icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科29巻12号

1994年12月発行

雑誌目次

視座

“なぜ今,滑膜切除術なのか”

著者: 鳥巣岳彦

ページ範囲:P.1309 - P.1309

 今から26年前の1968年に,アムステルダムでRAに対する早期滑膜切除術のシンポジウムが開催された.その後,早期滑膜切除術が盛んに行われ,関節軟骨が破壊される前の炎症滑膜の切除は,関節機能温存に有用であるとの数多くの報告がなされた.しかし,全身のリウマチ炎症の抑制効果が期待できないことも同時に明確にされると,虚無感に襲われた整形外科医は滑膜切除術を放棄し,成績も安定し患者の満足度も高い人工関節手術へと治療方針を変換し現在に至っていると言える.
 それなのに,何故今,滑膜切除術なのか.
 それは,RAの薬物治療戦術が根底から覆ったからである.更に,MRIの出現で炎症滑膜やgeodeの早期の描出が可能になったこと,関節滑膜の病理病態に新しい知見が報告され関節軟骨と骨皮質との移行部(bare area)の滑膜表層細胞にはc-fos遺伝子が発現されており.免疫細胞の指令を受けることなく増殖する可能性があることが明確にされたこと,鏡視下滑膜切除術や術後訓練にCPM器械が導入されたこと,などを挙げることができる.

論述

大腿部の悪性軟部腫瘍手術による骨格筋欠損と下肢機能障害

著者: 平野徹 ,   神代敏之 ,   ,   岩崎勝郎

ページ範囲:P.1311 - P.1316

 抄録:大腿部の骨格筋欠損と下肢機能障害との関連性を検討するため,患肢温存手術を行った悪性軟部腫瘍22例の切除範囲と術後患肢機能を調べた.骨格筋欠損の程度を評価するため,切除筋を内側広筋,大腿直筋,外側広筋,内転筋群,内側屈筋群,大腿二頭筋および大腿近位部での腸腰筋の7区画に分けた.患肢機能は,日整会骨・軟部腫瘍委員会評価法(自己満足度を除く5項目:25点満点)で判定した.その評価スコアは,切除区画が1つから3つや4つになるにつれて平均23.8点から16.6点まで有意(P<0.01)に低下した.具体的には,切除区画が1つではほとんど障害がなかったが,2つになると坂道や階段昇降に支障をきたし,3つあるいは4つになると屋内動作に障害が起きていた.以上のような骨格筋欠損と下肢機能障害の関連性から,大腿部の悪性軟部腫瘍手術に伴う温存患肢機能を術前に予測できる可能性が示唆された.

四肢転移性骨腫瘍に対する手術適応と術後成績について

著者: 片桐浩久 ,   高橋満 ,   稲垣治郎 ,   佐藤啓二 ,   杉浦英志 ,   山村茂紀

ページ範囲:P.1317 - P.1323

 抄録:過去4年間で当院にて手術を行った四肢長管骨の転移性骨腫瘍17例19肢の手術成績を検討し,その適応につき考察した,原発巣は肝癌,腎癌が各3例,肺癌,乳癌,子宮頚癌が各2例,胃癌,骨髄腫,血管肉腫,大腸癌,骨肉腫が各1例である.手術は,①病巣切除または掻爬後抗癌剤混入骨セメントを併用する術式,②創外固定的内固定,③創外固定,の3種を症例に応じ選択した,抗癌剤混入骨セメントを併用する術式は局所再発防止と固定性の維持に有用で,歩行可能となる症例は多かった.創外固定的内固定は出血傾向の症例が適応で,入浴も可能となり有用な方法である.創外固定は生存期間が長期にわたる症例では問題が多い.転移性骨腫瘍に対する手術では局所根治性でなく患者のQOLを向上させ一定期間維持させることが目標である.良好な結果を得るためには原発組織型や予想される生命予後を考えて手術法を決定しなければならない.

各種股関節疾患に対するbipolar型人工関節置換術の5年以上経過例の成績

著者: 稲尾茂則 ,   安藤御史 ,   後藤英司 ,   辻宗啓

ページ範囲:P.1325 - P.1330

 抄録:Bipolar型人工股関節置換術後5年以上経過した症例の治療成績を検討した.症例は,亜脱性変形性股関節症(OA)12例12股,無腐性大腿骨頭壊死(ANF)11例14股,慢性関節リウマチ(RA)7例7股であった.OA,RAでは,全例臼蓋リーミングを施行し,ANFでは病期分類IV期では施行し,III期ではしなかった.非感染性の著明な疼痛により再置換がOA 2股,ANF 1股にすでに行われていた.非再置換例では,疼痛なしは,OAで44%,ANFで25%,RAで71%であった.X線評価では,OA,RAでは,ほとんどの症例でouter headのmigrationが見られる一方,ANFでは約半数に見られるのみであり,特にIII期ANFでは,軟骨摩耗にとどまっていた.臼蓋側骨量温存と除痛効果の面より評価すると,OAとIV期ANFでは両者とも十分に満足すべき結果とは言えなかったが,III期ANFでは前者,RAでは後者に関して満足すべき結果が得られた.

神経線維腫症に伴う腫瘍ならびに骨病変に関する研究(第1報)―診断法と病因について

著者: 舟崎裕記

ページ範囲:P.1331 - P.1342

 抄録:神経線維腫症に伴う神経線維腫に対する各種画像診断法につき検討し,その検索方法を確立した.すなわち,腫瘍の検索法としては,まず,全身99mTC-DTPAシンチグラムで腫瘍の有無を検索した後にGd-DTPAを用いたMRIを施行し,さらに脊髄造影やCTにより検索を進めることが効率の良い検索手順であることが判明した.また,本症に伴うdystrophic typeの脊柱変形の病態や骨病変の発生原因を解明するために,各種の画像診断や病理組織学的検索を施行した.その結果,脊柱変形高位では,硬膜管の拡大や周囲軟部組織への腫瘍の浸潤,さらに明白な皮膚病変の合併率が高いことが判明した.また,骨病変の発生には,腫瘍が骨膜や骨端軟骨に浸潤し,骨膜性骨化あるいは骨形成などに障害が発生し,さらには腫瘍に伴う血流量増加なども骨に病変を生じる重要な因子となっていることが推測された.

検査法

MRIによる軟部腫瘍の鑑別および質的診断の試み

著者: 横山庫一郎 ,   篠原典夫 ,   近藤正一 ,   真島龍興 ,   達城大 ,   国東芳顕 ,   山田久方

ページ範囲:P.1343 - P.1347

 抄録:軟部腫瘍55例のMRI像から腫瘍の質的(組織学的)診断を試みた.特異的所見があって組織診断できたという腫瘍はないが,発生部位,年齢,大きさ,その他の臨床的事項を加味することによって,いくつかの鑑別すべき腫瘍を好発部位年齢別の発生頻度の順に挙げることができるので,MRI所見が考え得る組織像と矛盾するものを除外していくことで,ある程度質的な推測が可能と思われた.成熟脂肪はTIT2でともに高信号であるので成熟脂肪を含む腫瘍の診断的価値がある.細胞密度の高い腫瘍,水分を多く含む粘液性腫瘍はT2で高信号であることが鑑別診断に有用であった.

手術手技シリーズ 最近の進歩 手の外科

舟状骨骨折(偽関節を含む)の手術

著者: 藤哲

ページ範囲:P.1349 - P.1363

 抄録:舟状骨々折の治療の目的は,骨癒合を得ることは勿論,正確な解剖学的整復を得ることである.内固定としてはHerbert screwが使用され,最近ではcannulated typeのHerbert-Whipple screwも普及している.新鮮不安定型,遷延治癒,偽関節が手術適応であるが,新鮮安定型であっても固定期間が長くなることを拒否する患者,スポーツ活動への早期復帰を望む患者や,橈骨遠位端骨折・模骨中枢端の骨折などを合併し比較的早期に運動を開始したい場合には手術的治療を勧めている.Herbert screwによる固定は,掌側あるいは背側の小切開よりfree handで挿入する方法と,掌側より骨折部を展開しalignment guide(jig)を使用して挿入する方法がある,遷延治癒例,偽関節では骨移植が必要であり,骨の短縮および手根骨の背屈変形の矯正も考慮しなければならない.舟状骨骨折の手術方法の詳細,その適応,後療法を紹介する.

整形外科を育てた人達 第132回

Louis Bauer(1814-1898)

著者: 天児民和

ページ範囲:P.1364 - P.1365

 米国の最初の整形外科専門医はWilliam Ludwig Detmold(1808-1894)と教わり既に伝記を書いたが,その中で整形外科の教科書を最初に書いたのはLouis Bauerであると教えられてLouis Bauerの伝記の資料を集めて書くことにした.

整形外科英語ア・ラ・カルト・28

整形外科に関する興味ある言葉・その5

著者: 木村專太郎

ページ範囲:P.1366 - P.1367

●opisthotonus(オピストトゥナス)
 このシリーズ第26回の“tetanus”の項で,反弓緊張を“opistotonus”(オピストトゥナス)と書いたが,読者から“opisthotonos”の間違いであると,ご指摘を受けた.これは“opistho-”であるべき部分が“h”が脱落して“opisto-”となったためである.校正のとき見つけなかったためである.“opisthotonos”は“opisthotonus”とも綴るので,間違いではない.ギリシャ語で“o”のスペルが,ラテン語では“u”に変化することが多い.そして英語のスペルは,通常ラテン語に準じている.例えばギリシャ神話の医学の神アスカレピオスは,ギリシャ語で“Asklepios”,ラテン語では“Aesculapius”となるように.またスペースの関係で,“opistho-”が“behind”の意味であることも書かなかったので,ここで補足しておきたい.間違いを指摘して戴き感謝している.

基礎知識/知ってるつもり

Tinel signとTinel様sign

著者: 平澤泰介

ページ範囲:P.1368 - P.1369

 Tinel signは損傷を受けた末梢神経の再生過程において出現する徴候である.Tinel様signには明確な定義がなく,Tinelに類似したsignであるが,一般的に神経の再生過程と考えられない場合に用いられる.まずTinel signの診断的意義について述べる.

臨床経験

第1染色体長腕逆位を伴うcleidocranial dysplasiaの1症例

著者: 川上寛 ,   渡部健 ,   浦田士郎 ,   矢崎進 ,   大脇義宏 ,   山田高士 ,   湯川泰紹 ,   神谷光広 ,   濱邊卓也 ,   稲垣善幸

ページ範囲:P.1373 - P.1376

 抄録:症例は3ヵ月男児,主訴は鎖骨の異常可動性.単純X線写真において両鎖骨の偽関節様の変化と大泉門の開大を認め,cleidocranial dysplasiaと診断した.cleidocranial dysplasiaは,鎖骨の欠損または形成不全,頭蓋縫合骨化遅延,歯牙萌出遅延,遺伝性を特徴とする稀な骨系統疾患である.本邦では1936年の羽根田以来,われわれの渉猟した限りでは,250例が報告されているが,そのうち1歳以下で診断されたのは,われわれのものも含めて,わずか18例に過ぎない.今回,われわれが経験した症例は,3ヵ月検診における鎖骨と頭蓋骨の注意深い触診により診断しえた.また,本症例では,染色体検査にて,第1染色体長腕逆位を認めた.本疾患は,先天性疾患にもかかわらず,染色体異常を生じたという報告は少なく,貴重な症例といえるので若干の文献的考察を加えて報告する.

血管造影検査施行後に肺血栓塞栓を生じた1例

著者: 篠崎哲也 ,   長谷川仁 ,   有田覚 ,   渡辺秀臣 ,   長瀬満夫 ,   千木良正機 ,   宇田川英一

ページ範囲:P.1377 - P.1380

 抄録:血管造影検査施行後,肺血栓塞栓を生じた1例を経験した,症例は61歳女性で左殿部悪性軟部腫瘍を疑い術前に右鼡径部大腿動脈からの刺入にて腫瘍の血管造影検査を行った.検査施行後6時間程経過したところで軽度の腹痛を訴え始めた.24時間経過後,鼡径部の圧迫を除去し体動を開始した直後より嘔吐と呼吸困難を訴えショック状態となった.その際の胸部単純X線写真では特に異常を認めなかった,しかし,動脈血液ガス検査で低酸素血症を,肺血流シンチグラフィーで両肺野の血流障害を認めた.肺血栓塞栓症と診断し直ちにt-PA(組織プラスミノーゲン活性化酵素)投与を行ったところ,著明な症状の改善が認められた.動脈硬化症を伴うような高齢者では血管造影後に血栓塞栓症を起こす可能性があることに注意すべきである.また,その発症に際してはできる限り早期のt-PA使用が有効な治療であると思われた.

Coffin-Lowry症候群の1例

著者: 黒石昌芳 ,   司馬良一 ,   藤井正司 ,   宇野耕吉 ,   増田真造 ,   高島孝之 ,   野柳俊英 ,   八木隆三郎 ,   宅見晃子

ページ範囲:P.1381 - P.1384

 抄録:Coffin-Lowry症候群は,粗な特異顔貌,精神発達遅滞,低身長,手の奇形を特徴とする症候群である.今回,筆者らは環軸椎不安定性と脊柱後側弯変形を伴ったCoffin-Lowry症候群の1例を経験した.
 症例は,14歳の男児.妊娠,分娩歴に異常はない.生後4カ月時に運動発達遅滞を認め,外来訓練を行いながら経過観察していた.入院時現症として,特異な顔貌,高度の精神発達遅滞(IQ13),低身長(-2SD以下),カエデ様の手指を認め,X線所見では,手部X線像で末節骨の鍵穴状変化,高度の脊柱後側弯変形,環軸椎不安定性を認めた.本症候群の環軸椎不安定性についての報告は,筆者らが渉猟しえた範囲では認められなかった.

肩甲骨骨折後に生じた肩甲骨轢音症の1例

著者: 加藤弘文 ,   秦公平 ,   藤田義嗣 ,   川那辺圭一 ,   中山威知郎 ,   岡田欣文

ページ範囲:P.1385 - P.1388

 抄録:肩甲骨骨折後に生じた肩甲骨轢音症の報告は稀であるが,われわれは肩甲骨体部骨折後の変形治癒により轢音と疼痛を生じた症例を経験した,症例は41歳の男性で,交通事故にて右背部,右肩を打撲し,第4から第9肋骨骨折,外傷性血気胸にて当院呼吸器科に1ヵ月間入院した.受傷後1ヵ月頃より右肩関節の屈曲,外転時に轢音と疼痛を生じた.受傷後2ヵ月後に当科を受診した.単純X線写真正面像で肩甲骨下角部より内縁に平行に走る骨折線を認め、軸射像で胸郭方向への転位が著明であった.手術では内側の骨片が外側の骨片の腹側にもぐり込んだ形で転位し,変形治癒していた.肩関節屈曲,外転時にこの転位した骨片が肋骨弓の一部に接触して轢音を生じたと考えられた.骨片間を切離し仮骨を切除して骨折部を整復し,Zuggurtung法にて固定した.肩甲骨体部骨折後の過剰な仮骨形成と同様に,変形治癒も肩甲骨轢音症の原因となり得ると考えられた.

上腕骨滑車形成不全とガングリオンにより発症した肘部管症候群の1例

著者: 樋口成臣 ,   積木秀明 ,   上野起功

ページ範囲:P.1389 - P.1391

 抄録:われわれは上腕骨滑車形成不全により脱臼した尺骨神経がfibrous band部分でganglionにより圧迫され発症した肘部管症候群の1例を経験したので報告する.患者は41歳,女性.スーパーの店員.約2週間前からの左小指のしびれと脱力感を主訴に来院.X線所見でも,両側の上腕骨滑車の形成不全と尺骨神経溝の低形成を認めた.手術所見では,尺骨神経は肘の運動に関係なく前方に脱臼し,走行異常と言える状態で周囲の組織と癒着していた.またfibrous bandのすぐ近位にganglionが存在しており,fibrous bandとの間で尺骨神経を強く圧迫していた.上腕骨滑車形成不全では尺骨神経の走行異常やganglionが好発しやすく,そのことが尺骨神経麻痺の原因となっている.
 上腕骨滑車形成不全が認められた患者においては,尺骨神経麻痺の出現に注意する必要があると思われた.

右示指中指に発生した骨破壊を伴った先天性動静脈瘻の1例

著者: 吉野仁浩 ,   井戸一博 ,   西島直城 ,   藤尾圭司 ,   清水昌宏 ,   山室隆夫 ,   中嶋安彬

ページ範囲:P.1393 - P.1395

 抄録:右示指中指に発生し骨破壊を伴った先天性動静脈瘻の治療を経験した.患者は12歳,男子.主訴は右示指中指の変形と疼痛.初診時,右示指中指の過成長,静脈の怒張と拍動,中指の橈側偏位を認めた.Nicoradoni-Branham signが陽性であり,X線上,示指中指に骨破壊像を認め,血管造影では,指動脈の拡大,雪片様陰影,末梢部の動脈の造影不全,早期の静脈造影のCurtisの4徴を呈していた.
 手術は栄養動脈と怒張した静脈を結紮し切除した.示指中指の骨内の病変を可及的に掻爬し,腸骨より採取した海綿骨を充填した.中指の橈側偏位を矯正し,K-wire 2本にて固定した.術後9ヵ月の現在,疼痛は消失し機能の回復を得ている.

Congenital contractural arachnodactyly(Beals症候群)の1例

著者: 野村忠雄 ,   林律子 ,   西村一志 ,   加畑多文 ,   金井英子

ページ範囲:P.1397 - P.1401

 抄録:くも指趾を伴った細く長い四肢,耳介変形(crumpled ear),四肢関節および手指関節の拘縮,脊椎後側弯,足内反変形などから先天性拘縮性くも指趾症congenita contractural arachonodactyly(Beals syndrome)と診断した1例を報告する.関節可動域訓練やスプリントで治療を試みたが,手指近位指節間関節の拘縮は改善しなかったため屈側部皮膚の全層植皮術を行った.現在,四肢関節の軽度な拘縮,四肢長管骨の狭細化,異常弯曲,脊椎側弯などが残存しているが,通常生活には困難はない.自験例では肋骨辺縁の不整像,大腿骨転子下の狭細化像などMelnick-Needles症候群と類似の所見がみられるが,このような報告はなく本症の骨変化の病態を考えるうえで興味深い.また,本症の関節拘縮は加齢とともに改善するとされているが,自験例のごとく残存することもあり,手術の適応となる場合もある.

小児の膝関節に迷入した小石片による骨軟骨損傷の1例

著者: 八木正義 ,   藤田久夫 ,   井口哲弘 ,   菊本喜代司 ,   松原伸明 ,   一山茂樹 ,   平山健一

ページ範囲:P.1403 - P.1406

 抄録:X線像で骨軟骨骨折後の関節内遊離体と鑑別が困難であった迷入異物による小児膝関節炎の1例を経験した.症例は9歳の女児で,主訴は右膝関節の腫脹および疼痛である.地面にバラスが敷かれている所で右膝を打撲し,近医を受診し創傷処置を受けたが3ヵ月以上たっても膝関節痛と腫脹を訴え当科を初診した.関節穿針にて黄色混濁した関節液が得られ,単純X線像にて膝蓋骨骨折と関節内遊離体様陰影を数個認めた.手術所見では,関節内遊離体に思えた陰影の1つは膝関節内に迷入し経骨外顆骨軟骨に迷入陥没した石片であった.またそれに対応する大腿骨外顆に溝状の広範な骨軟骨損傷が生じており,持続する関節炎はこの骨軟骨損傷と石片によるものと思われた.治療としては,損傷が軟骨下骨にまで及んでいたためドリリングを施行した.初期治療,詳細な病歴やX線検索が重要と反省させられた1例である.

追悼

渡辺 正毅先生を偲んで

著者: 守屋秀繁

ページ範囲:P.1370 - P.1371

 渡辺正毅先生は1993年(平成5年)12月に大腿骨頚部骨折を受傷されてから,東京大学および帝京大学で手厚い御加療を頂き,一時は大分快方に向かわれていたが体調が急変し,1994年(平成6年)10月15日呼吸不全にて帰らぬ人となられた.
 渡辺先生は1911年(明治44年)長野県にて出生された.その後東京帝国大学医学部に進まれ,1937年(昭和12年)御卒業になり東京大学整形外科に入局された.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら