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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科28巻7号

1993年07月発行

雑誌目次

視座

国際学会に思う―どこまで通訳は必要か

著者: 田島直也

ページ範囲:P.769 - P.769

 先月(3月)ハワイ・マウイ島で第2回日米整形外科スポーツ医学会が開催され,日本からも約150名の参加があった.これは,日米両国の整形外科スポーツ医学領域の研究発表と国際親善をはかろうとするもので,第1回は2年前に同じくハワイで開催され,今回は,私共が日本側の窓口としてお世話することになった.
 会議はすべて両国fifty-fiftyということで一般演題,シンポジウムとも同数ずつということにし,座長も一般演題シンポジウムとも日米1人ずつということに決めた.日本の一般演題応募は78題あり,oral・poster等はプログラム委員長を中心に決定された.

論述

寛骨臼形成不全に対する寛骨臼回転骨切り術の治療成績ならびに実施上の対策

著者: 野沢雅彦 ,   山内裕雄 ,   一青勝雄 ,   新井浩一 ,   梁瀬早希 ,   森福研一 ,   長谷川徳男

ページ範囲:P.771 - P.777

 抄録:寛骨臼形成不全を有する,前股関節症,初期股関節症,および臼蓋に骨嚢胞のみを有する進行期変形性股関節症症例に対し,田川,二ノ宮らに準じた寛骨臼回転骨切り術を行い,手術後1年以上経過した58例61関節を調査した.臨床症状およびX線所見上,良好な成績であった.骨切りは股関節周囲を十分に展開し,移動する臼蓋がなるべく厚くなるように行い,直線ノミで1-1.5cm骨切りした後に彎曲ノミを使用した.骨切り後,腸骨と移動した臼蓋の間にできた間隙に,腸骨外板と海綿骨を移植したが,骨形成促進と海綿骨の逸脱を防止するためにフィブリン糊を用い,全例に良好な骨癒合を得ることができた.輸血は冷凍自己血を用いたが,血清肝炎などの輸血による合併症はなく,術後の出血に対しても術前の貯血で十分に対応できた.本術式は適応を選べば比較的高齢者の寛骨臼形成不全の症例にも応用可能であった.

変形性関節症膝において高位脛骨骨切り術後1年間の下肢アライメントの変化が10年成績に与える影響について

著者: 辻野淳 ,   安田和則 ,   真島任史 ,   金田清志

ページ範囲:P.779 - P.786

 抄録:内側型変形性膝関節症に対する高位脛骨骨切り術後10年以上経過した39人42膝の,術後1年間の下肢アライメントの変化を,脛骨傾斜角(TPA)および大腿骨脛骨角を用いて調査し,この変化と長期成績との関係を検討した.術後1年間のTPAの変動は平均内反1.3°±3.3°で,3度以上の再内反は28%に存在した.またこの変動は創外固定抜去から術後6カ月間に大部分が発生していた,3大学試案による膝機能評価点の改善点が10点以下の成績不良群11例中8例は,術後6カ月以内に再内反をきたしていた.TPA 3度以上変化群と3度以下変化群では,創外固定期間に関し有意の差を認めなかった.術後1年以内のTPAの変動は予想より極めて大きく,これは10年成績に直結していた.10年成績向上のためには正確な手術と慎重な骨癒合の判定に加えて術後6カ月間の下肢アライメントの厳重な管理が必要と考えられた.

Kennedy LADを補強材として用いた膝前十字靱帯再建術における再建ルート

著者: 宗田大 ,   石橋俊郎 ,   山本晴康 ,   古屋光太郎

ページ範囲:P.787 - P.794

 抄録:Kennedy LADを補強材とした前十字靱帯再建術のうち術後2年以上経過観察された85例を再建法の発展から4群に分けて検討した.一貫して用いたover-the-top変法は,関節外から骨溝を形成するより関節内から顆間の後外側壁を削除する方法がよりよいと考えられた.関節鏡視下手術によって移植腱の観察が細かく可能となり移植腱のroof impingementを予防するためには顆間前方からの顆間形成術が必要なことが判明した.X線像による脛骨ドリル穴の分析では群を追うに従って後方よりで内側よりの再建ルートが実施されてきたことが明らかにされ,二次的関節鏡視でも良好な再建靱帯の割合が増した.

整形外科基礎

駆血帯使用が術前投与抗生物質(CZON)の組織内濃度に与える影響

著者: 八木知徳 ,   平岡正毅

ページ範囲:P.795 - P.799

 抄録:整形外科手術に伴う骨・関節の感染症を予防する目的で,抗生物質の術前投与が行われることが多い.一方,四肢の手術の場合,駆血帯を用い血流を遮断するため,手術創内の抗生物質濃度の推移には興味かもたれる.我々は55例の手術例に対し,CZONを1g術前静脈内投与し,300mmHgでの駆血帯使用開始時間を5分毎に変え,各々の群での血中および術部の筋肉内濃度を測定した.その結果,15分以内の駆血開始であれば,90分間10μg/ml以上の濃度が保たれ,有効濃度以上であった.駆血帯を解除した例で手術時間が120分を越えると,MIC80以下になる場合が多く,抗生物質の追加投与が必要である.駆血帯使用時の筋肉内濃度は非使用時より低値を示し,骨や骨髄組織で測定した他の報告とは異なっていた.これはエスマルヒによるwash out効果によると考えられた.

整形外科を育てた人達 第116回

Ivar Palmer(1897-1982)

著者: 天児民和

ページ範囲:P.801 - P.803

生いたちと研究生活
 Ivar Palmerは膝関節のligamentum cruciatumの研究者として有名であるが,1897年にSwedenの北の町Jamtlandに生まれた.父は聖職者であったので郷里で教育を受け,1915年には首都Stockholmの大学に人学した.医学の勉強を開始して良く勉強したので1923年にはMDの学位を得た.
 その後Karolinska Instituteに属していたSerafimer Hospitalに勤務して5年間いたが,1928年にはKarlborgの陸軍病院長に任ぜられた.更に1934年にはStockholmのSabbatsberg病院の外科部長となった.

整形外科英語ア・ラ・カルト・12

“hand”に関する日常英会話・その1

著者: 木村專太郎

ページ範囲:P.804 - P.805

 今回は“hand”に関する日常英会話について書きたい.“hand”は勿論“上肢”(upPer limb・アッパー・リム)の手首より遠位の部分を指す.米語の“hand”の発音は,“ヘンド”に近い.これは足首“ankle”の発音が“アンクル”ではなく,“エンクル”に近いと同じである.“アンクル”は,“uncle”のことである“手”のことをラテン語で“manus”(マーヌス)といい,ご存知のように整形外科分野では.“manus vera”(内反手)や“manus valga”(外反手)がある.この“manus”に関する驚くような言葉が,通常の英語表現に意外に多く出てくるので,これらを先ず述べてみたい.

臨床経験

多発性内分泌腺腫症に併発した大腿骨頭すべり症の1例

著者: 増谷守彦 ,   熊沢やすし ,   原田征行 ,   毛利尚宜 ,   笹本誠 ,   新井桂子

ページ範囲:P.807 - P.810

 抄録:我々は,甲状腺髄様癌と骨格異常を有した多発性内分泌腺腫症に合併した,大腿骨頭すべり症の1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.
 本例では,右大腿骨頭のposterior tilt angleは57度であり,内分泌検査ではソマトメジンC,カルシトニン,CEA,サイログロブリン,尿中17-OHCSの高値を認めた.治療は大腿骨頭前方回転60°の骨切りを施行した.術後経過は良好である.

足根骨に発生した骨巨細胞腫の1例

著者: 西田公明 ,   米村憲輔 ,   阿部靖之 ,   藤本昭二 ,   高木克公

ページ範囲:P.811 - P.814

 抄録:骨巨細胞腫(giant cell tumor of bone,以下GCT)は,しばしば再発を見るため治療上注意を要する疾患である.
 本症例は発生部位としては稀な足根骨に発生したGCTで,X線像にて足根骨に広範に広がる病巣を認めた.本症例に対して,掻爬骨移植を行い良好な機能を温存しえたが,今後注意深い観察が必要であると考えている.

妊娠に合併した特発性一過性大腿骨頭骨萎縮症の1例―DEXAによる骨密度測定を用いて

著者: 藤田拓也 ,   青山邦彦 ,   林正岳 ,   福野直孝

ページ範囲:P.815 - P.819

 抄録:今回我々は,妊娠に合併した特発性一過性大腿骨頭骨萎縮症の1例を経験し,DEXAを用いた骨密度測定により経過観察を行ったので報告した.症例は36歳,女性で臨床所見,画像診断より本症を疑い,ベッド上安静,免荷を行った,発症2カ月目頃より疼痛は軽減し,4カ月目の単純X線では両骨頭の骨梁はほぼ改善した.
 本患者の入院直後の全身,腰椎の骨密度は同年代の健常女性の骨密度の正常範囲内,また正常分娩後女性9例の骨密度との有意差も認めなかったが,大腿骨頸部は右側0.600g/cm2(標準値の67%),左側0.650g/cm2(同72%)と著しい減少を呈していた.発症7カ月の現在右側0.772g/cm2(同86%),左側0.796g/cm2(同89%)とほぼ正常範囲内に回復した.`

多発性神経鞘腫の3例

著者: 山田賢治 ,   岡史朗 ,   乗松尋道 ,   吉田竹志 ,   角南義文

ページ範囲:P.821 - P.824

 抄録:神経鞘腫は通常単発性で,多発することは稀とされている.今回我々は,末梢神経に多発した神経鞘腫の3例を経験したので報告する.症例は,58歳女性,53歳および30歳男性で,3症例ともvon Recklinghausen病の合併は認めなかった.症例1は左下腿外側の浅腓骨神経領域,症例2は右膝窩部・右足関節内側部の脛骨神経領域と,同一神経領域に,また症例3は,右腋窩部の尺骨神経および左膝窩部の脛骨神経領域と,異なる末梢神経領域に多発した症例であった.症例1では,神経鞘腫に随伴した神経周膜の過誤腫様の増殖を認め,特異な病理組織像を呈した.症例2・3は,ともにAntoni A,Bタイプの領域を含む典型的な病理組織像を示した.過去の報告例や,症例1に認められた病理組織像から,多発性神経鞘腫が単なる腫瘍の重複ではなく,神経系の奇形腫様あるいは過誤腫様変化を基盤として発症する系統疾患である可能性が考えられる.

類上皮肉腫の4例

著者: 方志偉 ,   川口智義 ,   松本誠一 ,   真鍋淳 ,   黒田浩司 ,   谷川浩隆 ,   古屋光太郎 ,   磯辺靖

ページ範囲:P.825 - P.829

 抄録:4例の類上皮肉腫を報告した.年齢は,31,45,25,57歳であり,発生部位は上肢2例,下肢2例であった.臨床的特徴は,難治性潰瘍,多結節性皮膚皮下病変であり,画像診断では,浸潤性の腫瘤像を呈したが本症に特徴といえる所見は無かった.手術は,原則としてcurative procedureを行い,全例local controlを得た.症例1は,上腕切断後9年9カ月の現在再発転移を認めない.症例2は,大腿切断後鼠径リンパ節郭清と肺転移切除を行い,切断後5年10カ月の現在再発転移を認めない.症例3は,広範切除後2年6カ月の現在再発転移を認めない.症例4は,前腕切断後2年2カ月の現在多発肺転移はあるものの進行はわずかである.
 本症は,転移の頻度が高く予後不良といわれているが,それらは不十分な局所療法により再発を繰り返した結果であり,初回より適切な外科的治療を行えば予後を改善できると思われた.

結核性骨関節炎のアデノシンデアミナーゼ活性測定

著者: 平林伸治 ,   鍋島隆治 ,   小畠秀人

ページ範囲:P.831 - P.833

 抄録:結核性骨関節疾患の診断は結核菌がガフキーにて検出されることは少なく,菌の培養には長期間を要するために早期の診断が困難である.穿刺液中のadenosine deaminase(ADA)活性を測定し結核性疾患の鑑別が可能か検討した.対象としたのは培養陽性・組織診断陽性の結核群4例と,結核菌培養陰性で全人工膝関節置換術を施行した慢性関節リウマチ(RA)4例・変形性膝関節症(OA)7例である.結核群のADA64.8-149.6U/L(平均89.9).対照群は9.5-33.1U/L(平均18.9)で結核群が高値を示した(P<0.1).抗結核剤投与中の症例でもADA活性は高値を示した.今回の検討では結核群にADA60U/L以下の症例がなく,ADA活性50-60U/Lが鑑別すべき境界となると推測された.穿刺液のADA活性が高い場合は結核性疾患を考える必要があり,RA・OA等他の炎症性・変性疾患との鑑別にスクリーニング検査として利用できる可能性がある.

spondylo-metaphyseal dysplasiaの1症例

著者: 加藤知里 ,   舩橋建司 ,   大脇甲哉 ,   近藤桂一 ,   丹羽滋郎

ページ範囲:P.835 - P.838

 抄録:Spondylo-metaphyseal dysplasia(SMD)の一症例を経験したので,症状,X線所見について検討した.症例は,1987年9月4日生,女児.生直後に,左足部内反変形があり,装具療法にて軽快した.2歳4カ月時,下肢変形(O脚)を主訴に再度受診し,長下肢装具による治療を開始した.身長,体重は平均値であった.X線所見は長管骨骨幹端の不整像と全脊椎椎体に汎扁平椎を認め,また両手根骨は著明な発育遅延を呈しており,SMD Kozlowski型と診断した.4歳5カ月の現在,下肢変形は見られない.SMDにはKozlowski型をはじめとする5型があり,本邦においては1977年水島らが報告して以来27例の報告がある.これに自験例を加えて,症状,X線所見について検討した.初発症状は,下肢変形,歩容異常などの下肢症状が多い,X線所見では脊椎の扁平化,長管骨骨幹端の変化,手根骨の低形成を呈するものが多い.

遠位橈尺関節尺骨頭掌側脱臼の1例

著者: 中島三郎 ,   沼田亨 ,   山内達朗 ,   二橋宏嘉 ,   峯苫貴明

ページ範囲:P.839 - P.842

 抄録:遠位橈尺関節における尺骨頭掌側脱臼の1例を経験したので報告した.症例は47歳,男性,作業中約40kgのセメント袋を両手でかかえて運んでいて,道路脇の側溝に落ち転倒.左前腕回外位にて,左手関節背側の尺骨頭部分を,側溝の端に打った.初診時,左前腕は回外約45°に固定され回旋は全く不可能であった.X線では手関節の正面像で遠位橈尺関節部分に重なりがみられ,側面像で尺骨頭の掌側脱臼がみられた.骨折はなかった.直ちに徒手整復を行い,4週間のギプス固定の後,自動運動を開始し,良好な結果が得られた.
 過去の報告では,受傷早期に正確な診断をつけられずに陳旧例となったものも多い.本疾患の存在を念頭におき,受傷早期に正確な診断,治療を行うことが重要である.

有鉤骨に発生したosteoid osteomaの1例

著者: 田村幸久 ,   中村蓼吾 ,   井上五郎 ,   堀井恵美子 ,   渡辺健太郎 ,   角田賢二

ページ範囲:P.843 - P.846

 抄録:osteoid osteomaは下肢長管骨に発生することが多く,手に発生することは稀である.今回有鉤骨に発生したosteoid osteomaを1例経験したので報告した.症例は23歳,男性で,疼痛とともに手関節滑膜炎を合併していた.画像診断上CTおよびMRIがnidusの発見に有用であった.治療として病巣切除後骨移植を施行し良好な結果を得た.

高IgE症候群に関節炎を合併した1例

著者: 上野貢生 ,   宗円聡 ,   永田行男 ,   橋本重夫 ,   田中清介

ページ範囲:P.847 - P.850

 抄録:我々はかなり稀な高IgE症候群に関節炎を合併した1例を経験したので報告する.症例は29歳の女性で,生後間もなくからアトピー様皮膚炎が認められていた.1991(平成3)年4月頃から誘因なく右膝関節の腫脹と歩行時痛が生じ,6月頃から右鼠径部リンパ節腫脹が出現した.高IgE血症,反復性感染症の既往があることから,高IgE症候群の診断にてリンパ節生検・右膝関節鏡および滑膜切除術を施行した.右鼠径部リンパ節の病理組織では髄索へのプラズマ細胞の浸潤が認められた.膝関節では滑膜の増生が著明で,病理組織で血管拡張とプラズマ細胞の浸潤がみられ,抗lgG抗体による染色性が認められた.我々の渉猟した限りでは高IgE症候群に関節炎を合併した例は報告されていないが,何らかの免疫学的機序によって関節炎が惹起されたものと考えられた.術後8カ月現在,症状は軽快している.

遠位橈尺関節に生じた滑膜骨軟骨腫症の1例

著者: 五十嵐康美 ,   菅波厚

ページ範囲:P.851 - P.854

 抄録:61歳,男性の製材労働者が左手関節の痛みを訴えて来院した.患者は5年前,手関節部の外傷の既往があり,3年前から疼痛と尺骨茎状突起部の腫瘤に気づいていたが,放置していた.初診時,同部に鳩卵大の腫瘤があり,背屈,前腕の回内外を中心とする手関節の運動制限,運動時痛がみられた.X線所見にて多数の粒状陰影と,遠位橈尺関節の関節症を認めた.手術は背側より進入し,腫瘤,および遊離体の摘出とBowersのhemiresection-interposition arthroplastyを行った.組織診断は骨軟骨腫症であった.術後1年をへて再発はなく,機能的にも良好である.

好酸球性筋膜炎の1例

著者: 梅原滋 ,   保脇淳之 ,   永田行男 ,   嶋田亘 ,   西本慎作 ,   菊池啓 ,   田中清介 ,   橋本重夫

ページ範囲:P.855 - P.857

 抄録:我々は比較的稀とされる好酸球性筋膜炎の1例を経験したので報告する.症例は45歳男性で,約4~5週間前からコンピュータのキーを打ちすぎた後に両前腕屈側の疼痛を来した.現症は両前腕屈側全体にひまん性の腫脹があり,こわばりと圧痛を認めた,症状および検査所見より,①過度の筋肉労作の先行があり,②急性発症し,③皮膚硬化を認め,④レイノー現象や内臓病変を欠き,⑤末梢血好酸球増多があり,⑥組織学的に筋膜の細胞浸潤・肥厚があったことなどから,好酸球性筋膜炎と診断した.治療には好酸球性筋膜炎は自然寛解例が多いことを考慮して,非ステロイド性抗炎症剤の内服とステロイド剤の局注を行ったところ,症状の軽快傾向を認めた.その後両大腿後面のつっぱり感が出現したため,ステロイド剤の内服を行ったところ,約3カ月で症状は軽快した.現在経過観察中である.

MTX大量療法中にアナフィラキシー様症状を呈した骨肉腫の2例

著者: 岡田恭司 ,   斎藤晴樹 ,   渡部亘 ,   蝦名寿仁 ,   熊谷芳樹 ,   佐藤光三 ,   森田裕己 ,   渡辺新

ページ範囲:P.859 - P.862

 抄録:メソトレキセート(MTX)大量療法によりアナフィラシキー様症状を呈した2症例を経験した.症例1は13歳女子,左上腕骨骨肉腫例である.9回目のMTXの全量投与直後に尋麻疹を生じた.血液学的検査で好酸球数が増加していた.また血中MTXの排泄の遅延が確認された.症例2は19歳男性,左脛骨の骨肉腫例である.8回目のMTXの投与開始直後に血圧の低下,気分不快,眼瞼浮腫等を生じた.皮内反応ではMTXが陽性で,リンパ球刺激試験でもMTXが陽性であった.2例とも抗ヒスタミン剤やステロイド刺の投与により症状は消失した.MTXの排泄が遅延している例や,皮内反応や,リンパ球刺激試験の陽性例で,MTX大量療法によりアナフィラキシー症状が生じる可能性が示唆された.

破壊性脊椎関節症により下肢麻痺症状を呈した1症例

著者: 小島利協 ,   今村清彦 ,   江畑功 ,   大沢俊和 ,   榎本晃 ,   安原義昌

ページ範囲:P.863 - P.866

 抄録:長期透析患者に合併した破壊性脊椎関節症(以下DSAと略す)による高度脊柱管狭窄により,下肢麻痺症状を呈した症例を経験した.胸椎および腰椎の2カ所で脊柱管狭窄所見を認め,下肢麻痺症状を呈し,手術的治療により良好な麻痺症状の改善が得られた.病理組織像では,変性した黄靱帯,棘間靱帯,椎間板にアミロイドの沈着を認めた.DSAは,1984年にKuntzらが血液透析患者の特異な脊椎合併症として報告して以来,本邦においても種々の報告がなされてきた,ほとんどの症例は保存療法で対応でき,手術療法の報告例は少ない.本例のように2カ所で脊柱管狭窄所見を認め,下肢麻痺症状を呈した症例の報告はみられない.

多発性脂肪腫の3例

著者: 鵜木栄樹 ,   岡田恭司 ,   江畑公仁男 ,   大場雅史 ,   佐藤毅

ページ範囲:P.867 - P.870

 抄録:脂肪腫は我々が日常よく遭遇する良性軟部腫瘍であるが,多発性脂肪腫の本邦での報告は少ない.今回我々は遺伝性を認めた1例を含む多発性脂肪腫の3例を経験したので報告する.
 症例1は34歳の男性.両大腿,殿部などに計6個の脂肪腫を認めた.父にも同様の腫瘤がある.生化学検査にて肝機能障害,高脂血症の合併も認めた.症例2は41歳の男性.両前腕,大腿などに計14個の脂肪腫が認められた.症例3は38歳の男性.両上肢,殿部などに計7個の脂肪腫が認められた.症例2,3とも遺伝性を認めず,特に合併症も見られなかった.

外傷性指伸筋腱脱臼に対するbuddy taping療法の経験

著者: 林泰夫 ,   上村光治 ,   泉清治 ,   小糸博文 ,   伊達徹 ,   高木茂 ,   片岡康文 ,   赤城哲也 ,   紫垣光久

ページ範囲:P.871 - P.873

 抄録:手術的治療が採用されることの多い外傷性指伸筋腱脱臼に対して,未だ報告をみないbuddy tapingによる保存的治療で良好な結果を得た.症例は51歳の筆者自身で,左環指を窓枠に引掛けてMP関節の尺屈,掌屈を強制され,MP関節の背橈側面に激痛を覚えた後,同部の腫脹,圧痛,運動痛を残していた.その出来事の4日後に骨折手術の術者となり,骨片整復の為,鉤を握って外方へ強く引張った途端に,屈曲位にある環指MP関節背側で伸筋腱が尺側へ脱臼して陥頓し,自力では整復不可能の状態となり,他方の手で指を伸展して整復した.急拠,ガーゼを紐状にして,隣の中指と共に環指の基節部を縛ることによって,再脱臼を生ずることなく手術を終了した.そこで,幅2cm弱の,ベルクロ留めの固定帯を作製して,日常生活や運動時,診療時を通じて,5週間,常時着用した,固定帯除去後約2年の現在まで,日常活動やスポーツ活動において脱臼の再発を認めない.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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