icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科29巻5号

1994年05月発行

雑誌目次

視座

「国際化」

著者: 糸満盛憲

ページ範囲:P.525 - P.525

 国際化,国際化と言われて久しい.著しい経済成長に支えられて,世界のトップレベルに伸し上がった日本が,バブルが弾けて青息吐息のところに,スーパー301号などという手前勝手な経済制裁理論をかざして,世界の腕白坊主がいじめにかかってきた.世の中の回転速度が異様に速くなってめまぐるしいこと限りがない.「家内と相談した結果やめることにしました」と,いとも簡単に政権を放り出した細川首相は,政治手腕は別として従来の総理とは一味違う,あの人を食ったようなところが何とも言えず面白かった.しかし一国の総理ともあろうもんが国連で英語で演説したのにはいささかうんざりした.
 まるで英語を話すことが国際化,あるいは国際的であるという誤解が罷り通っている.国際学会では,たとえそれが日本国内で開催されても,公用語は英語―流行語だから仕方がないのかもしれないが―が慣わしになっている.しかも当然のごとく誰も疑問を挟まないどころか,英語を話す人だけが偉そうな顔をして闊歩する様を異様に感ずるかたは多いのであろうが,これを正面切って議論しようとする向きは皆目みられない.科学,医学の分野に身をおく私たちにとって,確かに英語を理解できるほうが,ずっと能率よく情報や知識を入手し消化できるし,また話せたほうが輪も広がることには異論はない.

論述

骨・軟部悪性腫瘍における肺転移巣切除術の治療成績

著者: 上田孝文 ,   内田淳正 ,   吉川秀樹 ,   久田原郁夫 ,   森茂樹 ,   小松原良雄 ,   小野啓郎

ページ範囲:P.527 - P.533

 抄録:骨・軟部悪性腫瘍肺転移例に対する肺転移巣切除術の適応と意義を明らかにするため,1973~1991年の間に大阪大学医学部附属病院および大阪府立成人病センター整形外科で治療した骨・軟部悪性腫瘍肺転移巣切除例65例の治療成績を検討した.初回肺切時からの2年・5年累積生存率は骨肉腫が37.1%・24.1%,軟部肉腫が50.2%・18.8%で,同時期の非肺切例に比しいずれも有意に予後良好であり,肺転移巣切除術の有用性が示された.骨肉腫における肺転移巣切除術の予後因子は,肺転移個数,転移巣の大きさ,肺転移分布(胸膜外浸潤の有無)であった.一方軟部肉腫においては,組織型,組織学的悪性度,肺転移分布が有意な予後因子であった.両側多発肺転移例に対しては,胸骨縦切両側同時開胸とNd:YAGレーザーを併用することにより術後肺機能の温存をはかることができ,肺切術適応拡大に有用であった.

内側型変形性膝関節症に対する高位脛骨骨切り術が内側および外側関節症に与える影響―10年以上経過例の検討

著者: 葛城良成 ,   安田和則 ,   真島任史 ,   金田清志

ページ範囲:P.535 - P.541

 抄録:内側型変形性膝関節症に対する高位経骨骨切り術(HTO)後10年以上経過した24例26膝を対象としてHTOが内側および外側関節症に与える影響を調査し,それらと術後骨癒合時の大腿脛骨角(FTA)との関係について検討した.評価にはNguyenの方法および筆者らがこの度開発した「重ね合わせ法」の2つのX線学的評価法を用いた.いずれの評価法においても内側および外側関節症変化の進行を認めたが(内側P<0.01,外側P<0.05),この進行の程度に関して内外側間に有意差は認めなかった.内側関節症の進行とFTAの間には有意の正の相関が認められ(P<0.05),過矯正の方が内側関節症の進行が少なかった.しかし,外側関節症とFTAの間には相関は認められず,著しい過矯正にするほど外側関節症が急激に進行するという傾向はなかった.この結果は日本人におけるHTOの目標矯正角度をFTAで164°~168°とすることの妥当性を示唆した.

慢性関節リウマチ膝に対する全人工膝関節置換術の術後成績―経時的なX線像上変化について

著者: 曽田是則 ,   黒瀬靖郎 ,   水関隆也 ,   山中威彦 ,   片山昭太郎 ,   津下健哉

ページ範囲:P.543 - P.549

 抄録:慢性関節リウマチに対する全人工膝関節置換術症例51例82膝をX線像上の骨萎縮を中心に経時的変化について調査した.結果は大腿骨側前方部,脛骨側内側部が他の部位に比べ早期に骨萎縮像を呈していた.また,滑膜炎による骨侵蝕と思われたものは1例にのみ認めた.
 慢性関節リウマチ膝に対する全人工膝関節置換術は現在では最も一般的な術式になっている.術中に十分な病的滑膜切除,軟骨切除を施行すれば滑膜炎の再燃は概ね防ぐことは可能と思われた.しかし,傍関節性の骨萎縮は経時的には進行していた.

腰部椎間板ヘルニアにおける造影MRIの有用性―ヘルニア周囲瘢痕組織の造影機序とその意義

著者: 森田千里 ,   吉沢英造 ,   中井定明 ,   小林茂 ,   森田知史 ,   小島基宏

ページ範囲:P.551 - P.561

 抄録:今回は,腰部椎間板ヘルニアと周囲組織との間に生ずる硬膜外瘢痕組織に焦点を当て,造影MRIの検討を行った.対象は当科にて治療を行った腰部椎間板ヘルニア44例である.なお,手術を施行した18例では,ヘルニアおよびその周囲の硬膜外組織を光顕および電顕下に観察し造影MRIと比較・検討した.また造影MRIによって,ヘルニアを3つのタイプに分類した.すなわちヘルニア周囲の造影されたものと,造影されなかったものに分類し,さらに造影されたものを一部造影されたものと,全周が造影されたものに分類した.造影後のT1強調像では,66%において硬膜外瘢痕組織が高信号域を呈しヘルニアの神経根への圧迫面がより明瞭に描出された.手術を施行した18例中の16例(88.9%)で造影MRIにより硬膜外瘢痕組織の造影効果が認められた.なお,ヘルニア周囲が一部造影されたものは母髄核と連続したヘルニアであり,全周造影されたものは脱出・遊離したヘルニアであった.そして手術時採取した硬膜外組織は豊富な血管を有する膠原線維組織から成り,密着班(gap junction)・窓(fenestra)を有するleaklyな新生血管がみられた,すなわち,造影MRIによる硬膜外瘢痕組織の造影効果は,Gd-DTPAが容易に血管外に漏出した結果生じ得ることが形態学的に証明された.

65歳以上の高齢者に対する腰椎instrumentation手術の成績とその問題点―骨癒合の検討を中心に

著者: 平林茂 ,   熊野潔 ,   小川裕 ,   青田洋一 ,   内田宗志

ページ範囲:P.563 - P.570

 抄録:高年齢という要因が腰椎変性疾患に対するinstrumentation手術に及ぼす影響を知る目的で,65歳以上の高齢群と65歳未満の若年群との手術成績を,骨癒合を中心に比較検討した.高齢群は38例(男性20例,女性18例,65~78歳,平均術後経過2年11カ月),若年群は97例(男性50例,女性47例,17~64歳,平均術後経過3年5カ月)であった,いずれもCD pedicle screwを用い,95例では1椎間,40例では2椎間以上を固定した.優または良の手術成績は,高齢群では67.6%,若年群では72.2%,骨癒合はそれぞれ86.7%,94.0%で得られ両群に有意の差はなかった.一方,PLIFを行わなかった症例では,両群あわせて骨癒合不全は1椎間固定例の6.5%,2椎間以上固定例の20.8%に生じ,両者には5%以下の危険率で有意差があった.骨癒合は年齢,骨粗鬆化の程度よりも固定椎間数に影響を受けた,年齢にかかわらず固定範囲はできるだけ限定する必要がある.

手術手技シリーズ 最近の進歩

脊髄正中離開症(Diastematomyelia)に対する手術

著者: 四方實彦

ページ範囲:P.571 - P.579

はじめに
 diastematomyelia(split spinal cord:脊髄正中離開)は椎体後面より椎弓にかけて存在する骨,軟骨,あるいは線維性の組織からなる中隔(septum)により脊椎管が縦に二分され,脊髄や馬尾が長軸方向に二分された状態(図1)であり,脊髄閉鎖不全症(spinal dysraphism)の範疇に属している.二分された脊髄はそれぞれ別個のくも膜,硬膜で覆われており中隔の頭側,尾側で癒合して本来の正常な一本の脊髄となっている.James4)らは中隔を有する症例20例中16例が骨性,3例が線維性,1例が混合型であったと報告している.1837年,Olliver9)らにより初めてdiastematomyeliaの概念が確立された.その後1940年,Herrenら3)が43例の臨床例をまとめ,病態につき詳細な報告をしてから臨床上注目を浴びるようになり,本疾患に関する論文も年々増加してきている1,5~7,10,11).その発生病理に関しては諸説があり,いまだ原因の定かでない先天性発生異常に起因する疾患である.

整形外科を育てた人達 第125回

Alexander Gibson(1883-1956)

著者: 天児民和

ページ範囲:P.580 - P.582

Canada最初の整形外科教授
 Canadaは比較的新しい国であったので,整形外科の有力な学者は少なかったが,その中でAlexander Gibsonは有力な整形外科医であった.Gibsonは1883年に英国で生まれた.家系については情報を得られなかったが,成長してEdinburgh大学に入学した.当時,Edinburgh大学は医学界で隆盛をきわめていた.この大学で教育を受け1908年に卒業したが,成績は全学生の主席であった.そのため学位MB(Bachelor of Medicine)とMA(Master of Arts)が授けられた.その少し前に,技術賞のVan Dunlop賞をも貰っていた.
 Edinburgh大学卒業後英国王室の一族のSir Thomas Fraserの侍医となった.その後外科医となって活動していたEdinburgh大学の解剖学のDemonstraterとして招かれて,2年後の1913年にはUniversity of Manitobaの解剖学教授に任ぜられた.この大学はCanadaの西部の新しい大学であった.始め解剖学教授であったが,次第に整形外科の教育も解剖学の知識を基礎にして行い,好評であったので,遂に整形外科の教授に任ぜられた.これはCanada最初の整形外科教授であった.

整形外科英語ア・ラ・カルト・21

“rib”に関する日常医学英語

著者: 木村專太郎

ページ範囲:P.584 - P.585

 勿論“rib”は肋骨のことである.旧約聖書冒頭の創世記(genesis)には,アダムの肋骨から“イブ”が造られたと書いてあるそうだ.
 「人間には肋骨が何本ありますか?」と尋ねると,ついうっかりして,「12本」と答えたくなる.しかし答えは「24本」である.

基礎知識/知ってるつもり

TFCC

著者: 渡辺健太郎 ,   中村蓼吾

ページ範囲:P.586 - P.586

 【用語の意味】三角線維軟骨複合体Triangular Fibrocartilage Complexの略.1981年にPalmerらにより提唱された,手関節尺側を構成している複数からなる軟部組織の総称.三角線維軟骨(Triangular Fibrocartilage,TFC)はその中心的な構造をなしており,手関節におけるarticular discと同義である.

臨床経験

骨盤巨大骨腫瘍切除後の広範骨欠損に対して骨盤同種骨による再建術を行った1例

著者: 下崎英二 ,   松田正樹 ,   土屋弘行 ,   北岡克彦 ,   小林尚史 ,   富田勝郎 ,   樋口雅章

ページ範囲:P.587 - P.591

 抄録:骨盤部における広範な骨欠損に対する再建術には苦慮することが多い.今回,我々は骨盤軟骨肉腫切除後に生じた骨盤部の広範骨欠損に対してオートクレーブ片側骨盤同種骨による再建術を行ったので報告する,症例は52歳,男性,左腸骨及び大腿骨近位より発生した巨大な二次性軟骨肉種例である.腫瘍切除後の骨欠損に対し,骨盤はオートクレーブ同種骨,大腿骨近位はオートクレーブ自家骨で再建し,股関節にはlong-stemed hip prosthesisを用いて人工関節とした.術後12カ月でオートクレーブ同種骨と母床骨の骨癒合を認め,術後20カ月の現在,疼痛もなく1本杖歩行を行っている.短期の経過ではあるが,オートクレーブ同種骨を用いた広範囲骨盤欠損の再建は,人工骨盤や制御型人工関節といった人工物のみによる再建よりも構築学的,機能的な面から優れた方法であると考えられた.

骨嚢胞性病変に対する水酸アパタイト細粒単独充填の経験

著者: 片山一雄 ,   武田正典 ,   本田敬宜 ,   清水宏和 ,   菊池豊

ページ範囲:P.593 - P.596

 抄録:骨嚢胞性病変に対し従来掻爬後自家骨移植を行っていたが,平成3年4月以降,自家骨に代わってハイドロキシアパタイト(HA)細粒の単独充填を行っているのでその成績を報告する.対象は10例で骨嚢腫8例(踵骨6,上腕骨1,尺骨1),内軟骨腫2例(橈骨1,手指骨1)で,術後経過期間は4カ月~2年3カ月(平均1年8カ月)であった.開窓,掻爬後,フィブリン糊を混合し充填した.X線上術後平均2カ月でHA細粒の輪郭は不鮮明になり,細粒周辺に骨新生が生じていると思われた.術後1年以上の7例では更に雲状に均一化していた.髄内限局性病変に対しては,採骨を要する自家骨移植をしなくても,HA単独使用で良好な成績が得られると思われた.

術中認めた肩甲下筋腱に付着する破格筋腱について

著者: 高橋正明 ,   小川清久 ,   松本隆志

ページ範囲:P.597 - P.601

 抄録:バンカート法および拡大バンカート変法施行中に,肩甲下筋腱に付着する破格筋腱5例を認めた.その中4例は肩甲下筋腱に起始する上腕二頭筋過剰頭,1例は肩甲下筋腱に停止する短烏口腕筋と考えられた,いずれの破格筋腱も本来の手術の著しい障害とはならなかった.しかし,これらの破格筋腱の存在を知らないと術中に解剖学的混乱を来したり,これらが前上腕回旋動静脈を隠ぺいすると予期せぬ出血を招く恐れがあるので,ここに報告した.

腓腹神経を含んだ下腿後面の島状皮弁により,踵部の皮膚欠損を再建した1例

著者: 黒河内和俊 ,   揖野學而 ,   中村滋 ,   新田弘幸 ,   澤野浩 ,   松原祐二 ,   白松兼次 ,   鳥居修平

ページ範囲:P.603 - P.606

 抄録:症例は,77歳,男性.脊髄損傷の既往あり.ガラス片で右足底を切創するも放置.右踵骨骨髄炎があり,右足底全体のデブリードマン,踵骨の病巣掻爬,腸骨による骨移植を行った.踵骨の露出した軟部組織の欠損は縮小せず,sural neuroskin island flapによる被覆を行った.術後3カ月現在踵部の免荷装具にて松葉杖歩行を行っているが,移植部のトラブルは生じていない.
 neuroskin island flapの利点は,デザインが容易であること,移動距離が長いこと,手技が簡便であることであり,問題点としては,採皮部以下の表在知覚を失うこと,皮弁の強度が弱いことである.1991年Masqueletらはsural neuroskin island flapを足背部に利用したが,我々は初めて踵部にも応用し,良好な結果を得た.そのほか,果部,アキレス腱部といった足関節周囲の皮膚再建に対しても非常に有用であると推測された.

自損行為により発生した頚髄切断の1例

著者: 山田圭 ,   後藤琢也 ,   賀茂和典 ,   田平礼一 ,   薗田恭輔 ,   宮城成圭 ,   河野邦治 ,   内川知也

ページ範囲:P.607 - P.610

 抄録:症例は40歳男性で,精神分裂病があり何度か自殺企図の既往があった.1993年1月1日包丁を自分で前頚部に刺して受傷した.近医に搬入され全麻下に包丁を抜去した後,当科に紹介された.入院時神経学的所見は,上腕三頭筋以下の完全弛緩麻痺,C4からTh2までの知覚鈍麻,Th3以下の知覚脱出,深部反射消失,膀胱直腸障害を認めた.受傷後4日目より細菌性髄膜炎を発症し,MRIにて,C4/C5棘突起間より後頚部皮下に連続する嚢胞性病変を認め,手術的に除去した.しかし,その後発熱,骨融解を伴う化膿性脊椎炎を続発した,神経学的所見は上腕三頭筋,手関節背屈に若干の改善があるのみであった.包丁が横方向に頚部に刺入したにもかかわらず重要器官の合併損傷もなく、しかも椎間板を貫通して脊髄を切断した極めて稀な症例である.

神経再建を必要とした腕神経叢内神経原性腫瘍の3症例

著者: 畑洋 ,   西島直城 ,   井戸一博 ,   藤尾圭司 ,   琴浦良彦 ,   山室隆夫 ,   中嶋安彬

ページ範囲:P.611 - P.615

 抄録:我々は腕神経叢に発生した神経原性腫瘍に神経再建を必要とした3症例を経験した.組織学的には,1例は神経線維腫,他は神経鞘腫であり,いずれも良性と判断された.神経線維腫は複数の神経束を障害し,正常な神経束と分離することは困難であるとされているが,神経鞘腫は正常な神経束と分離することは可能であるとされている.しかし,3症例は安易に局所麻酔下・外来手術として単純切除術や生検術が行われたために,結果的に神経脱落症状を呈した.我々は,このように神経脱落症状を呈した症例に腓腹神経からのcable graftを用いて再建を行った.術後経過は順調で,機能障害は良く回復していた.

中高齢者における内側半月板後角部の断裂について

著者: 幅田孝 ,   玉井進 ,   三馬正幸 ,   藤沢義之

ページ範囲:P.617 - P.622

 抄録:中高齢者に生じた内側半月板後角部断裂の臨床的特徴,診断の要点,発生機序について検討し,中後節部の変性断裂と比較検討した.靱帯損傷の合併がない内側半月板損傷症例中,中高齢者は191例,199膝で,そのうち本断裂を呈した16例,17膝を対象とした.自覚的には,軽微な外傷により膝後内側から後方の痛みが,一種の衝撃感を伴って発生しており,強い痛みを訴える場合が多かった.中後節部の変性断裂の症例では,X線的,関節鏡的な関節症性変化が多いのに比し,今回の症例ではむしろ軽く,内反膝や荷重による内反動揺性も軽度みられたが,著明ではなかった.断裂様式は,全例,横ないしは裂離(付着部断裂)であり,半月板の部分切除にて術後経過は良好であった.後角部の鏡視にあたっては,斜視鏡を駆使して十分に観察する必要がある.また,このような断裂は,膝屈曲位での圧迫捻転力が後角部への牽引力となって発生するものと推察された.

Osteochondritis dissecansを合併した距骨のosteoid osteomaの1例

著者: 水野直樹 ,   中島昭夫 ,   杉村恒人 ,   高橋裕美子 ,   小島敦 ,   岩山立樹 ,   柳英浩 ,   斉藤理恵子

ページ範囲:P.623 - P.626

 抄録:距骨のosteoid osteoma1~6)は比較的稀で,発症初期や,nidusが小さかったりすると単純X線写真では発見できなかったり,また,足関節炎様の症状7~9)を伴うこともあることから,その確定診断に至るまでの期間が長くかかる場合が有り,我々の症例も発症から確定診断までに約4年を要した.
 症例は18歳,男性.前医で左距骨離断性骨軟骨炎と診断され,鏡視下で剥離骨片の切除とドリリングを受けたが,その後も左足関節痛と腫脹が続いたため,当院にて精査し,断層写真で距骨頸部にnidusが認められた.一方,CTでは距骨滑車外側に,離断性骨軟骨炎の痕跡と思われる像が認められ,また,別のスライスでは,距骨頸部前方にnidusが認められたことから距骨のosteoid osteomaとosteochondritis dissecansとの合併例と判断し,病巣をen blocに切除し,腸骨より骨移植を行い,症状は改善し,経過は良好である.

Ulnocarpal abutment syndromeに合併した月状骨骨内ガングリオンの1例

著者: 川上寛 ,   渡部健 ,   浦田士郎 ,   矢崎進 ,   大脇義宏 ,   山田高士 ,   神谷光広 ,   濱邊卓也 ,   稲垣善幸

ページ範囲:P.627 - P.630

 抄録:ulnocarpal abutment syndromeに合併した月状骨骨内ガングリオンの1例を経験した.症例は,50歳女性で主訴は右手関節痛.初診時X像では,月状骨掌尺側に周囲の硬化を伴った透亮像と尺骨のプラスバリアントを認めた.臨床症状およびCT,MRI,骨シンチ,手関節造影からulnocarpal abutment syndromeに合併した月状骨骨内ガングリオンが疑われた.手術により月状骨からゼリー状内容物を有する腫瘤を摘出し,尺骨短縮骨切り術,病巣掻爬,骨移植の施行により良好な結果がえられた.病理所見は,骨内ガングリオンとして,矛盾はなかった.本症の骨内ガングリオンは,尺骨のプラスバリアントのため,月状骨尺側とのimpactionが起こり三角線維軟骨(以下TFCと略す)を損傷し,micro fractureが月状骨に発生して,滑液が侵入し,発生したという過程が考えられる.

多発性に骨硬化像を呈した原発性慢性骨髄炎の1例

著者: 安原晃一 ,   山縣正庸 ,   米本司 ,   守屋秀繁 ,   奥山隆保

ページ範囲:P.631 - P.634

 抄録:多発性に骨硬化像を示した原発性慢性骨髄炎の1例を経験したので文献的考察を加え報告した.症例は45歳女性,主訴は左膝部痛である.当科初診の2年前に同様の症状を認めたが湿布などで軽快していた.X線では左脛骨・腓骨近位に骨硬化像を呈していた.経過中左肩甲部・右上腕部に疼痛を訴え,骨シンチグラフィーを施行したところ,左肩甲骨および右上腕骨にup takeの増加を認めた.両部位ともX線では骨硬化像を呈していた.左脛骨の病理組織所見は慢性骨髄炎の像を呈し,多発性原発性慢性骨髄炎と診断した.本邦では多発性の原発性慢性骨髄炎の報告は少なく,なかんずくX線上骨硬化像を呈する症例の報告は我々が渉猟しえた限りでは1例のみであった.類似の疾患概念として欧米では1972年以来Chronic Recurrent Multifocal Osteomyelitis(CRMO)の報告が散見され,本症例も含まれると考えられた.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら