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望まれるOrthogeriatricsの開拓
著者: 上羽康夫1
所属機関: 1京都大学医療技術短期大学部
ページ範囲:P.1089 - P.1089
文献購入ページに移動例えば,高齢者の老化現象はまだ疾患として認識されているように思われる.思春期の男子が声変わりをしたり,女子の乳房が大きくなっても,人々はそれを疾患として治療を試みることはない.それは思春期における第二次性徴の変化は生理的成熟現象であることを知っているからである.然るに,高齢者の変形性関節症や骨粗鬆症にはすぐに治療を試みる.しかし,高齢者に現れるこれらの現象は高齢者の生理的老化現象であり,一過性の疾病ではない.20歳の若者と同様に関節軟骨が厚く,骨密度の高い75歳の老人が居れば,その方がよほど異常である.したがって,高齢者にみられる諸変化を投薬や手術対象とみなすのではなく,むしろ正常な人間として生活できる方法を考えるべきであろう.ただ,高齢者変化には疼痛や痺れなどの不快な症状を随伴するばかりでなく,日常生活機能が低下し,本人ばかりでなく周囲の人々にも負担がかかるから,それらの対策がどうしても必要となる.
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