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文献詳細

雑誌文献

臨床整形外科29巻4号

1994年04月発行

文献概要

特集 椎間板―基礎と臨床(第22回日本脊椎外科学会より)

頸髄後方除圧後の上肢麻痺―その原因と予防法

著者: 都築暢之1 阿部良二1 斎木都夫1 李中実1

所属機関: 1埼玉医大総合医療センター整形外科

ページ範囲:P.497 - P.506

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 抄録:頸髄後方除圧時に脊髄~神経根に対し発生するtethering effectは硬膜管内・外で分けて考察する必要がある.頸椎・頸髄標本を用いての形態学的研究では,①椎弓を切除し硬膜を後方に拡大すると硬膜管外神経根部分が脊柱管方向に伸展されると同時に根嚢部(硬膜管―神経根結合部)が後内方に移動し,硬膜管内神経根糸に弛緩効果を与えること,②根嚢部の後内方移動を伴った硬膜管拡大では,その内部で頸髄を最大に後方移動させても前根糸は緊張しないことが観察された,後者の現象は,前根糸固有の長さと根嚢部後内方移動による弛緩効果が脊髄後方移動による伸展効果を吸収するためと考えられた.臨床画像でも,頸髄後方除圧後に根嚢部後内方移動が生じることが認められた.各頸神経根における最長前根糸長(最頭側前根糸長)と最短前根糸長(最尾側前根糸長)との比はほぼ一定し.臨床例では脊髄造影像から最頭側前根糸長を求めることにより,最尾側前根糸長を推測することが可能である.硬膜管外神経根部分が伸展された場合,同神経根部分に滑動性障害があれば,硬膜牽引性神経根障害が発生する可能性がある.また運動優位の麻痺の原因としては,椎間孔内の前根はその解剖学的位置から後根よりも高度の伸展作用を受け易いためと考えられた.
 頸髄後方除圧の臨床例では,根嚢部移動障害や短前根糸が存在した場合,硬膜管内前糸伸展性障害が発生し,硬膜管外神経根の滑動性障害が存在すれば硬膜牽引性神経根障害が発生する可能性がある.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1286

印刷版ISSN:0557-0433

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