icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科29巻7号

1994年07月発行

雑誌目次

視座

病診連携と整形外科

著者: 大井利夫

ページ範囲:P.753 - P.753

 昭和61年8月に制度化された医療計画に従い,その後各都道府県2次医療圏ごとに地域保健医療計画が策定され,さらに平成4年には改正された医療法に基づき特定機能病院や療養型病床群が制定された.また本年4月より,かかりつけ医師機能が社会保険診療報酬上評価されるなど,医療提供機関の機能分化を明確化し,より効率的な医療制度の創成に向けて様々な施策が講じられてきている.それらはそれぞれの地域にて,診療所を中心とする一次医療から病院における二次三次医療までの包括的な医療システムを整備して,全ての国民に適正な医療を提供できるようにすることを目的としたものと言えるであろう.このような医療資源の量的整備と質的向上を図るためには,それぞれの医療提供機関,とくに診療所と病院との間の連携,すなわち病診連携が条件になることは言うまでもない.
 さらに医療の質は制度や機関を整備するだけでは不十分で,医療に携わるもの,とくに医師の生涯にわたる研修も重要な条件となる.各学会で定めている認定医制度もその一つであるが,日本医師会で推進している生涯教育制度はさらに目的を明確にし,昭和60年12月日本医師会作成の生涯教育制度ガイドラインには「医師は知的専門職であり,その重く厳しい社会的使命のために,生涯にわたって学習に励む義務がある」とあり,そのためには病診連携による体験学習が柱になるとしている.すなわち機関も人もその質的向上には,病診連携が条件ということになる.

論述

腰椎椎間板ヘルニアのMRI診断,ヘルニア腫瘤後方無信号域(black line)の意義

著者: 西島雄一郎 ,   岡田正人 ,   山崎安朗 ,   東田紀彦

ページ範囲:P.755 - P.763

 抄録:手術で確認した腰椎椎間板ヘルニア100椎間を後方線維輪の完全断裂の有無でcontainedとnoncontainedに分類し,両者をMRIのblack lineで鑑別できるかをretrospectiveに検討した.black lineの断裂像を陽性所見とした場合,矢状断ではfalsenegative例は9例,false positive例は16例で,正確度は75%,感受性は85%,特異度は60%であった.横断像ではfalse negative例は10例,false positive例は21例で正確度,79%,感受性,83%,特異度,48%であった.false positive例が多い故に,両者の正確な鑑別はMRIのみで十分とは言えなかった.

腰椎変性すべりの発生機序―すべり発生確認例による検討

著者: 長総義弘 ,   菊地臣一 ,   蓮江光男 ,   佐藤信也

ページ範囲:P.765 - P.770

 抄録:前方すべり発生を確認した腰椎変性すべり症69例を,長期観察後もすべり発生のみられない不安定腰椎36例および不安定性のない脊椎症27例と比較検討した.すべり発生例では,すべり発生以前から,椎間板変性や椎間不安定性が認められ,さらに,すべり椎における椎弓角や椎間関節傾斜角が大きかった.すべり発生のない症例では,椎間不安定性の有無に関わらず,椎弓角,椎間関節傾斜角が小さかった.したがって,すべりの発生には,後方要素の水平化という素因は必要条件であり,そこへ,前方要素の機能破綻が加わって初めて生じると考えられ,前者がより重要な因子と思われる.

腰部椎間板ヘルニアにおける経皮的髄核摘出術―成績に影響を及ぼす諸因子

著者: 中井定明 ,   吉澤英造 ,   小林茂 ,   鵜飼高弘 ,   山田光子 ,   山元宏介

ページ範囲:P.771 - P.778

 抄録:腰部椎間板ヘルニアに対して経皮的髄核摘出を行う際のおおまかな適応を,症状が極端に強い例は避ける,高齢者では行わない,後縦靱帯穿破例では行わない,L5-S1では外筒の刺入が急斜位となる例は除く,としてわれわれは本法を行ってきた.しかし,その成績に影響を及ぼす因子については未だ十分には解明されていないことから,以下の検討を行った.93例,94椎間の本法の成績をretrospectiveに検討した結果,椎間板造影時に再現痛のある例では改善率が高い,椎間板の変性が進行した例では好結果は得難い,椎間孔外ヘルニアでは線維輪が破綻した例でも好結果が期待できる,などの知見が得られた.そのほかにも,脊髄造影正面像で神経根根嚢像が欠損する例では改善率がやや良い印象が得られた.合併症として,術後の椎間板炎が1例で生じたため,その症例以降は椎間板造影針の刺入前に小皮切を加え,術後には外筒を通して洗浄と抗生剤留置を行っている.

シンポジウム 慢性関節リウマチ頚椎病変

緒言

著者: 伊藤達雄

ページ範囲:P.780 - P.780

 慢性関節リウマチに基づく頚椎病変は,進行性,多発性,破壊性であり,上位頚椎を中心に軽度なものを含めるとX線上約80%に認められる.うち一部の症例では頚部痛のみならず,延髄,脊髄圧迫症状を呈し,重篤な場合は観血的治療を要する.今回のシンポジウムでは,局所病態,進行への危険因子の検討,および上位頚椎の治療報告がなされた.
 藤本氏は剖検結果より滑膜関節病変のほかenthesis部の病変につき述べ,脊髄障害は骨性圧迫が主体と報告している.

慢性関節リウマチに伴う頚椎病変の病理学的検討

著者: 藤本真弘 ,   藤原桂樹 ,   上尾光弘 ,   米延策雄 ,   越智隆弘

ページ範囲:P.781 - P.789

 抄録:慢性関節リウマチに伴う頚椎病変により脊髄症状を呈した3剖検例の頚椎病変のひろがり,脊髄圧迫の機序を検討した.上位頚椎では環椎後頭関節より環軸関節の破壊が高度であった.環軸椎前方亜脱臼例では環椎後頭関節は正常,外側環軸関節は滑膜の増殖,軟骨下骨への肉芽組織の浸潤がみられたが,関節面の沈下はなかった.垂直亜脱臼例では環椎後頭関節の滑膜増殖,肉芽形成を認めた.外側環軸関節の破壊は高度で関節面の沈下がみられた.下位頚椎では多椎間にわたり後縦靱帯の椎体縁への付着部であるenthesisに肉芽組織が見られた.軸椎下亜脱臼高位では椎間板,軟骨終板が肉芽組織に置換され,椎間関節,棘突起,棘上・棘間靱帯も広範に破壊されていた,全例脊髄へは骨性圧迫のみであり炎症性肉芽による圧迫は認めなかった.しかし,歯状突起周辺,後縦靱帯内に肉芽組織が浸潤していたことから,脊柱管内に波及すれば脊髄圧迫を惹起しうることが示唆された.

慢性関節リウマチ頚椎病変の自然経過よりみた術式の検討

著者: 小田剛紀 ,   越智隆弘 ,   小野啓郎 ,   藤原桂樹 ,   米延策雄 ,   東文造

ページ範囲:P.791 - P.797

 抄録:慢性関節リウマチ(RA)頚椎病変に対する手術術式を確立するにはその自然経過の理解とその予測が必要である.自然経過を明らかにするために5年以上頚椎動態X線にて追跡可能であった49例のRA患者を対象に,anterior atlantoaxial subluxation(AAS),veritical subluxation of the axis(VS),subaxial subluxation(SS)の発生と進行を経時的に調査し,その進行を越智らによるRA病型4,5)により評価した.上位頚椎病変は亜脱臼なしから,AAS単独,VSの合併という順に進行し,その進行程度はRA病型により異なっていた.少関節破壊型(LES)ではAASで留まりVSを合併することがないのに対し,ムチランス型(MUD)では重度のVSに至った.多関節破壊型(MES)はAASで留まるものとVSを合併するものが相半ばした.SSは頻度として少なかったが,MUDや,MESで上位にVSを伴うものに重度のすべりがみられた.以上をもとに,RA病型とその罹患病変に基づく選択術式を提唱した.

慢性関節リウマチ下位頚椎不安定症における脊髄障害発生の危険因子について―単純X線およびMRI所見と病理所見の対比による検討

著者: 谷口博信 ,   桑原茂 ,   福田健二 ,   黒木龍二 ,   田島直也

ページ範囲:P.799 - P.803

 抄録:今回われわれはRA患者の頚椎において単純X線所見,MRI所見を病理組織学的結果と対比し,予後判定の一助となる危険因子の検討を行った.対象は頚椎に起因する局所症状あるいは神経症状を有するRA患者129例である.全例に頚椎X線撮影を行い,下位頚椎において前後方向に2mm以上の亜脱臼を呈するものを不安定性ありとした.また53例にMRIを,さらに27例に剖検を行いそれぞれの所見を比較検討した.その結果下位頚椎の不安定性を惹起し,脊髄圧迫の危険性を予見する所見として,単純X線所見としては椎体縁のびらん,MRI所見においては椎体終板の不整像およびガドリニウム(Gd)によりエンハンスされる椎間板周囲の結節像が重要であると考えられた.

リウマチ性下位頚椎病変における脊髄障害発生のX線学的予知指標

著者: 米澤孝信

ページ範囲:P.805 - P.813

 抄録:この論文は慢性関節リウマチ(RA)下位頚椎病変による脊髄圧迫障害のX線学的危険因子を求めたものである.RA100例と頚椎症100例につき比較検討し,そのうちRA58例について5~10年間のX線学的追跡を行った.椎間間隙狭小,椎体終板侵食,椎間関節侵食,棘突起侵食,下位頚椎前方すべり,および頚椎柱短縮はすべてRA群において有意に高頻度であった.下位頚椎病変による明らかな脊髄障害はRA100例中15例にみられ,棘突起の破壊,頚椎柱短縮および脊柱管前後径の狭小がX線的危険因子であると判断された.追跡調査58例中8例に脊髄障害の進行があり,これらは前方すべりの進行,棘突起破壊の進行,椎間間隙狭小の進行,および頚椎柱短縮の進行と深い関係にあるほか,罹病期間が長く,ステロイド投与量が多く,stage,classが高いRA進行例であった.

リウマチ性環軸椎前方亜脱臼および垂直亜脱臼に対する環軸関節後方固定

著者: 藤谷正紀 ,   斉田通則 ,   三浪三千男 ,   金田清志

ページ範囲:P.815 - P.822

 抄録:1979年以来,当院におけるリウマチ性環軸椎亜脱臼に対する手術例は116例である.そのうちBrooks法による環軸関節後方固定術例は97例である.垂直性亜脱臼でも環椎の前傾が存在し整復可能な例は出来るだけ本法で対処してきた.97例中後方亜脱臼4例を除く93例の術前平均前屈時ADI,9.0mmは術後1.9mmに,術前平均前屈時SAC11.1mmは16.0mmに各々改善し,全例とも良好な整復位を獲得した.術後4年以上経過した68例中X線計測が可能な35例(術後平均7年)のADI,SACは術直後と同値であり,全例とも整復位が保持されていた.歯突起上方移動は2例のみに認めたが,歯突起先端が整復位にあるため大後頭孔前縁と癒合していた例が確認された.Brooks法によるwiringの締めつけが術後のalignmentに及ぼす影響を危惧したが,clivo-axial angleは術前平均149.1゜が経過観察時158.3゜となり固定した環軸椎と後頭骨とのalignmentはほぼ良好であった.

リウマチ性環軸関節転位の手術的治療における問題点

著者: 斉鹿稔 ,   河合伸也 ,   城戸研二 ,   野村耕三 ,   淵上泰敬 ,   峯孝友 ,   三原修三

ページ範囲:P.823 - P.829

 抄録:リウマチ性環軸関節転位35例を対象に,X線所見,脊髄症およびADLの推移,生命予後を追跡した.症例の内訳は,男性9例,女性26例,41~81歳(平均57歳)であり,追跡期間は6カ月~12年(平均5年10カ月)である.腸骨固定を行った23例中5例(22%)が偽関節を呈した.脊髄症は,概して術前の日整会点数が低いほど改善が悪い傾向にあり,5段階評価では,優2例(8%),良2例(8%),可10例(38%),不変11例(42%),悪化1例(4%)であった.環椎高位における脊髄の狭窄率が50%未満群では平均改善率40%,50%以上群では平均18%となった.15例(43%)は,術後3カ月~12年(平均5年6カ月)で死亡していた.脊髄症が重度になってからの手術適応では,全身の合併症や四肢の筋力低下も関与して改善が不十分な症例が多く,全身状態が良好であれば脊髄症が軽度の時期に手術を適応することが望ましい.

整形外科を育てた人達 第127回

Gabriel Nové-Josserand(1868-1949)

著者: 天児民和

ページ範囲:P.830 - P.831

 フランスには優れた整形外科医が多いが,1868年Lyons生まれのGabriel Nové-Josserandもその一人である.中学時代から大学時代を通じて良く勉強し,大学では首席であったので表彰された.

整形外科英語ア・ラ・カルト・23

手術室の英語・その2

著者: 木村專太郎

ページ範囲:P.832 - P.833

 今回も手術室でよく使われる英語,その2を書くことにする.
●tourniquet(ターニケット)
 医学辞書のターニケットの項には,駆血帯,止血帯,圧迫帯などの訳語が書かれているが,通常はそのまま“ターニケット”が日本語化している.

基礎知識/知ってるつもり

Compartment and Barrier

著者: 川口智義 ,   真鍋淳

ページ範囲:P.834 - P.835

【compartmentとradical local resection】
 compartment(区画)とは正式の解剖学的用語ではないが,従来よりcompartment syndromeで知られるように厚い結合織によって囲まれた解剖学的区画を意味するものである.元来は出血や膿瘍がcompartmentで留まり外部に流出しないがためにcompartmentの内圧が昂進することによって循環障害や神経麻痺が生じうることで知られている.骨軟部腫瘍においても同様の機序によって腫瘍の進展が抑制されることから,Ennekingは腫瘍治療に応用しcompartmentで包み込むように腫瘍を切除することによって局所根治性が得られるとし,その術式をradical local resectionと定義した.

整形外科基礎

腰椎椎間板変性の体幹筋力に及ぼす影響

著者: 李俊𠘑 ,   大井淑雄 ,   中村耕三

ページ範囲:P.837 - P.840

 抄録:MRIによる腰椎椎間板変性の程度を髄核の輝度および椎間板突出の形態により評価した.そして椎間板の変性が等運動性運動における体幹ピークトルク値へおよぼす影響を多変量解析にて寄与率として求めた.また重回帰式を標準化して,その偏回帰係数で各椎間板レベルの影響力を比較した.
 寄与率は伸展運動で平均9%,屈曲運動で平均3%,回旋運動で平均4%であり,運動の種類により椎間板の影響の程度に差が認められた.L2/3,L3/4,L4/5およびL5/S1椎間板各レベルの標準化偏回帰係数は,男性ではL5/S1レベル,女性ではL4/5レベルの影響力が強い傾向を示した.体幹筋力の評価にあたっては椎間板の因子についても考慮する必要があると考えられた.

変形性膝関節症における膝関節側方動揺性の加速度解析

著者: 安永雅克 ,   緒方公介 ,   野見山宏

ページ範囲:P.841 - P.846

 抄録:変形性膝関節症に特有な膝関節側方動揺性を検討するため加速度計を用い各歩行条件下で,①正常膝60膝,②内側型関節症60膝,外側型関節症膝11膝,について動的評価を行った.歩行条件を①2km/h,4km/h,6km/h②平地歩行③30°上り坂歩行④30°下り坂歩行⑤20kgの荷重負荷歩行とし立脚期初期のピーク加速度値を比較した.結果は,平地歩行に比し降坂,降階,荷重負荷歩行でピーク加速度値は有意な増加を示した.また,歩行速度の増加に伴い正常群,内側型OA膝群ともにピーク加速度値は増加傾向を認めたが,各歩行速度間での両群間に有意差は認められなかった.しかし,膝関節から足関節のピーク加速度変位量を差し引いた真の膝関節ピーク加速度変位量を両群で比較すると,速度の増加に伴いOA膝群では正常群に比し大きな増加傾向を示していた.

臨床経験

膝関節周辺に生じた骨巨細胞腫に対する関節機能温存,再建の試み

著者: 西田淳 ,   白石秀夫 ,   嶋村正 ,   双木慎 ,   小竹俊之 ,   阿部正隆 ,   和田俊夫

ページ範囲:P.847 - P.852

 抄録:Ennekingのstage 3あるいは再発などのため関節機能温存,再建に苦慮した膝関節周辺に生じた骨巨細胞腫例に検討を加えた.症例は5例で,骨皮質の破壊が狭い範囲に限局している例では掻爬後骨セメント充填法を,大腿骨外顆例では膝蓋骨関節面を利用して遊離膝蓋骨移植術を,脛骨近位外側例では有茎膝蓋骨移植術を,脛骨近位内側例では高位脛骨骨切り術を行い,関節機能温存あるいは再建を図った.各症例の術後患肢機能をEnnekingの評価法に従って評価した.術後患肢機能は骨セメント法および高位脛骨骨切り術を行った例ではexcellent,膝蓋骨移植術を行った例ではgoodで,良好な患肢機能が得られたものの,遊離膝蓋骨移植術例では移植膝蓋骨に骨吸収像が出現し,有茎膝蓋骨移植術施行が困難と考えられる大腿骨外顆例の機能再建法に問題点が存在した.

尺側全CM関節掌側脱臼の1例

著者: 山田陸雄 ,   高橋惇 ,   外川宗義 ,   西幸美 ,   伊藤正純 ,   河野克己 ,   小山明

ページ範囲:P.853 - P.856

 抄録:われわれは,稀な外傷である尺側全CM関節掌側脱臼の1例を経験したので報告する.症例は20歳の男性で,乗用車を運転中,交差点で右折中の軽トラックに衝突,受傷した.初診時所見では,右手の著明な腫脹・疼痛,右手指の運動障害,および右前額部挫傷を認めた.単純X線撮影では第2から第5CM関節にかけてのmalalignment,側面断層撮影では,第2から第5CM関節にかけての掌側脱臼,および,第2中手骨基部背側の剥離骨折を認めた.受傷2日目に徒手整復,Kirschner鋼線による経皮的ピンニングを施行した.受傷後3カ月時では,握力の低下を認めるが,手指の運動は正常で原職に復帰している.今回の発生機序は,直達外力の他に,受傷時,体が右方へ飛ばされた際,第5CM関節尺側を軸とした回旋力が発生し,CM関節の掌側脱臼を生じたものと推測される.

巨大な前腕部のtumoral calcinosis様石灰化による後骨間神経麻痺の1例

著者: 細川吉博 ,   金田清志 ,   荻野利彦 ,   加藤博之 ,   阿部和厚

ページ範囲:P.857 - P.861

 抄録:慢性腎不全により4年間の血液透析の経過中,右前腕部に発生した腫瘤により後骨間神経麻痺をきたした稀な1例を経験した.神経麻痺の改善がみられないため腫瘤摘出術を行い,組織学的,電子顕微鏡学的に検討を行った.その結果,腫瘤はリンとカルシウムからなる石灰の結晶から成り立っていた.それらの分析から,腎不全状態での血中リン値の上昇がカルシウムを伴って直接軟部組織に沈着する機序が考えられた.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら