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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科28巻10号

1993年10月発行

雑誌目次

視座

整形外科の卒後研修

著者: 蓮江光男

ページ範囲:P.1095 - P.1096

 整形外科医とくに卒後教育に携わる者にとって,重要な仕事の一つは,良き後継者の育成である.厚生省医療関係者審議会臨床研修部会は,平成元年6月卒後臨床研修目標についての意見書を,作成提出した.日本整形外科学会では,すでに昭和51年4月に,卒後研修カリキュラム学会指針が作成されているが,現在さらに新しく作成された,整形外科卒後研修ガイドラインについて,種々の面から検討されている.
 一方,大学を含む臨床研修指定病院を中心とする,臨床研修研究会という組織があり,毎年1回研究会を開催しており,本年4月には第11回研究会が,倉敷市で行われた.私は当院の研修医委員会委員長として参加し,厚生省から各指定病院への要請に応じて,当院としての臨床研修プログラムを,作成提出した.この機会に整形外科の卒後研修について,日常感じている点を述べてみたい.

論述

悪性腫瘍に対する片側骨盤離断術の転帰と問題点の検討

著者: 生越章 ,   斎藤英彦 ,   井上善也 ,   堀田哲夫 ,   大塚寛 ,   山村倉一郎 ,   高橋栄明

ページ範囲:P.1097 - P.1103

 抄録:当科において施行した21例の片側骨盤離断術について,原疾患,生命予後,合併症,手術術式等について検討した.原疾患は軟骨肉腫6例,骨肉腫4例,転移性骨腫瘍2例,皮膚扁平上皮癌2例,その他7例であった.術後累積5年生存率は50%であったが,10年以上経過してから腫瘍死するものもあった.局所再発を5例に認めた.手術術式については,教科書的な手技にこだわらず症例ごとの工夫が必要である.術後断端部の皮膚壊死や感染の予防および出血量の減少のために,可能なら内腸骨動静脈は温存すべきであり,症例によっては大殿筋皮弁以外のanterior thigh flapなどを用いて断端部を被覆すべきである.骨盤輪の再建を行った症例は坐位安定性,義肢での歩行能力に優れていた.

QCT法:体格補正ファントムを用いた基礎的および臨床的研究

著者: 松山敏勝 ,   宮嶋俊定 ,   大寺浩造 ,   若松裕幸 ,   山下亮

ページ範囲:P.1105 - P.1110

 抄録:QCT法を臨床に用いる場合の測定再現率を高める目的で,体格補正の可能なファントムを用いたQCT法の検討を行った.in vivoの精度は0.3~1.2%であり,3ヵ月間の日差変動は0.5%であった.15~76歳の144名の健常日本人女性の腰椎骨塩量の基準値の経時変化は二次回帰曲線に最も相関性が高かった.基準値は,欧米白人に比較して各年齢ともに10%低値であった.
 本法は,臨床上の測定再現率が高く,QCT法の有益な改良法と考えられた.

非手術的治療が奏効した転移性脊椎腫瘍についての検討―麻痺を伴った症例を中心にして

著者: 片桐浩久 ,   高橋満 ,   稲垣治郎 ,   後藤達彦 ,   長尾清治 ,   井元明彦 ,   伊藤直也 ,   後藤忍 ,   片岡孝江 ,   岩田和久

ページ範囲:P.1111 - P.1118

 抄録:1987年以降当院にて非手術的治療を行った転移性脊椎腫瘍73例のうち初診時Frankel type BまたはCの麻痺を認めた20例の臨床経過,画像所見について検討した.麻痺が改善した症例には4つの特徴が認められた.①病理組織学的には放射線療法,化学療法またホルモン療法に対する感受性が高い乳癌,前立腺癌,悪性リンパ腫であること,②単純X線像では骨破壊が軽度であり椎体骨折がないこと,③MRI,脊髄造影で脊髄圧迫の主体が硬膜外腔の腫瘍であること,および④神経圧迫症状を呈してから歩行不能の麻痺発症までの経過が長いが,麻痺発症後直ちに治療を開始していることである.この4条件を満たした症例については治療前後のMRIにより著明な除圧効果と神経学的改善が認められた.このため、これらの症例は手術的治療の適応は少ない.一方,脊髄の圧迫が椎体後壁によるものは非手術的治療に感受性が高い腫瘍でも効果不十分な症例があり,手術の適応と考える.

若年者における頸椎部flexion myelopathy―病態と後方固定術の手術成績

著者: 大成克弘 ,   山田勝久 ,   蜂谷將史 ,   藤井英世 ,   藤下彰彦 ,   大久保俊彦 ,   三原久範 ,   最上敦彦 ,   花堂祥治 ,   近藤総一 ,   斉藤裕一 ,   岩村祐一

ページ範囲:P.1119 - P.1127

 抄録:頸椎部flexion myelopathyで後方固定術を行った若年者5例を対象として,その病態を解明する目的で臨床像,手術所見,手術成績を調査した.発症年齢は平均16.6歳であり,4例では発症後も身長は増加した.初発症状は手指の震えと伸展障害が3例,手指の震えとしびれが2例であり,右上肢のみ3例,両上肢2例で,うち1例には下肢の知覚障害と腱反射亢進を認めた.頸椎単純X線正面像で全例に軽度の側彎(Cobb法で5°~20°)を認め,1例を除き左凸であった.脊髄造影前屈位側面像で5例中3例に硬膜管の前方偏位を認め,CTM像で脊髄の扁平化(脊髄面積平均37.6mm2)を認めた.他の2例には硬膜管の前方偏位を認めなかった,手術所見で5例中4例に硬膜背側の静脈怒張を認めた.波型鋼線を用いた後方固定術を行い,全例症状は改善した.long fusionにもかかわらず可動域制限に起因する愁訴はなかった.

Jefferson骨折の治療

著者: 加藤泰司 ,   田中正道 ,   小泉寿章 ,   三岡智規 ,   宮本隆司 ,   廣田茂明 ,   冨士武史

ページ範囲:P.1129 - P.1135

 抄録:5例のJefferson骨折を治療し本骨折の臨床症状,画像診断,治療法について検討した.受傷原因は転落,交通事故で,臨床症状として後頭部痛,頸部痛,頸椎可動域制限を認めたが,脊髄症状はみられなかった,画像診断は頸椎側面像,開口位正面像,正側面断層写真,CTが有用であった,初期治療として全例にハローベストによる外固定を施行した後,受傷後3ヵ月の時点で頸椎前後屈機能撮影を行い,環軸椎の不安定性を検討した,受傷時から環軸椎の亜脱臼を認めたものは2例で,このうち1例は3ヵ月後に不安定性を認めなかった.もう1例は3ヵ月後にも環軸椎不安定性を認めたため環軸椎後方固定術を施行した,本骨折の治療にあたっては初期からの手術治療は必要ではなく,ハローベストによる保存的治療で環軸椎不安定性を残す場合に手術適応があると考えた.

変形性関節症に対する片側型人工膝関節置換術の術後成績

著者: 永芳郁文 ,   王亨弘 ,   小林晶 ,   徳永純一 ,   吉本隆昌 ,   福元敬二郎

ページ範囲:P.1137 - P.1144

 抄録:変形性膝関節症(以下OA)に対する単顆関節置換術(以下UKA)の評価は未だ一定ではない.UKAの術後成績を調査し手術適応や問題点を検討した.
 1978年3月より1991年12月までに施行されたUKAは67例73膝である.この中で1年以上経過観察し得た49例54膝を対象とした.性別は男性18例,女性49例,年齢は45歳から81歳,平均年齢70.1歳であり,部位別では内側57膝,外側13膝,内外側3膝であり,使用した人工関節はMarmor型37個,Oxford型及び渡部式各1個,PCA型34個である.経過観察期間は1年から13年であった.臨床評価としてJOA scoreを,X線学的評価としてFTA,下肢機能軸,脛骨component設置角,clear zone,健側のOA変化,術後脛骨側方偏位を調べた.
 Marmor型ではI7膝にlooseningを生じ,2膝に再手術を行った.PCA型は現時点では良好な成績である.UKAは適応を選べば用いられて良い手術であると思われた.

軟部肉腫におけるリンパ節転移と所属リンパ節郭清の適応

著者: 松本誠一 ,   川口智義 ,   真鍋淳 ,   黒田浩司 ,   谷川浩隆

ページ範囲:P.1145 - P.1148

 抄録:所属リンパ節腫大のない軟部肉腫において,原発巣の手術時にリンパ節郭清をすべきか否かについて検討した.病例は,当科にて治療した軟部肉腫235例であり,組織型別に早期の所属リンパ節転移の頻度を明らかにした.その結果,所属リンパ節転移は,横紋筋肉腫5/10例,明細胞肉腫:1/2例,滑膜肉腫;3/27例,類上皮肉腫:1/4例,MFH:2/71例,脂肪肉腫:1/49例,胞巣状軟部肉腫1/11,などにみられた.以上より,Noでリンパ節郭清を行うべき腫瘍型は,絶対適応として横紋筋肉腫と明細胞肉腫,相対適応として滑膜肉腫と類上皮肉腫,非適応として脂肪肉腫,MFHそして胞巣状軟部肉腫,であることが分かった.

手術手技 私のくふう

大腿骨粉砕骨折に対するEnder釘による治療

著者: 西川梅雄 ,   小川律郎

ページ範囲:P.1149 - P.1152

 抄録:Ender釘は大腿骨頸部外側骨折だけでなく,その他の部位にも使用される傾向がある.我々は4例の大腿骨粉砕骨折に対してEnder釘を使用し,良好な結果を得たので報告する.患者はすべて男性で,年齢は19~57歳(平均36歳).骨折部位は転子下~骨幹部が2名,骨幹部が1名,頸部および骨幹部(分節骨折)が1名であった.術後経過観察期間2年1ヵ月~5年(平均3年3ヵ月)で,全例に良好な骨癒合が得られた.Ender釘は手技が簡単で侵襲が少なく,大腿骨粉砕骨折に対して有用である.

整形外科を育てた人達 第119回

椎間板ヘルニアを発見した2人の学者Georg S. Middleton(1853-1928)とJohn H. Teacher(1869-1930)

著者: 天児民和

ページ範囲:P.1154 - P.1155

 今回は,椎間板ヘルニアを最初に発見した2人の学者を紹介したい.Medico-Chirurgical SocictyがGlasgowで1911年の3月3日に開催された時に,MiddletonとTeacherの2人が「Injury of the Spinal Cord due to Rupture of an Intervertebral Disc during Muscular Effort」と題して講演をした.これが椎間板ヘルニアを世界で最初に報告したもので,この2人の学者は整形外科を育てた人の中で,省くことの出来ない学者である.そこで,2人の発表した症例を紹介して,最後に2人の履歴を紹介することにしたい.今までのシリーズと違う型式で発表することをお許しください.

整形外科英語ア・ラ・カルト・15

“hand”に関する日常英会話・その4

著者: 木村專太郎

ページ範囲:P.1156 - P.1157

 前回は“hand”に関して幾つか慣用語句を述べたが,今回も“hand”に修飾語のついた言葉について,もう少し書いてみたい.

臨床経験

環指MP関節掌側脱臼の1例

著者: 五十嵐康美

ページ範囲:P.1159 - P.1162

 抄録:重度の精神遅滞のため施設入所中の38歳女性が,左環指MP関節の変形を主訴に来院した.X線写真にてMP関節の掌側脱臼を認めた.受傷日時,受傷機転は不詳だが,手術時に基節骨基部と中手骨頭問に掌側板の嵌頓を認め,MP関節の過伸展によるものと思われた.掌側板を切除し脱臼を整復したが,術後,ギプス内で再脱臼をきたしたため,再手術により長掌筋腱を用いて両側の側副靱帯を再建した.再手術後の脱臼は見られないが,関節症変化が進行している.MP関節の掌側脱臼には過伸展型の損傷と過屈曲型の損傷の2つのメカニズムが推定されているが,いずれの場合も側副靱帯の損傷を高頻度に伴うと思われ,整復時にはMP関節の安定性に重要な側副靱帯の修復・再建が必須と考える.

分裂膝蓋骨に発症した痛風の1例

著者: 冨田良弘 ,   長谷川正裕 ,   佐々木浩樹 ,   中川重範 ,   田中肇

ページ範囲:P.1163 - P.1165

 抄録:分裂膝蓋骨に発症した痛風の1例を経験した.患者は24歳男性で痛風発作の既往はなく,特に原因の無い膝関節痛にて発症し,画像診断上はSaupe分類III型の分裂膝蓋骨と円形骨透亮像を認めた.術中所見にて尿酸結晶が証明され痛風の診断がつけられた.分裂部には異常可動性もなく,炎症の波及も認められなかったため,分裂骨片の摘出は行わなかった.尿酸産生抑制剤の投与にて術後は膝関節痛は軽快しており,分裂骨片の摘出は必ずしも行わなくてもよいと考えられた.

超音波検査が有用であった肘離断性骨軟骨炎の1例

著者: 三上将 ,   高原政利 ,   三浪明男

ページ範囲:P.1167 - P.1170

 抄録:超音波検査によりはじめて病変部が確認された肘離断性骨軟骨炎の1例を経験したので報告する.症例は12歳の男子で,軟式野球チームの投手として活躍していた.主訴は右肘関節痛と右肘伸展制限であった.単純X線写真では特に異常を認めなかった.超音波検査を行ったところ,骨軟骨片の存在を認め,動的観察にて骨軟骨片の嵌入を認めた.手術時,上腕骨小頭より剥離した骨軟骨片を認めた.本症例は超音波検査により初めて離断性骨軟骨炎の初期病変が確認された興味ある1例である.

神経束に砂時計様のくびれを有する正中神経麻痺

著者: 星和人 ,   落合直之 ,   篠田瑞生 ,   小谷貢一 ,   松浦宏明 ,   糸川博士 ,   岩瀬嘉志 ,   末松直美

ページ範囲:P.1171 - P.1174

 抄録:43歳女性の正中神経麻痺の試験的展開において,肘中枢で神経束2本に砂時計様のくびれを認めた.風邪罹患後,急激な右肩甲部痛,右肘痛が出現し,右手回内及び摘み動作の障害を自覚するようになった.右肘より4cm近位に圧痛があり,短母指外転筋,浅指屈筋を除く正中神経領域の筋力低下を示したが感覚障害はなかった.発症後6ヵ月で圧痛点を中心に神経剥離を行った.術後7ヵ月で麻痺の回復が始まっている.これまで前骨間神経麻痺の診断のもと,神経剥離を行い異常所見を認めなかったとする報告は高率に存在する.本例のように圧痛点に一致した展開を行い,神経束まで剥離すれば本変化が同定される可能性がある.本症例のくびれは,2本の神経束に交差を伴わないで独立して存在しており,機械的な原因によるねじれは否定的である.

陳旧性Galeazzi骨折の治療経験―特に手関節鏡所見の検討

著者: 西川真史 ,   一柳一朗 ,   新戸部泰輔 ,   藤井一晃 ,   望月充邦

ページ範囲:P.1175 - P.1179

 抄録:Galeazzi骨折における遠位橈尺関節の脱臼では,合併する尺骨茎状突起骨折の処置や三角線維軟骨複合体(以下TFCCと略す)の損傷について様々な意見がある1~4).我々は,Galeazzi骨折2例の治療に際して手関節鏡を行い,TFCCの状態を観察したので,若干の考察を加えて報告する.

下肢に発生した筋肉内血管腫の5例―特にMRI所見について

著者: 浜口英寿 ,   徳広聡 ,   小野寺信男 ,   島崎俊司 ,   竹光義治

ページ範囲:P.1181 - P.1184

 抄録:1981年以後,当科にて手術治療を行った筋肉内血管腫5例の画像所見,中でもMRIの有用性について考察した.全例女性で,年齢は2歳6ヵ月~15歳(平均11.1歳),発生部位は内側広筋2例,半腱様筋,ヒラメ筋各1例,大腿直筋と外側広筋に浸潤していたものが1例であった.X線,CT,造影CTは全例に,血管造影,Gaシンチグラフィーはそれぞれ3例ずつMRIは最近の2症例に施行した。X線で石灰化像は2例に認められた.CTでは腫瘍内部,境界とも不明瞭であったが,MRIでは内部は特徴的な線~索状像として表され,境界も明瞭に描出された.その特徴的な像により本症の診断はMRIのみで可能と思われた.血管造影,シンチグラフィーは侵襲も大きく,本症の診断には不必要と思われた.

病的骨折を生じた小児大腿骨頸部良性腫瘍の治療経験

著者: 中敬彦 ,   篠原典夫 ,   横山庫一郎 ,   近藤正一 ,   南島広治 ,   前田剛 ,   星野秀士

ページ範囲:P.1185 - P.1188

 抄録:小児期発生の大腿骨頸部良性腫瘍は,腫瘍本来の性格とあわせ手術が十分に行いにくい部であることから再発することが多く病的骨折の危険を伴い長年にわたって治療に難渋することがある.我々は,小児の大腿骨頸部に発生し,病的骨折を来した良性腫瘍3例を経験し,その治療方針に関し若干の考察を加えたので報告する.
 症例は,18歳女性fibrous dysplasia,23歳女性enchondroma,14歳男性fibrous dysplasiaの計3例である.前2例では小児期に掻爬骨移植がなされたが,成長終了後に病的骨折を生じており,最後の14歳例は今回病的骨折で発見された.前2例は掻爬海綿骨移植と海綿骨螺子による内固定を行い,14歳例ではこれらに加え,再発に際しても吸収が起こりにくいと考えられる皮質骨移植を施行し,それぞれ経過良好であった.大腿骨頸部の再発性腫瘍の手術法について考察した.

膝蓋骨sleeve fractureの2例

著者: 中永士師明 ,   遠藤重厚 ,   菊池正知 ,   山田裕彦 ,   高桑徹也 ,   星秀逸 ,   菅栄一 ,   菅義行

ページ範囲:P.1189 - P.1192

 抄録:膝蓋骨sleeve fractureは比較的稀な骨折であり,通常は下極に発生する.
 今回我々は,本症の2例を経験した.そのうち1例は上極に発生するというきわめて稀なもので,特に海外では1例しか報告されていない.両症例ともJudet法を応用した吸収性縫合糸による縫合固定で良好な結果を得た.

舟状骨偽関節に伴う長母指屈筋腱断裂の1例

著者: 室井眞理子 ,   田中寿一 ,   山下仁司 ,   美崎晋 ,   柳田博美 ,   鄭昌吉

ページ範囲:P.1193 - P.1196

 抄録:舟状骨偽関節に伴った長母指屈筋腱(FPL)断裂の1例を報告した.症例は63歳の男性(農業).主訴は左手関節痛,1987年11月にドリルに巻き込まれ受傷し,その時近医にて左舟状骨の偽関節を指摘されたが,特に治療は受けなかった.その後左母指IP関節の屈曲不能になったが放置,1991年12月,左手関節の運動時痛と運動制限悪化のため,当科を受診した.X線像上,左舟状骨偽関節と,左母指IP関節の,屈曲障害を認めた.手術時,模骨手根靱帯の欠損があり,この部より手根管内に偽関節部が露出しFPLは完全断裂,示指深指屈筋腱は,ささくれだちの不全断裂を認めた.手術は,偽関節部を病巣掻爬,腸骨よりの襖状骨移植後,Herbert screwによる固定,靱帯欠損部を横手根靱帯の一部で修復,IP関節を腱固定した.8ヵ月後の追跡時骨癒合は得られ,機能的にも経過良好であった.

単純X線で陳旧性後方脱臼像を呈した上腕骨頭壊死の1例

著者: 岩本潤 ,   小川清久 ,   高橋正明

ページ範囲:P.1197 - P.1200

 抄録:単純X線で定型的な陳旧性肩関節後方脱臼像を呈したアルコール性多発性骨壊死の1例を経験した.症例は70歳,男性で,両側特発性大腿骨頭壊死に対し両側人工骨頭置換術を施行後,疼痛及び運動障害で両側上腕骨頭壊死が発症した.発症後3ヵ月目に左側はX線上で陳旧性後方脱臼像を呈した,原因は,肩関節が内旋位で歩行の駆動機構や荷重関節として使用され,骨頭前方部のみが圧潰したためと推測された.骨壊死症では,顕在している壊死の部位にかかわらず全身の検索を行い,もし上腕骨頭壊死を認めた場合には肩関節に負荷がかからない治療計画を立てる必要がある.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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