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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科3巻1号

1968年01月発行

雑誌目次

視座

鞭打ち損傷

著者: 岩原寅猪

ページ範囲:P.1 - P.1

 鞭打ち損傷(むち打ち損傷)は本年度の日本脳神経外科学会,日本災害医学会および日本整形外科学会のシンポジウムとなつている.先日のNHKテレビでは朝のスタヂオ102の番組に三日連続登場した(9月28〜30日).これらのことは鞭打ち損傷が学問的に,社会的にいかに重大な問題であるかということを物語つている.
 鞭打ち損傷はこの頃鞭打ち傷,さらに鞭打ち症などといわれ,名称からして混沌としている.周知のようにアメリカのAbottら(1953)の提案したWhiplash injuryを飯野教授が鞭打ち損傷としてわが国に紹介され,それが今日通用語となつて行なわれている.それが,いつの間にか鞭打ち傷を通りこして鞭打ち症になつてきている.これは転訛であつて,不用心からおこつたもので,まさか誤解からきたものではあるまい.それが,最近ではご本尊の飯野教授自身があらたに頸椎反衝(症候群)という文字を提唱している.少々考え過ぎではなかろうか.

論述

股関節症の病変進展のレ線学的研究

著者: 伊藤鉄夫 ,   赤星義彦 ,   森英吾 ,   藤川重尚 ,   加藤実 ,   野坂健次郎 ,   藤田仁

ページ範囲:P.2 - P.14

緒言
 股関節症の病変は関節軟骨の破壊にはじまり,嚢包の形成,関節変形,関節嚢の線維化,関節荒廃の途を辿るのであるが,個々の症例についてその経過を観察してゆくと,発病年齢,病変進展の速度,病変の型にかなりの相違がみられることがわかる.しかし,本症では,なんらかの有効な治療が行なわれない限り,病変はその進行を停止することはない.不均衡な荷重,関節を構成する各組織の破壊,それに随伴する修復機転などの相関関係が生活環境や組織老化の影響をうけながら常に病変悪化の方向に進み,荒廃してゆく.

慢性関節リウマチの頸椎変化—環軸関節を中心として

著者: 七川歓次 ,   孫瑢権 ,   高橋貞雄 ,   太田寛 ,   藤田米次 ,   小瀬弘一 ,   武田光弘

ページ範囲:P.15 - P.24

 慢性関節リウマチ患者は頸椎においても,他の関節におとらず多彩な症状を示すことが明らかとなりつつある.不思議なことに,これに関する研究が主として最近10年間の収穫であることは,頸椎という解剖学的な部位によるのかもしれない.Brocher(1955)の後頭頸椎領域の診断,病理に関する総括的な著書においても,強直性脊椎炎や痛風についての記載はあるが,慢性関節リウマチにはふれていない.しかし,慢性関節リウマチ患者が頸部の痛みや機能障害を訴えることはすこぶる多く,現在ではこの訴えを頸椎の炎症病変と直接結びつけて考えうる十分な根拠が得られるようになつたわけである.ずつと以前に,慢性関節リウマチ患者の頸椎変化が問題となつたのは,主として環軸関節,ときには上位椎体の亜脱臼による神経症状または脊髄圧迫症状のために,あるいは他の後頭環軸椎の先天異常や外傷による症例とともにとりあげられてきたので,すべて症例報告に属する(Davis and Markley, 1951;Coste et al.,1952, 1960;Mabon and Lovell, 1956;Hauge, 1958;Dunbar and Ray, 1961).

整形外科領域におけるRadioisotopeの臨床応用について

著者: 井上駿一 ,   辻陽雄 ,   村田忠雄

ページ範囲:P.25 - P.39

 Radioisotope(以下RIと省略)の医学への応用は1935年Chiewitz & Hevesy1)32Pによる骨塩交換を検討した動物実験に始まるとされ,したがつて整形外科領域へのRI導入の歴史は極めて古い.しかし,その後は実験的骨塩代謝に関する基礎的研究のみに使用されることが多く,臨床応用は1950年代に入りようやく黎明期を迎えるに至つた.すなわちTucker2)(1950),Boyd3)4)(1951),Laing & Ferguson5)(1959),Arden & Veall6)7)(1953)らの大腿骨骨頭Viability検討への応用,Bauer & Wendeberg8)(1959),Gynning9)(1961),Corey10)11)(1961),Greenberg12)(1961)らの骨腫瘍ないし炎症性疾患へのBone seeking isotopeによる体外計測法による診断的応用の報告が相ついで見られる.

境界領域

手術と糖,アミノ酸代謝

著者: 植草実 ,   東泉東一 ,   三村孝 ,   大場正己 ,   赤松隆 ,   楢原徳之 ,   小平進 ,   住山正男

ページ範囲:P.41 - P.49

 大きな外科手術は生体の内部環境に著しい変動をひきおこすが,侵襲に対する著明な生体反応のうちに糖,蛋白代謝の変化がある.外傷後の血糖増加はClaude Bernard(1877)以来よく知られており,外科手術は高血糖,尿糖をきたし,耐糖能・糖利用を低下せしめる.一方Cuthbertson(19301))が骨折患者について尿中排泄窒素量の増加をみて以来,外科手術後には蛋白異化,喪失の亢進,増大がみられることも周知の事実である.
 手術侵襲に由来する代謝変化についてはMoore2)の精細な著があり,術後の糖・蛋白代謝に関する研究は多い.しかしその発現機序,関連についてはなお不明の点が少なくない.ここには著者らの成績を中心にエネルギー代謝の面から,糖および蛋白を構成するアミノ酸の術後代謝変化とその関連についてのべる.

手術手技

内反足の手術

著者: 飯野三郎 ,   藤田晋也

ページ範囲:P.50 - P.56

 内反足は後天性にもポリオなどの弛緩性麻痺,CPなどの痙性麻痺,外傷あるいは瘢痕,足部の骨・関節炎の後遺症,脊椎裂などによるmyelodysplasia,脊髄空洞症などに発生してくるものも多いが,内反足の大きな部分を占めるのは先天性のもので,実際臨床的に扱う大多数のものは,従来,先天性二次性内反足と呼ばれているものである.
 後天性内反足,特にポリオやCPによる内反足では,段階的訓練,理学療法,装具などによつて変形の発生を予防するのがまず第一に重要なのは当然のことであり,その治療に当つても原疾患の特質をよく理解し,変形発生の要因をよくみきわめることが大切で,たとえばCPによる内反足では,その疾患の性格の上からも観血的手術の適応は狭く,手術をやるとしてもその方法や矯正の程度などに慎重を期すべきである.しかし一般的にいつて後天性内反足に対する手術も先天性内反足の手術と大体同様な考えで進めてもよいことが多く,両者に共通の手術が少なくないので,ここでは主として先天性の,ことにそのいわゆる二次性内反足を中心とした手術的治療について述べることにする.

診療の経験から

腰仙移行椎に対する固定術の経験

著者: 増原建二 ,   宮城浩 ,   城戸光 ,   田中武夫

ページ範囲:P.57 - P.63

はじめに
 腰仙移行椎における巨大横突起が,腰痛との関連において検討されたのは,すでに古い.本邦では,故神中教授が脊椎奇形の宿題報告の中で,その臨床的意義に関して詳述されて以来,今日では,ほとんど顧みられないようになつた.たしかに,腰痛の原因として,椎間板性,椎間関節性,筋・筋膜性のものが解明されつつある現在において,腰仙移行椎が単純レントゲン像で,骨奇形として把えやすいというだけの理由で,これを腰仙痛に結びつけることは誤りを犯すことになるし,また,他に腰仙痛の原因が見当らず,移行椎における横突起障害と診断するのが最も妥当である場合においても,その大部分の症例が,保存的療法によつて症状の改善をみることから,それほど問題にされなくなつてきたのも否めない事実である.
 腰痛の頻発する最下位腰椎部において,構築上の弱点としての移行椎が,上記の病因と併存することは多く,単独に横突起障害と診断するには,故神中教授の指摘されたように,きわめて慎重でなければならない.

臨床経験

母指MP関節lockingの1例

著者: 小林晶 ,   松崎昭夫 ,   光安元夫 ,   諸岡正明

ページ範囲:P.65 - P.67

 狭窄性腱鞘炎以外によるMP関節のlockingは珍らしく,種々の原因による症例の報告がなされている.われわれは種子骨および第1中手骨骨頭部の形が重要な役を演じていたと考えられる母指MP関節lockingの1例を経験したので報告する.

有鈎骨壊死を伴つたKienböck病の1例

著者: 三浦幸雄 ,   野崎隆滋

ページ範囲:P.68 - P.70

 月状骨壞死はKienböck病とも呼ばれ,いわゆる骨端炎性疾患のカテゴリーに属するものとされており,整形外科領域ではさほど稀な疾患ではない.しかし月状骨を除いた他の手根骨の無菌性壊死は,舟状骨骨折後に見られる外傷性骨壊死を除けば,非常に稀なものであり,文献的にも非常に少なく,有鈎骨壊死に関しては僅か,Kohler-Zimmer,Vogelらによつて2例が報告されているにすぎない.われわれは最近,左手の月状骨壊死に有鈎骨壊死を伴つた極めて稀な,1症例を経験したので本症例の概略を報告し,若干の考察を試みた.

無腐性骨壊死を伴つた紅斑性狼瘡の症例

著者: 小山明 ,   田辺碩

ページ範囲:P.71 - P.74

 紅斑性狼瘡による骨の無腐性壊死は,欧米23例,本邦2例の報告を見るに過ぎない.またその病因論に関して,紅斑性狼瘡の一分症としてみなすか,あるいは原疾患の治療に用いられたステロイドホルモンの副作用とするか,議論の余地が残されている点でも注目されている.
 われわれは,最近,膝関節痛を主訴として来院した紅斑性狼瘡の患者を診察する機会を得たので,文献的考察を加えて報告する.

CO中毒症にみられた骨化例について

著者: 忽那龍雄 ,   安岡文恵 ,   上野直昭

ページ範囲:P.75 - P.78

まえがき
 一酸化炭素中毒(以下CO中毒)は,広汎な産業部門に発症する可能性をもち,また,COガスは,われわれの生活と密接な関係があるためその発生源にはこと欠かない.
 したがつて,COの作用機転,CO中毒の臨床像などについては,諸家により多数の報告がなされている.しかし,CO中毒の後遺症として整形外科学的にとりあげられたのは,季による異所骨化を起こした1例についての報告しか,われわれは知らない.

後部Kantenabtrennungについて

著者: 津布久雅男

ページ範囲:P.79 - P.87

 成人脊椎,主に腰痛におけるX線像で,椎体前縁に遊離している三角形の小骨片について,いわゆるKantenabtrennung(以下K. abtr.と略)がSchmorlおよびその協同研究者(1932)によつて,記載されて以来,多数の症例が報告されている.しかしこれが椎体後部に発生したという報告は非常に少ない.私はここに,腰椎後縁に発生したK. abtr.が脊椎管内に膨隆し,脊髄神経根症状を呈したものの手術経験を得たので報告し,併せて,最近後部K. abtr.を証した腰痛患者を紹介して,いささか考察を加えてみたい.

カンファレンス

骨腫瘍—これはなんでしよう〔6〕

著者: 骨腫瘍症例検討会 ,   安部光俊

ページ範囲:P.88 - P.93

 A:この方は8歳の男です.経過を簡単に申し上げますと,初診の1ヵ月くらい前に腰を痛がりましたが,これは1週間くらいで治りました.それからしばらく経つてから,今度はお腹が痛いと言い出したんですが,それも間もなく治つたのです.その後どうも歩き方がおかしいというので,昭和42年6月に武蔵野日赤に来た方なんです.
 既往歴ではツベルクリン反応は陽性です.特別の病気はありません.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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