842

 抄録:右前腕に発生したclear cell sarcomaの1例を報告した.症例は46歳,男性.1989年の夏頃から右前腕の腫脹,尺骨神経領域のシビレが出現した.症状が強くなり1990年3月当科を初診した.X線撮影では異常なく,前腕の筋力低下は認められなかった.神経鞘腫を疑い摘出術を施行した.摘出した腫瘍表面は,約半分が黒く沈着していた.光学顕微鏡,電子顕微鏡による検索でメラニンを伴ったclear cell sarcomaの診断を得た.診断確定後は,化学療法として,ブレオマイシン,オンコビンを使用した.放射線療法として,局所にリニアックを50Gy/20f/5W施行した.1年間を経過したが,局所と全身に遠隔転移は認められない.

両大腿骨外顆に特異な骨軟骨片を認めた稀な1例

著者: 岩淵真澄 ,   古川浩三郎 ,   星野亮一 ,   斉藤伸也

ページ範囲:P.843 - P.846

 抄録:明らかな外傷歴がなく,両大腿骨外顆に特異な骨軟骨片を生じた稀な1例を経験した.
 症例は18歳,男.主訴は左膝痛,ひっかかり感.家族歴,既往歴に特記すべきことはない.バスのタラップに右足をかけた際に右膝に激痛が出現,歩行困難となり某医受診,関節内血腫が認められた.各種補助診断を経て右膝は某医にて,左膝は当院にて骨軟骨片の整復固定が行われ,自・他覚所見の改善をみたが,現在なお経過観察中である.

上腕三頭筋腱皮下断裂の2例

著者: 森薫 ,   田名部誠悦 ,   小酒井治 ,   高橋清輝 ,   道野邦男

ページ範囲:P.847 - P.850

 抄録:比較的稀な上腕三頭筋腱皮下断裂の2例を報告した.症例1は柔道練習中に右手をついて受傷した16歳の男性であり,症例2は交通事故で転倒して手掌を強打した17歳女性である.2例とも肘頭中枢側に小骨片を認め,上腕三頭筋腱縫着にて治癒した.上腕三頭筋腱皮下断裂の本邦報告例は自験例を含めて17例の報告があるのみであり,圧倒的に男性に多く,またX線で小骨片の有るものは12例であった.受傷機転としては,スポーツによるもの,介達外力によるものが多い.診断のポイントは,①肘関節の腫脹・疼痛・皮下出血,②肘関節後面の圧痛,陥凹,③自動伸展不能,④他動的屈曲時の疼痛,⑤肘頭中枢側の小骨片,があげられる.なお,本症の診断名として腱剥離とした方がふさわしいとも考えたが,従来の報告に準じて腱断裂とした.

交通外傷後に発症したClostridium glycolicumによるガス壊疽の1例

著者: 森政樹 ,   縄田耕二 ,   瀬谷斎 ,   鱸俊朗 ,   中村喜一 ,   上本宗唯 ,   野々上忠彦

ページ範囲:P.851 - P.853

 抄録:我々は,交通外傷による左下腿骨開放骨折後に発症したクロストリジウム性ガス壊疽の1例を経験したので報告する.
 ガス壊疽とは,ガス発生を伴う感染症の総称であり,起因菌としては,嫌気性グラム陽性桿菌のクロストリジウム属がよく知られている.基礎疾患では外傷が多く,汚染創のために血流障害を生じた壊死組織に感染して発症し,進行が急で,速やかに適切な治療が行われなければ重篤で予後不良な疾患である.症例は69歳,男性で,交通外傷治療中に患部皮下のガス発生を伴って発症した.起因菌は珍しいClostridium glycolicumであった.患肢の壊死がひどかったため患肢を切断したが,高圧酸素療法,抗生物質多剤併用投与,高カロリー輸液等の治療により救命することができた.

脛骨,膝蓋骨両コンポーネントの破損を合併したセラミック型人工膝関節の1例

著者: 船越洋 ,   宮津誠 ,   小野寺信男 ,   徳広聡 ,   竹光義治 ,   武田政俊 ,   島崎俊司 ,   池沢清豪

ページ範囲:P.855 - P.858

 抄録:全人工膝関節の脛骨コンポーネント破損の報告例は,内外あわせ15例と少ない.我々は,脛骨,膝蓋骨両コンポーネントの破損を合併したセラミック型人工膝関節の1例を経験した,その原因として,人工関節の設置アラインメント,膝関節の静的動的不安定性に加え,人工関節の材質(セラミック)による脛骨へのstress shieldingの可能性が示唆された.

水酸化アパタイト骨補塡材による指趾内軟骨腫の治療成績

著者: 中島秀人 ,   青木康彰 ,   下村裕 ,   栗崎英二

ページ範囲:P.859 - P.864

 抄録:手指ならびに足趾内軟骨腫に対する掻爬・骨移植症例と,合成水酸化アパタイト(HA)充填例の術後成績を検討した.症例は,骨移植例19例,HA充填例19例,計38例で,この両群間で臨床評価,X線評価を行った.臨床成績では,両群とも術後の疼痛・圧痛は1例もみられず,また術前にみられた腫脹や可動域制限は著明に改善されていた.X線成績では,骨移植例は全例bone remodelingがみられ,またHA充填例においても,経過観察期間が6ヵ月以上の症例では全例に良好な骨形成が得られた.以上より,HA充填例は骨移植例と同様術後成績は良好で,明らかな差はみられないことが確認された.HA充填によるアレルギー反応は1例も認められず,採骨の必要もないことから,HAは内軟骨腫の骨補填材として有用であると考えられる.

大腿骨骨髄腔に対するステムの3次元的適合性のシミレーション

著者: 戸田誠 ,   芝昌彦 ,   橋本規 ,   木村真二 ,   矢野悟

ページ範囲:P.865 - P.869

 抄録:セメントレス人工関節の術前計画でのステムのサイズ決定はきわめて重要であり,私達は術前の大腿骨近位部のCT画像とステムの断面形状をコンピュータ処理により重ね合わせ,3次元的な適合性と髄腔占拠率を表示するシミレーションシステムを作製した.このシミレーションシステムにより,複雑な髄腔形状とステムの適合性を3次元的に観察することが出来た.また,ステムのサイズを自由に選び髄腔との適合性を観察し,髄腔占拠率を計算することができた.さらに,ステムの刺入部と方向をかえることにより,あらゆる打ち込み状況を表示できた.

CT及びMRIによる画像診断が有用であった梨状筋症候群の1例

著者: 保坂泰介 ,   四方實彦 ,   岡田温 ,   田口保志 ,   田中千晶 ,   多田弘史 ,   相馬靖 ,   古川泰三

ページ範囲:P.871 - P.874

 抄録:今回我々は,CT及びMRIによる画像診断が有用であった梨状筋症候群の1例を経験したので報告する.症例は26歳の女性で,主訴は右下肢痛.坐骨神経刺激症状が著明なため,当初腰椎椎間板ヘルニアを疑い,脊髄腔造影,CTミエロ,腰椎MRI,腰椎椎間板造影,神経根造影等施行したが異常は見られなかった.右下肢内旋で,特に痛みが増強した.骨盤CT・MRIで,右側の梨状筋の肥厚を認めたため,梨状筋症候群と診断した.手術所見は,坐骨神経が中枢部で二分し,総腓骨神経部分が梨状筋と,その破格である腱性部の間を通過していた.この部で右下肢内旋時に総腓骨神経部分が強く圧迫されるのを認めた.腱性部を切除後,長期間存在していた坐骨神経痛は消失し,職場復帰可能となった.CT及びMRIによる画像診断は,従来,腰椎椎間板ヘルニアとの鑑別に苦慮してきた梨状筋症候群の診断に対して,極めて有用であった.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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