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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科28巻1号

1993年01月発行

雑誌目次

巻頭言

第66回日本整形外科学会学術集会を開催するに当たって

著者: 小野啓郎

ページ範囲:P.1 - P.3

■整形外科を面白く
 外科領域で,いま一番面白いのが整形外科だといいます.そのせいでしょう,毎年,学会へ加入する若い医師がおびただしい数にのぼるのは.
 何が面白いのか?それは学問と技術の相互加速がこの分野で,近年,際立っているからではないでしょうか.骨接合や人工関節と生体力学;移植あるいは再接着と臓器再生・制御論;患肢温存手術と腫瘍医学などなど.例えば,力学環境と骨修復の研究テーマは競合する各種の骨接合術が火をつけました.関節軟骨の物理化学や潤滑理論は入工関節の副産物ではなかったでしょうか.相互加速のめざましい成果が骨肉腫の患肢温存だという意見に反対はありますまい.抗癌剤の進歩だけではない,手だれのメスさばきだけでもない,文字通り集学的治療の実りが誰の目にも明らかです.しかも,この成果はより理想に近い人工関節の開発をさらに促す動機となりました.理論が先行したのではなく,革新的技術や予測を超える成功例が基礎研究を先導したように見えます.この種の事例が整形外科の臨床現場には決して少なくない,そこがたまらなく魅力的なのでしょうか.たぐい稀な洞察力があったとはいえ,Charnleyのケースがそうだったといえそうです.microsurgery,arthroscopic surgeryあるいはinstrumentation surgeryいずれもがこの技術と医学の双方向加速を秘めているとみていいでしょう.

論述

内側膝蓋大腿靱帯の機能解剖

著者: 野村栄貴 ,   冨士川恭輔 ,   竹田毅 ,   松本秀男

ページ範囲:P.5 - P.10

 抄録:内側膝蓋大腿靱帯(以下MPF靱帯)の膝蓋骨外側方向への制動機能とLength patternについて検討した.膝蓋骨の外側方向への制動機能は,膝蓋骨に1kgfの外方負荷を加え膝蓋大腿関節内側支持機構を順次切離し,そのつど膝関節各屈曲角度における膝蓋骨軸射X線撮影を行い,膝蓋骨外方偏位度を計測することにより分析した.その結果,MPF靱帯は単独で十分な膝蓋骨外側方向への制動機能があることが判明した.MPF靱帯の膝蓋骨付着部中央部と大腿骨付着部中央部および周辺4点を計測点として選び,それぞれの2点間距離を膝関節伸展0°から屈曲135°の範囲で計測した.MPF靱帯の膝蓋骨・大腿骨付着部中央部2点間距離計測は,屈曲90°以上で距離減少が大きくなるが,0~90°の範囲で2点間距離の最大最小値の差は2.9±1.1mmと小さかった.

特発性大腿骨頭壊死症の早期診断に対するMRI―骨頭陥没の発生の予知に関する検討

著者: 柁原俊久 ,   渥美敬 ,   山野賢一 ,   東郷泰久 ,   吉原哲 ,   西岡一雄 ,   武村康 ,   黒木良克

ページ範囲:P.11 - P.16

 抄録:単純X線像上で明らかな異常は認められないが,MRIにて異常を呈した症例を調査し,どのような症例が臨床的壊死に至ったかについて調査した.異常MRIを呈したsilent hip 21例26関節を対象とし,MRI前額面・矢状両面から検討した.これにより次の結果を得たので報告する.①骨頭陥没に至った症例全例で,前額面・矢状面のいずれかのスライスにおいてring or band patternが確認された.②一方向のみの撮影ではring or band patternをとらえられない症例も存在した,③前額面中央スライスにおいてring or band patternの外側端が臼蓋外側縁を越えた症例,または矢状面中央スライスにおいてringor band patternの外側端骨頭頂点の前方1/2を越えた症例は高頻度に骨頭陥没に至った.④骨頭陥没を予測する上で,前額面・矢状面の両面からring or band patternの存在および局在を把握することが重要であると考えられた.

シンポジウム 外反母趾の治療

緒言

著者: 三好邦達

ページ範囲:P.17 - P.17

 外反母趾は,わが国では最近とみに注目を集めてきた疾患の1つである.
 戦前・戦中・戦後間もない時代の日本人は足袋,草履,下駄を履いていることが多く,これらの履き物は,外反母趾発生の予防にこそつながるが,外反母趾変形を助長するようなことはなかった.しかし,この時代の日本人で,靴を履かないにも拘わらず,かなり強い外反母趾変形を持つ人もあったが,痛みなどの愁訴はなかった.

Lindgren法・Lindgren変法・two-directional osteotomy

著者: 中川悟 ,   奥田隆司 ,   増田祥男 ,   岩淵亮

ページ範囲:P.19 - P.28

 抄録:Lindgren法にて第二中足骨頭底部の胼胝・疼痛の残存,悪化が認められた.第二中足骨に対する第一中足骨の突出度を測定し,第一中足骨短縮が第二中足骨頭部痛・胼胝の原因となることを明らかにした.そこで第一中足骨突出度の減少の少ない骨切り術をLindgren変法として施行した.しかし変形の強い症例では一平面での骨切り術では矯正に限界を認め,遠位骨片の外方移動のみならず外反矯正も可能なtwo-directional osteotomyを考案した.
 Lindgren法19足,Lindgren変法41足,two-directional osteotomy 59足について検討を加えた.Lindgren法施行後第一中足骨突出度は平均2.68mm減少し,中足骨頭部痛・胼胝が7足(37%)に認められた.Lindgren変法施行後第一中足骨突出度は1.8mmの減少にとどまり,中足骨頭部痛・胼胝は9足(22%)に残存した.two-directional osteotomyでは第1中足骨突出度の減少は0.7mmにとどまり,中足骨頭部痛・胼胝の残存は7足(12%)と著明に改善していた.全症例にて統計学的に検討すると,術後の中足骨頭部痛・胼胝は術後の中足骨突出度(r=-0.455,p<0.001),中足骨突出度の減少(r=0.392,p<0.001),術後の一・二中足骨間角(r=0.183p<0.05)と明らかな相関を示した.

Lapidus変法

著者: 富沢仙一 ,   宇田川英一 ,   長谷川惇 ,   木村雅史 ,   八子宏 ,   久保田仁

ページ範囲:P.29 - P.34

 抄録:第一MTP関節の変形を軟部組織の形成によって矯正するSilver法と,第一中足骨基部外反骨切り術による第一中足骨内反矯正の,二つの要素により構成されるLapidus法は,理にかなった手術法である.我々は昭和55年より一部変更を加えて43例53足に外反母趾形成術を行ってきた.そのうちの38例48足に対して,Helal,加藤らの評価基準を一部改変して,術後評価を行った.自覚的評価,他覚的評価でも若干問題を残す項目もあったが良好であり,総合評価では全例優であった.本法は有用な手術法と考えられる.

Mitchell法

著者: 田中康仁 ,   高倉義典

ページ範囲:P.37 - P.43

 抄録:第1中足骨遠位で骨切り法を行う術式の1つであるMitchell法の手術原理,長所・短所,改良した術式および術後成績について述べ,その適応と限界について考察した.外反母趾55例66足の術後成績の検討から,臨床的には87.9%の症例で満足すべき結果がえられ,X線学的にもHV角で18.1°,Ml/2角で6.9°の改善が得られた.しかし,重症例では矯正角度が大きいにもかかわらず,矯正しきれていない症例が多く存在し,安定した成績を得るためには,術前のHV角が30°以下,M1/2角が15°以下が望ましいと考えられた.HV角が30°以上40°未満の症例でも適応があるが,M1/2角や母趾MTP関節の拘縮の程度などを考慮して決定する必要があると考えられた.適応の指標としては,HV角の方がM1/2よりも重要であると考えられた.

Mitchell変法

著者: 今給黎篤弘 ,   三浦幸雄 ,   沼尾茲夫 ,   伊藤康二 ,   山本謙吾 ,   中山貴士 ,   小泉隆司

ページ範囲:P.45 - P.52

 抄録:外反母趾の手術法は,歴史的変遷からみて多数の術式があるが,近年では中足骨矯正骨切りが比較的安定した術後成績が得られているためよく用いられている.我々も1978年以来,Mitchellの中足骨骨切り術に多少の改良を加えたMitchell変法を行い,良好な術後成績を得ているので,手術法を紹介すると共にその術後成績について報告する.術後観察期間を5年未満群と5年以上群に分けて検討した.X線学的評価ではH-V角,M1-M2角,M1-M5角は術直後の矯正は良好であり,1年位で少し戻る傾向があるが,いずれも正常範囲内であり,5年以上経つと安定してくる.臨床評価もGlynn判定基準で良以上95%,私案評価による患者の満足度は94%であった.また中足骨頭痛,足底腓砥,第2・第3中足骨配列の不均衡を呈するものには,第2・第3中足骨斜め骨切り術を併用している.本法は手術手技も簡単で,安定した術後成績が得られ,有力な手術法と考えている.

Mann法

著者: 山本晴康

ページ範囲:P.53 - P.57

 抄録:外反母趾19例24足に対して,McBride法と第一中足骨近位骨切り術を組合せた手技であるMann法を行い,その治療成績を検討した.合併症はなく,変形はおおむね良好に矯正され,第1中足骨の短縮は軽度で,第1MTP関節の可動域も良好であった.7例に第2・3中足骨骨頭に相当する足底部に疼痛が残存し,同部の足底面圧が術前と同様に高かった.疼痛のある群とない群に分けて,外反母趾角とM1M2角とM1M5角と第1中足骨の短縮を比較したが差はなく,疼痛のある群が矯正不足であるとか,第1中足骨が短縮していたということはなかった.疼痛の原因としては,第1中足骨骨切りの際の末梢骨片の背屈位固定や母趾内転筋の不適切な処置による横軸アーチの不十分な再建が推察された.

Hohmann変法

著者: 加藤正

ページ範囲:P.59 - P.64

 抄録:1989年末までに,外反母趾の自家手術例数500足を越えた.Hohmann変法による治療成績は,外反母趾本来の症状に関して言えば,安定して良好である.
 しかし,手術結果についての自覚的評価によれば,術後の合併症の中で,足底に生ずる有痛性胼胝についての不満が比較的多いことがわかってきた.そのため,この有痛性胼胝を中心に,術後の合併症についての実態調査を行い,その結果に基づいて,それぞれの合併症の発生防止対策や治療法について検討した.

整形外科を育てた人達 第111回

井上駿一教授(1930-1987)

著者: 天児民和

ページ範囲:P.65 - P.67

 井上教授は千葉大学の教授で脊椎外科分野で活躍されたが,昭和62年,定年まで7年もある時に亡くなられた.私も残念に思い,そのために伝記を書きたかったが,充分な資料がなく,遅れてしまった.井上教授の同級生の斎藤幸洋君の御紹介で,井上教授の奥様の幸子様から詳しい資料を頂くことが出来,この伝記を書き始めた.

整形外科英語ア・ラ・カルト・7

FRACTURE(フラクチャー)(その2)

著者: 木村專太郎

ページ範囲:P.68 - P.69

 今月も骨折の続きを述べる.米国では,骨折のことを“Fx”と省略して,カルテに書くことが多い.このように子音と“x”を組み合わせて作る省略医学用語が幾つかある.例えば治療(treatment)のことを“Rx”や“Tx”,生検(biopsy)のことを“Bx”,診断(diagnosis)のことを“Dx”などである.終戦後,日本には多くの米軍基地があり,陸軍基地内に“PX”があり,空軍基地の中には“BX”があった.“PX”は“post exchange”,“BX”は“base exchange”の略語である.“post”は,“ポゥスト”と発音し,これは軍隊の駐屯地を,“base”は基地を意味している.そこにあるそれぞれの売店のことを“PX”や“BX”という.終戦後の物資の無い時代には,米軍の“px”や“BX”には物資が豊富にあり,我々の憧れの処でもあった.

調査報告

稚内市における大腿骨頸部骨折の疫学的調査―1970年代後半と1980年代後半との比較

著者: 保田雅憲 ,   向和男 ,   松坂成行 ,   研谷智 ,   安藤御史 ,   後藤英司

ページ範囲:P.71 - P.74

 抄録:北日本における一地域での大腿骨頸部骨折の発生率の推移を調べるため,稚内市での発生率の変化を検討した.1986年から1990年に稚内市内で発生した50歳以上の大腿骨頸部骨折を疫学的に調査した.5年間で89例の骨折が発生し,1990年度の国勢調査の数値を基に人口10万人対発生率を算出すると36.9人で,標準人口10万人あたりでは40.5人であった.1976年から1980年の稚内市における調査では,人口10万人あたり14.9人,標準人口10万人あたり24.7人であったことから,この10年間に発生率が約1.6倍に増加した.骨粗鬆症患者の増加に伴い,日本でも今後大腿骨頸部骨折が激増することが予想される.

臨床経験

投球動作により後方転位をきたした鎖骨内側骨端離開の1例

著者: 井上邦夫 ,   石黒隆 ,   小川清久 ,   野田幸男

ページ範囲:P.75 - P.78

 抄録:16歳男子が,バレーボール用のボールを投球した後,右前胸部に激痛を感じた。臨床所見と単純CT像から後方転位を伴う鎖骨内側骨端離開と診断し,全麻下に観血的整復を行い,骨縫合で骨片間を安定させた.握ることが出来ない大きな球を投げる場合,大きな肩甲帯の前方移動と肩関節の水平内転運動を得るため,大胸筋は強く長時間にわたり収縮する.肩甲帯の慣性運動とこの大胸筋の収縮が鎖骨内側端に後方に向かう力を発生させ,力学的に弱い骨端線に離開を生じさせた,と推測された.

殿部に発生した悪性血管外皮腫の1例

著者: 熊野文雄 ,   川端力 ,   浜西千秋 ,   田中清介

ページ範囲:P.79 - P.81

 抄録:今回我々は比較的稀と思われる殿部に発生した悪性血管外皮腫を経験したので報告した.
 症例は,23歳,女性.左殿部の有痛性腫瘤のため入院した.画像診断にて左大殿筋内から1部は骨盤腔内にいたる腫瘍陰影を認めた.軟部悪性腫瘍の疑いのもとに手術を行い,術中迅速病理標本にて血管肉腫との診断を得,全摘出術を施行した.腫瘍組織のHE染色および鍍銀染色の所見より組織学的に悪性血管外皮腫と診断した.
 悪性血管外皮腫の軟部悪性腫瘍における発生頻度は2.5%前後であり,比軟的稀な腫瘍である.また部位別発生頻度をみると,上肢下肢に多く発生し,本症例のように殿部に発生するものは我々が調べ得た限りでは報告されておらず,殿部発生例は比較的稀であると考えられた.

第3腰椎椎体から椎間板腔へ発生した骨軟骨腫

著者: 牛尾一康 ,   岩崎廉平 ,   清水克時 ,   小野講三 ,   山室隆夫 ,   綿谷茂樹

ページ範囲:P.83 - P.85

 抄録:骨軟骨腫は長管骨の骨幹端に好発し,脊椎発生は少ない.脊椎の中では,椎弓・棘突起からの発生が多く,椎体からの発生は稀とされている.我々は第3腰椎椎体から椎間板腔へ発生した骨軟骨腫の稀な1例を経験したので報告する.症例は37歳の女性で,1991年3月,腰痛を主訴に当科を受診した.神経学的異常は認められなかった.単純X線像では,第3腰椎椎体下縁から椎間板腔へ石灰化陰影が認められた.CTでは,L3/4椎間板中心部に境界明瞭な石灰化陰影がみられた.第3腰椎椎体下縁に基部を持つ腫瘍を一塊として摘出した.病理標本で,成熟した骨および軟骨帽があり,核の異型性は見られず,骨軟骨腫と考えられた.椎体の骨化過程で迷入した軟骨細胞から発生したと考えられた.

成人発症のtethered cord syndrome

著者: 伊藤宣 ,   岩崎廉平 ,   清水克時 ,   西尾健 ,   山室隆夫 ,   吉村直樹

ページ範囲:P.87 - P.90

 抄録:24歳男性のtethered cord syndromeを経験した.腰痛,排尿障害で発症し,仙椎部の皮膚のdimple,殿部・下肢の知覚障害,SLR test両側陽性,指床間距離30cm,膀胱直腸障害などが認められた.画像では,第1仙椎以下の潜在性二分脊椎,第2仙椎レベルまで係留された脊髄円錐,その尾側の脂肪様組織,横走ないし上行する神経根像などが認められた.手術は,dimple皮下より硬膜内に達し脊髄円錐に癒着していた脂肪組織の剥離,および第4仙椎レベルでの終糸切離を行った.術後,歩行障害,知覚障害,SLR testに加え膀胱直腸障害も改善した.小児例と同様成人例においても終糸切離,untetheringにより症状の改善が期待できると考えられた.

巨大な腓骨筋滑車による長腓骨筋腱障害の1例

著者: 木下誠司 ,   佐藤進 ,   藤井英夫 ,   広瀬哲司 ,   柴田直樹 ,   鵜飼和浩

ページ範囲:P.91 - P.94

 抄録:巨大な腓骨筋滑車による長腓骨筋腱障害の1例を経験したので報告する.症例はII歳の女児で歩行時の足関節痛を主訴に受診した.右足関節外果の下方に骨性隆起が突出していた.単純X線像・CT像にて,両側の巨大な腓骨筋滑車の突出と右側の先端部の骨端核様の骨陰影を認めた.保存的治療に抵抗するため手術を施行した.長腓骨筋腱は,巨大な腓骨筋滑車により圧排され扁平化し強く緊張しており,滑車を切除することにより腱の緊張は緩んだ.Burmanは腓骨筋滑車に疼痛を生じる原因として腓骨筋滑車の過形成と腓骨筋腱々鞘炎を挙げているが,本症例では巨大な腓骨筋滑車により長腓骨筋腱が圧迫され疼痛が生じていたと考えている.また,明らかな外傷歴がないこと,および切除標本の病理組織像より,腓骨筋滑車先端の骨端核様の骨陰影は副骨ではないかと考えている.

Rhomboid fossaにより鎖骨病的骨折を生じた1例

著者: 馬庭壯吉 ,   柿丸知之 ,   都谷治利

ページ範囲:P.95 - P.97

 抄録:エックス線上のnormal variantとしてrhomboid fossaに遭遇することがあるが,病的骨折を契機に発見することは非常に稀である.患者は高校体操部員で,rhomboid fossaによる右鎖骨の病的骨折を起こしたため掻爬・骨移植を行った.また,予防的措置として左鎖骨のrhomboidfossaにも手術を行った.現在,術後2年であるが骨癒合は良好で,体操部活動も制限なく行っている.

肘関節外側方脱臼の治療経験

著者: 中島三郎 ,   沼田亨 ,   山内達朗 ,   二橋宏嘉 ,   池田啓一

ページ範囲:P.99 - P.103

 抄録:稀とされる肘関節外側方脱臼の3例を経験した.症例は13歳・男,60歳・女,31歳・女であり,第1例は上腕骨内上顆骨折を伴い,他の2例は骨折のない外側方脱臼であった.いずれも肘関節屈曲位に,前腕の回内力と,肘関節への側方への直達外力または間接の外反力が加わることにより,脱臼が生じたと思われた.X線上の後外方脱臼との鑑別点として,側面像にて尺骨鈎状突起が上腕骨下端関節部の後方に転位していないことに加え,前後像において肘頭が側面像を呈し橈骨と重なるかむしろ橈骨よりも外側にあり,また,側面像で肘頭は前後像に近くなることがあげられる.整復後に早期の自動運動を行うことにより,疼痛,関節の可動域制限や不安定性を残すことなく良好な成績が得られた.

脚長不等を生じた先天性長管骨彎曲症の1例

著者: 北小路隆彦 ,   吉橋裕治 ,   上田正 ,   杉浦昌

ページ範囲:P.105 - P.108

 抄録:Caffeyのいうprenatal bowing of long bones(先天性長管骨彎曲症)の女児例を比較的長期間経過観察し得たので報告する.両親が右前腕・左下腿の皮膚陥凹と骨性隆起に気付き,生後2ヵ月で来院した.X線上,両上腕骨・前腕骨・大腿骨および左下腿骨に彎曲変形を認め,骨形成不全症の疑いで経過観察したが,その後骨折を生じることはなく,彎曲変形も徐々に改善したため,本症と診断した.現在11歳になり,彎曲変形はほぼ消失したが,左下腿骨の長径成長障害によると考えられる脚長不等を生じた.本症は一般的には自然矯正傾向があり,予後良好とされているが,本例では脚長差は拡がる傾向にあり,診断確定後も長期の経過観察が必要と考えられる.

ギプス障害と思われる前足根管症候群

著者: 斉ノ内二郎 ,   津田精一 ,   小田明彦

ページ範囲:P.109 - P.111

 抄録:足の下伸筋支帯により生じる深腓骨神経麻痺の前足根管症候群は,報告が少ない.我々はギプス障害によると思われる3症例を経験したので報告する.ギプスは人工樹脂ギプスを使用した.3症例のうち保存的治療は1例,観血的治療が2例であり,経過は良好であった.3症例ともギプス固定後に症状が出現したのは,人工樹脂ギプスの欠点であるフィット性に欠け,モールティングしにくく,締まるため,足背部の腫脹により前足根管内圧が上昇したためと思われ,症状が出現した時点ですみやかにギプスを除去し,治療を行う事が必要であると思われた.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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