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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科3巻11号

1968年11月発行

雑誌目次

視座

教育病院

著者: 天児民和

ページ範囲:P.913 - P.913

 私は6月医師法改正による医師免許証取得後の臨床修練病院の認定に関する委員会の1員に列することになつた.そして前後6回に亘る会議に出席して色々考えさせられることが多かつた.まず厚生省は終戦後米軍の占領下において厚生行政を推進してきた.これは後にオールマイティーの米軍の支持で,反対論も慎重論も聴くこともなく進めてきた.インターン制度もその1つである.それだけに厚生官僚が自らその必要を感じ立案して進めたものではないだけに,全く形式的なものになつてしまい,次に学生騒動の導火線になり,漸くこれを廃止することになつた.
 その失敗に対する反省が厚生省にどの程度あるかどうかと私は思いながらこの会議に出席したが,厚生省側の発言を聞いていると,反省しているという言葉は出るが,あまり反省のあとは見えない.そしてここにまた新しく修練病院の認定を行なおうとするのに,その基準の判定は政治的色が強い.わが国には教育病院は大学病院以外にないと言つてもよい位である.長い間,日本では医師の教育は大学病院だけが行ない,その他の病院は教育とは無関係であるという考え方になつていた.インターン制度の失敗の原因もここにある.

シンポジウム 股関節形成術

股関節形成術に思う

著者: 片山良亮

ページ範囲:P.914 - P.916

はじめに
 股関節には便宜肢位あるいはindifferent positionというのがあつて,この肢位の強直では起立・日本式正座ができ,跛行も軽度である.したがつて股関節結核などは,すべてこの肢位に強直させてしまえばよろしいわけである.しかし,いままで動いていた関節は,いままでのように動くように治したい,治りたいというのは人情である.
 また不良肢位に強直している股関節は,骨切り術で便宜肢位の強直位に矯正してもよろしいわけであるが,これもまた,以前のように再び動くように関節形成術をおこなつて治したいと思うのは人情である.

私の治療法

"Neoacetabuloplasty"について

著者: 飯野三郎 ,   日下部明 ,   野沢宏三

ページ範囲:P.917 - P.927

まえがき
 このシンポジウムの命題は「股関節形成術」という大きなテーマであるが,本稿においては私たちが数年前から行なつている"Neoacetabuloplasty"と名づけた特殊な方式に話を限りたいと思う.
 陳旧性あるいは年長児の先天股脱や,治療不全のまま成長した場合の先天股脱では大腿骨頭が高位に転位し,そこにいわゆる新関節(Nearthrose)を形成し一応の機能を営んでいる場合が少なくない.これらは若年時には関節周囲の軟部組織や筋で関節としての機能代償がよく行なわれており,跛行と易疲労性が目立つくらいで,10歳前後あたりまでは,さのみ疼痛やその他機能的訴述を示さないのが普通である.ことに新潟大の河野教授が主張しているように,これらの放置された先天股脱では,骨頭が多かれ少なかれ骨頭・股臼の引つかかりを有する比較的低度の脱臼よりも,むしろ高度な第3度脱臼で,骨頭が殿筋内にあつて自由に動き,あるいはそこに生じた強靱な結合織性股臼(Surrogatpfanne)で日常生活を営んでいる場合の方が,横ゆれや腰椎前弯の増強などの姿勢・歩行形態の異常が高度であつても疼痛や運動制限は割合に少ないままに一生を過しうることが多い.

股関節形成術の経験

著者: 柏木大治 ,   桜井修

ページ範囲:P.928 - P.936

はじめに
 股関節機能を整形外科的に評価する場合には支持性,可動性と疼痛の程度について考慮されねばならない,この中で臨床的には疼痛の除去が患者にとつても医師にとつても最も切実な問題である.
 可動性と疼痛のある股関節よりも無痛で良肢位の強直股関節の方がはるかに有用であることは,われわれの日常多く経験するところであり,その代表的なものに股関節結核と変形性股関節症が挙げられる.

股関節形成術

著者: 丸毛英二 ,   児島忠雄

ページ範囲:P.937 - P.943

 従来,関節形成術の中間挿入物としては,吸収性のものと非吸収性のものとが用いられてきた.吸収性のものとしては遊離筋膜・JK膜・OMS膜・皮膚などがあり,非吸収性のものとしてはcup arthroplasty,endoprosthesis,total replacement by prosthesisなどがある.これらは一長一短があり,症例によつてもいかなる方法を用いるのがよいかは問題のあるところである.今回は吸収性隔壁を用いた股関節形成術について言及する.このような手術を行なつた成績を論ずる際に,関節軟骨を切除したか,あるいは温存したかは重大な問題であり,Burkee de la Campは前者をArthrolyse後者をArthroplastikと呼んで区別している.今回申し述べる症例は関節軟骨を切除して中間挿入膜を用いたものである.これら手術例は恩師片山名誉教授が1947年来行なわれた症例がほとんどで,股関節結核による股関節強直あるいは拘縮例が多い.

論述

股関節固定術

著者: 河野左宙 ,   河路渡 ,   宮崎通城 ,   長谷川愫 ,   佐久間功一

ページ範囲:P.944 - P.952

はじめに
 各種股関節疾患に対する関節固定術は,整形外科領域では重要な手術に属する.この手術に関しては多くの研究者によつて,いろいろな手術法が案出され,報告されているが,それを一つ一つ追試して優劣を論ずるわけにゆかないほど多数である.
 この手術は他の関節の固定術に比べて手技がやや複雑なことと,熟練した術者によつても10〜40%の手術不成功例が報告されていることなどから(第1表),固定術の適応を認めても,手術に踏み切ることを躊躇するむきもある.一方,成長期の若年者に対しては固定術後の成長障害や逐年的に起こる肢位の変化,例えば屈曲内転肢位の増強なども考慮されねばならないし,老人では手術後の強直発現の遅延と長期固定に伴う各種合併症なども念頭におかねばならない.

Radioisotopeによる骨腫瘍の診断的応用(2)—Bone marrow scanningについて

著者: 村田忠雄

ページ範囲:P.953 - P.965

 前稿1)において著者らは骨腫瘍診断にたいして85Srによる体外計測法およびscanning応用の実際的方法とその知見について述べたが,われわれはその経験より85Sr応用が価値ある診断的情報を提供する検査手段であるとともに,その中に自ら限界の存在するものであることも知つた.そこで新らたなる角度より,骨腫瘍の局在・形態・性状に関する情報を得るために,放射性colloidによる骨髄scanningの応用に着目した.85Srによるscanningがscan陽性像による診断法であるにたいし,本法は投与された放射性colloidが骨髄内細網内皮系組織に摂取され,病変部位はその部の網内系機能喪失による欠損像,すなわちscan陰性像による診断法である.

座談会

乳幼児の先天性股関節脱臼の治療をめぐつて

著者: 岩原寅猪 ,   山室隆夫 ,   坂口亮 ,   今田拓

ページ範囲:P.966 - P.983

■完全治癒をめざして
 岩原 今日はお疲れのところありがとうございました.年寄りがこんなことにのさばり出るのはどうかと思いますが,年取つたせいで,逆に若い人の勢いのいいところに接したいというところもあるかと思います,今日は,教授という名のつく人たちでなしに,それぞれの場所で,主力になつて積極的に先天股脱の診療に当つておられるお三方に集まつていただきました.それぞれの立場から存分に論じていただこう,岩原はただ介添え,世話役としてここにおるだけのことでして,まさに鼎談の形で,お三方にこもごも意見を交していただきたいと願つております.主に乳幼児期の先天股脱の取り扱い方,あるいは対策というようなことに話を絞つていただいて,それの今日ある姿,そして明日に対してどうあるべきかということ,究極の狙いは,先天股脱の文字通りの完全治癒をいかに獲得するかということを論じていただきたいと思います.

診療の経験から

脊椎分離症における分離椎弓摘出非固定術について

著者: 伊藤忠厚

ページ範囲:P.985 - P.992

はじめに
 脊椎分離症,辷り症は,はじめ婦人科医によつて記載された疾患であるが,1920年以降整形外科医の注目するところとなり,今日に至るまで,多数の研究が行なわれ,また種々の治療も行なわれてきた.
 これらの治療法の中で,保存的療法は,さておき,観血的療法としては,脊椎固定術が古くから行なわれ,Fitch(1912)によるAlbeeの固定法をはじめ,Hibbs法,Henle法,Calve-Otterloo法,H-Graft法などの後方固定術が行なわれてきた.また前方固定術は,Capener(1932),Burns(1933),Marcer(1936)に始まり,本邦においても岩原(1961),鈴木(1965)らの人々によつて,後方固定術に優る方法として推奨されてきた.更にまた,分離部のみを固定する方法など,種々の改良を加えられた固定法も行なわれてきたが,いずれにしても,これらの固定法を行なう根拠とするところは,それぞれの主張はあるとしても,大体は椎弓の分離のために惹起される腰椎の不安定により腰神経が刺激されるために,疼痛が惹起されているものを,脊椎を固定することによつて,この刺激を防止しようとするにあると考えられる.

境界領域

リウマチにおける補体系の研究

著者: 園崎秀吉 ,   鳥巣要道

ページ範囲:P.993 - P.1000

はじめに
 慢性関節リウマチは原因不明の疾患である.その基盤には免疫学的機序が関与していると想像されつつも,まだ確証はえられていない.いわゆる自己免疫疾患と呼ばれるものの多くがそうであるように,リウマチにも「特異抗体」らしきガンマーグロブリンの存在は知られているが,これが病因に何らかの関係があるとの証左は認められず,その意味では「自己抗体」を検出しようとする試みは失敗に終つているといえよう.
 一方,免疫反応として総称される各種の生体反応は,抗体によつて惹起されるものではなく,補体系や線維素溶解系,その他の酵素などが主役となつて発現されるもので,血清抗体はこれらの反応の一つのひきがねであるにすぎない.したがつてリウマチを含め,自己免疫疾患と呼ばれるいくつかの疾患で,もし免疫反応に類似したいろいろの症状が認められるとすれば,まずこれら補体系,線維素溶解系などの動態を検討し,これらが免疫反応の時と同じような動態を示すのか,また異なるとすればどの点が異るのかを明らかにすることが非常に重要である.幸い補体学は近年その進歩が著しく,これを臨床面に応用して病態の解析に当ることは特に意義深いものがあると思う.

臨床経験

慶大整形外科におけるその後の骨関節結核

著者: 石下峻一郎

ページ範囲:P.1001 - P.1004

 不治の病として虞れられていた結核も近年抗結核剤の普及により減少の一途を辿つている.慶大整形外科における骨関節結核の統計的観察は,小川らが,昭和4年から昭和30年に至る27年間に当科を受診した骨関節結核患者,4078名を対象とし,田中らは昭和31年から昭和35年に至る5年間の患者250名を対象としている.私はその後5年間に受診した118名を調査の対象とし,過去32年間の統計と比較検討した.

病的骨折を起した鎖骨結核の1例

著者: 中嶋重雄 ,   井上四郎 ,   柳川哲二 ,   並河滋之 ,   牧陽一

ページ範囲:P.1005 - P.1007

 鎖骨に発生する骨結核は極めて稀な疾患である.われわれが文献より調べえた範囲では,本邦における報告例はいまだ10例に満たない.しかも,このほとんどは抗生物質の開発される以前の報告例であり,1945年Streptomycinが発見された後の報告例は長谷川らによる1例を見るだけのようである.
 近年,抗生物質の飛躍的な発展に伴い,骨結核は減少の一途をたどつているにもかかわらず,われわれは血行性に感染したと思われる鎖骨結核の1症例に接する機会を得たのでその概要を報告する.

カンファレンス

骨腫瘍—これはなんでしよう〔15〕

著者: 骨腫瘍症例検討会 ,   鳥山貞宜

ページ範囲:P.1008 - P.1011

経過の説明
 A:患者は32歳の男子,昭和39年6月頃より腰痛,坐骨神経痛があり,椎間板ヘルニアの診断で他医にて理学療法を受けておりました.
 約1年後に同様な愁訴で来院し,その時のレ線写真では,仙骨左上角部に骨融解像がみられ,仙骨の腫瘍,あるいは炎症性の疾患の疑いのもとに可及的切除術を受け,軽快いたしました.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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