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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科3巻12号

1968年12月発行

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視座

夢を追う

著者: 佐藤孝三

ページ範囲:P.1015 - P.1015

 夢とは,現実にすぐ実現しそうにない心の中の願いごと,といえるであろう.空を飛ぶことは人類の長い間の夢であつたが,今は航空機で自在に空を飛ぶことができる.最近はソ連でもアメリカでも,宇宙船の実験に成功して,月世界旅行が遠からず可能になりそうである.
 医学の面では,不老長寿が人類に共通した昔からの夢であるが,これはなかなか実現しそうにない.しかし,人間の平均寿命が延長してきているのは,疾病治療と健康保持の面で医学が大きく貢献しているからであり,夢の一端がかなえられつつあるといえなくもない.今年の医学の話題として,心臓移植が大きく取りあげられたが,これも1つの夢の実現であつた.しかし供与者の死の問題とからんで,何かまだすつきりしないものがある.心臓移植の進歩と平行して,供与者の要らぬ人工心臓の開発を願うのは,これまた1つの夢であろう.

論述

骨巨細胞腫瘍

著者: 阿部光俊 ,   荻野幹夫 ,   二ノ宮節夫 ,   鳥山貞宜 ,   村上敬朋

ページ範囲:P.1016 - P.1036

はじめに
 巨細胞腫瘍を最初に記載したのはA. P. Cooper & B. Travers(1818)であるといわれる.われわれはその原著を読むことができなかつたので詳しい内容は分からないが,彼はswelling & expansion of bone,ulceration,sloughing,bloody dischargeなどのphysical signについて述べている.
 その後myeloid sarcoma,tumeur á myéloplaxes,chronic hemorrhagic osteomyelitis,giant cell sarcomaなどの名称で報告されているが,1920年ごろまでは大体悪性腫瘍と考えられ,骨肉腫と同様に切断術が多く行なわれていたようである.

Thiemann病とPeripheral dysostosis-Brailsford(Hereditary brachy-dys-mesophalangy)との異同性について

著者: 塩之谷昌

ページ範囲:P.1037 - P.1045

 1909年Thiemannは,16歳女子の右中,環指,左中指のP. I. P.関節の紡錘状腫脹,およびX線上,その中節骨骨端核が,メニスクス様形態と陰影濃淡不整を呈する症例を,Idiopathische Erkrankung der Epiphysenknorpel der Fingerphalangenとしてはじめて報告し,素因に基づくか,もしくは原因不明の要因が成長期骨端軟骨部に働いて,成長障害を起させたものと考えた.ついで1923年Fleischnerは,14歳女子の自験例のX線所見からその骨端核の変化が当時発表された一連の骨端症,すなわちOsgood-Schlatter病,Perthes病,Kienbock病などと類似することを指摘し,Multiple Epiphysenstorungen an den Händen(Eine bisher unbekannte Lokalisation der Osteochondropathia juvenilis)として報告した.それ以来,本症をThiemann病ないしは,Thiemann-Fleischner病として,骨端症の範疇に入れるべきものであるとの考えが主流をなしてきた.

膝内障に対する膝関節造影法と,関節鏡検査法との臨床的意義について

著者: 岡崎博

ページ範囲:P.1046 - P.1054

はじめに
 文明が進み産業や交通が発達してくるにつれ,災害に起因する外傷性疾患の激増によつて,膝内障も年を追つて増加する傾向にある.膝内障とは,膝関節を構成する骨以外の靱帯,軟骨,半月板(メニスクス)などに障害を有する疾患で,半月板損傷,十字靱帯損傷,側副靱帯損傷のほかに,広くはHoffa病,関節遊離体,滑液嚢障害や離断性骨軟骨炎,Osteochondromatosis,Chondromalacia patellaeなどを含める場合もあるが,今回は主として,半月板損傷,十字靱帯損傷について言及する.
 膝内障(Internal deràngement of the knee)という名称は1803年,William Heyの記載に始まるといわれるが,当時の発表によつても半月板障害が主体である.膝関節造影法が半月板障害の診断に用いられるようになつたのは,1905年Werndorff & Robinsonの空気造影法以来といわれるが,その後1931年にはBircherにより陰陽二重造影法が試みられ,以来,種々の考案工夫が報告されている.しかし一般に,いづれの方法によつても膝関節半月板障害の診断は必らずしも容易ではなく,また手術所見と造影所見との一致しない症例も稀ではない.

手の損傷と補償

著者: 松林誠之助

ページ範囲:P.1055 - P.1063

はじめに
 補償には療養補償,休業補償,障害補償などがある.補償問題は,なにか事故でもあると,ほとんど同時に話題になるほど普及し,関心も持たれている,手は働きの中心で危険に曝される機会が多く,受傷して補償を受ける頻度が高い.特に受傷しなくても,作業に関連して故障を起し,補償を求めることも多い.
 補償は規約や範例,前例を基にしてきめられるが,その内容は基礎になる考え方や医学の進歩に応じて,時とともに変る可能性をもつている.補償には身体に関係する事項が多いので,当然医師の協力を必要としている.医師の診断は絶対的と思われるほどに尊重されるが,その反面一字一句まで吟味され,追求されることもある.難かしいことが多いが,その中から2,3の点について触れてみたい.

幼小児の手の熱傷における特殊性と治療

著者: 難波雄哉 ,   富田満夫 ,   丸石学

ページ範囲:P.1064 - P.1070

緒言
 熱傷の治療は,熱傷の広さ,深さ,熱傷をうけた部位,患者の年齢,患者の肉体的条件などによつて一様でないところにその難しさがある.
 幼小児の手の熱傷も例外でなく,手という部位的特徴に,さらに幼小児としての年齢的条件が加わつて,受傷機転,病態などをはじめ,その治療にも成人と異なる多くの問題点をあげることができる.

境界領域

リウマチとグロブリン

著者: 延永正

ページ範囲:P.1073 - P.1080

はじめに
 膠原病をも含めてリウマチの本態はいまだに不明の域を脱していないが,近時,自己免疫説が登場してきて,ようやくこの方面の研究も活発になつた感がある.一方,無γ-グロブリン血症が慢性関節リウマチ(RA)を合併しやすい事実が知られており1〜3),リウマチの発症ないし病態とγ-グロブリン(γ-グ)の関係が注目されている.かような点からリウマチにおけるグロブリンのうちでは,まずγ-グをとりあげるのが適当かつ必要なことであろう.
 次に注意をひくのはα2-グロブリン(α2-グ)である.本グロブリンはγ-グについで変動が大きく4,5),とくに早期に増加率が高い.そして慢性化してr-グが著増してくる頃には次第に正常化してゆく6)など,その態度にも興味がもたれるからである.α2-グのうちではハプトグロビン(Hp)とセルロプラスミン(Cp)は割合よく知られているが,α2-マクログロブリン(α2M)についての研究は比較的少ない.そのうえα2Mにはプラスミンに対する阻害作用があるといわれており7),炎症性疾患におけるなんらかの意義が示唆される.

臨床経験

Osteo-onycho dysplasia

著者: 岩倉博光 ,   加倉井周一 ,   黒川高秀 ,   二瓶隆一 ,   両角森雄

ページ範囲:P.1081 - P.1087

 Osteo-onycho dysplasiaは1951年Roeckerathにより,nail dystrophy,patellar dysplasia,elbow dysplasia,pelvic dysplasiaを4主徴とする症候群として,これが家族的に発生した6症例を報告し,ectomesodermal dysplasiaに含まれる明瞭な独立疾患として確立されるまでに,歴史的には1820年Chatelainの報告以来,Little(1897),Wrede(1909),Turner(1933),Lester(1936),Fong(1940)らにより,次第に不完全な姿から,疾患の全貌が明らかにされてきたものである.
 これらを含めて,諸外国の報告のうち,本疾患と思われるものは,すでに40余の文献に単独発生あるいは家族的発生を見る.わが国では,1942年木曽により,家族性に発生した膝蓋骨欠損と,両肘関節の拘縮を有し,さらに両母指の爪の不完全欠損を合併している症例の報告があり,おそらく本疾患であつたと思われる.我々は,岩倉が1962年第292回整形外科集談会東京地方会において,本邦第2例として報告した症例を含め,現在まで8例のosteo-onycho dysplasiaを経験したのでここに報告する.

大腿直筋不全断裂の1例

著者: 伊藤篤

ページ範囲:P.1088 - P.1089

 スポーツ外傷としては比較的稀な,大腿直筋起始部に近い不全断裂の1例を報告する.

カンファレンス

骨腫瘍—これはなんでしよう〔16〕

著者: 骨腫瘍症例検討会 ,   古屋光大郎

ページ範囲:P.1090 - P.1092

症例
 A:患者は39歳男性で,本年4月2日朝,起き上ると右膝部に疼痛を感じ,近医受診してレ線検査を受け,異常陰影を指摘されて当科を紹介された.来院時のレ線検査は写真(第1図)に示すごとく右脛骨上端前外側部に骨吸収像があり,骨皮質は外側部で一部消失しています.
 血管造影においては著明な血管の増生やプーリングを認めませんでした.

海外だより

Dr. Henry L. Jaffeに逢つて

著者: 三友善夫

ページ範囲:P.1070 - P.1072

 諸々の骨・関節疾患のなかには,その疾患概念,本態,病理組織学的分類などのまだ完全に解明されていないものが少なくない.そのうえ骨・関節疾患を研究の対象とする専門の病理学者の数は決して多くはない.とくにわが国には少ないように思われる.
 骨の病理学者Dr. Henry L. Jaffeはわが国でも病理学者の間だけでなく,整形外科や放射線科の領域にわたつて,骨腫瘍といえばJaffeと言われるほどにその名は馴染み深い.

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基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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