臨床整形外科28巻6号

1993年06月発行

臨床経験

人工膝関節形成術後滑膜炎（prosthetic synovitis）の1例

著者： 八木知徳¹ 平岡正毅¹ 安田和則²

所属機関： ¹手稲渓仁会病院整形外科 ²北海道大学医学部整形外科

ページ範囲：P.735 - P.738

　抄録：Kinematic II型による人工膝関節形成術後，特に問題なく生活してきたが，転倒を契機に疼痛，腫脹をきたし，prosthetic synovitisと診断された1例を報告する．
　臨床症状としては，内側PF関節裂隙に母指頭大の腫瘤を触れ，これが膝伸展時関節裂隙にimpingeしていた．関節鏡視下にこれを切除することにより症状は改善した．X線像ではコンポーネントの位置異常や弛緩は認められないものの，脛骨側HDPスペーサーが摩耗し，ほとんど消失していた．切除した滑膜の組織像をみると，瘢痕様組織の間に多数の裂隙が存在し，この中には偏光顕微鏡で輝いてみえるHDP摩耗粉が認められた．